2013年06月
G8でアベノミクスが評価されたという報道はウソ。日本の大新聞、テレビ記者のレベルは低い。現地で日本政府関係者から配布された資料をそのまま記事にしているだけ。
6月28日付けの大前研一さんの「 ニュースの視点」発行部数176,218部)は『日米関係・日ロ関係・G8首脳会談〜客観的事実を理解する情報収集法』と題する記事である。日本の大新聞、テレビの記者たちに、しっかりしろと言いたくなる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.英国・北アイルランドで開かれていた主要国(G8)首脳会議での日米首脳会談が「オバマ大統領からキャンセルされた」ことがわかった。米中首脳会談の終了直後であることから、安倍首相はオバマ大統領と日米首脳会談を開き、強固な同盟関係を示す考えだったが、オバマ大統領は「他国首脳との会談を優先させたい考え」だった。
2.安倍首相は2月にオバマ大統領と電話会談をしたばかりだったので、日本側からオバマ大統領との会談を断った、という趣旨の発言をしていた。実際にはオバマ大統領から断られていた。
3.米国の国務省は、安倍首相、石原前都知事、橋下大阪市長などが台頭し、日本の中枢が極右化しつつあると懸念している。そのような背景もあって優先順位を下げられたと思われる。
4.TIME誌は、今回の習近平国家主席とオバマ大統領の米中首脳会談を高く評価している。 かつて中国との国交を開いたニクソン元大統領に匹敵する功績だと称えている。太平洋の2代勢力として、米中が新しい時代を切り開く第一歩になったという論調である。
5.完全に日本は枠外に追いやられてしまい、米国の眼中にはないという事実を受け止めるべきである。また米国とロシアの関係を見ると、オバマ大統領とロシアのプーチン大統領が17日、主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)の会場内で約2時間会談した。
7.その中で、シリアのアサド政権存続の是非や欧米による反体制派への軍事支援をめぐって意見交換が行われたが、議論は平行線に終わった。G7には参加していなかったプーチン大統領は、今回のG8では、特にシリア問題について一人で総攻撃を受ける形になった。
プーチン大統領が相当イライラしていた。あの延長線上でオバマ大統領と議論をしても、 上手くいかない。シリア問題については完全に議論がかみ合わないまま終わった。
8.プーチン大統領としては、戦略・核兵器の削減に関するオバマ大統領の提案に対して、前回の約束を半分も果たしていない米国に言われたくない、という思いもあったと思う。この点も、プーチン大統領の気分が荒れる原因になったと思う。
9.主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は18日、多国籍企業の課税逃れを防止するルール作りなどを盛り込んだ首脳宣言を採択して閉幕した。
10.安倍総理大臣はサミット終了後の記者会見で「アベノミクスについて賛同を引き出し、北朝鮮の核と拉致問題について明確な立場を主張する狙いを達成し、大きな成果をあげることができた」と述べた。このニュースが日本で報道されたとき、日本のメディアのレベルはこんなにも低いのか、と呆れた。
11.日本では「アベノミクスが一定の評価を得た」とされているが、実態は全く違う。 G8で安倍首相によるアベノミクスの説明を聞いた各国の首脳は、キョトンとしていた。 金融、財政、成長戦略という3つは、わざわざアベノミクスなどと名前をつけなくても、世界の常識である。目新しい要素は何もないのに「アベノミクス」などと言っているのか、不思議に思っている。
12.アベノミクスが評価を受けたと報じられたが、実際にはタガをはめられた。第1の「金融緩和」については出口戦略で世界に迷惑をかけないように注意を促され、第2の財政については「財政出動」ではなく「財政規律」をしっかりやることを約束させられている。
13.日本の記者はG8の現場に行っていても、しっかりと内容を捉える常識がなく、またそれを吟味するスキルもない。現地で配布されたブリーフィングの資料を、大本営発表そのままに記事にしているだけである。日本中の新聞で「アベノミクスが評価を受けた」と 報じられたのだから、恐ろしい限りである。こうした事態は多い。
