2009年01月
世界的自動車不況の中でうまくやっているポルシェとフォルクスワーゲン
2009/01/30付けの大前研一さんの「ニュースの視点」は「 ポルシェ好調〜ユニークなポルシェの経営手法から何を学べるか」という記事で目を引いた。データに裏付けられた論旨はさすがである。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲンが11日発表した2008年の世界販売は、新興国での販売が好調で過去最多記録を更新し、前年比0.6%増の623万台になった。しかし、世界的な自動車市場低迷で、今年は減速する可能性もある。
2.世界的な自動車業界の壊滅的な状況に比べると、フォルクスワーゲンは比較的好調な業績を見せている。競合他社に比べて新興国に強いというのが、フォルクスワーゲンの特長であることは、この5年間の販売台数を見ても分かる。
3.ドイツ国内販売でも強さは発揮しているが、それほど飛びぬけて伸びているわけではない。一方で、ヨーロッパを含む海外では06年以降、急激に販売台数を伸ばしている。特に中国において06年には70万台強だったものが08年には100万台を突破した。中国・ブラジル・ロシアという新興国における販売台数は、好調に推移している。
4.このようなフォルクスワーゲンの快進撃に重要な役割を果たしている人物が2009年2月2日号のFORTUNE誌の表紙を飾っている。それは、現在ポルシェのCEOを務めているヴィーデキング氏である。2009年1月、ポルシェは同社が取得したフォルクスワーゲンの株式が50%を超え、子会社化したと発表した。ヴィーデキング氏はこの買収の立役者である。
5.ヴィーデキング氏は、歴史的に業務提携関係にあり、ポルシェの創業者一族が保有していたフォルクスワーゲンの株式を買い増し、あっという間にフォルクスワーゲンに対する持ち株比率を2009年1月現在で50.76%まで押し上げた。
6.今後さらにデリバティブ取引などで追加取得できる権利も含めると75%まで買い増せる状況にまでなっている。これにより、ポルシェという小さな会社がフォルクスワーゲンという大企業を傘下に収めることに成功した。
7.ポルシェが今後のトヨタの一番のライバルになると予想される。ポルシェ自体は小さな会社であるが、フォルクスワーゲンを傘下に収めることにより、ポルシェは量産体制を作り始めている。例えば、ポルシェには「カイエン」という四輪駆動の車種があるが、おそらくポルシェが設計開発を担当し、エンジンまで提供しつつ、実際の「カイエン」を量産体制するのに、フォルクスワーゲンを活用することもできる。
8.ヴィーデキング氏はポルシェ叩き上げの人であるが、この手のことを非常にクレバーに着手している。フォルクスワーゲン株を買い増した手腕も、ヘッジファンドよりも上手なやり方だったと評価されている。
9.この買収劇によってフォルクスワーゲンの株価が一時期世界最大の時価総額に達するほど急上昇をした際には、これを利用して2兆円ものキャッシュをポルシェに取り込んでしまった。
10.FORTUNE誌の見出しでも「THE MAN WHO OUTFOXED THE MARKET(マーケットを出し抜いた男)」と紹介されている。
11.FORTUNE誌では、今年の夏にポルシェから発売予定の4ドアスポーツカー「パナメーラ」の記事も掲載されているが、これも面白いコンセプトの車である。
ポルシェの車でありながら、小さくて窮屈ではなく、セダンでゆったりと高級感があるという車になっている。1台当たり120万円〜130万円の利益が出るらしい。
12.ポルシェは、完成車を保管しておく、円形垂直型の「バーティカル・ストレージ・ライン」も開発した。ポルシェとしての美観を損なうことなく、小さなスペースに多くの車を保管できるという意味で非常に経済的である。
13.今、世界的な自動車業界の不況の中で、日本のトヨタも苦戦を強いられている。。特に北米での販売不振や途上国にリーチできていないという点が大きな課題になっている。その点を考えると、ポルシェ、フォルクスワーゲンが今後のトヨタにとって一番のライバルになる。
1.欧州自動車最大手の独フォルクスワーゲンが11日発表した2008年の世界販売は、新興国での販売が好調で過去最多記録を更新し、前年比0.6%増の623万台になった。しかし、世界的な自動車市場低迷で、今年は減速する可能性もある。
2.世界的な自動車業界の壊滅的な状況に比べると、フォルクスワーゲンは比較的好調な業績を見せている。競合他社に比べて新興国に強いというのが、フォルクスワーゲンの特長であることは、この5年間の販売台数を見ても分かる。
