2011年05月
2011年05月31日
日本の原発技術レベルが高いのは原発を続けていたので技術者が途絶えなかったからに過ぎない。自己満足であり国民の科学技術の考え方の哲学は遅れていた。
「大前研一著:日本復興計画、文藝春秋社、2011年4月30日」は、3.11大震災の復興計画を取りまとめたもので、原発の専門家でもある著者からみた今後の世界の原発の動向は参考になる。「第2章:3分の2に縮小する生活」の「機能不全・司令塔不在の罪」に書かれている国際・外交問題も重要である。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.フクシマ原発の問題は、すべての国にとって内政問題になっている。いまいちばん困惑きているのはオバマ大統領である。彼の中心的なポリシーはクリーン・エネルギーである。地球温暖化にならないクリーン・エネルギーのために原子炉建設を再開すると宣言していた矢先、核エネルギーが不透明になってしまった。彼の補佐官は毎日のように日本の官邸に電話を入れている。この先の動向によっては米・民主党の仲間でさえ反原発にまわる可能性がある。
2.ドイツは今ある原子炉の寿命を延長しようと思っていたのに、それが困難になってきてた。スイスは新規建設を中止。中国は一昨日まで計画を強行する腹づもりでいたが、ネットの書き込みの凄さに驚いて、計画承認を留保することになった。ネットにはこんな書き込みがあった。「はるかに進んだ日本であの事故だから、遅れている中国がやって本当に大丈夫なのか」と。(ドイツは、10年以内に原発を廃止することを決定した)
3.大前氏は以前に、原子力産業会議の議長をつとめたとき、世界中から人を呼んで京都で会議を開催したが、そのとき「原子力は相互依存である。各国は同一の倫理と責任を持って原子力発電に取り組まないと、一国の失敗によって他の国が推進できなくなる」と述べている。(まさにその通りになった。同氏の洞察力はさすがである。日本の大新聞、テレビはなぜか同氏を煙たがる理由は、産業界など多数の反論を恐れているのだろうか? ジャーナリズムとして失格である)
4.レベル5以上の事故で30年間は新規建設がストップする。30年やらないとエンジニアも全部他の分野に散ってしまう。大前氏のMIT時代のクラスメートも、みんな散り散りバラバラになっている。原子力で日本は強い、フランスも強いと言うけれど、アメリカやドイツ、スウェーデンなどが撤退した間に原子炉をつくり続けたからに過ぎない。
(日本のジャーナリストの自己満足のような記事は辟易である。昨日の当ブログでも紹介したが日本の省エネ政策も、世界的に見れば遅れているのである。国の政策の不備をもっと強く指摘して欲しい)
日本復興計画 Japan;The Road to Recovery
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1.フクシマ原発の問題は、すべての国にとって内政問題になっている。いまいちばん困惑きているのはオバマ大統領である。彼の中心的なポリシーはクリーン・エネルギーである。地球温暖化にならないクリーン・エネルギーのために原子炉建設を再開すると宣言していた矢先、核エネルギーが不透明になってしまった。彼の補佐官は毎日のように日本の官邸に電話を入れている。この先の動向によっては米・民主党の仲間でさえ反原発にまわる可能性がある。
2.ドイツは今ある原子炉の寿命を延長しようと思っていたのに、それが困難になってきてた。スイスは新規建設を中止。中国は一昨日まで計画を強行する腹づもりでいたが、ネットの書き込みの凄さに驚いて、計画承認を留保することになった。ネットにはこんな書き込みがあった。「はるかに進んだ日本であの事故だから、遅れている中国がやって本当に大丈夫なのか」と。(ドイツは、10年以内に原発を廃止することを決定した)
3.大前氏は以前に、原子力産業会議の議長をつとめたとき、世界中から人を呼んで京都で会議を開催したが、そのとき「原子力は相互依存である。各国は同一の倫理と責任を持って原子力発電に取り組まないと、一国の失敗によって他の国が推進できなくなる」と述べている。(まさにその通りになった。同氏の洞察力はさすがである。日本の大新聞、テレビはなぜか同氏を煙たがる理由は、産業界など多数の反論を恐れているのだろうか? ジャーナリズムとして失格である)
