2008年09月
デタラメな講義をしても質問しない学生の探究心
「ジェイムス・L・アダムス著、大前研一訳:メンタル・ブロックバスター、プレジデント社、1999年」には、われわれの独創力を拒んでいるメンタルな壁を認識させてくれるということで、一昨日も紹介したが、「第7章:壁を破るテクニック」も面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.創造的な人間にとって最も重要な能力の一つに「探究心」がある。子供の頃は皆が持っている。その頃は短い時間に自分の知らない情報が信じられないほど入ってきて、その情報を自分なりに理解して消化しなければならないからである。0歳から6歳の間に獲得する知識は、親から教えられているもの以外に観察と質問で莫大な情報量を蓄積されている。
2.大人になって、探求心を失うのは2つの理由がある。第1は人は質問をするのをためらうようになる。大人も子供の質問に辛抱強くこたえなくなり、質問を抑制してしまう。教育機関は知識の伝達に精一杯で質問に答える時間もない。第2は、何でも質問する子供としての特長が社会に適応していくプロセスで失われる。賢いことは良いことだとという雰囲気のなかで質問することは、自分の無知を認めるようで悪いことのように感じる。
3.著者の所属する大学の同僚が専門用語の異なる学生に、自分たちにしか分からぬ専門用語を使ってわざとテタラメな話をしたが、デタラメなことが露見するするほどの質問を受けることがなかった。講義のあと、デタラメであることを告白すると、無駄な時間を費やしたことに非常な不快感を示した。現状に何も疑問を持たずに受け入れることに進歩の余地がないことを学生たちに教えることに役立った。丸暗記してよい成績を取るような学生には創造力は期待できないので、よい点数はつけない。メンタル・ブロックバスター―自由な発想を妨げる6つの壁をぶち破れ
1.創造的な人間にとって最も重要な能力の一つに「探究心」がある。子供の頃は皆が持っている。その頃は短い時間に自分の知らない情報が信じられないほど入ってきて、その情報を自分なりに理解して消化しなければならないからである。0歳から6歳の間に獲得する知識は、親から教えられているもの以外に観察と質問で莫大な情報量を蓄積されている。
2.大人になって、探求心を失うのは2つの理由がある。第1は人は質問をするのをためらうようになる。大人も子供の質問に辛抱強くこたえなくなり、質問を抑制してしまう。教育機関は知識の伝達に精一杯で質問に答える時間もない。第2は、何でも質問する子供としての特長が社会に適応していくプロセスで失われる。賢いことは良いことだとという雰囲気のなかで質問することは、自分の無知を認めるようで悪いことのように感じる。
3.著者の所属する大学の同僚が専門用語の異なる学生に、自分たちにしか分からぬ専門用語を使ってわざとテタラメな話をしたが、デタラメなことが露見するするほどの質問を受けることがなかった。講義のあと、デタラメであることを告白すると、無駄な時間を費やしたことに非常な不快感を示した。現状に何も疑問を持たずに受け入れることに進歩の余地がないことを学生たちに教えることに役立った。丸暗記してよい成績を取るような学生には創造力は期待できないので、よい点数はつけない。メンタル・ブロックバスター―自由な発想を妨げる6つの壁をぶち破れ
創造性を阻むものは何か?