14.前述の安倍首相がオバマ大統領から首脳会談を断られていたというニュースも、海外のメディアを見れば、欧州も韓国も中国も、すべてオバマ大統領側から日米首脳会談を断ったとしているのに、日本だけが安倍首相から断ったと報じていました。日本の記者は政治部のぶら下がり記者である。政治的な配慮や圧力で事実を書けないのかも知れませんが、それ自体が大きな問題である。事実を自分で入手することができないとしたら致命的である。
15.日本で流れるニュースを鵜呑みすると、客観的な事実を見失う。自分自身でニュースを正しく読み解くスキルを身につけることが大切である。
1.英国・北アイルランドで開かれていた主要国(G8)首脳会議での日米首脳会談が「オバマ大統領からキャンセルされた」ことがわかった。米中首脳会談の終了直後であることから、安倍首相はオバマ大統領と日米首脳会談を開き、強固な同盟関係を示す考えだったが、オバマ大統領は「他国首脳との会談を優先させたい考え」だった。
2.安倍首相は2月にオバマ大統領と電話会談をしたばかりだったので、日本側からオバマ大統領との会談を断った、という趣旨の発言をしていた。実際にはオバマ大統領から断られていた。
3.米国の国務省は、安倍首相、石原前都知事、橋下大阪市長などが台頭し、日本の中枢が極右化しつつあると懸念している。そのような背景もあって優先順位を下げられたと思われる。
4.TIME誌は、今回の習近平国家主席とオバマ大統領の米中首脳会談を高く評価している。 かつて中国との国交を開いたニクソン元大統領に匹敵する功績だと称えている。太平洋の2代勢力として、米中が新しい時代を切り開く第一歩になったという論調である。
5.完全に日本は枠外に追いやられてしまい、米国の眼中にはないという事実を受け止めるべきである。また米国とロシアの関係を見ると、オバマ大統領とロシアのプーチン大統領が17日、主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)の会場内で約2時間会談した。
7.その中で、シリアのアサド政権存続の是非や欧米による反体制派への軍事支援をめぐって意見交換が行われたが、議論は平行線に終わった。G7には参加していなかったプーチン大統領は、今回のG8では、特にシリア問題について一人で総攻撃を受ける形になった。
プーチン大統領が相当イライラしていた。あの延長線上でオバマ大統領と議論をしても、 上手くいかない。シリア問題については完全に議論がかみ合わないまま終わった。
8.プーチン大統領としては、戦略・核兵器の削減に関するオバマ大統領の提案に対して、前回の約束を半分も果たしていない米国に言われたくない、という思いもあったと思う。この点も、プーチン大統領の気分が荒れる原因になったと思う。
9.主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は18日、多国籍企業の課税逃れを防止するルール作りなどを盛り込んだ首脳宣言を採択して閉幕した。
10.安倍総理大臣はサミット終了後の記者会見で「アベノミクスについて賛同を引き出し、北朝鮮の核と拉致問題について明確な立場を主張する狙いを達成し、大きな成果をあげることができた」と述べた。このニュースが日本で報道されたとき、日本のメディアのレベルはこんなにも低いのか、と呆れた。
11.日本では「アベノミクスが一定の評価を得た」とされているが、実態は全く違う。 G8で安倍首相によるアベノミクスの説明を聞いた各国の首脳は、キョトンとしていた。 金融、財政、成長戦略という3つは、わざわざアベノミクスなどと名前をつけなくても、世界の常識である。目新しい要素は何もないのに「アベノミクス」などと言っているのか、不思議に思っている。
12.アベノミクスが評価を受けたと報じられたが、実際にはタガをはめられた。第1の「金融緩和」については出口戦略で世界に迷惑をかけないように注意を促され、第2の財政については「財政出動」ではなく「財政規律」をしっかりやることを約束させられている。
13.日本の記者はG8の現場に行っていても、しっかりと内容を捉える常識がなく、またそれを吟味するスキルもない。現地で配布されたブリーフィングの資料を、大本営発表そのままに記事にしているだけである。日本中の新聞で「アベノミクスが評価を受けた」と 報じられたのだから、恐ろしい限りである。こうした事態は多い。
