2010年05月
政治という概念はギリシャで生まれたポリスが原型
5月26日付の「魚の目」の佐藤優氏の記事の紹介の続きである。マックス・ウエーバの思想から政治権力を見るとどうなるかが解説されている。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ドイツの近代の学生達の考え方は、今の日本の民主党の感覚に似ている。マルクス・レーニン主義ではないけれども、新自由主義的な形で格差が拡大している、こういうのはおかしい。伝統にもそこそこ関心を持つけれど、知的な世界にも関心がある。これが新カント派と結びつく。
2.新カント派の人たちは、科学には二通りある。一つは自然科学で物理や化学は実験ができ、そこで法則を見付けていくような法則定立的な科学である。それに対して政治学とか歴史学、法学は実験ができない。仮に実験ができても社会実験は繰り返しができない。だから頭の中でモデルを作って頭の中で考える思考実験をする。思考実験しかできないところで個性を記述する科学を新カント派は考えた。
3.当時、ドイツが大変なインフレでになった。第1次世界大戦直後で。今のお金でいうと、日本から1万円くらい持っていけば50万、60万の価値があった。当時日本人は国費留学では1カ月、今の日本円の感覚で00万円くらい使った。1カ月に数千万円くらいの書籍代を持っていたので、帰国の時に、荷物用に船室を借りた。当時留学していた人はドイツのインフレを利用して大量の本を買って、ただみたいな値段で家庭教師をつけた。当時、主流だった発想が新カント派なので日本の学会は帝大を中心に新カント派の考え方が強くなった。
4.政治という概念はギリシャから出てきた。ギリシャ以外に政治という考え方はなかった。政治をポリスといい、これは政治と訳しても国家と訳しても通じる。政治と対立する概念にギリシャ語のオイコスがある。オイキクメニエ、エコノミー、経済などはオイコスからきている。本来は家という意味である。
5.古代ギリシャのポリスにおいて政治に従事する人は、古代ギリシャの奴隷と市民の中の、市民の貴族と平民がポリスで政治に従事した。女性は市民になれなかった。ポリスにおいて適用されるルールをギリシャ語でノモスという。カール・シュミットの『大地のノモス』という本があるが、ノモスというのは通常、法と訳されている。したがって、法というのは社会全体の中のごく一部しか通用しない。
6.オイコスのルールは、法じゃない。ビアという基幹原理があった。ビアとは暴力である。奴隷は所有物だから、言うことを聞かなければ、鞭打っても殺しても構わない。女性は言うことを聞かなければ殴ってもいい。家庭のなかにおいて適用されるルールが暴力である。ドメスティックバイオレンスの根があったのでフェミニストによる知の男権性、暴力性批判が出てきた。
7.このような社会の基本形から政治というものが生まれてきた。このポリスのノモスの中にも最終的には強制権力という形で暴力が入ってくる。マックス・ウェーバーは神学的知識をもっていた。佐藤氏は基礎教育がプロテスタント神学で、ギリシャ語を学ぶ。そのギリシャ語を学ぶ中で政治の概念、経済の概念を学んだ。日本の政治学や法学ではあまり学ぶ機会がない。ヨーロッパで政治学や法学を専攻する人は、基礎で必ず哲学を学ぶ。それは、哲学では概念を押さえることが重要だからである。民法と刑法が分かれるというのも、オイコスとポリスという二項対立の図式があるからである。これは日本人にはよくわからない。それは皮膚感覚としてこの種の規範原理が混沌としているのが日本文化の特徴だからである。
(民主党の鳩山・小沢氏を批判する野党や与党内部の一部の人、テレビや大新聞のメディアの幹部達は規範原理の無い感覚の人が多い。日本文化の中で正しい政治を行うことの難しさが最近の情勢からもよくわかる)
1.ドイツの近代の学生達の考え方は、今の日本の民主党の感覚に似ている。マルクス・レーニン主義ではないけれども、新自由主義的な形で格差が拡大している、こういうのはおかしい。伝統にもそこそこ関心を持つけれど、知的な世界にも関心がある。これが新カント派と結びつく。
2.新カント派の人たちは、科学には二通りある。一つは自然科学で物理や化学は実験ができ、そこで法則を見付けていくような法則定立的な科学である。それに対して政治学とか歴史学、法学は実験ができない。仮に実験ができても社会実験は繰り返しができない。だから頭の中でモデルを作って頭の中で考える思考実験をする。思考実験しかできないところで個性を記述する科学を新カント派は考えた。
3.当時、ドイツが大変なインフレでになった。第1次世界大戦直後で。今のお金でいうと、日本から1万円くらい持っていけば50万、60万の価値があった。当時日本人は国費留学では1カ月、今の日本円の感覚で00万円くらい使った。1カ月に数千万円くらいの書籍代を持っていたので、帰国の時に、荷物用に船室を借りた。当時留学していた人はドイツのインフレを利用して大量の本を買って、ただみたいな値段で家庭教師をつけた。当時、主流だった発想が新カント派なので日本の学会は帝大を中心に新カント派の考え方が強くなった。