「ジェイムス・L・アダムス著、大前研一訳:メンタル・ブロックバスター、プレジデント社、1999年」には、われわれの独創力を拒んでいるメンタルな壁を認識させてくれる本である。「第4章:文化と環境の壁」の第1の創造性、第2の創造性の考え方も面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.第1の創造性とは、無意識から生じる創造性で、今存在するものから全く新しい発見を見出すこと。第2の創造性とは、創造的でない人が多くの人々と共に作業し、それまで歩んできた人々の実績に基づき、注意深く、創造したり発見したりすること、としている。
2.ジェイムス・P・ワトソンのDNAの2重らせん構造は、人間的な左利きのプロセスにより発見された、第1の創造性によるものと主張している。
3.1960年代のアポロ宇宙船の開発は第2の創造性と見る向きもあるが、実は第1の創造性も大活躍している。宇宙船をデザインするにも高度な芸術性が関与している。論理的には前例がなかったためである。
4.第1の創造性は予測も困難で安定していない。そのための活動資金を集めるのも難しい。特に人文科学的分野でそれが言える。
5.多くの画家志望者は、今の安い給料の長時間の仕事のために、好きな絵を描くことができないとして嘆くが、自分は技術者として生活できるのだから、絵を描く時間もエネルギーもあるという見方もできる。
6.誰もが伝統ばかり重んじるようになると、ある特定の分野で変化が必要な場合にもそれを見過ごしてしまう。根っからの保守主義者はこの部類である。古きよき時代に育ち、昔の生活ばかり追い求めている人には創造的発想者になろうという気すらおきない。変化ばかり求めているひとは危ないかもしれないが、創造的発想と単なる変化とは異なり、創造的発想には希望がある。メンタル・ブロックバスター―自由な発想を妨げる6つの壁をぶち破れ
1.第1の創造性とは、無意識から生じる創造性で、今存在するものから全く新しい発見を見出すこと。第2の創造性とは、創造的でない人が多くの人々と共に作業し、それまで歩んできた人々の実績に基づき、注意深く、創造したり発見したりすること、としている。
2.ジェイムス・P・ワトソンのDNAの2重らせん構造は、人間的な左利きのプロセスにより発見された、第1の創造性によるものと主張している。
3.1960年代のアポロ宇宙船の開発は第2の創造性と見る向きもあるが、実は第1の創造性も大活躍している。宇宙船をデザインするにも高度な芸術性が関与している。論理的には前例がなかったためである。
4.第1の創造性は予測も困難で安定していない。そのための活動資金を集めるのも難しい。特に人文科学的分野でそれが言える。
5.多くの画家志望者は、今の安い給料の長時間の仕事のために、好きな絵を描くことができないとして嘆くが、自分は技術者として生活できるのだから、絵を描く時間もエネルギーもあるという見方もできる。
6.誰もが伝統ばかり重んじるようになると、ある特定の分野で変化が必要な場合にもそれを見過ごしてしまう。根っからの保守主義者はこの部類である。古きよき時代に育ち、昔の生活ばかり追い求めている人には創造的発想者になろうという気すらおきない。変化ばかり求めているひとは危ないかもしれないが、創造的発想と単なる変化とは異なり、創造的発想には希望がある。メンタル・ブロックバスター―自由な発想を妨げる6つの壁をぶち破れ
モンテーニュの時代にブログがあったら?
「大久保康明著:モンテーニュ;人と思想、Century Books, 2007」にはモンテーニュの思想がコンパクトにまとめられており読みやすい。フランスで歴代一番、国民の共感を得ている思想家はモンテーニュであることは以前にも当ブログで紹介した。彼はエセーなどの著作で知られているが、それが多くの人に読まれている理由がよく分かるほんである。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.1580年にessaiを出版するときの序文がそれを表しており、世間とのスタンスの取り方が多くのフランス人の共感を得ている。例えば
「読者よ、これは正直一途の書物である。もしも世間の好評を求めるのだったら私はもっと装いをこらし、慎重な歩みで姿をあらわしたことだろう。私は単純な、自然な、平常の、気取りや技巧のない自分をみてもらいたい。というのは、わたしが描くのはわたし自身だからである。読者よ、このように、私というものが私の書物の題材なのだ。こんなにつまらぬ、虚しい主題のために君の時間を費やすのは道理に合わぬことだ。では御機嫌よう。1580年3月1日。」
2.「たとえ誰も読んでくれなくても、私がこんなに多くの閑暇を、こんなに有益な愉快な思索に紛らわしたことが、時間の空費と言えるだろうか。私は自分にかたどってこの像を作りながら、私の姿を取り出すために何度も自分を整え、身構えねばならなかった。そのために、原型の方がひとりでに、ある程度固まった形ができてきた。私が書物を作ったというよりも、むしろ書物が私を作ったのである。
1580年当時、インターネットのブログがあったらモンテーニュへのアクセス数はどのくらいになったかと空想するのも楽しい。案外、退屈ですぐにはその機微を理解されずにリピータも少なかったかもしれない。
モンテーニュ (センチュリーブックス 人と思想 169)
1.1580年にessaiを出版するときの序文がそれを表しており、世間とのスタンスの取り方が多くのフランス人の共感を得ている。例えば
「読者よ、これは正直一途の書物である。もしも世間の好評を求めるのだったら私はもっと装いをこらし、慎重な歩みで姿をあらわしたことだろう。私は単純な、自然な、平常の、気取りや技巧のない自分をみてもらいたい。というのは、わたしが描くのはわたし自身だからである。読者よ、このように、私というものが私の書物の題材なのだ。こんなにつまらぬ、虚しい主題のために君の時間を費やすのは道理に合わぬことだ。では御機嫌よう。1580年3月1日。」
2.「たとえ誰も読んでくれなくても、私がこんなに多くの閑暇を、こんなに有益な愉快な思索に紛らわしたことが、時間の空費と言えるだろうか。私は自分にかたどってこの像を作りながら、私の姿を取り出すために何度も自分を整え、身構えねばならなかった。そのために、原型の方がひとりでに、ある程度固まった形ができてきた。私が書物を作ったというよりも、むしろ書物が私を作ったのである。
1580年当時、インターネットのブログがあったらモンテーニュへのアクセス数はどのくらいになったかと空想するのも楽しい。案外、退屈ですぐにはその機微を理解されずにリピータも少なかったかもしれない。
モンテーニュ (センチュリーブックス 人と思想 169)
国際金融危機でのIMFの役割とは?
