2007年09月
たとえ話の上手な人 
「ダニエル・H・ピンク著、大前研一訳：ハイコンセプト、新しいことを考え出す人の時代、三笠書房、2005年」は、著者と訳者は親しい間柄でもあり、二人の呼吸がぴったり合った翻訳書である。大前氏の前書きなどのコメントも面白いので当ブログでも何度か紹介している。標題の”たとえ話の上手な人”という小節もなるほどとと思うところがある。
「比喩はすべての芸術の活力源だ：トウイラ・サーブ」を引用し、以下のように解説している。
「上司から突然「お前の耳を貸してくれ」と言われたら、左脳は少々パニック陥り、右脳が左脳をなだめ、このフレーズを文脈で捉えて、これが比喩であることを説得する。「比喩」、即ちものごとを別の観点で理解することも「調和」の大切な要素である。だが、これまで多くの右脳的思考を不当に評価する傾向があった。優れた言語学者ジョージ・レイコフもそれを指摘している。比喩は装飾だとされることが多かった。つまり、詩人が使う、さほど重要でない類のもの、あるいはありきたりの内容や不快な言葉を聞こえよくする美辞麗句だと考えられていた。だが、実は比喩は論理の中心をなすものである。その理由は「人間の思考プロセスは、大部分が比喩的だから」だと、レイコフは書いている。「比喩は想像力の合理性」と呼び、全体的思考能力である。現代の複雑な世の中では、この能力がいっそう価値あるもになってきた。」
昨日、テレビを見ていたら、あるコメンテータが、今回の安倍首相の突然の辞意表明について、「ノーアウト満塁のピンチで自らマウンドを降りたようなものだ」と言っていた。民主党の鳩山幹事長は「試合開始でバッターボックスに入ったら相手の投手（党首）がいなくなってしまった」とコメントした。たわいのない話ではある。安倍首相の謝罪会見を聞いてしまうと、左脳で、あれこれもっともらしく（分析）喋っていた評論家たちの言葉が空しい。
比喩が、最もその場に適したコメントになり、全体的思考能力を表現したかたちになることがある。
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
「比喩はすべての芸術の活力源だ：トウイラ・サーブ」を引用し、以下のように解説している。
「上司から突然「お前の耳を貸してくれ」と言われたら、左脳は少々パニック陥り、右脳が左脳をなだめ、このフレーズを文脈で捉えて、これが比喩であることを説得する。「比喩」、即ちものごとを別の観点で理解することも「調和」の大切な要素である。だが、これまで多くの右脳的思考を不当に評価する傾向があった。優れた言語学者ジョージ・レイコフもそれを指摘している。比喩は装飾だとされることが多かった。つまり、詩人が使う、さほど重要でない類のもの、あるいはありきたりの内容や不快な言葉を聞こえよくする美辞麗句だと考えられていた。だが、実は比喩は論理の中心をなすものである。その理由は「人間の思考プロセスは、大部分が比喩的だから」だと、レイコフは書いている。「比喩は想像力の合理性」と呼び、全体的思考能力である。現代の複雑な世の中では、この能力がいっそう価値あるもになってきた。」
昨日、テレビを見ていたら、あるコメンテータが、今回の安倍首相の突然の辞意表明について、「ノーアウト満塁のピンチで自らマウンドを降りたようなものだ」と言っていた。民主党の鳩山幹事長は「試合開始でバッターボックスに入ったら相手の投手（党首）がいなくなってしまった」とコメントした。たわいのない話ではある。安倍首相の謝罪会見を聞いてしまうと、左脳で、あれこれもっともらしく（分析）喋っていた評論家たちの言葉が空しい。
比喩が、最もその場に適したコメントになり、全体的思考能力を表現したかたちになることがある。
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
「境界」を自分で超えていく人
「ダニエル・H・ピンク著、大前研一訳：ハイコンセプト、新しいことを考え出す人の時代、三笠書房、2005年」は、著者と訳者は親しい間柄でもあり、二人の呼吸がぴったり合った翻訳書である。大前氏の前書きなどのコメントも面白い。標題の”「境界」を自分で超えていく人”という小節も一読に値する。