4.政治という概念はギリシャから出てきた。ギリシャ以外に政治という考え方はなかった。政治をポリスといい、これは政治と訳しても国家と訳しても通じる。政治と対立する概念にギリシャ語のオイコスがある。オイキクメニエ、エコノミー、経済などはオイコスからきている。本来は家という意味である。
5.古代ギリシャのポリスにおいて政治に従事する人は、古代ギリシャの奴隷と市民の中の、市民の貴族と平民がポリスで政治に従事した。女性は市民になれなかった。ポリスにおいて適用されるルールをギリシャ語でノモスという。カール・シュミットの『大地のノモス』という本があるが、ノモスというのは通常、法と訳されている。したがって、法というのは社会全体の中のごく一部しか通用しない。
6.オイコスのルールは、法じゃない。ビアという基幹原理があった。ビアとは暴力である。奴隷は所有物だから、言うことを聞かなければ、鞭打っても殺しても構わない。女性は言うことを聞かなければ殴ってもいい。家庭のなかにおいて適用されるルールが暴力である。ドメスティックバイオレンスの根があったのでフェミニストによる知の男権性、暴力性批判が出てきた。
7.このような社会の基本形から政治というものが生まれてきた。このポリスのノモスの中にも最終的には強制権力という形で暴力が入ってくる。マックス・ウェーバーは神学的知識をもっていた。佐藤氏は基礎教育がプロテスタント神学で、ギリシャ語を学ぶ。そのギリシャ語を学ぶ中で政治の概念、経済の概念を学んだ。日本の政治学や法学ではあまり学ぶ機会がない。ヨーロッパで政治学や法学を専攻する人は、基礎で必ず哲学を学ぶ。それは、哲学では概念を押さえることが重要だからである。民法と刑法が分かれるというのも、オイコスとポリスという二項対立の図式があるからである。これは日本人にはよくわからない。それは皮膚感覚としてこの種の規範原理が混沌としているのが日本文化の特徴だからである。
(民主党の鳩山・小沢氏を批判する野党や与党内部の一部の人、テレビや大新聞のメディアの幹部達は規範原理の無い感覚の人が多い。日本文化の中で正しい政治を行うことの難しさが最近の情勢からもよくわかる)
ドイツ人の考え方の背景
5月26日付の「魚の目」の佐藤優氏の記事が面白い。特に、ドイツ人の考え方を述べた部分は共感する部分も多い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ヨーロッパにおいて、特に、ドイツ語の文化圏において本屋さんというのは特別な意味を持っている。ドイツ連邦共和国は特殊な規則を持っている。家系がドイツ人であることが証明されれば、誰であってもドイツ連邦共和国のパスポートを渡す。東ドイツの人たちが西ドイツに入ると、その瞬間に西ドイツのパスポートを発行してもらえる。ベルリンの壁が崩壊した時には、その前にハンガリー経由で大量の東ドイツ人の流出があった。西ドイツにドイツ人を持ってこようとした。
2.別のドイツ人問題というのは、ボルガ・ドイツ人をはじめとする旧ソ連領の問題である。帝政ロシアの時代、ロシア人貴族はサンクトペテルブルクやモスクワに住んでいて、ロシア語をしゃべれない。ふだんはフランス語で話をしている。イギリスやフランスに簡単に遊びに行き、生活をしている。不在地主では農場の面倒はドイツ人を雇って任せた。ロシア人に任せると、金をくすねたりするし、マネージメントをきちんとしない。それに農民をいじめすぎるから反乱が起きたりする。
3. 16世紀の終わり以降、多くのドイツ人がロシアに流入した。理由は宗教的な理由である。ドイツで宗教改革があってカトリックとプロテスタントに分かれた。そのあと、プロテスタントの側で、宗教改革急進派というグループが出てきた。再洗礼派とか、メノナイトという人たちである。汝殺すことなかれというイエス様の山上の垂訓を守るため、国家の徴兵には参加せず軍事行為には従事しなかった。
4.プロテスタントの主流派は、鳥籠にこの人たちを入れて、木からぶら下げてカラスがつつけるくらいの隙間が空けて、見せしめにもかかわらず、宗教改革急進派の人たちは信仰を捨てなかった。そこに目をつけたのがロシアで、兵役にとらないから、農民をマネジメントするためロシアに来てくださいと呼び込んだために、16世紀から17世紀にかけてロシアのボルガ川沿岸にドイツ人が移住した。
5.第2次世界大戦が始まる前に、現在のボルゴグラード、当時のスターリングラード付近に住んでいたドイツ人がナチスと一緒になるのではないかとスターリンは恐れた。そのためドイツ人をカザフスタンやウズベキスタンの砂漠に強制追放した。
6.その時期にもうひとつ、極東から強制追放された民族が朝鮮人である。ハバロフスクの南からウラジオストックにかけて多くの朝鮮人が住んでいた、スターリンは朝鮮人が日本のスパイになると疑い、大量の朝鮮人をカザフスタンやウズベキスタンにを追放した。