14.前述の安倍首相がオバマ大統領から首脳会談を断られていたというニュースも、海外のメディアを見れば、欧州も韓国も中国も、すべてオバマ大統領側から日米首脳会談を断ったとしているのに、日本だけが安倍首相から断ったと報じていました。日本の記者は政治部のぶら下がり記者である。政治的な配慮や圧力で事実を書けないのかも知れませんが、それ自体が大きな問題である。事実を自分で入手することができないとしたら致命的である。
15.日本で流れるニュースを鵜呑みすると、客観的な事実を見失う。自分自身でニュースを正しく読み解くスキルを身につけることが大切である。
道元は、権力に頼らず、都会を離れて越前(福井県北部)の山深い自然の中に禅道場となる永平寺を建立し、禅修行に徹した。
あなたの知らない道元と曹洞宗 (歴史新書) [新書]
「山折哲雄監修:あなたの知らない道元と曹洞宗、洋泉社、2013年」は難しい宗教の由来、流儀などが分かりやすく解説されている。「第1部:早わかり曹洞宗1、曹洞宗の両祖:高祖・道元と太祖・瑩山」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.曹洞宗では他の宗派でいう宗祖を、「両祖」といって2人立てている。1人は、中国・宋へ渡り、日本に曹洞宗を伝えた道元(1200〜1253)である。中国禅宗の五家七宗の1つである曹洞宗の高僧・如浄に師事、印可(弟子がさとりを開いたことを師僧が認めた証)を得て帰国し、永平寺に代表される禅の専修道場を建てた。もう1人は、曹洞宗を教団として確立させた瑩山 (1264〜1325)である。
2.道元が生きたのは、今から8百年ほど前の鎌倉時代前期である。およそ4百年続いた平安時代だが、その末期になると政治は腐敗し、乱世となった。さらに飢饉に見舞われて、人々は「末法」の世が到来したとして恐れおののいた。そんな時代に登場したのが、法然(浄土宗)、親鷺(浄土真宗)、栄西(臨済宗)、道元(曹洞宗)、日蓮(日蓮宗)ら、鎌倉仏教の担い手たちである。
3.彼らは皆、比叡山に学び、万民救済を目的とした誰にでもわかる仏教を説き、民衆の心をつかんだ。道元は、比叡山での修行時代、「すべての生き物には仏性(本来持つ仏としての性質)があるというのに、なぜ人は仏になるために修行するのか」という疑問にぶつかった。それに答えてくれる僧はおらず、道元は比叡山をおりて栄西の門を叩き、宋に渡り、さとりを得た。道元は、坐禅こそ、さとりの証であるとして、只管打坐(しかんたざ:ただひたすら全身全霊で坐ること)をすすめた。
4.瑩山は、道元からかぞえて4代目にあたる。瑩山が生きたのは鎌倉時代後期である。2度の元冠(1274年と12891年)以降、北条氏の率いる鎌倉幕府は専制政治によって支配力は強まったが、反面、没落する御家人が.悪党化するなど社会、不安を招いていた。そんななか、瑩山は多くの優秀な弟子を育て、下級武士や商人、農民など広く民衆に曹洞宗の教えを展開させた。
5.曹洞宗では、日本に曹洞宗の教えを体系づけた道元を法灯(宗旨)の祖として「高祖」と呼び、今日の大教団の礎を築いた瑩山を寺統(教団)の祖として「太祖」と呼んでいる。
6.「禅宗」とは、坐禅を修行の根本とする宗派の総称である。日本の禅宗のおもな宗派は、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗(おうばくしゅう)の三宗派があり、すべて中国を発祥としている。
7.臨済宗は、平安時代が終わりを告げる建久2年(1191)に、栄西(1141〜1215)が中国・宋から伝えた。臨済宗の禅は、坐禅をして公案(祖師の言葉や言動を基にした課題)を考え、師僧と、いわゆる禅問答を繰り返し、さとりを開く「看話禅:かんなぜん」である。栄西は、新政権である鎌倉幕府の帰依を得て、京都に建仁寺を建立した。その後、中国から禅僧を招いて鎌倉に建長寺や円覚寺などを建立し、臨済宗は隆盛した。現在、臨済宗は14派に分かれている。
8.曹洞宗は、鎌倉時代前期の安貞元年(1127年)に道元が宋から伝えた。曹洞宗の禅は、坐禅こそが仏の実現であるとして、ただ黙々と坐る「黙照禅」である。道元は、権力に頼らず、都会を離れて越前(福井県北部)の山深い自然の中に禅道場となる永平寺を建立し、禅修行に徹した。道元示寂後、鎌倉時代後期に曹洞宗のもう一人の祖師である瑩山(1264〜1325)が登場し、民間信仰を取り入れるなどして民衆の支持を得た。
免疫というのは、ワクチンによる獲得免疫だけでなく、私たちのからだを守る防御システムすべてのことである。免疫の中心的な役割を担っているのが白血球である。