2008/09/26付けの大前研一さんの「ニュースの視点」は、国際金融の現状の分析ということで、彼の分析を待ちかねていた。銀行や証券会社系のエコノミストなどの見解などは全く内容がなく、最初から聞く気もしないが、大前氏の分析はなるほどと感じさせる説得力がある。
概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米国の大手証券リーマン・ブラザーズの破綻を受けて、9月16日、アジア各国の株式市場は大幅に下落した。上海株式市場は代表的指数の上海総合株価指数が2000を割り込み、一時1974.39まで下落した。一方、インド・ムンバイ証券取引所の主要30社株価指数(SENSEX)は、18日、前日比0.4%高の1万3315.60で取引を終えた。
2.2008年の世界主要株価指数の推移を見ると、当然のことながら、この世界金融危機の震源地である米国の株価指数は大きく下落している。実のところ、他国の株価指数の下落幅の方がさらにひどい状況になっている。日本、ドイツ、さらには好調を維持していた英国の株式市場の方が米国より低い水準にあるというのは、皮肉な結果である。
3.アジアの株式市場も軒並み下落している。2008年の年初以来、最も下落幅が大きいのは中国・上海株式
市場で、約60%の下落幅を記録している。シンガポール、香港、ボンベイの下落幅も大きい。
4.株式市場を見ると、韓国経済はそれほど落ち込んでいないように見えるが、実際はかなり深刻な状況に直面している。米ドルに対する「ウォン安」という形で現れている。1997年のアジア通貨危機においてIMFが韓国経済へ介入して以来、徐々に回復をしていた韓国ウォンがここに来て4年ぶりのウォン安水準になっている。
5.大前氏は以前から指摘しているが、韓国経済は深刻な構造的問題を抱えている。「経済の空洞化」である。韓国経済は、「素材や基幹部品を日本から輸入し、主に中国で製造して米国や欧州に最終製品を輸出する」という、いわゆる「パス・スルー経済」である。
表面的には大きく成長しているように見えても、実態経済は育っていないというのが韓国経済の実情である。
6.大前氏は今年の3月に次のような指摘をしている。もし李明博(イ・ミョンバク)大統領が、この課題を解決するべく、韓国経済に根を張るような「裾の産業」を育てるような体制を創り出せれば、偉大な大統領として名を残せるだろうと。大統領選では、非常に高い得票率を獲得し、まさに期待の星だった李明博大統領であったが、米国産牛肉輸入問題をめぐって当事者能力を失っている。
7.韓国の大統領は、任期5年で、自ら辞意を表明しない限り、罷免されることは稀である。韓国の国民が、李明博大統領の立場を弱くしているのは不思議である。強い愛国心が逆に自虐的に働いているとも見える。
8.世界の株価指数が下落する一方で、比較的堅調な動向を見せているインド経済であるが、9月22日号のニューズウィーク誌ではインド経済への警鐘を鳴らす記事もある。これまで長い間低迷を続けてきたインド経済は、ようやく飛躍のチャンスを迎えつつあったが、インドのチャンスはどこかに消えてしまった。
インド経済の悪いクセは、経済の調子が良くなると、社会主義的な考え方が頭角を現してくる。資本主義的な考え方で経済が運営されると経済的な格差が出てくる。金持ちがより金持ちになるという構図も現れる。
これは、どの資本主義国でも同様ですが、インドの場合には貧しい人の割合が多く、その数は圧倒的大多数である。インドのシン首相はそうした事態に様々な妥協をして、インド経済を挫折させている。
9・大前氏はインド経済について心配はしていない。この世界金融危機が波及して、韓国の経済危機などにIMFがきちんと機能できるのか否かが問題である。
10.今回の金融危機は米国だけの問題ではなく国際金融全体の問題であり、米国政府ではなくIMFが対応するべきである。為替相場の安定等の国際金融秩序を維持することが、IMF本来の役割である。しかし、米国投資銀行ゴールドマン・サックスの出身である米ポールソン財務長官は、あまりIMFが好きでないようである。
