2011年06月
日本の司法制度への疑問
「佐藤優著:国家の罠:外務省のラスプーチンと呼ばれて、新潮社、2005年」を読むと、佐藤優氏を罪人に仕立てた日本の司法への疑問がぬぐえない。真の罪人は司法を含む体制側にいるような気がする。本書の被告人(佐藤優氏)の最終陳述と裁判官の判決文を読むだけでも、判決のいい加減さがわかる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.佐藤氏は最終陳述の機会に、以下4点について、以下のような意見を述べている。
1)今回の国策捜査が必要とされ理由について、検察は佐藤氏の逮捕を突破口に外務省と鈴木氏を結びつける事件を作りたかった。問題は鈴木宗男氏が国策捜査の対象になった理由である。これを解明しない限り、今回の国策捜査を理解することはできない。小泉政権成立後、内政的には、新自由主義への転換、外交的には、ナショナリズムの強化を感じた。鈴木宗男氏は、内政では、地方の声を自らの政治力をもって中央に反映させる公平配分論者で、外交的には、アメリカ、ロシア、中国との関係をバランスよく発展させ、排外主義的なナショナリズムに走たない国際協調主義的愛国者であった。鈴木宗男氏という政治家を断罪する中で、日本は新自由主義と排外主義的なナショナリズムへの転換を行っていった。国策捜査が行われる場合には、その歴史的必然性があるが、検察官も被告人もその歴史的必然性に気付かない。このことと、自ら行っていない犯罪を認めるということは全く別の問題であり、私は無罪である。
2)国策捜査を展開する上ではマスメディアの支援が決定的に重要である。政官の関係に不正や疑惑があるならば、それを徹底的に暴くのはマスメディアの責務である。ジャーナリストの職業的良心とは『国民の知る権利』に奉仕することである。『佐藤は鈴木宗男の運転手をしている』などの事実無根の疑惑報道がなされた。一旦報道された内容は後で訂正されない。大多数の国民には、佐藤氏や鈴木氏に「巨悪のイメージ』ができた。それが、政治的に利用された。
3)今回の国策捜査で真の勝利者は、竹内行夫外務事務次官や外務省執行部の人たちである。外務官僚は、外交政策の遂行に資するためだけでなく、外務官僚にとって都合のよい状況を作り出すために鈴木宗男氏の政治力を活用したが、鈴木氏が外務省にとって厄介な存在になると、同氏を罪人にした。その証拠となる事務次官、外務審議官の決裁書などを外務省から消失させた。
4)今回の国策捜査により、正当に業務を遂行する特殊情報を担当する外交官を国策捜査で逮捕したことにより、日本の対外的信義・信用が著しく損なわれた。著者のところへは、複数の外国の政府関係者、民間の人々から『よく頑張って筋を通した。あなたがきちんとしていたから、外交上の実害がミニマムだった』と言っている。外務省員からも『あなたが違法行為なんかしていないことはよくわかっている。力になれなくて済まない』という涙声の電話を受けている。ときの内閣総理大臣、外務省幹部の命に従い、組織の決裁を受け、その時点では官邸、外務省が評価した業務が2年後には犯罪として摘発されるような状況が許されるならば、誰もリスクがあると思われる仕事はしなくなる。上司の命令に従っても、組織も当時の上司も部下を守らず、組織防衛のために部下に対する攻撃に加担するような外務省の体質が本事件で露呈した。このような状況では、誰も『こうしたらよい』と感じたとしても、それを口に出さなくなる。組織に不作為体質が蔓延し、不作為による国益の損失は大きい。
2.安井久治裁判長の判決は以下の通りである。
「背任、偽計業務妨害被告事件につき、被告人を懲役2年6月に処する。この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。未決勾留日数中、250日を刑に参入する。被告入は自己を正当化する供述に終始した。その刑事責任を自覚しているとは認めがたい。他方、本件背任罪の実行行為を行ったのは前島であること。偽計業務妨害の犯行に置いて実行行為の多くを行ったのは三井物産の社員であること。被告人は偽計業務妨害の犯行に関しては経済的利益を得ていないこと、各決裁書の決裁手続に関与した外務省の幹部職員が、資金の支出につき問題があるにもかかわらずそれを容認したこと、鈴木(宗男)議員の影響があったこと、等から被告人の責任のみに帰し得ない。これまで日本のロシア外交等に対する思い入れの強さが本件のような犯行に結びついたこと等、被告人にとって酌むべき事情も認められる。以上の諸事情を考慮し、今一度社会でやり直しの機会を与えるのが相当と認め、執行猶予とした」
(鈴木宗男氏や堀江貴文氏などの判決も疑問である。少なくと見せしめとか社会的注目度だけで量刑を加減するのは公正ではない。司法官僚の価値観だけで、ひとりの市民の生き方まで左右するのは基本的な人権問題でもある。同様に罪深いのは日本のジャーナリズムである。司法が書いたシナリオに沿って世論をつくるお手伝いをしている。それにより司法関係者の後ろめたさを払拭している。国民に真実を伝えるというジャーナリズムの大切な役割を果たしていない。検察と裁判官の司法村も原発村と同様に追求して欲しい)