7.このドイツ人たちは16世紀、17世紀を中心に移住したドイツ人で、現在のドイツ人と違うドイツ語を使うので、そのドイツ人たちのために、ドイツ語の新聞で「ノイエス・レーベン(Neues Leben)」という新聞をソ連時代に出している。こういう通じへんなドイツ語を使うドイツ人たちの生活様式は現在もロシア人に近くなっている。
8.この人たちがドイツに帰ってくると、パスポートを与えなければならない。ところがドイツの中で大変な問題を引き起こしてしまう。全く生活習慣も違うし、宗教的な伝統も違う。だからこのドイツ人たちに極力帰らないでくれという取引をソ連政府とウラで、当時の西ドイツ政府はやっていた。大量のお金をカザフ周辺に入れて、ドイツの文化センターをつくり、現地で合弁企業をつくり、そのドイツ人が旧ソ連の中で生活ができるようにした。こういうバラバラなドイツ人が自らをドイツ人と意識するようになるには、18世紀の終わりから19世紀の頭にかけてである。
9.ルターが聖書をドイツ語に翻訳して、それに合わせて、その文字に書かれたドイツ語に合わせて話すようになった。あちこちで読書会が行われた。それを通じてドイツ人だという意識が生まれた。活字離れをしている今の日本の場合も、日本の標準語が東京の山の手の方言をベースに作られたといのは間違いで、まずは書き言葉ができて、それに合わせて話すようになって、日本人という意識ができてきた。
10.言語と民族意識は非常に関係している。日本でマックス・ウェーバーの影響が大きいのは、社会主義の影響が非常に強くなって、インテリたちがマルクス主義に強く関心を持っている時に、どうもそれは違うんだと考える学生たちが勉強会をして、ウェーバーに講義を依頼したためである。
1.ヨーロッパにおいて、特に、ドイツ語の文化圏において本屋さんというのは特別な意味を持っている。ドイツ連邦共和国は特殊な規則を持っている。家系がドイツ人であることが証明されれば、誰であってもドイツ連邦共和国のパスポートを渡す。東ドイツの人たちが西ドイツに入ると、その瞬間に西ドイツのパスポートを発行してもらえる。ベルリンの壁が崩壊した時には、その前にハンガリー経由で大量の東ドイツ人の流出があった。西ドイツにドイツ人を持ってこようとした。
2.別のドイツ人問題というのは、ボルガ・ドイツ人をはじめとする旧ソ連領の問題である。帝政ロシアの時代、ロシア人貴族はサンクトペテルブルクやモスクワに住んでいて、ロシア語をしゃべれない。ふだんはフランス語で話をしている。イギリスやフランスに簡単に遊びに行き、生活をしている。不在地主では農場の面倒はドイツ人を雇って任せた。ロシア人に任せると、金をくすねたりするし、マネージメントをきちんとしない。それに農民をいじめすぎるから反乱が起きたりする。
3. 16世紀の終わり以降、多くのドイツ人がロシアに流入した。理由は宗教的な理由である。ドイツで宗教改革があってカトリックとプロテスタントに分かれた。そのあと、プロテスタントの側で、宗教改革急進派というグループが出てきた。再洗礼派とか、メノナイトという人たちである。汝殺すことなかれというイエス様の山上の垂訓を守るため、国家の徴兵には参加せず軍事行為には従事しなかった。
4.プロテスタントの主流派は、鳥籠にこの人たちを入れて、木からぶら下げてカラスがつつけるくらいの隙間が空けて、見せしめにもかかわらず、宗教改革急進派の人たちは信仰を捨てなかった。そこに目をつけたのがロシアで、兵役にとらないから、農民をマネジメントするためロシアに来てくださいと呼び込んだために、16世紀から17世紀にかけてロシアのボルガ川沿岸にドイツ人が移住した。
5.第2次世界大戦が始まる前に、現在のボルゴグラード、当時のスターリングラード付近に住んでいたドイツ人がナチスと一緒になるのではないかとスターリンは恐れた。そのためドイツ人をカザフスタンやウズベキスタンの砂漠に強制追放した。
6.その時期にもうひとつ、極東から強制追放された民族が朝鮮人である。ハバロフスクの南からウラジオストックにかけて多くの朝鮮人が住んでいた、スターリンは朝鮮人が日本のスパイになると疑い、大量の朝鮮人をカザフスタンやウズベキスタンにを追放した。
7.このドイツ人たちは16世紀、17世紀を中心に移住したドイツ人で、現在のドイツ人と違うドイツ語を使うので、そのドイツ人たちのために、ドイツ語の新聞で「ノイエス・レーベン(Neues Leben)」という新聞をソ連時代に出している。こういう通じへんなドイツ語を使うドイツ人たちの生活様式は現在もロシア人に近くなっている。
8.この人たちがドイツに帰ってくると、パスポートを与えなければならない。ところがドイツの中で大変な問題を引き起こしてしまう。全く生活習慣も違うし、宗教的な伝統も違う。だからこのドイツ人たちに極力帰らないでくれという取引をソ連政府とウラで、当時の西ドイツ政府はやっていた。大量のお金をカザフ周辺に入れて、ドイツの文化センターをつくり、現地で合弁企業をつくり、そのドイツ人が旧ソ連の中で生活ができるようにした。こういうバラバラなドイツ人が自らをドイツ人と意識するようになるには、18世紀の終わりから19世紀の頭にかけてである。