「今の時代、最も普及していて、一番大事であろう接頭語はなんだろう？、それはマルチだ。私たちは「マルチタスク」で仕事をこなす必要がある。社会は「マルチ・カルチャー」だ。エンターテインメントは「マルチメディア」で楽しめる。以前は、一つの分野で専門知識を身につければ成功が補償されたが、現在は、全く異なる領域の仕事を同等の自信をもってこなせる人が多額の報酬を手にできる。このような人々を「境界を超えられる人」と呼ぶことにする。彼らは複数の領域で専門性を身につけ、異なる言語を操り、さまざまな体験の中に喜びを見出すことができる。「マルチ」な人生を生きているのだ。そのほうが面白いし、昨今ではより効果的だからである。境界を超えられる人の例として、哲学の教授であり、ピアニストでもあるアンディ・タックがその一人だ。彼は、これらの分野で磨いたスキルをマネジメント・コンサルタント会社の経営にも活かしている。他の例として、ボストン在住の牧師兼小児科医のグロリア・ホワイタ＝ハモンド、オペラの作曲家でハイテク音楽機器の開発も手がけるトッド・マコーバ、数学の専門知識を複雑な服飾デザインに取り入れているジェーン・バーンズなどがいる。シカゴ大学の心理学教授で「流れ＝最適体験の心理学」や｢創造性＝発見と発明の心理学と流れ」という有名な本の著者であるミハイ・チクセントミハイはクリエイティブな人達の生活を調査した。その結果、「創造性の大部分は伝統領域の境界を超えることにある」と気づいたという。非常にクリエイティブな人というのは、大多数の人がまるで気がつかない関連性を捉えることができる。」
「その道一筋」とか「職人芸」、「伝統工芸」、「流儀」、「＊道」とかが好きな日本国民であるが、それぞれの道の分野では、それなりに日夜、新しい考え方に挑戦し、クリエイティブになっていると思う。そうでなければそれを見る多くの人の心には響かないはずである。
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
「今の時代、最も普及していて、一番大事であろう接頭語はなんだろう？、それはマルチだ。私たちは「マルチタスク」で仕事をこなす必要がある。社会は「マルチ・カルチャー」だ。エンターテインメントは「マルチメディア」で楽しめる。以前は、一つの分野で専門知識を身につければ成功が補償されたが、現在は、全く異なる領域の仕事を同等の自信をもってこなせる人が多額の報酬を手にできる。このような人々を「境界を超えられる人」と呼ぶことにする。彼らは複数の領域で専門性を身につけ、異なる言語を操り、さまざまな体験の中に喜びを見出すことができる。「マルチ」な人生を生きているのだ。そのほうが面白いし、昨今ではより効果的だからである。境界を超えられる人の例として、哲学の教授であり、ピアニストでもあるアンディ・タックがその一人だ。彼は、これらの分野で磨いたスキルをマネジメント・コンサルタント会社の経営にも活かしている。他の例として、ボストン在住の牧師兼小児科医のグロリア・ホワイタ＝ハモンド、オペラの作曲家でハイテク音楽機器の開発も手がけるトッド・マコーバ、数学の専門知識を複雑な服飾デザインに取り入れているジェーン・バーンズなどがいる。シカゴ大学の心理学教授で「流れ＝最適体験の心理学」や｢創造性＝発見と発明の心理学と流れ」という有名な本の著者であるミハイ・チクセントミハイはクリエイティブな人達の生活を調査した。その結果、「創造性の大部分は伝統領域の境界を超えることにある」と気づいたという。非常にクリエイティブな人というのは、大多数の人がまるで気がつかない関連性を捉えることができる。」
「その道一筋」とか「職人芸」、「伝統工芸」、「流儀」、「＊道」とかが好きな日本国民であるが、それぞれの道の分野では、それなりに日夜、新しい考え方に挑戦し、クリエイティブになっていると思う。そうでなければそれを見る多くの人の心には響かないはずである。
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代
フランスの公務員改革
「公務員雇用改革の方針表明、人員削減など 仏大統領」という記事が2007.09.20付けのＣＮＮで報道されている。フランスと言えば日本以上にエリート官僚天国と言われているがサルコジ大統領はどこから手を付けているのか興味がある。報道の概要は以下のとおりである。
「フランスのサルコジ大統領は１９日、国家公務員の雇用改革に伴う人員削減、昇給、昇進の制度づくりを進める方針を明らかにした。定年で退職する人員の半分を補充せず、給料支払いも業績ベースにすることなどを盛り込んでいる。今年５月に就任したサルコジ大統領は国際競争力の強化、公務員数の切り詰め、雇用改革を主要責務に据えている。これら改革は選挙公約として、５年の任期切れ前に実現させるとしている。 人員削減では２００８年に定年を迎える国家公務員の三分の一を補充しない。約２万２７００人に相当するとみられ、うち１万１２００人は教育部門。大統領はまた、残業手当を正規の勤務時間帯より割り増しにすることも検討したいと述べた。