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
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1.佐藤氏は最終陳述の機会に、以下4点について、以下のような意見を述べている。
1)今回の国策捜査が必要とされ理由について、検察は佐藤氏の逮捕を突破口に外務省と鈴木氏を結びつける事件を作りたかった。問題は鈴木宗男氏が国策捜査の対象になった理由である。これを解明しない限り、今回の国策捜査を理解することはできない。小泉政権成立後、内政的には、新自由主義への転換、外交的には、ナショナリズムの強化を感じた。鈴木宗男氏は、内政では、地方の声を自らの政治力をもって中央に反映させる公平配分論者で、外交的には、アメリカ、ロシア、中国との関係をバランスよく発展させ、排外主義的なナショナリズムに走たない国際協調主義的愛国者であった。鈴木宗男氏という政治家を断罪する中で、日本は新自由主義と排外主義的なナショナリズムへの転換を行っていった。国策捜査が行われる場合には、その歴史的必然性があるが、検察官も被告人もその歴史的必然性に気付かない。このことと、自ら行っていない犯罪を認めるということは全く別の問題であり、私は無罪である。
2)国策捜査を展開する上ではマスメディアの支援が決定的に重要である。政官の関係に不正や疑惑があるならば、それを徹底的に暴くのはマスメディアの責務である。ジャーナリストの職業的良心とは『国民の知る権利』に奉仕することである。『佐藤は鈴木宗男の運転手をしている』などの事実無根の疑惑報道がなされた。一旦報道された内容は後で訂正されない。大多数の国民には、佐藤氏や鈴木氏に「巨悪のイメージ』ができた。それが、政治的に利用された。
3)今回の国策捜査で真の勝利者は、竹内行夫外務事務次官や外務省執行部の人たちである。外務官僚は、外交政策の遂行に資するためだけでなく、外務官僚にとって都合のよい状況を作り出すために鈴木宗男氏の政治力を活用したが、鈴木氏が外務省にとって厄介な存在になると、同氏を罪人にした。その証拠となる事務次官、外務審議官の決裁書などを外務省から消失させた。
4)今回の国策捜査により、正当に業務を遂行する特殊情報を担当する外交官を国策捜査で逮捕したことにより、日本の対外的信義・信用が著しく損なわれた。著者のところへは、複数の外国の政府関係者、民間の人々から『よく頑張って筋を通した。あなたがきちんとしていたから、外交上の実害がミニマムだった』と言っている。外務省員からも『あなたが違法行為なんかしていないことはよくわかっている。力になれなくて済まない』という涙声の電話を受けている。ときの内閣総理大臣、外務省幹部の命に従い、組織の決裁を受け、その時点では官邸、外務省が評価した業務が2年後には犯罪として摘発されるような状況が許されるならば、誰もリスクがあると思われる仕事はしなくなる。上司の命令に従っても、組織も当時の上司も部下を守らず、組織防衛のために部下に対する攻撃に加担するような外務省の体質が本事件で露呈した。このような状況では、誰も『こうしたらよい』と感じたとしても、それを口に出さなくなる。組織に不作為体質が蔓延し、不作為による国益の損失は大きい。
2.安井久治裁判長の判決は以下の通りである。
「背任、偽計業務妨害被告事件につき、被告人を懲役2年6月に処する。この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。未決勾留日数中、250日を刑に参入する。被告入は自己を正当化する供述に終始した。その刑事責任を自覚しているとは認めがたい。他方、本件背任罪の実行行為を行ったのは前島であること。偽計業務妨害の犯行に置いて実行行為の多くを行ったのは三井物産の社員であること。被告人は偽計業務妨害の犯行に関しては経済的利益を得ていないこと、各決裁書の決裁手続に関与した外務省の幹部職員が、資金の支出につき問題があるにもかかわらずそれを容認したこと、鈴木(宗男)議員の影響があったこと、等から被告人の責任のみに帰し得ない。これまで日本のロシア外交等に対する思い入れの強さが本件のような犯行に結びついたこと等、被告人にとって酌むべき事情も認められる。以上の諸事情を考慮し、今一度社会でやり直しの機会を与えるのが相当と認め、執行猶予とした」
(鈴木宗男氏や堀江貴文氏などの判決も疑問である。少なくと見せしめとか社会的注目度だけで量刑を加減するのは公正ではない。司法官僚の価値観だけで、ひとりの市民の生き方まで左右するのは基本的な人権問題でもある。同様に罪深いのは日本のジャーナリズムである。司法が書いたシナリオに沿って世論をつくるお手伝いをしている。それにより司法関係者の後ろめたさを払拭している。国民に真実を伝えるというジャーナリズムの大切な役割を果たしていない。検察と裁判官の司法村も原発村と同様に追求して欲しい)
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コソボの惨劇と人道主義についての別の見かた