9.ルターが聖書をドイツ語に翻訳して、それに合わせて、その文字に書かれたドイツ語に合わせて話すようになった。あちこちで読書会が行われた。それを通じてドイツ人だという意識が生まれた。活字離れをしている今の日本の場合も、日本の標準語が東京の山の手の方言をベースに作られたといのは間違いで、まずは書き言葉ができて、それに合わせて話すようになって、日本人という意識ができてきた。
10.言語と民族意識は非常に関係している。日本でマックス・ウェーバーの影響が大きいのは、社会主義の影響が非常に強くなって、インテリたちがマルクス主義に強く関心を持っている時に、どうもそれは違うんだと考える学生たちが勉強会をして、ウェーバーに講義を依頼したためである。
日本の財政赤字への危機感をマスコミは知らぬふりをして国民の目をそらしている
5月28日付けの大前研一さんのニュースの視点『財源なき給付の限界〜危機意識が足りない国民と政府』」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.長妻昭厚生労働相は5月18日の閣議後の記者会見で、2011年度から子ども手当に上乗せする月額1万3000円分について「すべて現金か、一部を保育所整備などの現物給付にするか、政務三役で検討する」との見解を示した。月額2万6000円の満額支給にこだわらず、上乗せ部分の支給方法を見直すとのことである。
2.長妻厚生労働相は、かつて大前氏が代表を務めた「平成維新の会」にも参画していた人物である。その意味で今回「的を外した議論」を展開していることに同氏は残念に思っている。 長妻厚生労働相の発言の背景には「財源がない」という事情がある。しかし、日本国債の価値の崩壊が迫ってきている今になって「財源を確保する」のは不可能である
3.子ども手当問題を議論する際には「財源を明確にする」という点が非常に重要であり、これが問題の本質である。月額2万6000円の子ども手当を支払ってしまうと、来年度予算を組むことはできなくなる。子ども手当に匹敵するものを予算から削るしかない。子ども手当だけに焦点を当てるのではなく、それらを含めてトータルで議論を進めなければ意味がない。
4.子ども手当の財源をつくるために配偶者控除を廃止すれば、家庭を守る奥さんたちが黙っていない。この場合、上乗せ部分の支給方法が「学校に対する支援」「保育所に対する支援」になるという議論は意味がない。財源を明確にして議論を進めないと、いくら高尚な理念や意味を掲げても、この問題は解決しない。
5.国際通貨基金(IMF)は19日、ギリシャの財政危機をきっかけに各国の財政赤字に注目が集まっているとして、日本に対し「2011年度には財政再建を開始し、消費税を徐々に引き上げていく必要がある」と提言した。財政再建に必要な消費税率の目安は、15%との見方を示した。IMFにこのような指摘を受けること自体、恥ずかしい話である。
6.民主党の考え方・政策を見る限り、消費税率は15%どころか25%程度まで引き上げなければ財政を立て直すことは難しい。実際に直間比率を見直して財政再建を図ろうとしたとき、民主党ならば、経済界からの圧力が強い「法人税率の引き下げ」に対応する一方、「所得税率の引き上げ」を行う。
7.民主党の頭にあるのは選挙対策だけである。民主党なら所得税率の引き上げで高所得者層の票を失っても安全だと判断している。所得税率を引き上げても、それほど効果は出ない。逆に、景気を良くするためには所得税率を引き下げてしまう方が良い。
8.世界の国の事例を見ると、所得税率を引き下げたときは税収が増えている。税率が低くなるために正直に納税する人が増えるからである。同時に消費税率を15%に引き上げるなら、その「見返り」を準備することが大切である。単に消費税率を15%に引き上げても経済が縮小するだけである。計算上の数字は正しくても「実際に」経済が活性化しなくては意味がない。
9.主要国の付加価値税率でトップグループにあるスウェーデン・デンマーク・ノルウェーなどの北欧諸国の税率は約25%である。日本の5%に比べると遥かに高い税率だが、その分の「見返り」がしっかりしている。例えばスウェーデンで生活しているなら、老後は国が面倒を見てくれ、日本のように強く老後の生活不安を感じないので、25%という高い税率にも国民は文句を言わない。
10.日本では、国が面倒を見てくれるのか極めて疑わしいので税率を引き上げるのが最も難しい国になっている。消費税が初めて導入されたとき、そして3%から5%に引き上げられたとき、直後の参議院選挙で与党が敗れ、首相が辞任に追い込まれている。
11.消費税を引き上げる「代わり」に何があるのかを国民に明示し、それを含めてトータルで話を進めなければ、消費税率の引き上げは大きな問題になってしまう。今回の民主党が言う「消費税率の引き上げ」は、次の衆議院選挙の後ということである。の衆議院選挙までの3年の間に日本国債が崩れる。今のまま50兆円の赤字国債を3回発行すれば間違いない。その前に消費税率を引き上げるという話を先に出し、実際に経済が改善しているという様子を見せることが重要である。