3.ドイツ国内販売でも強さは発揮しているが、それほど飛びぬけて伸びているわけではない。一方で、ヨーロッパを含む海外では06年以降、急激に販売台数を伸ばしている。特に中国において06年には70万台強だったものが08年には100万台を突破した。中国・ブラジル・ロシアという新興国における販売台数は、好調に推移している。
4.このようなフォルクスワーゲンの快進撃に重要な役割を果たしている人物が2009年2月2日号のFORTUNE誌の表紙を飾っている。それは、現在ポルシェのCEOを務めているヴィーデキング氏である。2009年1月、ポルシェは同社が取得したフォルクスワーゲンの株式が50%を超え、子会社化したと発表した。ヴィーデキング氏はこの買収の立役者である。
5.ヴィーデキング氏は、歴史的に業務提携関係にあり、ポルシェの創業者一族が保有していたフォルクスワーゲンの株式を買い増し、あっという間にフォルクスワーゲンに対する持ち株比率を2009年1月現在で50.76%まで押し上げた。
6.今後さらにデリバティブ取引などで追加取得できる権利も含めると75%まで買い増せる状況にまでなっている。これにより、ポルシェという小さな会社がフォルクスワーゲンという大企業を傘下に収めることに成功した。
7.ポルシェが今後のトヨタの一番のライバルになると予想される。ポルシェ自体は小さな会社であるが、フォルクスワーゲンを傘下に収めることにより、ポルシェは量産体制を作り始めている。例えば、ポルシェには「カイエン」という四輪駆動の車種があるが、おそらくポルシェが設計開発を担当し、エンジンまで提供しつつ、実際の「カイエン」を量産体制するのに、フォルクスワーゲンを活用することもできる。
8.ヴィーデキング氏はポルシェ叩き上げの人であるが、この手のことを非常にクレバーに着手している。フォルクスワーゲン株を買い増した手腕も、ヘッジファンドよりも上手なやり方だったと評価されている。
9.この買収劇によってフォルクスワーゲンの株価が一時期世界最大の時価総額に達するほど急上昇をした際には、これを利用して2兆円ものキャッシュをポルシェに取り込んでしまった。
10.FORTUNE誌の見出しでも「THE MAN WHO OUTFOXED THE MARKET(マーケットを出し抜いた男)」と紹介されている。
11.FORTUNE誌では、今年の夏にポルシェから発売予定の4ドアスポーツカー「パナメーラ」の記事も掲載されているが、これも面白いコンセプトの車である。
ポルシェの車でありながら、小さくて窮屈ではなく、セダンでゆったりと高級感があるという車になっている。1台当たり120万円〜130万円の利益が出るらしい。
12.ポルシェは、完成車を保管しておく、円形垂直型の「バーティカル・ストレージ・ライン」も開発した。ポルシェとしての美観を損なうことなく、小さなスペースに多くの車を保管できるという意味で非常に経済的である。
13.今、世界的な自動車業界の不況の中で、日本のトヨタも苦戦を強いられている。。特に北米での販売不振や途上国にリーチできていないという点が大きな課題になっている。その点を考えると、ポルシェ、フォルクスワーゲンが今後のトヨタにとって一番のライバルになる。
大腸憩室炎という病気で学んでいること
1月27日(火)に「大腸憩室炎」で1週間の入院後退院したことを当ブログで記述したが、この病気について再発の可能性など、いろいろとNETで調べている。自分は、28日は正常な便で安心していたが、29日と今朝、僅かに出血があり驚いた。これらの経過を報告するために、川鉄千葉病院に行った。本日が外来当番の代診の先生と、本日は非当番の主治医の先生の2人から話を聞くことができて幸運であった。
1.代診の先生が先ず曰く「あなたは食事を良く噛まずにがつがつ食べる方ですか?」、小生の答えは「どちらかというとその方です」というと、未消化の食べ物が傷口を刺激することもあるというような話をし、早速、肛門から腸内を覗き、今は、出血は止まっているようだ。すぐに血液検査(貧血の有無の確認?)に行ってください。その結果でまたお話しましょう。血液検査の後、診察室に戻ると、本日は外来非当番の主治医の先生が居られて、代診の先生からカルテを引き継いで診てくださった。