鶴見俊輔監修 Noam Chomsky ノーム・チョムスキー リトル・モア社、2002年」が面白い。2002年5月21日に、ジャン・ユンカーマン氏がインタビュアとして纏めた本である。2002年3月21日にカリフォル一一ア州バークレー、バークレー・コミュニティシアターでの講演会の記録は歴史を別の観点から見ているの。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.アメリカは、最初は統一されたユーゴスラビアを支えた。スロベニアとクロアチアが離脱すると、ドイツはすぐに両国を承認した。ドイツは、その地域の自国の利権を重ねて主張しており、少数派のセルビア人の権利をまったく無視したやり方で承認した。それに力を得て、惨劇が繰り返された。
2.アメリカは真っ先にそれに反対した。大国が様々な駆け引きを繰り広げる中で、アメリカは、ボスニアをチェスの手駒のように使う決意をした。アメリカ国務長官サイラス・ヴァンスと英国のデビツド・オーエンが進めた、それにより平和的解決をぶち壊した。
3.アメリカのチェスの駒となったボスニア政府に、その和平案を受け入れないように圧力をかけた。それはその後数年続いた大規模な残虐行為につながった。結局アメリカが介入し、あと、デイトン協定(ボスニア・ヘルツェゴビナ和平協定。1995年12月14日調印)を押しつけた。人道主義と言われたが、そこには人道主義的な要素はなかった。
4.コソボの爆撃に関しては、膨大な数の論文があるが、その特質は「人類の歴史の新しい時代の幕開け」「人道主義的介入」といった語句が並んでいる。自画自賛である。また、国務省やNATO(北大西洋条約機構)、ヨーロッパ諸国、OSCE(欧州安保協力機構)、団、国連、諸官庁からの豊富な記録資料をわざとらしく無視している。
5.無視された記録には、西欧の連合諸国の中で、いちばんのタカ派は英国であった。英国政府は、虐殺行為の大半はゲリラ、KLA(コソボ解放軍)のしわざと説明した。アメリカも同じくKLAをテロ勢力と呼んでいた。
6.爆撃が開始されると、残虐行為が盛大に繰り広げられるようになった。国際司法裁判所の裁判記録を見ると、残虐行為が爆撃のあと行われたことがわかった。爆撃が開始され、侵略の脅威が広がると、居住地からの放逐、様々な残虐行為、ありとあらゆる弾圧が始まった。難民の帰還支援のための爆撃というが、難民が追われたのは爆撃後だという事実を見逃している。
Noam Chomskyノーム・チョムスキー
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1.アメリカは、最初は統一されたユーゴスラビアを支えた。スロベニアとクロアチアが離脱すると、ドイツはすぐに両国を承認した。ドイツは、その地域の自国の利権を重ねて主張しており、少数派のセルビア人の権利をまったく無視したやり方で承認した。それに力を得て、惨劇が繰り返された。
2.アメリカは真っ先にそれに反対した。大国が様々な駆け引きを繰り広げる中で、アメリカは、ボスニアをチェスの手駒のように使う決意をした。アメリカ国務長官サイラス・ヴァンスと英国のデビツド・オーエンが進めた、それにより平和的解決をぶち壊した。
3.アメリカのチェスの駒となったボスニア政府に、その和平案を受け入れないように圧力をかけた。それはその後数年続いた大規模な残虐行為につながった。結局アメリカが介入し、あと、デイトン協定(ボスニア・ヘルツェゴビナ和平協定。1995年12月14日調印)を押しつけた。人道主義と言われたが、そこには人道主義的な要素はなかった。
4.コソボの爆撃に関しては、膨大な数の論文があるが、その特質は「人類の歴史の新しい時代の幕開け」「人道主義的介入」といった語句が並んでいる。自画自賛である。また、国務省やNATO(北大西洋条約機構)、ヨーロッパ諸国、OSCE(欧州安保協力機構)、団、国連、諸官庁からの豊富な記録資料をわざとらしく無視している。
5.無視された記録には、西欧の連合諸国の中で、いちばんのタカ派は英国であった。英国政府は、虐殺行為の大半はゲリラ、KLA(コソボ解放軍)のしわざと説明した。アメリカも同じくKLAをテロ勢力と呼んでいた。
6.爆撃が開始されると、残虐行為が盛大に繰り広げられるようになった。国際司法裁判所の裁判記録を見ると、残虐行為が爆撃のあと行われたことがわかった。爆撃が開始され、侵略の脅威が広がると、居住地からの放逐、様々な残虐行為、ありとあらゆる弾圧が始まった。難民の帰還支援のための爆撃というが、難民が追われたのは爆撃後だという事実を見逃している。
Noam Chomskyノーム・チョムスキー
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国民総背番号の導入は先進国の条件、無駄な行政経費を大幅に削減できる。
「中川秀直著:官僚国家の崩壊、講談社、2008年」で述べられている公務員制度改革改革は正論と思う。それが実行されないことこそが官僚主導の政治であることの理由である。「国民総背番号制の導入を」の小節も参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.社会的公正を維持するため、国は所得調査・資産調査を徹底する責務がある。IT社会のインフラである国民総背番号制度(具体的には社会保障番号を活用)を早期に導入し、税
