2006年06月
2006年06月24日
化学物質恐怖症 
Jｏｈｎ Ｅｍｓｌｅｙの著、渡辺正訳「逆説・化学物質」（丸善）は以前にも紹介しが、ダイオキシンなどの化学物質の環境汚染リスクについて、日本の学者の観点とは違った捉え方が参考になる。１９７０年代から化学物質＝危険物の風潮が主流になった。化学産業以外の自動車メーカ、タバコ産業、兵器産業の製品は化学製品よりはるかに多くの人の命を奪っているが、そういう工場にデモ隊が押しかけた話がない。「化学物質＝人工物質」は危険で「天然物」は安全という感覚がいつの間にか一般市民の間で広まっているのは全くの誤解に基づくものである。有機肥料が安全で無機肥料が危険であるかのような生協とか生活クラブの商品の表示は市民を欺いているようにすら思える。有機肥料といえども土着の微生物の活動で無機化され、その無機物質を植物は吸収しているに過ぎないことを理解させるような指導を小学校の理科の時間にでも行うべきである。植物にとって窒素、燐酸、カリの３つ重要な肥料と有機肥料の関係をぼかして説明しているのは恣意的とも思える。人工甘味料についても同様な誤解が満ち溢れている。天然の砂糖を取りすぎて肥満になる人のリスクの方がはるかに大きいことを、人工甘味料の安全性と一緒に教えることが重要である。
逆説・化学物質―あなたの常識に挑戦する
逆説・化学物質―あなたの常識に挑戦する
2006年06月23日
一万分の一
Jｏｈｎ Ｅｍｓｌｅｙの著、渡辺正訳「逆説・化学物質」（丸善）は以前にも紹介しが、ダイオキシンなどの化学物質の環境汚染リスクについて、日本の学者の観点とは違った捉え方が参考になる。リスクのない薬、副作用のない薬はないことは一般の人も理解はしているが、誤解も多いことを著者は訴えている。例えば、命に別状のない病気で手術を受けるときにも麻酔を使うが、麻酔で死ぬ人は昔は1万人に６０人もいたが今は一人以下、1万分の１以下である。出産時に母親が死ぬ確率、三つ子の生まれる確率、年間の交通事故死に、イギリスでのスキー事故で死ぬ人、などが大体同じ1万分の1の確率である。薬のリスクも同じ程度の確率であれば、その薬のプラス面を取り入れるべきであろう。落雷で死ぬ人の確率はさらに低く１千万分の１程度であるが、喫煙者が落雷を怖がっている姿はマンガに近い話で、ニコチン中毒で直接、間接的に死亡する確率は1万分の１よりはるかに高い。薬の副作用を心配する反対キャンペーンでせっかくの優秀な薬を葬り、まだ治療法のないがんやエイズを治す薬の開発を遅らせることがないように、リスク管理の考え方を市民や消費者も理解する必要がある。逆説・化学物質―あなたの常識に挑戦する
逆説・化学物質―あなたの常識に挑戦する
2006年06月22日
著作権保護
地上デジタル放送が普及し始めると著作権保護（ＲＭＰ：Righyts Management and Protection)が今より話題になり、不満も出てくるだろう。すでに衛星デジタル放送を録画しようとしたらプロテクトが掛かっており、この番組は録画できませんとの表示がでる。アナログ入力で録画すれば可能と思うが画質が劣化する。放送局への要望として、やたらにＣＣＩ（Copy Control Information:コピー制御情報）を電波に乗せないでもらいたい。
知っておきたい地上デジタル放送―テレビ新時代
知っておきたい地上デジタル放送―テレビ新時代
2006年06月21日
医学を工学的に見る試み 
富田直秀氏の著書「機能設計から生体環境設計へ」丸善：平成17年、は何を語ろうとしているのか、本の標題や前書きや本文を見てもよくわからない。生体環境設計という工学用語を生体内と生体外に分けて、前者にいわゆる一般の医療、後者を理学療法機器、介護、建築、被服まで含めて医療の周辺技術を含めるらしい。骨の構造と強度に関わる構造力学、血管中の血液の流れの流体工学など関心のあるテーマは沢山あるが、それについてもあまり触れていない。そうかと思うと後半にはＥＢＭ（EvidentBasedMedicine）やＮＢＭ（NarrativeBasedMedicine）の話最近１０年の話題が羅列的に書かれているが期待はずれである。医療の周辺技術を工学的に問題点を明らかにしていく試みは重要であり、今後に期待したいものである。
機能設計から生体環境設計へ―「安心」を育てる科学と医療
機能設計から生体環境設計へ―「安心」を育てる科学と医療
2006年06月20日
「タンパク質の音楽」の特許をもつ物理学者は歌手としても活躍
深川洋一氏の著書「タンパク質の音楽」、筑摩書房：1999年の著者が紹介しているフリーの理論物理学者ステルンナイメール氏は歌手としても活躍した。タンパク質の音楽のメロディーを取り入れていたかどうかは定かではないが、それが無意識的にも影響していたことは事実であろう。彼の活躍ぶりはニューヨークタイムズ（１９６７年４月１６日の日曜版）に紹介された新聞のコピーが同書にも紹介されている。小柄な２４歳の物理学者がプリンストン大学のトレーナを着てフランスでデビューし、フランスレコード業界始まって以来のセンセーションを起こしたと報道された。フランスのテレビショーにエヴァリストという名前で出演したのがきっかけでポール・アンカ、ハーマンズ・ハーミッツなどのそうそうたる顔ぶれのなかで唯一無名の人物が「積分の計算を発明した動物を知っているかい？」というパフォマンスでデビューした。フランスの大新聞「フランス・スワール」や「ル・モンド」は絶賛し、その曲を収録したレコードは１週間でベストセラーリストのベストテンの７位に入り、フランスのレコード業界始まって以来の快挙となった。そもそも、プリンストン大学で研究を続けるためのお金を稼ぐ必要から始めたが、ベトナム戦争のおかげで物理学者のための研究予算など真っ先にカットされ就職口もポストもなかった。レコードで稼いだお金で研究活動を続けているフリーの物理学者を受け入れるような社会は、日本のように偏差値教育で始まる固定化した価値観の社会では考えられない。
タンパク質の音楽
タンパク質の音楽