2.主治医の先生が先ず曰く「小生のデジカメの写真を見て、これは新しい出血です。院内のLANによるパソコン上の血液検査の結果を見ながら、しばらく考えて、貧血状態にはなっていない。内服薬の止血剤と緩便剤で様子を見よう。2月3日の自分の外来当番の日に経過報告に来てください。途中で大量出血があったら土日でも病院に入院して治療して下さい。当番医がいるので分かるようになってます」、小生の質問「食べ物は繊維質がよいのですか? 運動はどの程度?」に対して、「この時期の繊維質の食べ物はマイナス、運動も安静が原則」という答えであった。
小生の不注意で、退院直後にがつがつ食べて体重が1kgもリバウンドしたことが関係ありそうである。やはり、NET情報よりも直接、診察して下さる医師の言葉が貴重である。
1.代診の先生が先ず曰く「あなたは食事を良く噛まずにがつがつ食べる方ですか?」、小生の答えは「どちらかというとその方です」というと、未消化の食べ物が傷口を刺激することもあるというような話をし、早速、肛門から腸内を覗き、今は、出血は止まっているようだ。すぐに血液検査(貧血の有無の確認?)に行ってください。その結果でまたお話しましょう。血液検査の後、診察室に戻ると、本日は外来非当番の主治医の先生が居られて、代診の先生からカルテを引き継いで診てくださった。
2.主治医の先生が先ず曰く「小生のデジカメの写真を見て、これは新しい出血です。院内のLANによるパソコン上の血液検査の結果を見ながら、しばらく考えて、貧血状態にはなっていない。内服薬の止血剤と緩便剤で様子を見よう。2月3日の自分の外来当番の日に経過報告に来てください。途中で大量出血があったら土日でも病院に入院して治療して下さい。当番医がいるので分かるようになってます」、小生の質問「食べ物は繊維質がよいのですか? 運動はどの程度?」に対して、「この時期の繊維質の食べ物はマイナス、運動も安静が原則」という答えであった。
小生の不注意で、退院直後にがつがつ食べて体重が1kgもリバウンドしたことが関係ありそうである。やはり、NET情報よりも直接、診察して下さる医師の言葉が貴重である。
オバマ新大統領への期待と懸念
昨日、記載したとおり、入院治療のため当ブログは1週間お休みした。入院中、お見舞いに来て下さった方から「世界」と「文芸春秋」の2冊の雑誌を頂いた。いずれも読み応えのある記事が満載で、入院生活を充実させることができた。当ブログもお借りして重ねて御礼を申し上げたい。「世界:2月号、オバマ新大統領の挑戦−何をどう変えるのか」にも印象に残る記述が沢山あった。それらの概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.「福本容子:経済政策―目指すは資本主義ブランドの改革」では、オバマ大統領が紹介した経済チームの顔ぶれは、財務長官ティモシー・ガイトナー(47)、経済回復諮問会議議長(81)らの主要メンバーは、リベラルでも保守でもない「中道」であり、現実主義者である。有力エコノミスト、官僚出身者で固めており、労働界やウオール街代表のような人物がいないのが特徴である。
2.オバマ氏の「CHANGE」が市場主義や金融資本主義の考え方を大きく修正することを期待してきた人をがっかりさせるだろう。
3.オバマ氏は金融業界関係者からライバル候補者だったマケイン氏を上回る献金を得ている。「CHANGE」を期待した世論をどこまで納得させるかが課題である。
4.「堤未果:チェンジの裏で失われるチョイス」では、アメリカの選挙における天文学的選挙資金に関連して「黒人大統領の誕生イコール誰にもチャンスが開かれたアメリカというのはマスコミが作り出した幻想である」と金融アナリストの発言を紹介している。
5.オバマ氏勝利の最大の勝因は他の候補者との選挙資金の格差とも言える。最終集金額は7億5000万ドルは米国の歴史を塗り替えた。数百万ドルの小口献金が話題になっているが、全部集めても全体の4分の1程度である。企業や団体からの大口献金が圧倒的に多い。上位には、ゴールドマンサックス社、シティグループ、エクシロン社(エネルギー)などが並ぶ。「競馬と同じで、勝ち馬と思えば、そこに献金する。企業は合理的である」と上記金融アナリストの発言を紹介している。
1.「福本容子:経済政策―目指すは資本主義ブランドの改革」では、オバマ大統領が紹介した経済チームの顔ぶれは、財務長官ティモシー・ガイトナー(47)、経済回復諮問会議議長(81)らの主要メンバーは、リベラルでも保守でもない「中道」であり、現実主義者である。有力エコノミスト、官僚出身者で固めており、労働界やウオール街代表のような人物がいないのが特徴である。
2.オバマ氏の「CHANGE」が市場主義や金融資本主義の考え方を大きく修正することを期待してきた人をがっかりさせるだろう。