の執行事務は国に一元化して公正な徴税を行うべきである。
2.国民総背番号制については、プライバシーの観点から反対する人が多く、これまで導入が見送られてきた。しかし、プライバシー保護の名のもと、所得隠し、資産隠しが横行している。社会保険庁のずさんな年金記録管理の原因にもなっている。所得隠し、資産隠し、年金のずさんな管理をそのままにして、消費税だけを上げるのは正しくない。不公正な社会を許すと、消費税も抜け穴だらけとなり、税率だけが上がっていき、正直者がばかを見る結果となる。少子高齢化社会の安心を守るためには、厳格な社会的公正を確保すべきである。
3.国民総背番号制を導入すれば、いわゆるアングラマネーはかなりあぶり出すことができる。道州制導入に伴う省庁再編の際には「公課庁」を創設すべきである。所得や資産の把握は、地域社会の人的つながりを断ち切った中で行わないと、情がからんで公正ではなくなる。
4.国民総背番号制による税の徴収は国民の利便向上にもつながる。いま、退職した年の翌年に多額の住民税がかかるなど、国民に大きな不便をかけている。これは、税務署に申告した所得が地方税の課税の資料となっていることが原因である。資料が自治体に送られるのに時間がかかるために、国税と地方税の課税・納税に時間のずれが生じている。公課庁に一元化されれば、そうした不便はなくなる。
5.国税庁と社会保険庁の統合には、社会保険庁職員の大半をしめる自治労組合員が税にからむことへの危惧から、反対論が根強い。年金記録問題の元凶である人たちが税を扱うことがあってはならない。しかし、人の統合と組織の統合は別問題である。徴税権とは別に、課税権は、道州政府・基礎的自治体も有し、地方独自の税率を決定できるような課税自主権を有するべきである。
6、社会的正義という観点で、市場経済を正常に機能させることを国の統治の根幹と位置づけるべきである。ライブドア事件の問題の本質は、「原則禁止の事前規制社会」から「原則自由の事後監視社会」への転換期に、新しい時代にふさわしいルール、システムなどの市場インフラの整備が遅れていたために堀江貴文氏が冤罪を蒙ったといえる。事後監視社会への改革を加速化しなければ、原則自由の市場経済が崩壊する。
7.証券市場は資本主義社会の重要なインフラであり、「守られるべき重要な国家財産」とされ、市場犯罪は、国益を犯す重大な犯罪行為と位置づけられている。多くの識者が指摘するように、市場参加者の自由度が増せば増すほど、市場の公正さを守るための監視、取り締まり態勢は強化しなければならない。
8.技術革新が進み、ネット取引が増大し、海外からの投資も増えている。市場インフラが変化に追いついていない点こそ真剣に反省しなければならない。日本では、一罰百戒的な習慣がある。恥の文化の名残りで「社会的制裁」という考え方があり、重い懲罰を下さなくとも、十分罰せられたと考える。
9.社会的責任がある企業は、マスコミの前で頭を下げれば、十分に制裁は加えられたという発想である。この考え方は、課徴金が比較的軽いという面に表れている。しかし、日本人の恥の文化は、昔に比べるとはるかに薄れている。恥の概念による制裁は機能せず、いまや「ルール違反はやり得」になっている。この事実を直視しなけれぼならない。徳治ではなく、法治を徹底し、法治により社会的正義を実現すべきだ。
10.法の抜け道となるグレーゾーンをなくし、市場のルールに違反した者に対する罰則を強化することで、「ルール違反は割に合わない」ようにする。罰則のほか、行政罰として課徴金で市場犯罪に対応する。インサイダー取引、相場操縦、有価証券報告書の虚偽、さらには市場規制全体について課徴金を導入し強化すれば、ルール違反をしてまで儲けようという人はいなくなる。
官僚国家の崩壊
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1.社会的公正を維持するため、国は所得調査・資産調査を徹底する責務がある。IT社会のインフラである国民総背番号制度(具体的には社会保障番号を活用)を早期に導入し、税
の執行事務は国に一元化して公正な徴税を行うべきである。
2.国民総背番号制については、プライバシーの観点から反対する人が多く、これまで導入が見送られてきた。しかし、プライバシー保護の名のもと、所得隠し、資産隠しが横行している。社会保険庁のずさんな年金記録管理の原因にもなっている。所得隠し、資産隠し、年金のずさんな管理をそのままにして、消費税だけを上げるのは正しくない。不公正な社会を許すと、消費税も抜け穴だらけとなり、税率だけが上がっていき、正直者がばかを見る結果となる。少子高齢化社会の安心を守るためには、厳格な社会的公正を確保すべきである。
3.国民総背番号制を導入すれば、いわゆるアングラマネーはかなりあぶり出すことができる。道州制導入に伴う省庁再編の際には「公課庁」を創設すべきである。所得や資産の把握は、地域社会の人的つながりを断ち切った中で行わないと、情がからんで公正ではなくなる。