4.レベル5以上の事故で30年間は新規建設がストップする。30年やらないとエンジニアも全部他の分野に散ってしまう。大前氏のMIT時代のクラスメートも、みんな散り散りバラバラになっている。原子力で日本は強い、フランスも強いと言うけれど、アメリカやドイツ、スウェーデンなどが撤退した間に原子炉をつくり続けたからに過ぎない。
(日本のジャーナリストの自己満足のような記事は辟易である。昨日の当ブログでも紹介したが日本の省エネ政策も、世界的に見れば遅れているのである。国の政策の不備をもっと強く指摘して欲しい)
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省エネ技術で日本が進んでいるというのは誤解である
「大前研一著:日本復興計画、文藝春秋社、2011年4月30日」は、3.11大震災の復興計画を取りまとめたもので、内容の豊富さ、パンチの効いた記述に引き込まれる本である。「第3章:日本復興計画」の「原子力に代わるシステム」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本の原子力産業は終わった。新しい原子炉は作れないとなると、電力は足りなくなる。そうした中で、逆境に強い分野が生まれてくる可能性はある。公害による排ガス規制によって日本車が強くなり、円高によって日本企業の経営体質が強化された。しかし楽観論は許されない。その前にまず、血の出るような体験を味わわなければならない。
2.デンマークやドイツでは、自分の住む地域で生み出すエネルギーだけで電気も冷暖房も全て賄うというコミュニティが小規模であるが幾つか出てきている。オーストラリアでは、敷地内に設置した雨と風と太陽の発電プラントで動く工業団地も生まれている。この超省エネ型のいわゆるエコ工業団地に関しては、世界は、日本よりはるかに進んでいる。
3.オーストラリアには省エネコンサルタントという職業がある。過去1年の記録を基に、助言によって節約できた金額を、会社とコンサルタントで折半する。すでに大企業の6割が顧客である。会社にすれば、コンサルティング料を支払うことなく節約できるので損はない。
4.原子炉の設置に反対したサクラメント市(米カリフォルニア州)の場合、反対運動で原子炉が停まった代わりに、照明はすべてLEDになり、エアコンの設定温度も規制されている。ヘリコプターが夜間飛んで、街を上空から赤外線カメラで撮影して、熱の漏れが大きい窓枠を取り替える改善措置を命令することができる。
5.省エネの分野で日本は後進国である。コンピュータで需要・供給の双方を調整してエネルギー効率を上げる「スマートグリッド」(次世代送電網)というものがあるが、日本はやはり出遅れている。NAS電池を始めそのパーツ技術はあるが行政の遅れのために、全体ではIBMやGE、シーメンスに負けている。(省エネで日本が進んでいると言うのは誤解で、産業界の一部にすぎない)
6.日本は原子力発電を国策として熱心に推進してきた。理由は、石油依存から脱却したいという背景がある。石油危機に懲りた日本は、エネルギー源を多様化するために原子力を採用した。地震国ゆえのハードルはいろいろあったが、それを克服する方法を懸命に考えた末に、国が推進すると決めた。電力会社が原子力を推進しようとしたのではなく、あくまで国(資源エネルギー庁)である。電力会社としては立地の易しい火力のほうがいい。
7.原子炉を1基作るのには、計画から建設着手まで最短でも20年かかる。建設が5年から8年を要する。トラブルでシャットダウンも多い。昨年の日本の原子炉の稼働実績は、50%しかない。国の原発推進政策を後押ししているのは、原子炉メーカーを擁する経団連などの業界である。経産省もわが国の輸出産業にしようと片棒を担いできた。
8.原発をやりたいと思っている電力会社はない。しかし、行政や住民への説得の仕事はすべて押し付けられてきた。原子力安全委員会や保安院は、そんな汚れ役をやらない。原子炉の設置許可権を盾にあれこれと電力会社をいじめてきた。中間貯蔵施設がないと燃料は燃やせません言っても、そのうちに作ってやると言われ続けて数10年たった。
9.「夢の原子炉」高速増殖炉やプルサーマルも国策である。使用済み燃料の中からプルトニウムが再生し、これを循環させれば、日本のエネルギー問題は解決するから国策としてやりなさいというのが日本の政策である。