大統領のこれら方針に対し、事前協議もないなどとして労組は強く反発、宣戦布告に等しいと非難している」
フランスの場合、日本の官僚の天下り対象になる独立行政法人とか公益法人とかの行政機関の話はあまり聞こえてこない。どこの国でも、どこの会社でも、長い間の停滞した組織内部には必ずがん細胞のような部分が増殖し、最終的には組織の体力まで衰弱させるという状況に悩まされている。しかし、発癌がすぐ分かるようなシステムにしておくことが重要である。米国のように選挙の結果で行政組織も総入れ替えるくらいのことをするのが成熟した民主主義社会かもしれない。科学技術の分野でも民間のコンサルタントには、「前政権の時には自分は国のこの施策の企画を担当しました」という人がいる。政権が変わるとその人は個人事務所で自分の調査活動や執筆活動を行っている。
カモミール事典―ハーブとしての効能・研究開発から産業への応用
「フランスのサルコジ大統領は１９日、国家公務員の雇用改革に伴う人員削減、昇給、昇進の制度づくりを進める方針を明らかにした。定年で退職する人員の半分を補充せず、給料支払いも業績ベースにすることなどを盛り込んでいる。今年５月に就任したサルコジ大統領は国際競争力の強化、公務員数の切り詰め、雇用改革を主要責務に据えている。これら改革は選挙公約として、５年の任期切れ前に実現させるとしている。 人員削減では２００８年に定年を迎える国家公務員の三分の一を補充しない。約２万２７００人に相当するとみられ、うち１万１２００人は教育部門。大統領はまた、残業手当を正規の勤務時間帯より割り増しにすることも検討したいと述べた。
大統領のこれら方針に対し、事前協議もないなどとして労組は強く反発、宣戦布告に等しいと非難している」
フランスの場合、日本の官僚の天下り対象になる独立行政法人とか公益法人とかの行政機関の話はあまり聞こえてこない。どこの国でも、どこの会社でも、長い間の停滞した組織内部には必ずがん細胞のような部分が増殖し、最終的には組織の体力まで衰弱させるという状況に悩まされている。しかし、発癌がすぐ分かるようなシステムにしておくことが重要である。米国のように選挙の結果で行政組織も総入れ替えるくらいのことをするのが成熟した民主主義社会かもしれない。科学技術の分野でも民間のコンサルタントには、「前政権の時には自分は国のこの施策の企画を担当しました」という人がいる。政権が変わるとその人は個人事務所で自分の調査活動や執筆活動を行っている。
カモミール事典―ハーブとしての効能・研究開発から産業への応用
歴史認識「大地の子」と私 
「山崎豊子著『大地の子』と私、文芸春秋、1996年」は、中国残留孤児 陸 一心の波乱万丈の半生を描いた物語である。1995年にNHKが日中の共同制作によりドラマ化し放映された。この小説を書くための取材の記録が本書である。取材のために中国の要人や官僚たちと交渉する中で彼らの考え方や気質も描かれており面白い。このドラマを自分も見ていたが、自分も一つ間違えば主人公の陸一心のような戦争孤児になったのではとドラマの中に引き込まれて見ていた。自分の父は北海道大学で地質鉱物を専攻し、中国の鞍山市にある製鉄所（昭和製鋼？）に就職、中国の奥地の鉱脈の調査などで出張が多かった。自分もそこで出生したが、終戦直前に父は兵隊に召集され、そのままシベリアで抑留された。母は終戦後、7歳、5歳、3歳、1歳の4人の子供をつれて日本に引揚げることになった。当時5歳の自分には当時の記憶が断片的に残っている。日本の敗戦で略奪などがあったが、それを守ってくれた親切な中国人の印象が強い。引揚げ者の行進は貨物列車と馬車だった。自分が馬車から落下したとき、引き止めようとした母も一緒に落ちてしまった。母は捻挫で歩けなくなった。馬車は待ってくれない。その時に母を背負って歩いてくれた親切な日本の兵隊さんのことを忘れない。貨物列車から見た夜空の満天の星が今でもぼんやり記憶に残る。それより空腹が極限状態であった。引揚げ船から降りた門司港の夜の交番で親切なおまわりさんから貰ったサツマイモの美味しさは今でも覚えている。父がシベリアから帰国するまで北海道の室蘭市にある叔父さんの家でお世話になった。新日本製鐵�蝓陛�時の富士製鉄）に勤めていた叔父さんは、その後、中国の宝山製鉄所の建設を担当した。「大地の子」の陸一心（ドラマでは上川隆也が演じた）の実の父である松本耕次（宇津井健）は叔父さんがモデルなのよ、と叔母さんが言っていた。後に叔父さんは新日本製鐵の副社長になったが、長い病床のすえ亡くなった。シベリアから帰国できた父は洞爺湖温泉町でひとまず教員の職についた。厳寒のシベリアでの捕虜生活では、ひとかけらの黒パンを得るために森の木を何本か切り倒すノルマがあったという。働かざる者食うべからずの彼の口癖はその時の名残と思う。自分は病気で1年浪人して小学生になった。