概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米国の大手証券リーマン・ブラザーズの破綻を受けて、9月16日、アジア各国の株式市場は大幅に下落した。上海株式市場は代表的指数の上海総合株価指数が2000を割り込み、一時1974.39まで下落した。一方、インド・ムンバイ証券取引所の主要30社株価指数(SENSEX)は、18日、前日比0.4%高の1万3315.60で取引を終えた。
2.2008年の世界主要株価指数の推移を見ると、当然のことながら、この世界金融危機の震源地である米国の株価指数は大きく下落している。実のところ、他国の株価指数の下落幅の方がさらにひどい状況になっている。日本、ドイツ、さらには好調を維持していた英国の株式市場の方が米国より低い水準にあるというのは、皮肉な結果である。
3.アジアの株式市場も軒並み下落している。2008年の年初以来、最も下落幅が大きいのは中国・上海株式
市場で、約60%の下落幅を記録している。シンガポール、香港、ボンベイの下落幅も大きい。
4.株式市場を見ると、韓国経済はそれほど落ち込んでいないように見えるが、実際はかなり深刻な状況に直面している。米ドルに対する「ウォン安」という形で現れている。1997年のアジア通貨危機においてIMFが韓国経済へ介入して以来、徐々に回復をしていた韓国ウォンがここに来て4年ぶりのウォン安水準になっている。
5.大前氏は以前から指摘しているが、韓国経済は深刻な構造的問題を抱えている。「経済の空洞化」である。韓国経済は、「素材や基幹部品を日本から輸入し、主に中国で製造して米国や欧州に最終製品を輸出する」という、いわゆる「パス・スルー経済」である。
表面的には大きく成長しているように見えても、実態経済は育っていないというのが韓国経済の実情である。
6.大前氏は今年の3月に次のような指摘をしている。もし李明博(イ・ミョンバク)大統領が、この課題を解決するべく、韓国経済に根を張るような「裾の産業」を育てるような体制を創り出せれば、偉大な大統領として名を残せるだろうと。大統領選では、非常に高い得票率を獲得し、まさに期待の星だった李明博大統領であったが、米国産牛肉輸入問題をめぐって当事者能力を失っている。
7.韓国の大統領は、任期5年で、自ら辞意を表明しない限り、罷免されることは稀である。韓国の国民が、李明博大統領の立場を弱くしているのは不思議である。強い愛国心が逆に自虐的に働いているとも見える。
8.世界の株価指数が下落する一方で、比較的堅調な動向を見せているインド経済であるが、9月22日号のニューズウィーク誌ではインド経済への警鐘を鳴らす記事もある。これまで長い間低迷を続けてきたインド経済は、ようやく飛躍のチャンスを迎えつつあったが、インドのチャンスはどこかに消えてしまった。
インド経済の悪いクセは、経済の調子が良くなると、社会主義的な考え方が頭角を現してくる。資本主義的な考え方で経済が運営されると経済的な格差が出てくる。金持ちがより金持ちになるという構図も現れる。
これは、どの資本主義国でも同様ですが、インドの場合には貧しい人の割合が多く、その数は圧倒的大多数である。インドのシン首相はそうした事態に様々な妥協をして、インド経済を挫折させている。
9・大前氏はインド経済について心配はしていない。この世界金融危機が波及して、韓国の経済危機などにIMFがきちんと機能できるのか否かが問題である。
10.今回の金融危機は米国だけの問題ではなく国際金融全体の問題であり、米国政府ではなくIMFが対応するべきである。為替相場の安定等の国際金融秩序を維持することが、IMF本来の役割である。しかし、米国投資銀行ゴールドマン・サックスの出身である米ポールソン財務長官は、あまりIMFが好きでないようである。
コンピュータに意識を持たせることは可能か?