3.オバマ氏は金融業界関係者からライバル候補者だったマケイン氏を上回る献金を得ている。「CHANGE」を期待した世論をどこまで納得させるかが課題である。
4.「堤未果:チェンジの裏で失われるチョイス」では、アメリカの選挙における天文学的選挙資金に関連して「黒人大統領の誕生イコール誰にもチャンスが開かれたアメリカというのはマスコミが作り出した幻想である」と金融アナリストの発言を紹介している。
5.オバマ氏勝利の最大の勝因は他の候補者との選挙資金の格差とも言える。最終集金額は7億5000万ドルは米国の歴史を塗り替えた。数百万ドルの小口献金が話題になっているが、全部集めても全体の4分の1程度である。企業や団体からの大口献金が圧倒的に多い。上位には、ゴールドマンサックス社、シティグループ、エクシロン社(エネルギー)などが並ぶ。「競馬と同じで、勝ち馬と思えば、そこに献金する。企業は合理的である」と上記金融アナリストの発言を紹介している。
突然の下血の症状があったとき
1月21日(水)から1月27日(火)まで1週間、当ブログはお休みした。1月20日の朝、突然の下血があり便器が血で真っ赤になった。川鉄千葉病院に駆けつけると緊急入院を命じられた。身支度のための帰宅も許可されずそのまま点滴による止血治療を行った。ご参考までに、入院から昨日の退院までの経過の概要を纏めると以下のようになる。
1.大量の下血は貧血で意識を失うこともある。輸血治療をできるだけ避けるためにも入院治療が原則である。
2.下血の原因として、痔の出血、大腸ガンによる出血、憩室の炎症による出血などがあり、それぞれ特徴がある。痔の場合は排便に伴い出血することが多い。大腸ガンの場合、一般的には出血の色は黒ずんでいる。憩室の炎症の場合は、鮮血が排便をしないときにも下血する。感覚的には下痢かなと思ってトイレに駆けつけると便が出ず血だけ出てきたという感じである。
3.今回、病院の開院時間までの1時間の待ち時間に、急遽ネットで調べてみると、憩室の炎症によるものと類似であることがわかったが、進行した大腸がんでも類似の症状があるらしく、最悪のケースも想定して病院に駆けつけた。
4.主治医の先生から、とにかく絶食して点滴による止血と栄養補給で経過を見るとのお話があったが、幸い出血は減ってきた。とにかく毎日、恐る恐る便器を見て胸をなでおろす日が続いた。
5.入院から7日目に、大腸の内視鏡検査を行った。幸い大量出血の原因になるようなガンの腫瘍などは発見されず、ほぼ憩室の炎症による出血であると診断された。確かに、当初平熱より僅かに微熱(36.8度)があり、炎症があったと思われる。自分の場合、憩室が複数個あり、どれが出血の原因かを特定することは出来なかった。
6.大腸の内視鏡検査後、おかゆの食事が与えられた。その後の出血も見られず、自宅で様子を見ることで退院することになった。
7.そもそも憩室(腸の壁面にある窪み)がどうして出来るか、どうして炎症が起きるか、という点に関しては、主治医の先生のお話によれば、年齢が高くなるほどその確率が高くなるとしか言えないそうである。胃の場合には精神的なストレスとの関係がよく言われるが、腸に関してはとくに関係ないらしい。
1.大量の下血は貧血で意識を失うこともある。輸血治療をできるだけ避けるためにも入院治療が原則である。
2.下血の原因として、痔の出血、大腸ガンによる出血、憩室の炎症による出血などがあり、それぞれ特徴がある。痔の場合は排便に伴い出血することが多い。大腸ガンの場合、一般的には出血の色は黒ずんでいる。憩室の炎症の場合は、鮮血が排便をしないときにも下血する。感覚的には下痢かなと思ってトイレに駆けつけると便が出ず血だけ出てきたという感じである。
3.今回、病院の開院時間までの1時間の待ち時間に、急遽ネットで調べてみると、憩室の炎症によるものと類似であることがわかったが、進行した大腸がんでも類似の症状があるらしく、最悪のケースも想定して病院に駆けつけた。
4.主治医の先生から、とにかく絶食して点滴による止血と栄養補給で経過を見るとのお話があったが、幸い出血は減ってきた。とにかく毎日、恐る恐る便器を見て胸をなでおろす日が続いた。
5.入院から7日目に、大腸の内視鏡検査を行った。幸い大量出血の原因になるようなガンの腫瘍などは発見されず、ほぼ憩室の炎症による出血であると診断された。確かに、当初平熱より僅かに微熱(36.8度)があり、炎症があったと思われる。自分の場合、憩室が複数個あり、どれが出血の原因かを特定することは出来なかった。