来年は洞爺湖サミットで世界の首脳が集まる。戦争のない世界にしてもらいたい。テレビに映る湖面上の中島のかたちは今も変らない。
『大地の子』と私 (文春文庫)
来年は洞爺湖サミットで世界の首脳が集まる。戦争のない世界にしてもらいたい。テレビに映る湖面上の中島のかたちは今も変らない。
『大地の子』と私 (文春文庫)yuji5327 at 07:07
日本の底力隕石落下と住民の頭痛の関係は？
「ペルー南部に隕石落下、住民数百人が頭痛など訴え」という記事が 2007.09.19付けＣＮＮで報道されている。概要は以下のとおりである。
「南米ペルー南部に隕石と見られる物体が落下し、付近の住民数百人が頭痛や吐き気、呼吸困難を訴えている。ペルーの保健当局者は１８日、ＡＰ通信に対し、物体の落下によって生じたクレーターから、何らかの有毒ガスが発生し、頭痛などの原因となっている模様だ、と述べた。落下した物体については、国営アンデス通信（電子版）が１８日、現地調査を行った科学者が隕石であると確認した、と伝えた。
隕石らしき物体が落下したのは、ボリビアとの国境に近い、南部チチカカ湖近郊のプノ県。落下による衝撃でできたクレーターは、幅約２０メートル、深さ約５メートル。ＡＰ通信は、落下日時の詳細については伝えていない。
付近の住民が体調不良を訴えたため、医師団が現地で手当てを行うほか、原因の究明に努めている。プノ県保健当局のホルヘ・ロペス局長は、「衝突の際に生じたガスが原因だろう」と述べている。一方、隕石の専門家ウルスラ・マルヴィン氏は、「隕石自体が原因ではなく、衝突時に生じた粉塵か、衝突の衝撃で地中から吹き出したガスが原因ではないか」と述べている。」
隕石の専門家らのコメントは概ね正しいと思うが、たまたま、同じ日付で当ブログで紹介した「プルトニウム粉末テロは生物化学テロと同様に脅威」を思い出した。
確かに有機系のガスなどが隕石自体から放出することはありえないと思うが、無機系の酸化プルトニウムだったらありうるというのは素人考えであろうか？
「隕石は大気圏突入前まで宇宙線に曝されているため、エネルギーの高い宇宙線による隕石構成元素の核破砕反応によって様々な核種が生成される。これらには当然放射性核種も含まれる。中には極めて短寿命の放射性核種も存在するため、落下直後（数時間以内）に測定を行うことは、核宇宙化学にとって非常に重要である。」とウィキペディア（Wikipedia）にも書かれている。
「南米ペルー南部に隕石と見られる物体が落下し、付近の住民数百人が頭痛や吐き気、呼吸困難を訴えている。ペルーの保健当局者は１８日、ＡＰ通信に対し、物体の落下によって生じたクレーターから、何らかの有毒ガスが発生し、頭痛などの原因となっている模様だ、と述べた。落下した物体については、国営アンデス通信（電子版）が１８日、現地調査を行った科学者が隕石であると確認した、と伝えた。
隕石らしき物体が落下したのは、ボリビアとの国境に近い、南部チチカカ湖近郊のプノ県。落下による衝撃でできたクレーターは、幅約２０メートル、深さ約５メートル。ＡＰ通信は、落下日時の詳細については伝えていない。
付近の住民が体調不良を訴えたため、医師団が現地で手当てを行うほか、原因の究明に努めている。プノ県保健当局のホルヘ・ロペス局長は、「衝突の際に生じたガスが原因だろう」と述べている。一方、隕石の専門家ウルスラ・マルヴィン氏は、「隕石自体が原因ではなく、衝突時に生じた粉塵か、衝突の衝撃で地中から吹き出したガスが原因ではないか」と述べている。」
隕石の専門家らのコメントは概ね正しいと思うが、たまたま、同じ日付で当ブログで紹介した「プルトニウム粉末テロは生物化学テロと同様に脅威」を思い出した。
確かに有機系のガスなどが隕石自体から放出することはありえないと思うが、無機系の酸化プルトニウムだったらありうるというのは素人考えであろうか？
「隕石は大気圏突入前まで宇宙線に曝されているため、エネルギーの高い宇宙線による隕石構成元素の核破砕反応によって様々な核種が生成される。これらには当然放射性核種も含まれる。中には極めて短寿命の放射性核種も存在するため、落下直後（数時間以内）に測定を行うことは、核宇宙化学にとって非常に重要である。」とウィキペディア（Wikipedia）にも書かれている。
