2009年06月
2009年06月30日
欧米に比べて日本の地デジ化が遅れている理由
2009-6-1付けの日経産業新聞onlineに「関口和一産業部編集委員:米国で完全地デジ化がうまくいった訳」の記事が配信されている。日本の問題点なども含めて分かり易く解説されている。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.日本の地上放送やBS放送の完全デジタル化まであと2年1カ月となった。米国でも今年6月12日に地上アナログ放送の送信が完全になくなった。今のところ混乱はなく順調である。
2.米国ではアナログ放送の終了段階で約200万世帯がまだデジタル放送の受信機を持っていなかった。テレビがいきなり映らなくなるわけで、もし日本で同じことをすれば大きな社会問題になる。米政府は希望する世帯全部に、デジタル放送を視聴するためのテレビの受信コンバーター(変換器)を購入できるクーポン券を配布した。その後は視聴者の個人の責任として見切り発車した。日本のようなクレーム社会(国情)ではそうした乱暴なやり方は通らないと思われる。
3.米国より5年遅れて2003年12月に地上放送のデジタル化を始めた日本は、2011年7月24日に移行を終了する。総務省やNHKなどの告知活動により、日本でもようやくアナログ放送が終了することが認知され始めている。それでも自分のテレビがいきなり使えなくなることに対しては不満の声は出る。特に高齢者世帯や生活保護世帯ではテレビを買い替える余裕がないという不満が予想される。
4.総務省の調査では、地上デジタル放送を受信できるテレビやチューナーを購入した世帯は60%を超えている。ただし、1台でもデジタル受信機を購入すれば、この数字に数えられるため、テレビ全体の普及台数をベースに考えると、デジタル受信機の普及率は3割を超えた程度と考えられる。
5.地デジ対応テレビを普及させるための苦肉の策が、補正予算による「エコポイント」の制度だ。薄型テレビのみポイントを2倍にしており、2000億円を薄型テレビの購入に振り向け、エコポイントによる薄型テレビの購入目標は約1500万台で、これを合算すれば、制度が終了する来年3月末には地デジの世帯普及率を8割以上になると計算している。
6.米国では70%の世帯はケーブルテレビ局経由であり、これに衛星放送の受信世帯を加えると87%に達する。ケーブル局や衛星放送局も当然、デジタル化を進めており、これらの世帯はあえてテレビを買い替えなくてもデジタル放送を受信できた。問題は地上波で受信していた13%の世帯で、政府は所得や家族構成に関係なく、希望する世帯にはコンバーターを購入できる40ドル相当のクーポン券を2枚まで配った。発行総数は5300万枚に上り、うち約半分がこれまでに使われた。
7.日本でもケーブル局経由でテレビを視聴している世帯は4割を超えるが、高齢者の多い農村部などではアンテナによる地上波の受信が大勢を占める。総務省は最後に残る生活保護世帯などには地デジを受信できる専用チューナーを配る計画で、アナログ放送の停波に向け、受信できない世帯を極力最小限に減らす、としている。
8.そもそも放送をなぜデジタル化しなければならないのか、という疑問がある。地デジにすれば、ハイビジョン映像や多チャンネル放送が楽しめると宣伝するが、自分はそうした高付加価値サービスは望んでいない、という視聴者もいる。
9.放送のデジタル化の本当の狙いは周波数の有効活用にある。テレビ放送にはVHF波、UHF波合わせ、370メガヘルツもの帯域を充てている。アナログ放送は混信を避けるため、偶数チャンネルだけを使うなど、半分を無駄にしている。デジタル化すれば無駄を取り、全体の帯域を6割強の240メガヘルツに縮小できる。
10.テレビで使っている周波数の高いほうは携帯電話の周波数帯とも重なっている。携帯電話利用者の急激な増大により、テレビの電波を携帯電話などの新しい通信サービスに振り向ければ、公共の電波を有効に活用できる。映像がきれいになるだけなら、わざわざデジタル化する必要はないが、国民財産の有効活用を進めるのが放送のデジタル化の真の狙いというわけである。