4.国民総背番号制による税の徴収は国民の利便向上にもつながる。いま、退職した年の翌年に多額の住民税がかかるなど、国民に大きな不便をかけている。これは、税務署に申告した所得が地方税の課税の資料となっていることが原因である。資料が自治体に送られるのに時間がかかるために、国税と地方税の課税・納税に時間のずれが生じている。公課庁に一元化されれば、そうした不便はなくなる。
5.国税庁と社会保険庁の統合には、社会保険庁職員の大半をしめる自治労組合員が税にからむことへの危惧から、反対論が根強い。年金記録問題の元凶である人たちが税を扱うことがあってはならない。しかし、人の統合と組織の統合は別問題である。徴税権とは別に、課税権は、道州政府・基礎的自治体も有し、地方独自の税率を決定できるような課税自主権を有するべきである。
6、社会的正義という観点で、市場経済を正常に機能させることを国の統治の根幹と位置づけるべきである。ライブドア事件の問題の本質は、「原則禁止の事前規制社会」から「原則自由の事後監視社会」への転換期に、新しい時代にふさわしいルール、システムなどの市場インフラの整備が遅れていたために堀江貴文氏が冤罪を蒙ったといえる。事後監視社会への改革を加速化しなければ、原則自由の市場経済が崩壊する。
7.証券市場は資本主義社会の重要なインフラであり、「守られるべき重要な国家財産」とされ、市場犯罪は、国益を犯す重大な犯罪行為と位置づけられている。多くの識者が指摘するように、市場参加者の自由度が増せば増すほど、市場の公正さを守るための監視、取り締まり態勢は強化しなければならない。
8.技術革新が進み、ネット取引が増大し、海外からの投資も増えている。市場インフラが変化に追いついていない点こそ真剣に反省しなければならない。日本では、一罰百戒的な習慣がある。恥の文化の名残りで「社会的制裁」という考え方があり、重い懲罰を下さなくとも、十分罰せられたと考える。
9.社会的責任がある企業は、マスコミの前で頭を下げれば、十分に制裁は加えられたという発想である。この考え方は、課徴金が比較的軽いという面に表れている。しかし、日本人の恥の文化は、昔に比べるとはるかに薄れている。恥の概念による制裁は機能せず、いまや「ルール違反はやり得」になっている。この事実を直視しなけれぼならない。徳治ではなく、法治を徹底し、法治により社会的正義を実現すべきだ。
10.法の抜け道となるグレーゾーンをなくし、市場のルールに違反した者に対する罰則を強化することで、「ルール違反は割に合わない」ようにする。罰則のほか、行政罰として課徴金で市場犯罪に対応する。インサイダー取引、相場操縦、有価証券報告書の虚偽、さらには市場規制全体について課徴金を導入し強化すれば、ルール違反をしてまで儲けようという人はいなくなる。
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北朝鮮が不可解な国であるわけ
「池上彰著:そうだったのか!現代史パート2、集英社、2010年」には、北朝鮮の国民が虐げられてきた状況が具体的に数多く記載されている。第5章「北挑戦はなぜ不可解な国なのか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.金正日の父である金日成はスターリンの面接試験に合格してその地位を得た。旧ソ連のスターリンは、朝鮮半島北部をソ連軍が占領した後、ここにソ連に従う国家を作り上げ、ソ連の言うことを聞く人物に支配させることにた。スターリンは1945年8月末、ソ連極東軍に対して、ソ連の言うことを聞く朝鮮人指導者を推薦するように求めた。極東軍は、極東軍88特別旅団に所属しているソ連軍大尉の金日成が最適だと判断して、スターリンに推薦した。
2.同年9月、金日成はモスクワに呼ばれ、スターリンと4時間にわたって面談をした、緊張してひたすらスターリンの発言にうなずくだけの金日成にスターリンは満足し、金日成を北朝鮮に送り込んで指導者にさせることに決めた。
3.金日成がソ連軍の大尉になった経緯は以下の通りである。金日成は、1912年4月15日、平壌郊外の現在の万景台の農家で長男として生まれた、金成柱が本名である。母親は熱心なクリスチャンで、金日成も子どもの頃、教会に通っていた。父親は1917年、金日成が七歳のときに家族を連れて満洲に移住し、朝鮮人相手の漢方医になった。金日成は、ここで中国人向けの中学校に通った。金日成が北朝鮮に帰国したばかりのころ、朝鮮語はたどたどしかった。金日成は、中国文化の下で中国語を使いながら育ったからである。
4.金日成は、1930年8歳のとき、「満洲国」が誕生した年、南満洲で、朝鮮人が組織した抗日遊撃隊に参加した。この年に、抗日遊撃隊は、中国人が総司令官を務める東北抗日連軍に統合された。これ以来、金日成は、中国共産党の指導を受けることになった。東北抗日連軍は、満洲に駐留していた日本の関東軍の弾圧を受け、組織は弱体化した。関東軍に追われた金日成は、ソ連に逃げ込んだ。
5.日本との戦争の可能性を考えていたソ連軍は、日本軍と戦った経験のある中国人や朝鮮人の部隊を結成することにして、ハバロフスク近郊に88特別旅団を創設した。金日成は、ソ連軍大尉として、第一大隊を率いることになった。終戦まで、金日成は日本軍と戦うことなく、ここで訓練を受けていた。