10.プルトニウムを抱えていれば、90日で原爆が作れる。だから、国内に使用済みのプルトニウムを貯蔵して持っておくこと自体が安全保障になるというウラの論理がある。日本は唯一の被爆国として非核三原則を掲げているが、それに抵触しないで核武装の能力だけは備えておく、つまり、90日で原爆を作る潜在能力を確保しておくのである。
11.使用済み燃料のプルトニウムをフランスに運んで再処理を依頼していた時期もあるが、莫大な費用がかかる。国際的な取り決めにより、日本は共沈法という抽出法を強制されている。爆弾を簡単に作らせないために、ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX燃料)を燃やしたあと、純粋なプルトニウムを簡単に抽出できないようしている。
1.日本の原子力産業は終わった。新しい原子炉は作れないとなると、電力は足りなくなる。そうした中で、逆境に強い分野が生まれてくる可能性はある。公害による排ガス規制によって日本車が強くなり、円高によって日本企業の経営体質が強化された。しかし楽観論は許されない。その前にまず、血の出るような体験を味わわなければならない。
2.デンマークやドイツでは、自分の住む地域で生み出すエネルギーだけで電気も冷暖房も全て賄うというコミュニティが小規模であるが幾つか出てきている。オーストラリアでは、敷地内に設置した雨と風と太陽の発電プラントで動く工業団地も生まれている。この超省エネ型のいわゆるエコ工業団地に関しては、世界は、日本よりはるかに進んでいる。
3.オーストラリアには省エネコンサルタントという職業がある。過去1年の記録を基に、助言によって節約できた金額を、会社とコンサルタントで折半する。すでに大企業の6割が顧客である。会社にすれば、コンサルティング料を支払うことなく節約できるので損はない。
4.原子炉の設置に反対したサクラメント市(米カリフォルニア州)の場合、反対運動で原子炉が停まった代わりに、照明はすべてLEDになり、エアコンの設定温度も規制されている。ヘリコプターが夜間飛んで、街を上空から赤外線カメラで撮影して、熱の漏れが大きい窓枠を取り替える改善措置を命令することができる。
5.省エネの分野で日本は後進国である。コンピュータで需要・供給の双方を調整してエネルギー効率を上げる「スマートグリッド」(次世代送電網)というものがあるが、日本はやはり出遅れている。NAS電池を始めそのパーツ技術はあるが行政の遅れのために、全体ではIBMやGE、シーメンスに負けている。(省エネで日本が進んでいると言うのは誤解で、産業界の一部にすぎない)
6.日本は原子力発電を国策として熱心に推進してきた。理由は、石油依存から脱却したいという背景がある。石油危機に懲りた日本は、エネルギー源を多様化するために原子力を採用した。地震国ゆえのハードルはいろいろあったが、それを克服する方法を懸命に考えた末に、国が推進すると決めた。電力会社が原子力を推進しようとしたのではなく、あくまで国(資源エネルギー庁)である。電力会社としては立地の易しい火力のほうがいい。
7.原子炉を1基作るのには、計画から建設着手まで最短でも20年かかる。建設が5年から8年を要する。トラブルでシャットダウンも多い。昨年の日本の原子炉の稼働実績は、50%しかない。国の原発推進政策を後押ししているのは、原子炉メーカーを擁する経団連などの業界である。経産省もわが国の輸出産業にしようと片棒を担いできた。
8.原発をやりたいと思っている電力会社はない。しかし、行政や住民への説得の仕事はすべて押し付けられてきた。原子力安全委員会や保安院は、そんな汚れ役をやらない。原子炉の設置許可権を盾にあれこれと電力会社をいじめてきた。中間貯蔵施設がないと燃料は燃やせません言っても、そのうちに作ってやると言われ続けて数10年たった。
9.「夢の原子炉」高速増殖炉やプルサーマルも国策である。使用済み燃料の中からプルトニウムが再生し、これを循環させれば、日本のエネルギー問題は解決するから国策としてやりなさいというのが日本の政策である。
10.プルトニウムを抱えていれば、90日で原爆が作れる。だから、国内に使用済みのプルトニウムを貯蔵して持っておくこと自体が安全保障になるというウラの論理がある。日本は唯一の被爆国として非核三原則を掲げているが、それに抵触しないで核武装の能力だけは備えておく、つまり、90日で原爆を作る潜在能力を確保しておくのである。
11.使用済み燃料のプルトニウムをフランスに運んで再処理を依頼していた時期もあるが、莫大な費用がかかる。国際的な取り決めにより、日本は共沈法という抽出法を強制されている。爆弾を簡単に作らせないために、ウランとプルトニウムの混合燃料(MOX燃料)を燃やしたあと、純粋なプルトニウムを簡単に抽出できないようしている。