11.日本では地上放送のデジタル化で130メガヘルツの帯域が空きができる。これを携帯電話事業者や新しいマルチメディア放送、ITS(高度道路交通システム)などに割り振る計画がある。
12.米国でも空いた周波数をベライゾン・ワイヤレスやAT&Tワイヤレスなど携帯電話事業者に割り当てた。電波をオークションにかけ、700メガヘルツ帯の割り当てでは実に200億ドル(約2兆円)近い収入を上げた。デジタル放送のコンバーターのクーポン券代などに約20億ドル(約2000億円)の予算を充てたが、そのお金もここから捻出した。電波を有効活用し、国民に還元したともいえる。
13.日本では「電波は公共のもの」としてオークションにはなじまないというのが総務省の見解である。周波数の割り当ても事業者の計画を審査し、内容によって免許を与える審査方式を採用するという相変わらずの許認可行政である。日本はこの分野でも遅れている。米国より前に、欧州ではオランダ、フィンランド、スウェーデン、スイス、ドイツがデジタル化を終えている。
(日本は行政が許認可権にこだわり、新技術の導入を遅らせることによる、いわゆる官製不況が多く見られるが、これもその一例と思われる)
1.日本の地上放送やBS放送の完全デジタル化まであと2年1カ月となった。米国でも今年6月12日に地上アナログ放送の送信が完全になくなった。今のところ混乱はなく順調である。
2.米国ではアナログ放送の終了段階で約200万世帯がまだデジタル放送の受信機を持っていなかった。テレビがいきなり映らなくなるわけで、もし日本で同じことをすれば大きな社会問題になる。米政府は希望する世帯全部に、デジタル放送を視聴するためのテレビの受信コンバーター(変換器)を購入できるクーポン券を配布した。その後は視聴者の個人の責任として見切り発車した。日本のようなクレーム社会(国情)ではそうした乱暴なやり方は通らないと思われる。
3.米国より5年遅れて2003年12月に地上放送のデジタル化を始めた日本は、2011年7月24日に移行を終了する。総務省やNHKなどの告知活動により、日本でもようやくアナログ放送が終了することが認知され始めている。それでも自分のテレビがいきなり使えなくなることに対しては不満の声は出る。特に高齢者世帯や生活保護世帯ではテレビを買い替える余裕がないという不満が予想される。
4.総務省の調査では、地上デジタル放送を受信できるテレビやチューナーを購入した世帯は60%を超えている。ただし、1台でもデジタル受信機を購入すれば、この数字に数えられるため、テレビ全体の普及台数をベースに考えると、デジタル受信機の普及率は3割を超えた程度と考えられる。
5.地デジ対応テレビを普及させるための苦肉の策が、補正予算による「エコポイント」の制度だ。薄型テレビのみポイントを2倍にしており、2000億円を薄型テレビの購入に振り向け、エコポイントによる薄型テレビの購入目標は約1500万台で、これを合算すれば、制度が終了する来年3月末には地デジの世帯普及率を8割以上になると計算している。
6.米国では70%の世帯はケーブルテレビ局経由であり、これに衛星放送の受信世帯を加えると87%に達する。ケーブル局や衛星放送局も当然、デジタル化を進めており、これらの世帯はあえてテレビを買い替えなくてもデジタル放送を受信できた。問題は地上波で受信していた13%の世帯で、政府は所得や家族構成に関係なく、希望する世帯にはコンバーターを購入できる40ドル相当のクーポン券を2枚まで配った。発行総数は5300万枚に上り、うち約半分がこれまでに使われた。
7.日本でもケーブル局経由でテレビを視聴している世帯は4割を超えるが、高齢者の多い農村部などではアンテナによる地上波の受信が大勢を占める。総務省は最後に残る生活保護世帯などには地デジを受信できる専用チューナーを配る計画で、アナログ放送の停波に向け、受信できない世帯を極力最小限に減らす、としている。
8.そもそも放送をなぜデジタル化しなければならないのか、という疑問がある。地デジにすれば、ハイビジョン映像や多チャンネル放送が楽しめると宣伝するが、自分はそうした高付加価値サービスは望んでいない、という視聴者もいる。