6.金日成は、ここで金貞淑(後に金正淑と表記を変える)と結婚し、1942年2月16日、ウラジオストック近くの軍の野営地で長男として生またのが金正日である。ただし、このときはまだ金正日とは呼ばれず、ソ連名で「ユーラ」と名づけられた。こうした過去については、長らく秘密にされていたが、ソ連崩壊後、当時の金日成や金正日を知っているロシアの人々が、韓国のマスコミの取材に応じて明らかになった。
7.北朝鮮に戻っても、「キム・ユーラ」と呼ばれ、「キム・ジョンイル」と朝鮮名が決まったのは、1960年ころである。当初は、漢字では「金正一」と表記されていたが、1980年10月、公式の場(朝鮮労働党大会)に初登場した際、「金正日」となった。いまでこそハングルだけを使っている北朝鮮だが、このころは、まだ漢字が一般的に使われていた。
8.金正日はソ連国内で生まれたが、北朝鮮の公式伝記では、金日成は朝鮮半島で日本軍と戦っていたということになっているので、話のつじつまが合わない。そこで、北朝鮮の人々には白頭山の野営地で生まれたということにした。白頭山の山中には、「金正日が生まれた家」なるものが建てられている。
9.金日成は、日本軍と戦わないまま日本の敗戦を迎えたが、北朝鮮での公式の伝記では1932年から45年までの間に、日本軍と10万回の戦闘を繰り広げ、全勝した、ということになっている。
そうだったのか! 現代史パート2 (そうだったのか! シリーズ) (集英社文庫)
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1.金正日の父である金日成はスターリンの面接試験に合格してその地位を得た。旧ソ連のスターリンは、朝鮮半島北部をソ連軍が占領した後、ここにソ連に従う国家を作り上げ、ソ連の言うことを聞く人物に支配させることにた。スターリンは1945年8月末、ソ連極東軍に対して、ソ連の言うことを聞く朝鮮人指導者を推薦するように求めた。極東軍は、極東軍88特別旅団に所属しているソ連軍大尉の金日成が最適だと判断して、スターリンに推薦した。
2.同年9月、金日成はモスクワに呼ばれ、スターリンと4時間にわたって面談をした、緊張してひたすらスターリンの発言にうなずくだけの金日成にスターリンは満足し、金日成を北朝鮮に送り込んで指導者にさせることに決めた。
3.金日成がソ連軍の大尉になった経緯は以下の通りである。金日成は、1912年4月15日、平壌郊外の現在の万景台の農家で長男として生まれた、金成柱が本名である。母親は熱心なクリスチャンで、金日成も子どもの頃、教会に通っていた。父親は1917年、金日成が七歳のときに家族を連れて満洲に移住し、朝鮮人相手の漢方医になった。金日成は、ここで中国人向けの中学校に通った。金日成が北朝鮮に帰国したばかりのころ、朝鮮語はたどたどしかった。金日成は、中国文化の下で中国語を使いながら育ったからである。
4.金日成は、1930年8歳のとき、「満洲国」が誕生した年、南満洲で、朝鮮人が組織した抗日遊撃隊に参加した。この年に、抗日遊撃隊は、中国人が総司令官を務める東北抗日連軍に統合された。これ以来、金日成は、中国共産党の指導を受けることになった。東北抗日連軍は、満洲に駐留していた日本の関東軍の弾圧を受け、組織は弱体化した。関東軍に追われた金日成は、ソ連に逃げ込んだ。
5.日本との戦争の可能性を考えていたソ連軍は、日本軍と戦った経験のある中国人や朝鮮人の部隊を結成することにして、ハバロフスク近郊に88特別旅団を創設した。金日成は、ソ連軍大尉として、第一大隊を率いることになった。終戦まで、金日成は日本軍と戦うことなく、ここで訓練を受けていた。
6.金日成は、ここで金貞淑(後に金正淑と表記を変える)と結婚し、1942年2月16日、ウラジオストック近くの軍の野営地で長男として生またのが金正日である。ただし、このときはまだ金正日とは呼ばれず、ソ連名で「ユーラ」と名づけられた。こうした過去については、長らく秘密にされていたが、ソ連崩壊後、当時の金日成や金正日を知っているロシアの人々が、韓国のマスコミの取材に応じて明らかになった。
7.北朝鮮に戻っても、「キム・ユーラ」と呼ばれ、「キム・ジョンイル」と朝鮮名が決まったのは、1960年ころである。当初は、漢字では「金正一」と表記されていたが、1980年10月、公式の場(朝鮮労働党大会)に初登場した際、「金正日」となった。いまでこそハングルだけを使っている北朝鮮だが、このころは、まだ漢字が一般的に使われていた。
8.金正日はソ連国内で生まれたが、北朝鮮の公式伝記では、金日成は朝鮮半島で日本軍と戦っていたということになっているので、話のつじつまが合わない。そこで、北朝鮮の人々には白頭山の野営地で生まれたということにした。白頭山の山中には、「金正日が生まれた家」なるものが建てられている。
9.金日成は、日本軍と戦わないまま日本の敗戦を迎えたが、北朝鮮での公式の伝記では1932年から45年までの間に、日本軍と10万回の戦闘を繰り広げ、全勝した、ということになっている。
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脱原発の動きはヒステリー症状ではない