2011年05月29日
東電は一度は倒産し、補償を行う整理会社と配電事業を行う会社に分割する
「大前研一著:日本復興計画、文藝春秋社、2011年4月30日」は、3.11大震災の復興計画を取りまとめたもので、内容の豊富さ、的確な提案は面白い。「第3章:日本復興計画」の「東電は配電会社に」は説得力がある。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.電力会社がもはや民間企業としての成り立たないことは、今回の福島第一原発の事故で明らかになった。原子力発電のリスクは民間企業では負えないし、上場企業では制御不能のリスクである。もし是が非でも原子力を推進したいのであれば、国がその施設を譲り受けて、発電も国が原子力行政の一環としてやるしかない。
2.安全審査、住民対応、オペレーションなどは、全て国の責任で行う。今ある10の電力会社は公営原子力公社から買電する。火力、水力、その他の発電は、望むなら継続してもよい。ただし、民間や外資の発電事業への参入は自由化すべきである。
3.オーストラリアなどが参入してくると思われる。ロシアもサハリンで豊富なLNGを使って発電し、稚内まで直流高圧ケーブルで送電する事業を考えるだろう。「立地」でいつも悩んできた日本の電力会社にとっては朗報となる。
4.東電は、一度は倒産すると思われる。補償などあらゆる債務を負う整理会社と事業を行う会社に分割する。再生したとしても、主として配電会社になると思われる。高圧の送電は別の国策会社(公社)が一括して引き受け、東電は、各家庭や工場に電気を届けるだけの配電会社になることも考えるべきである。
5.水道やゴミ処理は公営でやっている。電気とガスは民営である。日本は考え方が定まっていない。海外では、レーガン、サッチャー以降の米国、英国など、ほとんどの国が発電、送電、配電に分かれて民営化されていて、上流から下流までを国が全部やっている国は少ない。水や下水も民間がやっている国も多い。
6.送電を日本全国一つの会社でおこなう方がいいのは、東西の周波数変換の問題があるからだ。現在、東と西のサイクルの変換は、3つの水力発電所に併設された周波数変換所で細々と行っている。3つ合わせても、変換能力は125万キロワット。東電管内の発電量が4000万から5000万キロワットだから、微々たるものにすぎない。
7.今回の事故で、この変換能力をもっと拡充して、中部電力と東京電力の間で電力を融通し合うことが必須である。それには日本送電公社とでもいうべき公社でやるか、東西グリッドの接続部分だけでも公的会社でやるのがよい。東電は高圧送電の役割も手放して、原子力以外の発電と配電だけを行う可能性が高い。
8.原子力発電施設が安全に運営されているかチェックする機能については、経済産業省とは独立した組織をつくる必要がある。現在のように、原了力安全委員会や原子力安全・保安院など本来は規制する側の機構が、資源エネルギー庁を持ち、原子力政策を推進する経済産業省のもとにあるのでは、モラルハザードが起こる。
9.安全委員会と保安院を統合し、財務省に対する金融庁のように、経済産業省とは独立した規制機関とする必要がある。アメリカでは1975年に、原子力推進機関からは独立する形で、アメリカ合衆国原子力規制委員会(NRC)が誕生した。NRCは原子炉の安全、原子炉の設置許可およびその更新、放射性物質の保安および認可、放射性廃棄物管理(貯蔵と廃棄)について監督を行う。
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1.電力会社がもはや民間企業としての成り立たないことは、今回の福島第一原発の事故で明らかになった。原子力発電のリスクは民間企業では負えないし、上場企業では制御不能のリスクである。もし是が非でも原子力を推進したいのであれば、国がその施設を譲り受けて、発電も国が原子力行政の一環としてやるしかない。
2.安全審査、住民対応、オペレーションなどは、全て国の責任で行う。今ある10の電力会社は公営原子力公社から買電する。火力、水力、その他の発電は、望むなら継続してもよい。ただし、民間や外資の発電事業への参入は自由化すべきである。