「ジェームス・トレフィル著、家泰弘訳:人間がサルやコンピュータと違うホントの理由、脳・意識・知能の正体に科学が迫る」は、著者も翻訳者も一流の物理学者であるためか、表現が論理的であり、読んでいても気持ちがよい。「第13章:意識の問題を複雑系で考える」の「創発的性質としての意識」の小節は一つの仮説に過ぎないが示唆に富む内容である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.脳の内部の1個のニューロンに出来ることは限られている。活動の電位を発生することが出来るが他のニューロンがなければその電位を伝える相手がいない。単一のニューロンだけでは外敵を認識したり微積分の問題を解くような機能は果たせない。
2.ニューロンの数を1個ずつ増やして繋いでいくと、それらが新しい機能を果たす能力を系にもたらす。沢山のニューロンが複雑複雑に繋がると、新しい性質が徐々に発達していくことのほかに、複雑系の創造的現象として突如出現する能力が生まれることが予想される。
3あるレベルの複雑性にまで達すると、新しい種類の現象が出現する。創発的性質にも何段階かあって、それらが異なるレベルの複雑性において順次出現する。
4.系は何段階かの不連続な飛び越しを示す。砂山の一粒の砂の性質と砂山の雪崩ののような現象が生まれる話に例えられる。意識とか知能とかいう言葉で表している現象は、このような連鎖の中での高いレベルの
創発的性質である。
5.ある生物種とそれに近い生物種との間の知的能力の差が見られるが、それは創発的性質のレベルの差の現れである。
6.動物には意識があるかという設問への答えは、この不連続を認識して議論する必要がある。例えば、クモの脳が人間の脳の100万分の1の重さしかないが、クモが人間の100万分の1の感覚や意識が備わっていると考えるのは正しくない。
7・機械(コンピュータ)に意識を持たせることはできないとも断言できない。トランジスタの数を1個1個ずつ付け加えることにより、ある段階で飛躍的な能力(創発的性質)が生ずることもありうる。人間がサルやコンピューターと違うホントの理由―脳・意識・知能の正体に科学が迫る
1.脳の内部の1個のニューロンに出来ることは限られている。活動の電位を発生することが出来るが他のニューロンがなければその電位を伝える相手がいない。単一のニューロンだけでは外敵を認識したり微積分の問題を解くような機能は果たせない。
2.ニューロンの数を1個ずつ増やして繋いでいくと、それらが新しい機能を果たす能力を系にもたらす。沢山のニューロンが複雑複雑に繋がると、新しい性質が徐々に発達していくことのほかに、複雑系の創造的現象として突如出現する能力が生まれることが予想される。
3あるレベルの複雑性にまで達すると、新しい種類の現象が出現する。創発的性質にも何段階かあって、それらが異なるレベルの複雑性において順次出現する。
4.系は何段階かの不連続な飛び越しを示す。砂山の一粒の砂の性質と砂山の雪崩ののような現象が生まれる話に例えられる。意識とか知能とかいう言葉で表している現象は、このような連鎖の中での高いレベルの
創発的性質である。
5.ある生物種とそれに近い生物種との間の知的能力の差が見られるが、それは創発的性質のレベルの差の現れである。
6.動物には意識があるかという設問への答えは、この不連続を認識して議論する必要がある。例えば、クモの脳が人間の脳の100万分の1の重さしかないが、クモが人間の100万分の1の感覚や意識が備わっていると考えるのは正しくない。
7・機械(コンピュータ)に意識を持たせることはできないとも断言できない。トランジスタの数を1個1個ずつ付け加えることにより、ある段階で飛躍的な能力(創発的性質)が生ずることもありうる。人間がサルやコンピューターと違うホントの理由―脳・意識・知能の正体に科学が迫る