12.国の税率について他人にとやかく言われる筋合いはない。IMFに指摘されるのは「屈辱的」な事態と受け止めるべきである。しかし、驚くほど国民もマスコミも無反応である。さらにはこの期に及んでも、亀井金融・郵政改革担当相は「お金はあるから大丈夫だ」という趣旨の発言をしている。日本国債がいつ売り浴びせられても文句が言えない状況なのに信じられない。
1.長妻昭厚生労働相は5月18日の閣議後の記者会見で、2011年度から子ども手当に上乗せする月額1万3000円分について「すべて現金か、一部を保育所整備などの現物給付にするか、政務三役で検討する」との見解を示した。月額2万6000円の満額支給にこだわらず、上乗せ部分の支給方法を見直すとのことである。
2.長妻厚生労働相は、かつて大前氏が代表を務めた「平成維新の会」にも参画していた人物である。その意味で今回「的を外した議論」を展開していることに同氏は残念に思っている。 長妻厚生労働相の発言の背景には「財源がない」という事情がある。しかし、日本国債の価値の崩壊が迫ってきている今になって「財源を確保する」のは不可能である
3.子ども手当問題を議論する際には「財源を明確にする」という点が非常に重要であり、これが問題の本質である。月額2万6000円の子ども手当を支払ってしまうと、来年度予算を組むことはできなくなる。子ども手当に匹敵するものを予算から削るしかない。子ども手当だけに焦点を当てるのではなく、それらを含めてトータルで議論を進めなければ意味がない。
4.子ども手当の財源をつくるために配偶者控除を廃止すれば、家庭を守る奥さんたちが黙っていない。この場合、上乗せ部分の支給方法が「学校に対する支援」「保育所に対する支援」になるという議論は意味がない。財源を明確にして議論を進めないと、いくら高尚な理念や意味を掲げても、この問題は解決しない。
5.国際通貨基金(IMF)は19日、ギリシャの財政危機をきっかけに各国の財政赤字に注目が集まっているとして、日本に対し「2011年度には財政再建を開始し、消費税を徐々に引き上げていく必要がある」と提言した。財政再建に必要な消費税率の目安は、15%との見方を示した。IMFにこのような指摘を受けること自体、恥ずかしい話である。
6.民主党の考え方・政策を見る限り、消費税率は15%どころか25%程度まで引き上げなければ財政を立て直すことは難しい。実際に直間比率を見直して財政再建を図ろうとしたとき、民主党ならば、経済界からの圧力が強い「法人税率の引き下げ」に対応する一方、「所得税率の引き上げ」を行う。
7.民主党の頭にあるのは選挙対策だけである。民主党なら所得税率の引き上げで高所得者層の票を失っても安全だと判断している。所得税率を引き上げても、それほど効果は出ない。逆に、景気を良くするためには所得税率を引き下げてしまう方が良い。
8.世界の国の事例を見ると、所得税率を引き下げたときは税収が増えている。税率が低くなるために正直に納税する人が増えるからである。同時に消費税率を15%に引き上げるなら、その「見返り」を準備することが大切である。単に消費税率を15%に引き上げても経済が縮小するだけである。計算上の数字は正しくても「実際に」経済が活性化しなくては意味がない。
9.主要国の付加価値税率でトップグループにあるスウェーデン・デンマーク・ノルウェーなどの北欧諸国の税率は約25%である。日本の5%に比べると遥かに高い税率だが、その分の「見返り」がしっかりしている。例えばスウェーデンで生活しているなら、老後は国が面倒を見てくれ、日本のように強く老後の生活不安を感じないので、25%という高い税率にも国民は文句を言わない。
10.日本では、国が面倒を見てくれるのか極めて疑わしいので税率を引き上げるのが最も難しい国になっている。消費税が初めて導入されたとき、そして3%から5%に引き上げられたとき、直後の参議院選挙で与党が敗れ、首相が辞任に追い込まれている。
11.消費税を引き上げる「代わり」に何があるのかを国民に明示し、それを含めてトータルで話を進めなければ、消費税率の引き上げは大きな問題になってしまう。今回の民主党が言う「消費税率の引き上げ」は、次の衆議院選挙の後ということである。の衆議院選挙までの3年の間に日本国債が崩れる。今のまま50兆円の赤字国債を3回発行すれば間違いない。その前に消費税率を引き上げるという話を先に出し、実際に経済が改善しているという様子を見せることが重要である。
12.国の税率について他人にとやかく言われる筋合いはない。IMFに指摘されるのは「屈辱的」な事態と受け止めるべきである。しかし、驚くほど国民もマスコミも無反応である。さらにはこの期に及んでも、亀井金融・郵政改革担当相は「お金はあるから大丈夫だ」という趣旨の発言をしている。日本国債がいつ売り浴びせられても文句が言えない状況なのに信じられない。
鳩山首相の「政治を科学する」とは?