3.オーストラリアなどが参入してくると思われる。ロシアもサハリンで豊富なLNGを使って発電し、稚内まで直流高圧ケーブルで送電する事業を考えるだろう。「立地」でいつも悩んできた日本の電力会社にとっては朗報となる。
4.東電は、一度は倒産すると思われる。補償などあらゆる債務を負う整理会社と事業を行う会社に分割する。再生したとしても、主として配電会社になると思われる。高圧の送電は別の国策会社(公社)が一括して引き受け、東電は、各家庭や工場に電気を届けるだけの配電会社になることも考えるべきである。
5.水道やゴミ処理は公営でやっている。電気とガスは民営である。日本は考え方が定まっていない。海外では、レーガン、サッチャー以降の米国、英国など、ほとんどの国が発電、送電、配電に分かれて民営化されていて、上流から下流までを国が全部やっている国は少ない。水や下水も民間がやっている国も多い。
6.送電を日本全国一つの会社でおこなう方がいいのは、東西の周波数変換の問題があるからだ。現在、東と西のサイクルの変換は、3つの水力発電所に併設された周波数変換所で細々と行っている。3つ合わせても、変換能力は125万キロワット。東電管内の発電量が4000万から5000万キロワットだから、微々たるものにすぎない。
7.今回の事故で、この変換能力をもっと拡充して、中部電力と東京電力の間で電力を融通し合うことが必須である。それには日本送電公社とでもいうべき公社でやるか、東西グリッドの接続部分だけでも公的会社でやるのがよい。東電は高圧送電の役割も手放して、原子力以外の発電と配電だけを行う可能性が高い。
8.原子力発電施設が安全に運営されているかチェックする機能については、経済産業省とは独立した組織をつくる必要がある。現在のように、原了力安全委員会や原子力安全・保安院など本来は規制する側の機構が、資源エネルギー庁を持ち、原子力政策を推進する経済産業省のもとにあるのでは、モラルハザードが起こる。
9.安全委員会と保安院を統合し、財務省に対する金融庁のように、経済産業省とは独立した規制機関とする必要がある。アメリカでは1975年に、原子力推進機関からは独立する形で、アメリカ合衆国原子力規制委員会(NRC)が誕生した。NRCは原子炉の安全、原子炉の設置許可およびその更新、放射性物質の保安および認可、放射性廃棄物管理(貯蔵と廃棄)について監督を行う。
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大前研一著「日本復興計画」への反響
5月27日付けの大前研一さんのニュースの視点は、大前研一著『日本復興計画』に関してツイッター上で著者が受け付けている質問への回答を纏めているので面白い。本書について当ブログでも紹介しているが、多くの読者の疑問に答えている。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
Q1.『日本復興計画』の中で、新しいビジョン構想の一つとして、「道州制」がある。6つの「都」のひとつの「神奈川都」に期待している。具体的に何を行うのか?
A1.神奈川「都」に期待したいのは、日本に例のない新しい街づくりである。今回の大地震を契機にして、日本経済の活性化のために中央集権から地方分権に統治機構を大転換することを提案した。道州制移行への第1ステップとして5つの「都」「州」をつくる。その中の「神奈川都」の大前提として、橋下大阪府知事、河村名古屋市長のような大胆な知事の出現である。先日当選した神奈川県知事・黒岩氏には期待できない。神奈川は「羽田空港」と「みなとみらい」という2つのインフラを活用する。羽田空港をアジアの拠点にし、横浜を東洋のベニスとする。世界に誇れるウォーターフレンドリーな街づくりを目指す。羽田空港が国際化すると、グローバル企業のアジア本社を神奈川に誘致できる。羽田まで15分という立地は魅力的ですある。神奈川の港は利用は減るので、その土地を活用して、グローバル企業のアジア本社の誘致用にする。将来的には京浜運河を住宅地にすることも可能である。水辺の環境がいい土地に事務所や住宅が立ち並ぶような街づくりができる。さらに、欧州の一部の街で実現しているようにモノレールやローボートを走らせて羽田や横浜を結べば、日本には例のない「素晴らしい街・都」になる。このような環境が整えば、羽田空港まで20分程度で通える。羽田空港とみなとみらいを活用した「新しいコンセプトの街づくり」を神奈川都には期待できる。
Q2.「復興会議」は、「文系サロン」とも揶揄されているが、どう見ているか?