9.放送のデジタル化の本当の狙いは周波数の有効活用にある。テレビ放送にはVHF波、UHF波合わせ、370メガヘルツもの帯域を充てている。アナログ放送は混信を避けるため、偶数チャンネルだけを使うなど、半分を無駄にしている。デジタル化すれば無駄を取り、全体の帯域を6割強の240メガヘルツに縮小できる。
10.テレビで使っている周波数の高いほうは携帯電話の周波数帯とも重なっている。携帯電話利用者の急激な増大により、テレビの電波を携帯電話などの新しい通信サービスに振り向ければ、公共の電波を有効に活用できる。映像がきれいになるだけなら、わざわざデジタル化する必要はないが、国民財産の有効活用を進めるのが放送のデジタル化の真の狙いというわけである。
11.日本では地上放送のデジタル化で130メガヘルツの帯域が空きができる。これを携帯電話事業者や新しいマルチメディア放送、ITS(高度道路交通システム)などに割り振る計画がある。
12.米国でも空いた周波数をベライゾン・ワイヤレスやAT&Tワイヤレスなど携帯電話事業者に割り当てた。電波をオークションにかけ、700メガヘルツ帯の割り当てでは実に200億ドル(約2兆円)近い収入を上げた。デジタル放送のコンバーターのクーポン券代などに約20億ドル(約2000億円)の予算を充てたが、そのお金もここから捻出した。電波を有効活用し、国民に還元したともいえる。
13.日本では「電波は公共のもの」としてオークションにはなじまないというのが総務省の見解である。周波数の割り当ても事業者の計画を審査し、内容によって免許を与える審査方式を採用するという相変わらずの許認可行政である。日本はこの分野でも遅れている。米国より前に、欧州ではオランダ、フィンランド、スウェーデン、スイス、ドイツがデジタル化を終えている。
(日本は行政が許認可権にこだわり、新技術の導入を遅らせることによる、いわゆる官製不況が多く見られるが、これもその一例と思われる)
少年よ大志を抱け!が聞かれなくなったわけ?
「大前研一著:知の衰退からいかに脱出するか?そうだ!僕はユニークな生き方をしよう!!、光文社、2009年」の「第6章:無欲な若者と学力低下」を読んで驚いた。漠然と心配はしていたが実際に外国の若者と比較してデータ示されるとやっぱりかと心配になってくる。事例の幾つかの概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.現代を生きる日本人、とりわけ29歳以下の一般の若者たちを見ていると一昔前とすっかり変わってしまった。バブル崩壊が始まった1989年に10歳として今の29歳くらいの若者は日本の未来に対して希望を持てるようなニュースに接していない。
2.今の高校生は親元にいても自分のパソコンを持っていない。日米中韓の高校生で比較すると、日本の高校生の96%は携帯を持っているが、パソコンはたったの21%で、アメリカの高校生の61%の3分の1である。日本の高校生の欲しいものは携帯だけで得られる世界だけである。
3.日本の若者の国際志向といっても旅行として海外に行くことしか興味を持たない。昔のように何でも見てやろうと、日本を飛び出す日本の若者が少なくなっている。世界各地で出会うリュックを背負ったバックパッカーたちの中に日本の姿を見つけるのは稀になった。
4.欧米への留学生の数も減り、アジア人留学生と言えば中国人、韓国人留学生を指すようになっている。商社の新卒者ですら近頃は海外勤務希望者は減り続け、海外出張は大喜びだが転勤は勘弁という社員が増えている、
5.クラーク博士の「少年よ大志を抱け!」はいつの時代にも大きな飛躍の原動力となってきたが、今の時代の若者にそれが感じられない。
(自分の北大の後輩たちと話をしていてもロマンを感じさせない。多分、昔はなかったセンター試験などが出来て、大学の偏差値ランキングで北大のクラーク精神への誇りなんか過去のものになってしまったのかもしれない。北大出身の毛利さんが最初の宇宙飛行士になったが、後に続くのは東大卒の公務員的宇宙飛行士ばかりでつまらない)
「知の衰退」からいかに脱出するか?