まじめをやめれば病気にならない (PHP新書) [新書]
「安保徹:まじめをやめれば病気にならない、PHP研究所、2011年」の「第2章:究極の免疫力」の「進化した人間の免疫機能」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.「免疫」という言葉はよく使われるが、簡単にいえば、からだに病気の菌などが入り込んだときに、それが発症する前に察知して退治するシステムである。また、からだの異常、たとえばがん細胞などが発生したときに、それを取り除くはたらきである。つまり免疫は、生体のホメオスタシス(恒常性)を維持するはたらきを担っている。
2.ホメオスタシスとは、「生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず、生体の状態を一定に保とうとする」機能を指す。この生体のホメオスタシスのはたらきによって、私たちは健康に生活することができる。
3.はしかなどに1度かかると、「免疫ができて2度とかからない」とよく言われるが、そのときの「免疫」とは、そのウイルスの情報を記憶しておいて、同じウイルスがふたたび入り込んだときにすばやく処理する仕組みで、免疫システムのなかの「獲得免疫」によるものである。これはリンパ球が担っている。
4.「免疫」というのは、この獲得免疫だけでなく、私たちのからだを守る防御システムすべてのことである。免疫の中心的な役割を担っているのが白血球である。血液量は人の体重の約8パーセントを占めているが、この血液中の血漿という液体成分のなかには、酸素を運ぶ役割を担っている赤血球、出血時に血液を凝固させて出血を止める血小板、そして白血球の3種類の固体成分(血球成分)があり、それぞれ約96、3、1パーセントの割合で構成されている。血漿と血球の比率は55対45で、血漿は96パーセントが水分、ほかに血漿たんぱく質4パーセントと、糖、脂肪などから成っている。
5.白血球は、血液1マイクロリットルのなかに4000〜8000個含まれている。血液はほとんどが骨髄でつくられますが、白血球の一部は脾臓やリンパ節でもつくられる。白血球は、マクロファージ(単球)、顆粒球(おもに好中球)、リンパ球で構成されている。その割合は、健康な人でマクロファージ5パーセント程度、リンパ球35〜41パーセント、顆粒球が54〜60パーセントくらいである。
6.白血球は進化の過程で、マクロファージ、顆粒球、リンパ球で構成されるようになった。人間のからだは、60兆個の細胞からできている。生物の歴史を見ると、原始的な単細胞生物からは38億年、多細胞生物になって10億年、そして人類の歴史はせいぜい数10万年で、現在の新人類となってからは3万年程度である。
7.単細胞生物はアメーバで知られているが、アメーバは1個の細胞である。細菌などを貪食して細胞分裂をくりかえし増殖する。人間のからだは多細胞でできていて、それぞれの細胞が、外側では皮膚に、内側では腸管や筋肉、骨などに分化してきた。それぞれに分化した細胞は、からだを直接守るはたらきを失っていきた。
8.その弱点をカバーするために、防御細胞を特別に準備した。それが白血球系である。白血球の基本はマクロファージである。顕微鏡で見ると、マクロファージはアメーバとよく似ており、最初にできたからだを守るための細胞であり、元祖白血球といえる。
9.マクロファージは全身に分布し、防御系の基本を成している。脳にはグリア細胞、肝臓にはクッパー細胞、肺には肺胞マクロファージ、血液内で循環している単球、組織に広く分布している組織球、皮膚にはランゲルハンス細胞のかたちで存在する。
10.マクロファージは、異物が侵入すると、すぐにその場に駆けつけ異物を食べて分解(貪食)したり、老化した異常細胞を処理する役割を果たす。無脊椎動物の段階までは、このマクロファージの防御システムしかないが、進化した脊椎動物では防御の効率を高めるために、マクロファージから機能が分化して顆粒球とリンパ球ができた。
自分が信じていない宗教にも敬意を払うことができる日本人は、宗教がらみの紛争の仲介役になるなど、国際社会への貢献ができる。
池上彰の宗教がわかれば世界が見える (文春新書) [単行本]
「池上彰著:池上彰の宗教がわかれば世界が見える、文藝春秋社、2012年代9刷」
日本人は無宗教なのか?の『コーラン』焼き捨て事件」は参考になる。