A2.復興計画は、総理自ら主体的に書き下ろすべきである。復興会議メンバーの選定について、今回の会議メンバーは、「寄せ集め」である。1人で丸1日部屋にこもって考えれば、大体の方針を固まる。実際、著者は3月13日、3月19日というタイミングで今回の問題に対する対処方法を発表している。1日で書き上げることは十分可能である。1人で書けないのなら10人寄せ集めてもできない。特定の分野に限って手伝ってもらう。1週間時間をもらって、「この人なら」を思う人を選抜し、1週間部屋に閉じこもる。菅総理にはもっと主体的な姿勢を見せて欲しい。
Q3.「復興後の街づくり」について、高台に新しい住居コミュニティを提案されてる。山間部を養生することで海を豊かにする漁業システムを持続しつつ、高台を開発することは可能でか?
A3.高台に街を作っても、山林はなくならいし、漁場の豊かさも保たれる。山林があって山から流れこむ養分のお陰で東北の海が豊かに保たれている、と一般に言われているが、事実は少々違う。東北地方の漁業が豊かなのは、それよりも、東北地方太平洋側では暖流の黒潮と寒流の親潮が混合して、そこで植物・動物プランクトンが豊富に発生し、世界三大漁場の1つになっている。また、東北地方の山林は豊富である。高台の街づくり程度で、森が無くなる心配はいらない。
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Q1.『日本復興計画』の中で、新しいビジョン構想の一つとして、「道州制」がある。6つの「都」のひとつの「神奈川都」に期待している。具体的に何を行うのか?
A1.神奈川「都」に期待したいのは、日本に例のない新しい街づくりである。今回の大地震を契機にして、日本経済の活性化のために中央集権から地方分権に統治機構を大転換することを提案した。道州制移行への第1ステップとして5つの「都」「州」をつくる。その中の「神奈川都」の大前提として、橋下大阪府知事、河村名古屋市長のような大胆な知事の出現である。先日当選した神奈川県知事・黒岩氏には期待できない。神奈川は「羽田空港」と「みなとみらい」という2つのインフラを活用する。羽田空港をアジアの拠点にし、横浜を東洋のベニスとする。世界に誇れるウォーターフレンドリーな街づくりを目指す。羽田空港が国際化すると、グローバル企業のアジア本社を神奈川に誘致できる。羽田まで15分という立地は魅力的ですある。神奈川の港は利用は減るので、その土地を活用して、グローバル企業のアジア本社の誘致用にする。将来的には京浜運河を住宅地にすることも可能である。水辺の環境がいい土地に事務所や住宅が立ち並ぶような街づくりができる。さらに、欧州の一部の街で実現しているようにモノレールやローボートを走らせて羽田や横浜を結べば、日本には例のない「素晴らしい街・都」になる。このような環境が整えば、羽田空港まで20分程度で通える。羽田空港とみなとみらいを活用した「新しいコンセプトの街づくり」を神奈川都には期待できる。
Q2.「復興会議」は、「文系サロン」とも揶揄されているが、どう見ているか?