クチコミを見る
1.現代を生きる日本人、とりわけ29歳以下の一般の若者たちを見ていると一昔前とすっかり変わってしまった。バブル崩壊が始まった1989年に10歳として今の29歳くらいの若者は日本の未来に対して希望を持てるようなニュースに接していない。
2.今の高校生は親元にいても自分のパソコンを持っていない。日米中韓の高校生で比較すると、日本の高校生の96%は携帯を持っているが、パソコンはたったの21%で、アメリカの高校生の61%の3分の1である。日本の高校生の欲しいものは携帯だけで得られる世界だけである。
3.日本の若者の国際志向といっても旅行として海外に行くことしか興味を持たない。昔のように何でも見てやろうと、日本を飛び出す日本の若者が少なくなっている。世界各地で出会うリュックを背負ったバックパッカーたちの中に日本の姿を見つけるのは稀になった。
4.欧米への留学生の数も減り、アジア人留学生と言えば中国人、韓国人留学生を指すようになっている。商社の新卒者ですら近頃は海外勤務希望者は減り続け、海外出張は大喜びだが転勤は勘弁という社員が増えている、
5.クラーク博士の「少年よ大志を抱け!」はいつの時代にも大きな飛躍の原動力となってきたが、今の時代の若者にそれが感じられない。
(自分の北大の後輩たちと話をしていてもロマンを感じさせない。多分、昔はなかったセンター試験などが出来て、大学の偏差値ランキングで北大のクラーク精神への誇りなんか過去のものになってしまったのかもしれない。北大出身の毛利さんが最初の宇宙飛行士になったが、後に続くのは東大卒の公務員的宇宙飛行士ばかりでつまらない)
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2009年06月28日
太平洋戦争は日本政府が引き起こしたもので、国民は犠牲者であることを忘れてはならない
「世界7月号」の益川俊英氏へのインタビュー記事「科学者と憲法九条」は、ノーベル賞受賞講演で述べた自らの被災体験「自国が引き起こした悲惨で無謀な戦争」をテーマにして、科学者の平和への思いについて語っている。印象に残る記述の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.戦争の記憶を伝えることは、あの戦争の時代に生きて戦争を経験した世代の人間としての責任である。あのような思いを自分たちの孫の世代に味あわせたくない。益川氏は、あの戦争は政府が引き起こした戦争だと言ってきた。親父の家具職人としての仕事をする工場もあの戦争で無残に壊され、仕事も失った。(自分の父も国の方針で鉱物資源を探しに満州に渡り、終戦後シベリアに抑留された。あの時の政府の責任者は官僚出身の岸信介であり責任は重い。その後、佐藤栄作、安倍晋三らの親族も国の指導者になった。政府が引き起こした戦争の責任を、指導者たちは国民に謝罪し、多くの国民と同様に地位も財産もゼロにして終戦後スタートするべきであった。それが真の国の指導者である)
2.益川氏の恩師の坂田昌一氏は、学者は平和の問題に無関心であってはならないと常に言っていた。(今回のノーベル賞受賞で影響の大きな坂田先生のことにメディアは極端に触れなかった。左翼的な言動が日本の高度成長期に邪魔だったという風潮をi今も引きずっているようだが、坂田先生はそんな安っぽい学者ではない)
3.1980年以降、日本には平和運動が大きな盛り上ががない。しかし、今本格的に憲法九条を変えようという動きが出てきたら、改憲に反対する動きが全国どこからも湧き上がってくることを信じている。改憲を進めようとする側は大きな火傷を負うことになる。益川氏もそのときは今のように恐る恐る語るのでなく、腹をくくる覚悟はあると明言している。