26日付の「魚の目」の佐藤優氏の記事が面白い。特に「政治を科学する鳩山首相」という小題の部分は共感する部分が多い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.鳩山さんは暴力論を嫌う、自然科学系の面白い人である。世界の指導者の中で客観的にみた学歴において、学識において鳩山さんを越える人はいない。鳩山さんは決断の専門家であり、意思決定(決断)理論の研究で博士号を取っている。二十歳の頃から意思決定理論を徹底的に勉強している。その基礎になっているのがマルコフ連鎖という考え方である。
2.マルコフ連鎖というのは、19世紀の初めから20世紀の初頭にロシアで非常に影響を持った現代確率論の開祖のひとりであるアンドレイ・マルコフの理論である。プーシキンのエフゲニー・オネーギンという詩を見ていて、子音と母音の流れ方は、その直近の言葉の配列にしか影響されないというところから関心を持って分析し、新しい確率理論を作った。
3.鳩山さんの研究の中で面白いのは、秘書、あるいはパートナーをみつける場合の最適化が研究が専門である。簡単なモデルでいうと、議員会館に千人の秘書を面接で受け付けるとする。何番目で決めたらいいか。一番目は絶対に断らなければならない。二番目以降にもっといい人が来るかもしれないから、断ったらその人を呼び戻せないというモデルを考える。そのとき何番目くらいで決めたらいいか? これが理論的に証明されている。
4.368番目を基準にして、368番目までは全員断る。368番目と比較して、少しでもいい人を選んだ場合、最もよい秘書が見つかる可能性が高いということがマルコフ連鎖によって証明されている。
5.鳩山さんは5月に普天間飛行場の移設先を決断すると決めた。4月の終わり頃に何があるかということを見て、それとくらべて一番いいシナリオを選択する。このマルコフ連鎖を使って戦争に勝った国がイギリスである。マルコフ連鎖を発展させて、鳩山さんの英語で書いた論文の中にそれが多い。マルコフ保全理論はどの程度批判に耐えられるかという、東京工業大学にいるときに英語の難しい論文を書いている。
6.ある会社で、人員、機械などを総取り替えするとき、予算の制約などのいろいろなしがらみもあるので、全部を変えることはできない。いろんな部分に分けて、仕分けして、この部分は潰そう、この部分にはもう少しお金と人材を投入しようというかたちで、壊れた木という絵を描く。その中を適宜並べ替えることによって、最強のかたち今持っているカードで作るという、その研究の専門家である。
7.イギリスはナチスドイツとくらべると、軍事力も弱く、工業力も弱い。その状況の下で、数学者を集めて半分に分ける。半分の人たちは暗号解読チームに。残りの半分の人たちはマルコフ連鎖理論を使って、弱いイギリスがなんとか勝つ方法を考える。たとえば、イギリスにはアルミニウムがない。鉄の量も限られている。そこで木で飛行機を作る。モスキートという有名な爆撃機をつくった。この飛行機を作った後で、非常な利点があることが分かった。木製なのでドイツ軍のレーダーに映りにくい。夜間攻撃をすると、ほとんどドイツのレーダーに映らず、被害を受けずに帰ってくることができた。それ以外にも、戦闘機で空中戦をするとパイロットの消耗率が高いので、ポーランドとかチェコからの亡命者を受け入れ、家族を引き受ける代わりに最前線でナチスドイツと戦うのは君たちだというかたちで、イギリス人の消耗を抑えた。ポーランド人、チェコ人が戦いの先兵に立った。
8.鳩山由起夫さんの解釈では、日本の政治はまったく科学的でない。少なくとも数学的でない。非合理なことをやるから、腹芸であるとか、根回しとかが中心になって国家を弱くしている。それを正すために政治を志すことにした。鳩山総理は自民党に入って、そこにはコンピュータがあっていろいろなデータが蓄積されているのかと思ったら、そんなものは全くなかった。そこで新しい政治を作らなければならないと思った。その政治の作り方について、講演の中で言っている。
9.先ず、目的関数を定める。目的関数の中で制約要因を考える。制約要因のひとつひとつの項は変数で、大きくなったり小さくなったりする、すなわち微分法である。自民党政治の特徴は、足して二で割るという四則演算でしかなかった。鳩山さんは、dx/dyであるとか、∂x/∂yであるとか、微分とか偏微分を使って変化を入れている。
10.普天間問題においても鳩山さんのマルコフ連鎖理論が使われている。常識的に考えると、アメリカは圧倒的に強い、日本は弱い。その状況の下で、足して2で割ったらいいんだと。鳩山さんとしては沖縄県外(移設)ということを言ってしまった。そして沖縄の人々の期待値も高まっている。他方日米合意もある。日米合意というのは普天間の返還ということだ。足して2で割ると、辺野古の沖合くらいで大丈夫じゃないか。これが自民党的な発想である。
11.鳩山さんはそれとは違い、目的関数をつけている。目的関数は何かというと、日米同盟の極大化である。それに対する制約条件は、2006年に自民党とアメリカが結んだ世界地図である。すなわちネオコンが勢力を持っていて、台湾海峡で有事が起こる可能性が相当程度ある。また北朝鮮で有事が発生する可能性もあるという発想に基づいている。日本の有識者の論考も岡本行夫さんを除いて、すべて2006年の世界地図を前提に四則演算でものを考えている。変化が入っていない。ネオコンは退潮したこと。台湾に馬英九政権が誕生したこと。米朝国交正常化交渉水面下で相当動いていること。この変化を有識者は理解していない。