6.大腸の内視鏡検査後、おかゆの食事が与えられた。その後の出血も見られず、自宅で様子を見ることで退院することになった。
7.そもそも憩室(腸の壁面にある窪み)がどうして出来るか、どうして炎症が起きるか、という点に関しては、主治医の先生のお話によれば、年齢が高くなるほどその確率が高くなるとしか言えないそうである。胃の場合には精神的なストレスとの関係がよく言われるが、腸に関してはとくに関係ないらしい。
生命体を物理学的に追求しようとしたシュレディンガー
「中村量空著:シュレディンガーの思索と生涯、工作舎、1993」を2008年11月09日付けで「シュレディンガーの波動方程式が生まれる思想」と題して紹介した。彼は物理学を通して、物質の解明を行おうとし、ミクロな原子世界の力学の構築が目標であった。当然、突き当たる問題は生命現象である。本書の「第5章:探求への道」にの1節にその辺の様子が述べられている。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.シュレディンガーは、ショーペンハウエルに従って、「無機的なもの」と「有機的なもの」との間に成り立つ対応関係に着目した。両者を「形状」と「素材」という2点から見ると、前者においては「形状」が変化しても「素材」は不変である。後者では「形状」が本質的なものと見なされる。すなわち、両者を区分するのは観察者の視点にほかならない。
2.彼は、物理学の視点から生命を見ようとした。生命を維持している生命細胞を物理学の視点で見たときに、物質世界から生命の世界を以下のように類推する。物質が力学的法則に支配されていくように、生命体も進化の指針に従って生命を維持していく。
3.これを実現する遺伝子を固体のイメージで考えるならば、それは非周期性の結晶のようなものであり、熱運動に妨げられることなく、秩序状態を維持していけるものでなければならない。
4.彼の著書「生命とは何か」で指定しているように、この巨大な分子凝集体遺伝子の実体は、10年のち(1953年)にワトソン・クリックによって、安定な二重らせん構造をもつDNAの分子モデルとして解明された。
5.物理学の視点から見た生物体は、無数の歯車でできた機械時計にほかならない。この多数要素のシステムはかなりの安定性をもち、まるで力学的法則に支配されているかのように、秩序状態を維持している。シュレディンガーはこんなイメージにたどり着いた。
6.しかし、このイメージには重大な欠落があった。機械設計は「自由意志」の欠落した抜け殻なのか?機械設計と自由意志という、二律背反を解決するために、精神とは何かの解明に向かっている。
シュレーディンガーの思索と生涯―波動のパラダイムを求めて
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1.シュレディンガーは、ショーペンハウエルに従って、「無機的なもの」と「有機的なもの」との間に成り立つ対応関係に着目した。両者を「形状」と「素材」という2点から見ると、前者においては「形状」が変化しても「素材」は不変である。後者では「形状」が本質的なものと見なされる。すなわち、両者を区分するのは観察者の視点にほかならない。
2.彼は、物理学の視点から生命を見ようとした。生命を維持している生命細胞を物理学の視点で見たときに、物質世界から生命の世界を以下のように類推する。物質が力学的法則に支配されていくように、生命体も進化の指針に従って生命を維持していく。
3.これを実現する遺伝子を固体のイメージで考えるならば、それは非周期性の結晶のようなものであり、熱運動に妨げられることなく、秩序状態を維持していけるものでなければならない。
4.彼の著書「生命とは何か」で指定しているように、この巨大な分子凝集体遺伝子の実体は、10年のち(1953年)にワトソン・クリックによって、安定な二重らせん構造をもつDNAの分子モデルとして解明された。
5.物理学の視点から見た生物体は、無数の歯車でできた機械時計にほかならない。この多数要素のシステムはかなりの安定性をもち、まるで力学的法則に支配されているかのように、秩序状態を維持している。シュレディンガーはこんなイメージにたどり着いた。
6.しかし、このイメージには重大な欠落があった。機械設計は「自由意志」の欠落した抜け殻なのか?機械設計と自由意志という、二律背反を解決するために、精神とは何かの解明に向かっている。
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