4.どんな時でも戦争はさけれられる。九条の問題を矮小化して議論することに誤魔化されてはいけない。九条の問題の本質は、この国を戦争のできる国にするのかしないのかにつきる。本質をはずしてはいけない。ソマリア沖で海賊船に遭遇しても自衛隊が先に撃つことができないのは九条があるからである。改憲論はいろいろな理由をつけて先に撃つことを認めさせることである。戦争は無理やりに、武力をもってこちらの言い分を相手に押し付ける行為である。
5.200年たったら地球上から戦争はなくなる。アメリカだって50年前には人種差別で多くの黒人が殺された。それ以前にも地球のいたるところにあった植民地も表面上は存在しなくなった。ラテンアメリカも自主的な政府が多数派になっている。人間は進歩している。
1.戦争の記憶を伝えることは、あの戦争の時代に生きて戦争を経験した世代の人間としての責任である。あのような思いを自分たちの孫の世代に味あわせたくない。益川氏は、あの戦争は政府が引き起こした戦争だと言ってきた。親父の家具職人としての仕事をする工場もあの戦争で無残に壊され、仕事も失った。(自分の父も国の方針で鉱物資源を探しに満州に渡り、終戦後シベリアに抑留された。あの時の政府の責任者は官僚出身の岸信介であり責任は重い。その後、佐藤栄作、安倍晋三らの親族も国の指導者になった。政府が引き起こした戦争の責任を、指導者たちは国民に謝罪し、多くの国民と同様に地位も財産もゼロにして終戦後スタートするべきであった。それが真の国の指導者である)
2.益川氏の恩師の坂田昌一氏は、学者は平和の問題に無関心であってはならないと常に言っていた。(今回のノーベル賞受賞で影響の大きな坂田先生のことにメディアは極端に触れなかった。左翼的な言動が日本の高度成長期に邪魔だったという風潮をi今も引きずっているようだが、坂田先生はそんな安っぽい学者ではない)
3.1980年以降、日本には平和運動が大きな盛り上ががない。しかし、今本格的に憲法九条を変えようという動きが出てきたら、改憲に反対する動きが全国どこからも湧き上がってくることを信じている。改憲を進めようとする側は大きな火傷を負うことになる。益川氏もそのときは今のように恐る恐る語るのでなく、腹をくくる覚悟はあると明言している。
4.どんな時でも戦争はさけれられる。九条の問題を矮小化して議論することに誤魔化されてはいけない。九条の問題の本質は、この国を戦争のできる国にするのかしないのかにつきる。本質をはずしてはいけない。ソマリア沖で海賊船に遭遇しても自衛隊が先に撃つことができないのは九条があるからである。改憲論はいろいろな理由をつけて先に撃つことを認めさせることである。戦争は無理やりに、武力をもってこちらの言い分を相手に押し付ける行為である。
5.200年たったら地球上から戦争はなくなる。アメリカだって50年前には人種差別で多くの黒人が殺された。それ以前にも地球のいたるところにあった植民地も表面上は存在しなくなった。ラテンアメリカも自主的な政府が多数派になっている。人間は進歩している。
新千葉市長(31歳)の出現は明治時代の福沢諭吉(当時20代)を連想させる
2009/06/26付けの大前研一さんの「ニュースの視点」は「千葉市長選〜志高く勤勉な若者が活躍できる土壌を作れ」は、千葉市に住む自分にとっても非常に心強い内容の記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.収賄罪で起訴された鶴岡啓一前市長の辞職に伴う千葉市長選は6月14日投開票され、民主党が推薦する無所属新人の前市議、熊谷俊人氏(31)が初当選した。投票率は43.50%で、2005年の前回選挙を6.30ポイント上回る結果となった。
2.前職が汚職で失脚したというのに、その後釜として前副市長というナンバー2の立場だった林孝二郎氏(63)を擁立したこと自体、自民・公明両党の戦略ミスだといわざるを得ない。