1.鳩山さんは暴力論を嫌う、自然科学系の面白い人である。世界の指導者の中で客観的にみた学歴において、学識において鳩山さんを越える人はいない。鳩山さんは決断の専門家であり、意思決定(決断)理論の研究で博士号を取っている。二十歳の頃から意思決定理論を徹底的に勉強している。その基礎になっているのがマルコフ連鎖という考え方である。
2.マルコフ連鎖というのは、19世紀の初めから20世紀の初頭にロシアで非常に影響を持った現代確率論の開祖のひとりであるアンドレイ・マルコフの理論である。プーシキンのエフゲニー・オネーギンという詩を見ていて、子音と母音の流れ方は、その直近の言葉の配列にしか影響されないというところから関心を持って分析し、新しい確率理論を作った。
3.鳩山さんの研究の中で面白いのは、秘書、あるいはパートナーをみつける場合の最適化が研究が専門である。簡単なモデルでいうと、議員会館に千人の秘書を面接で受け付けるとする。何番目で決めたらいいか。一番目は絶対に断らなければならない。二番目以降にもっといい人が来るかもしれないから、断ったらその人を呼び戻せないというモデルを考える。そのとき何番目くらいで決めたらいいか? これが理論的に証明されている。
4.368番目を基準にして、368番目までは全員断る。368番目と比較して、少しでもいい人を選んだ場合、最もよい秘書が見つかる可能性が高いということがマルコフ連鎖によって証明されている。
5.鳩山さんは5月に普天間飛行場の移設先を決断すると決めた。4月の終わり頃に何があるかということを見て、それとくらべて一番いいシナリオを選択する。このマルコフ連鎖を使って戦争に勝った国がイギリスである。マルコフ連鎖を発展させて、鳩山さんの英語で書いた論文の中にそれが多い。マルコフ保全理論はどの程度批判に耐えられるかという、東京工業大学にいるときに英語の難しい論文を書いている。
6.ある会社で、人員、機械などを総取り替えするとき、予算の制約などのいろいろなしがらみもあるので、全部を変えることはできない。いろんな部分に分けて、仕分けして、この部分は潰そう、この部分にはもう少しお金と人材を投入しようというかたちで、壊れた木という絵を描く。その中を適宜並べ替えることによって、最強のかたち今持っているカードで作るという、その研究の専門家である。
7.イギリスはナチスドイツとくらべると、軍事力も弱く、工業力も弱い。その状況の下で、数学者を集めて半分に分ける。半分の人たちは暗号解読チームに。残りの半分の人たちはマルコフ連鎖理論を使って、弱いイギリスがなんとか勝つ方法を考える。たとえば、イギリスにはアルミニウムがない。鉄の量も限られている。そこで木で飛行機を作る。モスキートという有名な爆撃機をつくった。この飛行機を作った後で、非常な利点があることが分かった。木製なのでドイツ軍のレーダーに映りにくい。夜間攻撃をすると、ほとんどドイツのレーダーに映らず、被害を受けずに帰ってくることができた。それ以外にも、戦闘機で空中戦をするとパイロットの消耗率が高いので、ポーランドとかチェコからの亡命者を受け入れ、家族を引き受ける代わりに最前線でナチスドイツと戦うのは君たちだというかたちで、イギリス人の消耗を抑えた。ポーランド人、チェコ人が戦いの先兵に立った。
8.鳩山由起夫さんの解釈では、日本の政治はまったく科学的でない。少なくとも数学的でない。非合理なことをやるから、腹芸であるとか、根回しとかが中心になって国家を弱くしている。それを正すために政治を志すことにした。鳩山総理は自民党に入って、そこにはコンピュータがあっていろいろなデータが蓄積されているのかと思ったら、そんなものは全くなかった。そこで新しい政治を作らなければならないと思った。その政治の作り方について、講演の中で言っている。
9.先ず、目的関数を定める。目的関数の中で制約要因を考える。制約要因のひとつひとつの項は変数で、大きくなったり小さくなったりする、すなわち微分法である。自民党政治の特徴は、足して二で割るという四則演算でしかなかった。鳩山さんは、dx/dyであるとか、∂x/∂yであるとか、微分とか偏微分を使って変化を入れている。
10.普天間問題においても鳩山さんのマルコフ連鎖理論が使われている。常識的に考えると、アメリカは圧倒的に強い、日本は弱い。その状況の下で、足して2で割ったらいいんだと。鳩山さんとしては沖縄県外(移設)ということを言ってしまった。そして沖縄の人々の期待値も高まっている。他方日米合意もある。日米合意というのは普天間の返還ということだ。足して2で割ると、辺野古の沖合くらいで大丈夫じゃないか。これが自民党的な発想である。
11.鳩山さんはそれとは違い、目的関数をつけている。目的関数は何かというと、日米同盟の極大化である。それに対する制約条件は、2006年に自民党とアメリカが結んだ世界地図である。すなわちネオコンが勢力を持っていて、台湾海峡で有事が起こる可能性が相当程度ある。また北朝鮮で有事が発生する可能性もあるという発想に基づいている。日本の有識者の論考も岡本行夫さんを除いて、すべて2006年の世界地図を前提に四則演算でものを考えている。変化が入っていない。ネオコンは退潮したこと。台湾に馬英九政権が誕生したこと。米朝国交正常化交渉水面下で相当動いていること。この変化を有識者は理解していない。
リニア新幹線の開業は15年後が17年後になるという話の意味?