A2.復興計画は、総理自ら主体的に書き下ろすべきである。復興会議メンバーの選定について、今回の会議メンバーは、「寄せ集め」である。1人で丸1日部屋にこもって考えれば、大体の方針を固まる。実際、著者は3月13日、3月19日というタイミングで今回の問題に対する対処方法を発表している。1日で書き上げることは十分可能である。1人で書けないのなら10人寄せ集めてもできない。特定の分野に限って手伝ってもらう。1週間時間をもらって、「この人なら」を思う人を選抜し、1週間部屋に閉じこもる。菅総理にはもっと主体的な姿勢を見せて欲しい。
Q3.「復興後の街づくり」について、高台に新しい住居コミュニティを提案されてる。山間部を養生することで海を豊かにする漁業システムを持続しつつ、高台を開発することは可能でか?
A3.高台に街を作っても、山林はなくならいし、漁場の豊かさも保たれる。山林があって山から流れこむ養分のお陰で東北の海が豊かに保たれている、と一般に言われているが、事実は少々違う。東北地方の漁業が豊かなのは、それよりも、東北地方太平洋側では暖流の黒潮と寒流の親潮が混合して、そこで植物・動物プランクトンが豊富に発生し、世界三大漁場の1つになっている。また、東北地方の山林は豊富である。高台の街づくり程度で、森が無くなる心配はいらない。
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東北復興計画は日本の農業復興が前提条件
「大前研一著:日本復興計画、文藝春秋社、2011年4月30日」は、3.11大震災の復興計画を取りまとめたもので、内容の豊富さ、パンチの強さには敬服させられる。「第3章:日本復興計画」の「あまりに危険な石棺計画」は説得力がある。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.大前氏が3月19日に提案した東北復興計画は、政府もほぼその方向で動きはじめている。まだ財源の問題は残っているが、住まいを高台に移して、海岸の平地は公共施設とか緑地にするということは、政府与党も共通である。
2.そのグランド・デザインは、阪神・淡路のときは、三全総(第3次全国総合開発計画)で日本を土建屋国家にしてしまった下河辺淳氏(当時、国上事務次官)が退官後に手がけた。しかし今回の東北再生には、あのような箱物的な発想でなく、ソフトな路線でデザインする必要がある。適任者が見つからなければ、フェイスブックなどで公募するのもよい。所謂、クラウド・ソーシングで、不特定多数の、特に若い人たちに業務を委託するのも一案である。。
3.今の東北は、日本の「最後の工業地帯」である。東京、大阪、名古屋の工業地帯が衰退して、次第に東北へと工業の拠点が移って行った。特に自動車、電気関係の基幹部品は東北で生産されている。そこで競争力を失うと、東南アジア、中国に行く。今やタイが自動車関連部品の一大拠点になっている。
4.東北で生き残っている企業はかなり競争力がある。彼らは重要な電子部品素材などを生産しており、アップル、インテル、サムスンなども東北地方から素材・部品を買っている。地震のあと東アジアがパニックになっているのは、それらの素材・部品の製造がピタッと止まったためである。漁港の復興とともに、東北地域の工業力の再生を念頭におくことが重要であり、住居の再生だけでは食べていけなくなる。
5.今回大きな被害を受けた地域は、名取川の流域で米作地帯を除けば、ほとんどが漁港とその周辺である。しかし、秋田や庄内などの米どころを抱えた東北の復興を考えると、農業の今後は大テーマである。
6.このままでは、日本の農業は復興しない。人間の食べ物を確保するには、世界の農業最適地で農場経営をする、それも日本人が出かけていって現地の農民と一緒にやり、最適地からの輸入にすべきである、と大前氏は以前から提案している。日本の農業は、平均年齢が65.8歳の農民によって成り立っている。その8割以上がもう農業を基本的な生業としていない。「利権農家」であり、農業利権があるために農民をやっているにすぎない。だから、若い人が少々参入しても起爆剤にはならない。
菅総理は、農地法を改正して若い人や株式会社にも農地の取得が出来るようにする、と言っているが、その程度では農業の再生は無理である。