3.今回当選を果たした熊谷俊人氏は、NPO法人・政策学校の「一新塾」の出身である。2006年5月から1年間「一新塾」に所属し、政治活動についてきちんと勉強しているというのは、評価に値する。実際、熊谷氏が「一新塾」で学んでいたということが、いくつかのマスコミでも取り上げられており、まじめに政治について研鑽を積んでいたというアピールポイントになっている。
4.「議員パスで新幹線のグリーン車に乗れるのが嬉しい」などと発言してしまう議員や、タレント出身で政治についてまともに勉強したことがない人たちと比べると、その違いは一目瞭然と言える。
5.「一新塾」は「理想を語り、 政策を論じ、自らが行動し社会創造のプロセスに参加してゆく『主体的市民』を作る」ことを目的に、1994年に大前研一氏が創設したものである。現在でも同氏は資金を提供しているが、組織自体はNPO法人として活動している。
6.これまでに「一新塾」から国会議員は5名、現職の地方議員は67名を輩出している。その実績は客観的に見ても評価に値すると感じている。「一新塾」出身者は創設から15年間で3000名を超えるほどになっている。さらにこの3000名の中から、熊谷氏のような若い世代が活躍してくれることを、大前氏は大いに期待している。
かつての大前氏の事務所「大前研一事務所」の出身者も、その多くが議員になって活動している。
7.31歳という全国で最も若い熊谷氏の市長当選を受けて、明治維新の頃活躍した「人材」について考えさせられた。明治維新を先導し、日本を近代国家へと導く変革を成し遂げた人たちの多くは、20代という若さであった。例えば、1860年に日米修好通商条約の批准書を携えた遣米使節に随行した咸臨丸には、福澤諭吉など、後に日本の発展に大きな貢献をした人物も乗船していた。
8.福澤は当時20代の若者であった。大前氏は、当時の為政者が日本の近代化を担う「人材」となる若者を見つけ出したのかという点に非常に興味を持っている。当時の渡米は、ある意味、命がけと言っても良かった。そのような危険な渡米だったからこそ、国家の将来を担う人材として、その人選は厳しかったのではないかと想像できる。
9.おそらく10代の頃には頭角を現していたような人でなければ、咸臨丸への乗船を推挙されることはなかったと思う。そのような稀有な人材をいかにして見つけ出すことが出来たのか? その人材選定のノウハウに関するドキュメントとして残っていない。
10.この150年の歴史を紐解いてみると、日本が大きく変革する時代には、20代の若者が大きく活躍している。松下幸之助氏や本田宗一郎氏なども、20代のうちに起業し、30代の頃には、すでに組織の骨格を作り上げて固めることに成功している。
11.日本の場合には、これまでの150年間で2回の大きな変革期を体験したと言える。3回目の機会はITバブルの崩壊で空振りに終わり、残念ながら上手くいっていない。今、「一新塾」出身者を見ていると、30歳前後で積極的に手を上げて、どんどんと活躍の場を広げていこうとしている。
12.大前氏自身、そんな彼らの活動を見て「一新塾」を創って良かったと感じている。「一新塾」は「自ら社会創造のプロセスに参加する主体的な市民を作る」という目的からスタートしている。それが1つ1つ形になってきている。これからの日本の変革期う人材として、ぜひ活躍してもらいたい。
13.千葉市長に当選した熊谷氏は、千葉都市モノレールの社長公募を検討するなど、色々と新しい試みを始めている。ただ、財政事情が厳しい千葉市には取り組むべき問題が山積している。それらの問題解決の任に堪えられるかどうか、これからが熊谷氏の真価を問われる。
1.収賄罪で起訴された鶴岡啓一前市長の辞職に伴う千葉市長選は6月14日投開票され、民主党が推薦する無所属新人の前市議、熊谷俊人氏(31)が初当選した。投票率は43.50%で、2005年の前回選挙を6.30ポイント上回る結果となった。