6月24日付けの大前研一さんの「ニュースの視点」は『脱原発〜「現象」ではなく実態を正確に伝えるリーダーシップの不在がもたらす混乱』は流石に的確な視点である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.原発再開の是非を問うイタリアの国民投票は、6月13日、原発反対派が9割を超えて圧勝し、新規建設や再稼働が凍結される見通しとなった。投票不成立を目指したベルルスコーニ政権への大きな打撃である。
2.今回のイタリアの国民投票は、原発の是非を含め4つの議案が対象になっていた。ベルルスコーニ首相の免責を求める法律改正も含まれており、総じて言えば「反ベルルスコーニ投票」であった。
3.原発に関しては9割以上の反対となり、世界中への影響が予想される。原発への依存度が高いフランスでは、もはや脱原発の選択肢を取ることはできない状況である。今回のイタリアの国民投票を受けて、フランス国内では「自分の国だけ原発を放棄し、フランスからエネルギーだけ購入するのは、イタリアは都合が良すぎるのではないか」という不満が出てきている。フランス国内でも、「本音を言えば、国内で原発は抱えたくない。フランスでも国民投票で原発の是非を問うべきだ」という意見もある。
4.日本でも、イタリアのニュースを受けて、日本国民にも原発の是非を問うべきだという意見がある。しかし、この種の意見を述べている人の多くは「実態」を理解していない。イタリアの原発は全部で4基あるが、この4基はすでに停止している。今回の投票でイタリア国民に問われたのは、「今ある4基は永遠に停止とし、その上で新しい安全な原発を4基作る」というベルルスコーニ首相の提案である。
5.この実態を理解していれば、イタリア国民の9割以上が反対するのも頷ける。今稼動している原発を止めるかどうかという判断ではないからである。この点で、ドイツや日本では全く条件が違う。ドイツの原発の中にはイタリア同様すでに停止しているものもある。「一時的に」止めているだけというものもあり、それを永遠に停止するかどうかは難しい判断になる。
6.日本の場合にはさらに難しい状況である。イタリアと日本の実態の違いを理解せずに議論を進めても意味はない。また原子力発電の是非を問うなら、同時に電気料金の値上がりについても議論しなくてはいけない。例えば、2007年の主要国のkWhあたりの家庭用電気料金を見ると、イタリアよりも高額なのは、原子力発電の割合が低くクリーンエネルギーを主体とするデンマークとオランダだけである。
7.日本はイタリアの75%程度で、米国・韓国は半額以下である。韓国は政治的な補助によるもので、米国の場合には自由競争の結果の低価格になっている。デンマークやオランダを見れば分かるように、クリーンエネルギーは高額である。ソフトバンクの孫社長をはじめ、クリーンエネルギーを推し進めようとしている人は多いが、この料金問題についてもきちんと議論すべきである。
8.現在、日本の太陽光発電、風力発電はどちらも全体の1%にもならない。これらを20%程度まで引き上げるとなれば、相当大変である。太陽光発電・太陽熱・風力による発電では、電気料金は格段に上がることを覚悟すべきでしある。
9.自民党の石原伸晃幹事長は14日の記者会見で、イタリアの国民投票で原発反対派が多数だったことについて「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは、心情としては分かる」の発言が取り沙汰されている。また、脱原発と自然エネルギーの可能性をさぐる自民党の「エネルギー政策議員連盟」の初会合が14日開かれ、脱原発の急先鋒、河野太郎衆院議員が「原発一本やりの自民党を変える」と強調した。河野議員としては、中曽根氏や与謝野氏に代表されるような古くから存在する「電力利権」議員へ対抗する姿勢を見せていると思う。
10.自民党は原発を押し進めてきたから、古い議員は何らかの形で原発に絡んでいる。例えば、原発の誘致にあたり住民から反対運動が起こる。その住民に対して国から補助金を持ってくるというのが、自民党の古い議員の得意技である。河野議員はこのような自民党の体質を変えようとしていと思う。
11.「クリーンエネルギーの象徴」「脱OPECの目玉」として原発が果たした良い側面もある。時流に乗って鬼の首を取ったように自民党を批判してみても、自民党の中でリーダーシップを発揮することはできない。仲間から自分だけいい格好していと思われれば、首相指名される見込みはほとんどない。
12.石原伸晃幹事長については「リーダー失格」である。「反原発」は国民の心の声であり、「集団ヒステリー」などではない。そんなことも分からない、感じ取れないのならリーダーになる資格はない。石原伸晃幹事長の「集団ヒステリー」が「イタリア国民」「日本国民」のいずれに向けて発せられたものであれ、全く実態を把握していないと言わざるを得ない。原発の関係者が反省をせず、国民に分かりやすい形できちんと説明していない、という点が大きく影響している。
13.今回のイタリアの国民投票は、4基の新しい原発を作るかどうかを問うものであった。現在稼動しているものを停止するわけではない。イタリア国民の反応は充分理解でき、めて冷静な判断だと言える。この実態を知らず、イタリア国民に対して「集団ヒステリー」と称しているなら失礼極まりない。日本国民に対して言ったのならば、「なぜ日本国民が原発に不安を感じているのか?」を理解してほしい。