7.食糧安保論者が言うような、日本の農業に日本人の胃袋を任せるべきだという考え方は成り立たないし、むしろ危険な考え方である。自給率の議論にはまやかしがある。仮に表面的には自給できているように見えても、実態は輸入に頼っている部分が多い。たとえば、牛の飼料はアメリカから来るし、コンバインとかトラクター、あるいは灌概の機械はすべて石油がないと動かない。
8.石油の輸入が止められたとき、65.8歳のお爺ちゃんがコンバインなしに田植えや稲刈りは出来ない。どうしても自給率を上げたいなら、世界の最適地に出かけていって資本を投下し、現地と長期契約を結んで日本に逆輸入する。その場合に輸入分に0.5を掛けた数値を自給率として算入すればいい。
9.世界の農業最適地というのは5、6カ所ある。そこに分散して投資すれば、全てをストップされるリスクも分散できる。それが真の食糧安保である。工業立国の日本にとって、油も鉄鉱石も石炭も、それらが輸入できなくなるリスクは同じなである。農業だけ自給率の殻に閉じこもる理由はない。
1.大前氏が3月19日に提案した東北復興計画は、政府もほぼその方向で動きはじめている。まだ財源の問題は残っているが、住まいを高台に移して、海岸の平地は公共施設とか緑地にするということは、政府与党も共通である。
2.そのグランド・デザインは、阪神・淡路のときは、三全総(第3次全国総合開発計画)で日本を土建屋国家にしてしまった下河辺淳氏(当時、国上事務次官)が退官後に手がけた。しかし今回の東北再生には、あのような箱物的な発想でなく、ソフトな路線でデザインする必要がある。適任者が見つからなければ、フェイスブックなどで公募するのもよい。所謂、クラウド・ソーシングで、不特定多数の、特に若い人たちに業務を委託するのも一案である。。
3.今の東北は、日本の「最後の工業地帯」である。東京、大阪、名古屋の工業地帯が衰退して、次第に東北へと工業の拠点が移って行った。特に自動車、電気関係の基幹部品は東北で生産されている。そこで競争力を失うと、東南アジア、中国に行く。今やタイが自動車関連部品の一大拠点になっている。
4.東北で生き残っている企業はかなり競争力がある。彼らは重要な電子部品素材などを生産しており、アップル、インテル、サムスンなども東北地方から素材・部品を買っている。地震のあと東アジアがパニックになっているのは、それらの素材・部品の製造がピタッと止まったためである。漁港の復興とともに、東北地域の工業力の再生を念頭におくことが重要であり、住居の再生だけでは食べていけなくなる。
5.今回大きな被害を受けた地域は、名取川の流域で米作地帯を除けば、ほとんどが漁港とその周辺である。しかし、秋田や庄内などの米どころを抱えた東北の復興を考えると、農業の今後は大テーマである。
6.このままでは、日本の農業は復興しない。人間の食べ物を確保するには、世界の農業最適地で農場経営をする、それも日本人が出かけていって現地の農民と一緒にやり、最適地からの輸入にすべきである、と大前氏は以前から提案している。日本の農業は、平均年齢が65.8歳の農民によって成り立っている。その8割以上がもう農業を基本的な生業としていない。「利権農家」であり、農業利権があるために農民をやっているにすぎない。だから、若い人が少々参入しても起爆剤にはならない。
菅総理は、農地法を改正して若い人や株式会社にも農地の取得が出来るようにする、と言っているが、その程度では農業の再生は無理である。
7.食糧安保論者が言うような、日本の農業に日本人の胃袋を任せるべきだという考え方は成り立たないし、むしろ危険な考え方である。自給率の議論にはまやかしがある。仮に表面的には自給できているように見えても、実態は輸入に頼っている部分が多い。たとえば、牛の飼料はアメリカから来るし、コンバインとかトラクター、あるいは灌概の機械はすべて石油がないと動かない。
8.石油の輸入が止められたとき、65.8歳のお爺ちゃんがコンバインなしに田植えや稲刈りは出来ない。どうしても自給率を上げたいなら、世界の最適地に出かけていって資本を投下し、現地と長期契約を結んで日本に逆輸入する。その場合に輸入分に0.5を掛けた数値を自給率として算入すればいい。
9.世界の農業最適地というのは5、6カ所ある。そこに分散して投資すれば、全てをストップされるリスクも分散できる。それが真の食糧安保である。工業立国の日本にとって、油も鉄鉱石も石炭も、それらが輸入できなくなるリスクは同じなである。農業だけ自給率の殻に閉じこもる理由はない。