2.前職が汚職で失脚したというのに、その後釜として前副市長というナンバー2の立場だった林孝二郎氏(63)を擁立したこと自体、自民・公明両党の戦略ミスだといわざるを得ない。
3.今回当選を果たした熊谷俊人氏は、NPO法人・政策学校の「一新塾」の出身である。2006年5月から1年間「一新塾」に所属し、政治活動についてきちんと勉強しているというのは、評価に値する。実際、熊谷氏が「一新塾」で学んでいたということが、いくつかのマスコミでも取り上げられており、まじめに政治について研鑽を積んでいたというアピールポイントになっている。
4.「議員パスで新幹線のグリーン車に乗れるのが嬉しい」などと発言してしまう議員や、タレント出身で政治についてまともに勉強したことがない人たちと比べると、その違いは一目瞭然と言える。
5.「一新塾」は「理想を語り、 政策を論じ、自らが行動し社会創造のプロセスに参加してゆく『主体的市民』を作る」ことを目的に、1994年に大前研一氏が創設したものである。現在でも同氏は資金を提供しているが、組織自体はNPO法人として活動している。
6.これまでに「一新塾」から国会議員は5名、現職の地方議員は67名を輩出している。その実績は客観的に見ても評価に値すると感じている。「一新塾」出身者は創設から15年間で3000名を超えるほどになっている。さらにこの3000名の中から、熊谷氏のような若い世代が活躍してくれることを、大前氏は大いに期待している。
かつての大前氏の事務所「大前研一事務所」の出身者も、その多くが議員になって活動している。
7.31歳という全国で最も若い熊谷氏の市長当選を受けて、明治維新の頃活躍した「人材」について考えさせられた。明治維新を先導し、日本を近代国家へと導く変革を成し遂げた人たちの多くは、20代という若さであった。例えば、1860年に日米修好通商条約の批准書を携えた遣米使節に随行した咸臨丸には、福澤諭吉など、後に日本の発展に大きな貢献をした人物も乗船していた。
8.福澤は当時20代の若者であった。大前氏は、当時の為政者が日本の近代化を担う「人材」となる若者を見つけ出したのかという点に非常に興味を持っている。当時の渡米は、ある意味、命がけと言っても良かった。そのような危険な渡米だったからこそ、国家の将来を担う人材として、その人選は厳しかったのではないかと想像できる。
9.おそらく10代の頃には頭角を現していたような人でなければ、咸臨丸への乗船を推挙されることはなかったと思う。そのような稀有な人材をいかにして見つけ出すことが出来たのか? その人材選定のノウハウに関するドキュメントとして残っていない。
10.この150年の歴史を紐解いてみると、日本が大きく変革する時代には、20代の若者が大きく活躍している。松下幸之助氏や本田宗一郎氏なども、20代のうちに起業し、30代の頃には、すでに組織の骨格を作り上げて固めることに成功している。
11.日本の場合には、これまでの150年間で2回の大きな変革期を体験したと言える。3回目の機会はITバブルの崩壊で空振りに終わり、残念ながら上手くいっていない。今、「一新塾」出身者を見ていると、30歳前後で積極的に手を上げて、どんどんと活躍の場を広げていこうとしている。
12.大前氏自身、そんな彼らの活動を見て「一新塾」を創って良かったと感じている。「一新塾」は「自ら社会創造のプロセスに参加する主体的な市民を作る」という目的からスタートしている。それが1つ1つ形になってきている。これからの日本の変革期う人材として、ぜひ活躍してもらいたい。
13.千葉市長に当選した熊谷氏は、千葉都市モノレールの社長公募を検討するなど、色々と新しい試みを始めている。ただ、財政事情が厳しい千葉市には取り組むべき問題が山積している。それらの問題解決の任に堪えられるかどうか、これからが熊谷氏の真価を問われる。
2009年06月26日
市場を政治でコントロールする経済社会とは?