1.日本人の宗教観は、海外の一神教の人たちからは違和感をもたれているが、一面ではすばらしい宗教観である。
2.2011年3月、アメリカのある牧師が、「コーラン」を焼き捨て、その映像をネットで公開した。アフガニスタンでは、このことへの抗議から暴動に発展し、国連事務所が襲われて、大勢の人が殺された。アメリカがやっとの思いでアフガニスタンを安定化しつつあったのが、これで一挙に崩れてしまった。
3.一人の牧師の無分別な「コーラン」焼き捨てによって、アメリカのアフガニスタン政策が一挙に大失敗に終わるという、とんでもないことが起きる。その牧師は「責任を感じていない」と、言っている。
4.ほかの宗教を信じている人に敬意を払うという態度がないと、このようなひどい事態になる。2011年2月にムバラク大統領の独裁政権を追いだしたエジプトでも、イスラムの信仰心が高まる中、国内にいるコプト教というキリスト教徒に対する迫害が起きた。
5.ほかの人が自分とは違う宗教を信じていることを、それはそれで尊重するということが、なぜできないのだろうと思わざるをえない。日本人には、それができる。自分が信じていない宗教にも敬意を払うことができる。だから、宗教がらみの紛争の仲介役になるなど、国際社会への貢献ができる。
インドのIT関連の職業は最近できたばかりで、カースト制度を超えた意欲の高い若者が集まってくるので、IT産業が盛んになった。
池上彰と考える、仏教って何ですか? [単行本(ソフトカバー)]
「池上彰著:池上彰と考える 仏教って何ですか? 、 飛鳥新社、2012年」が面白い。 第1章:仏教って何ですか?」の「三大宗教のひとつ、仏教はどこでどのように生まれた?」「古代インドの人々は、ブッダにどんな救いを求めた?」の小節の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.仏教では、この世は四苦八苦に満ちているのだから、2度とこの世に生まれてこない状態が理想だと明言している。まるで人生をすべて否定し、冷たい姿勢にも思えるが、こうしたブッダの教えが魅力的だったからこそ、仏教は多くの人々に受け入れられ、広まっていった。その背景には、伝統的なインド社会の成り立ちが深く関わっている。
2.古代インドのバラモン教、その流れをくむヒンドゥー教には、カースト制度という厳しい身分制度がある。生まれた家によって身分が決まり、非常に細かく分けられたカーストによって、就く仕事も、結婚相手の身分も決まっている。現在のインドではカースト制度は法的に禁止されているが、実際には厳然と残っている。いい意味でとらえれば、人口の多いインドの人々は、カースト制度によって仕事を分け合い、ワークシェアリングを実現しているが、生まれた家によって一生が決まってしまうような人生を、誰もが好ましいと思っているわけではない。
3.インドは近年、IT大国として急成長している。ITの世界では色々なカーストの人々が働いている。IT関連の職業は最近できたばかりで、カーストが指定されていないからである。カースト制度を超えた人生を夢みて、意欲の高い若者が集まってくるので、IT産業が盛んになった。
4.ブッダの活躍した古代インドの時代には、カースト制度は今よりずっと強固なものだった。特に身分の低い多くの人々にとっては、生まれながらにして辛い人生が待っており、そこに甘んじる以外の選択肢はなかった。カースト制度をべースに成り立っているバラモン教が信じられていた時代、そこから抜け出す術はなかった。
5.そこに登場したのがブッダである。カースト制度というルールに閉じ込められた人々にとって、ブッダの教えはしつくりきた。その苦しみから自由になれる道があるのだとブッダは説いた。
6.ブッダ自身はクシャトリヤという王族・武人のカーストに生まれたが、教えを説くにあたって、相手の身分や職業を問わなかった。ブッダの信者の中には、大国マガダ国の王もおり、寺院を寄進してくれるほどの大スポンサーだったが、とくに優遇されていたという記録はない。身分が高いからといって、ブッダは説法の順番を繰り上げたりすることもなく、請われるままに、誰にでも教えを説いた。
7.弟子の中には、人を殺した罪人もいたし、遊女もいた。カースト制度で身分が低かった職業のひとつである鍛冶職人もいた。生まれながらにして苦しみを抱える者、生きていく中で苦しみを抱えてしまった者、すべての人々がブッダの教えに救いを見出し、ブッダがそれに応えることで、仏教という宗教は大きくなっていった。