1.原発再開の是非を問うイタリアの国民投票は、6月13日、原発反対派が9割を超えて圧勝し、新規建設や再稼働が凍結される見通しとなった。投票不成立を目指したベルルスコーニ政権への大きな打撃である。
2.今回のイタリアの国民投票は、原発の是非を含め4つの議案が対象になっていた。ベルルスコーニ首相の免責を求める法律改正も含まれており、総じて言えば「反ベルルスコーニ投票」であった。
3.原発に関しては9割以上の反対となり、世界中への影響が予想される。原発への依存度が高いフランスでは、もはや脱原発の選択肢を取ることはできない状況である。今回のイタリアの国民投票を受けて、フランス国内では「自分の国だけ原発を放棄し、フランスからエネルギーだけ購入するのは、イタリアは都合が良すぎるのではないか」という不満が出てきている。フランス国内でも、「本音を言えば、国内で原発は抱えたくない。フランスでも国民投票で原発の是非を問うべきだ」という意見もある。
4.日本でも、イタリアのニュースを受けて、日本国民にも原発の是非を問うべきだという意見がある。しかし、この種の意見を述べている人の多くは「実態」を理解していない。イタリアの原発は全部で4基あるが、この4基はすでに停止している。今回の投票でイタリア国民に問われたのは、「今ある4基は永遠に停止とし、その上で新しい安全な原発を4基作る」というベルルスコーニ首相の提案である。
5.この実態を理解していれば、イタリア国民の9割以上が反対するのも頷ける。今稼動している原発を止めるかどうかという判断ではないからである。この点で、ドイツや日本では全く条件が違う。ドイツの原発の中にはイタリア同様すでに停止しているものもある。「一時的に」止めているだけというものもあり、それを永遠に停止するかどうかは難しい判断になる。
6.日本の場合にはさらに難しい状況である。イタリアと日本の実態の違いを理解せずに議論を進めても意味はない。また原子力発電の是非を問うなら、同時に電気料金の値上がりについても議論しなくてはいけない。例えば、2007年の主要国のkWhあたりの家庭用電気料金を見ると、イタリアよりも高額なのは、原子力発電の割合が低くクリーンエネルギーを主体とするデンマークとオランダだけである。
7.日本はイタリアの75%程度で、米国・韓国は半額以下である。韓国は政治的な補助によるもので、米国の場合には自由競争の結果の低価格になっている。デンマークやオランダを見れば分かるように、クリーンエネルギーは高額である。ソフトバンクの孫社長をはじめ、クリーンエネルギーを推し進めようとしている人は多いが、この料金問題についてもきちんと議論すべきである。
8.現在、日本の太陽光発電、風力発電はどちらも全体の1%にもならない。これらを20%程度まで引き上げるとなれば、相当大変である。太陽光発電・太陽熱・風力による発電では、電気料金は格段に上がることを覚悟すべきでしある。
9.自民党の石原伸晃幹事長は14日の記者会見で、イタリアの国民投票で原発反対派が多数だったことについて「あれだけ大きな事故があったので、集団ヒステリー状態になるのは、心情としては分かる」の発言が取り沙汰されている。また、脱原発と自然エネルギーの可能性をさぐる自民党の「エネルギー政策議員連盟」の初会合が14日開かれ、脱原発の急先鋒、河野太郎衆院議員が「原発一本やりの自民党を変える」と強調した。河野議員としては、中曽根氏や与謝野氏に代表されるような古くから存在する「電力利権」議員へ対抗する姿勢を見せていると思う。
10.自民党は原発を押し進めてきたから、古い議員は何らかの形で原発に絡んでいる。例えば、原発の誘致にあたり住民から反対運動が起こる。その住民に対して国から補助金を持ってくるというのが、自民党の古い議員の得意技である。河野議員はこのような自民党の体質を変えようとしていと思う。
11.「クリーンエネルギーの象徴」「脱OPECの目玉」として原発が果たした良い側面もある。時流に乗って鬼の首を取ったように自民党を批判してみても、自民党の中でリーダーシップを発揮することはできない。仲間から自分だけいい格好していと思われれば、首相指名される見込みはほとんどない。
12.石原伸晃幹事長については「リーダー失格」である。「反原発」は国民の心の声であり、「集団ヒステリー」などではない。そんなことも分からない、感じ取れないのならリーダーになる資格はない。石原伸晃幹事長の「集団ヒステリー」が「イタリア国民」「日本国民」のいずれに向けて発せられたものであれ、全く実態を把握していないと言わざるを得ない。原発の関係者が反省をせず、国民に分かりやすい形できちんと説明していない、という点が大きく影響している。
13.今回のイタリアの国民投票は、4基の新しい原発を作るかどうかを問うものであった。現在稼動しているものを停止するわけではない。イタリア国民の反応は充分理解でき、めて冷静な判断だと言える。この実態を知らず、イタリア国民に対して「集団ヒステリー」と称しているなら失礼極まりない。日本国民に対して言ったのならば、「なぜ日本国民が原発に不安を感じているのか?」を理解してほしい。