「世界7月号」の宇沢弘文・内橋克人の連載対談「新しい経済学は可能か:始まっている未来」で内橋氏が述べている「市場を道具として使いこなす」は含蓄があって面白い。普通の経済学者の発想にはないユニークな考え方である。各々の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.スエーデン・ベクショーの例を挙げている。地球全体が再生可能エネルギーとコジェネレーション(熱電供給)システムで化石燃料消費をゼロにする目標を掲げて着々と実績をあげている。そこでも市場はむしろ道具として使っている。
2.デンマークの例では、電力エネルギーを買うときにグリーン証書も買う。グリーン証書はいつでも必要なときに市場を通して売ることができる。デンマークは食糧自給率が300%で、国内で余った200%はアフリカの食糧貧窮国の支援にあてている。エネルギーも再生可能エネルギーへの転換によってオイルショック時の自給率1.5%から120%に、実に約100倍にまで高めている(実際は北海油田が寄与している)、有権者の3-4割は「市民共同発電方式」で発電会社に資本参加している。
3.日本では電力会社の既得権が障害になっているが、デンマークでは市民の手によって生み出された電力は必ず配電会社が購入しなければならない。しかも、その配電会社が一般消費者に売る価格の80%以上で買い取らなければならない。企業が発電した電力は70%以下の買い取り価格でもよいというように市場に規制をかけている。デンマーク全体の再生可能エネルギーによる自給率を何時までに何十%まで引き上げるという目標を設定し、そのゴールに向けて市場をコントロールしている。
4.家電製品の例では「エナジーラベル」という制度がある。洗濯機の場合、
A.値段が安いがエネルギー効率が低い、B.エネルギー効率は高いが研究開発コストがかかっているので価格が高い、などと4段階のラベルが付いている。消費者の中で「自覚的な消費者」が地球環境問題を考えて、Dを買う。政府も専門家もDを買う人を奨励し一般市民を徐々に啓発していく。Dがやがて量産効果を持つようになっていつの間にかAより安くなる。この形は市場メカニズムに振り回されずに、逆に市場メカニズムを巧みに利用している。
5.自覚的消費者を育て上げることを通じて、地域社会の本当の意味の環境意識を高めながら、市場の機能を逆に使いこなしていく。市場に使われるのではなく、人間が主体になる経済社会が可能になり、人間の尊厳のある働き方を守っていける。
(なんとなく論理が飛躍しているよだが、内橋氏の目指すところは分かるような気もする)
1.スエーデン・ベクショーの例を挙げている。地球全体が再生可能エネルギーとコジェネレーション(熱電供給)システムで化石燃料消費をゼロにする目標を掲げて着々と実績をあげている。そこでも市場はむしろ道具として使っている。
2.デンマークの例では、電力エネルギーを買うときにグリーン証書も買う。グリーン証書はいつでも必要なときに市場を通して売ることができる。デンマークは食糧自給率が300%で、国内で余った200%はアフリカの食糧貧窮国の支援にあてている。エネルギーも再生可能エネルギーへの転換によってオイルショック時の自給率1.5%から120%に、実に約100倍にまで高めている(実際は北海油田が寄与している)、有権者の3-4割は「市民共同発電方式」で発電会社に資本参加している。
3.日本では電力会社の既得権が障害になっているが、デンマークでは市民の手によって生み出された電力は必ず配電会社が購入しなければならない。しかも、その配電会社が一般消費者に売る価格の80%以上で買い取らなければならない。企業が発電した電力は70%以下の買い取り価格でもよいというように市場に規制をかけている。デンマーク全体の再生可能エネルギーによる自給率を何時までに何十%まで引き上げるという目標を設定し、そのゴールに向けて市場をコントロールしている。
4.家電製品の例では「エナジーラベル」という制度がある。洗濯機の場合、
A.値段が安いがエネルギー効率が低い、B.エネルギー効率は高いが研究開発コストがかかっているので価格が高い、などと4段階のラベルが付いている。消費者の中で「自覚的な消費者」が地球環境問題を考えて、Dを買う。政府も専門家もDを買う人を奨励し一般市民を徐々に啓発していく。Dがやがて量産効果を持つようになっていつの間にかAより安くなる。この形は市場メカニズムに振り回されずに、逆に市場メカニズムを巧みに利用している。
5.自覚的消費者を育て上げることを通じて、地域社会の本当の意味の環境意識を高めながら、市場の機能を逆に使いこなしていく。市場に使われるのではなく、人間が主体になる経済社会が可能になり、人間の尊厳のある働き方を守っていける。
(なんとなく論理が飛躍しているよだが、内橋氏の目指すところは分かるような気もする)