5月28日付けの東洋経済オンラインメールマガジンに「リニア開業を2年延期したJR東海、その隠された真意とは」という堀川美行氏、大坂直樹氏の記事が目をひいた。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.今年3月の国土交通省交通政策審議会はリニア中央新幹線の営業・建設主体を決める舞台である。「交通の歴史に新たな1ページを記す日になる」と会議の冒頭、三日月大造政務官が語った。
2.リニアに対して、政界はオール与党である。「建設は自分たちで」と公言したJR東海の独走を懸念した国交省は、今は「粛々と進めるだけ」と静観している。しかし、、JR東海にも誤算が生じた。2007年度の水準の業績が続くことを前提で2025年開業に設定したが、急速な景気悪化で新幹線乗客が減少している。
3.運輸収入を2006〜2010年度の平均値に見直し建設期間を再計算した結果、開業は2年遅れになった。「資料を見直したら2027年だったというだけ」と、JR東海の山田佳臣社長は淡々と語っている。しかし、その2年の持つ意味は大きい。
4.3月の審議会では、事業の採算性など計画を詳細に吟味していく雰囲気だった。こうした中、4月末に突如2年延期を発表した。今月10日の審議会では「委員はJR東海のリニア計画をほぼ了解したような感じだった」と国交省関係者は語っている。
5.JR東海は、審議長期化を避けるため、ある程度の“代償”を払い、審議会の空気を変えるべきと考えたらしく、開業は15年後の話で、そんな先の話から、わずか数年の延期程度で自らに有利な雰囲気をつくれたのなら、JR東海の作戦勝ちといえる。
6.次の焦点は、実質的に審議会に判断が任されたルート問題だ。直線ルートを目指すJR東海に対し、沿線の長野県は諏訪経由の迂回ルートを主張している。審議会の中間取りまとめでルートが盛り込まれるかが注目点だが、公表時期は未定であり、来年以降の可能性もある。
7.11日の山梨県でのリニア実験線に試乗した米ラフード運輸長官は「Very Fast」と叫んで満足気らしい。JR東海は米国へのリニア輸出も計画している。国内手続きさえ終わっていないリニアを、なぜ今、売り込むのかという声もある。
8.輸出が具体化すれば、日本での開業が前提となる。そうなると、政府も全面的に支援せざるをえない。専門家の間には「本当は国内を円滑に動かすことが狙いでは」との見方もある。ルート選定でもJR東海に追い風が吹くことになりそうである。
(狭い日本の国土で、米国や中国の発想でリニア新幹線を考えること事態に疑問を感じる。そのメリットを十分に国民にPRすることも進めてもらいたい)
1.今年3月の国土交通省交通政策審議会はリニア中央新幹線の営業・建設主体を決める舞台である。「交通の歴史に新たな1ページを記す日になる」と会議の冒頭、三日月大造政務官が語った。
2.リニアに対して、政界はオール与党である。「建設は自分たちで」と公言したJR東海の独走を懸念した国交省は、今は「粛々と進めるだけ」と静観している。しかし、、JR東海にも誤算が生じた。2007年度の水準の業績が続くことを前提で2025年開業に設定したが、急速な景気悪化で新幹線乗客が減少している。
3.運輸収入を2006〜2010年度の平均値に見直し建設期間を再計算した結果、開業は2年遅れになった。「資料を見直したら2027年だったというだけ」と、JR東海の山田佳臣社長は淡々と語っている。しかし、その2年の持つ意味は大きい。
4.3月の審議会では、事業の採算性など計画を詳細に吟味していく雰囲気だった。こうした中、4月末に突如2年延期を発表した。今月10日の審議会では「委員はJR東海のリニア計画をほぼ了解したような感じだった」と国交省関係者は語っている。
5.JR東海は、審議長期化を避けるため、ある程度の“代償”を払い、審議会の空気を変えるべきと考えたらしく、開業は15年後の話で、そんな先の話から、わずか数年の延期程度で自らに有利な雰囲気をつくれたのなら、JR東海の作戦勝ちといえる。
6.次の焦点は、実質的に審議会に判断が任されたルート問題だ。直線ルートを目指すJR東海に対し、沿線の長野県は諏訪経由の迂回ルートを主張している。審議会の中間取りまとめでルートが盛り込まれるかが注目点だが、公表時期は未定であり、来年以降の可能性もある。
7.11日の山梨県でのリニア実験線に試乗した米ラフード運輸長官は「Very Fast」と叫んで満足気らしい。JR東海は米国へのリニア輸出も計画している。国内手続きさえ終わっていないリニアを、なぜ今、売り込むのかという声もある。
8.輸出が具体化すれば、日本での開業が前提となる。そうなると、政府も全面的に支援せざるをえない。専門家の間には「本当は国内を円滑に動かすことが狙いでは」との見方もある。ルート選定でもJR東海に追い風が吹くことになりそうである。
(狭い日本の国土で、米国や中国の発想でリニア新幹線を考えること事態に疑問を感じる。そのメリットを十分に国民にPRすることも進めてもらいたい)