2015年08月
日本では裁判に関する映画は皆無に近い。理由は、判決が「利益衡量」に基づくもので「正義か悪か」はどうでもよく、人々に感動を与えることができず映画化できない。
「中村修二著:ごめん!青色LED開発者最後の独白、ダイヤモンド社、2005年」は参考になる。「第1章:今回の裁判結果がもたらす影響とは:金額の多寡よりも重要なこと」の「技術や特許を目利きできる米国の投資家」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日米両方で同時に裁判を経験した経験から、日本の裁判が真実を追求する機関ではなく、真実に基づく判決ができない機関であることを確信した。日本の裁判の判決や和解勧告では、両者の「落としどころ」を見つけるような適当であいまいな判決となってしまう。そこには「正義か悪か」の判断もない。
2.「真実」を追求して「正義」の判決を下すようなシステムにしないと、「正義」の判決を期待して訴訟を起こす日本国民を裏切っていることになる。このような民主主義の根幹に関わることが日本の司法には欠落している。
3.日米の司法制度の違いは以下の通りである。
(1)証拠開示義務の問題。米国では裁判が始まると、最初の1〜2年間は、被告、原告の両方が訴訟に関するすべての証拠書類を裁判所に提出する証拠開示義務という過程がある。この証拠書類は、原告、被告の両方の弁護士が証拠書類として共有して使用できる。日本にはの証拠開示義務はない。日本では個人が元いた企業を訴えた裁判では、企業側は企業に有利な証拠書類だけを企業に有利になるように出して裁判を戦う。米国のように原告、被告側のすべての証拠書類の開示義務を制度化すべきである。
(2)証人尋問の問題。米国での裁判では、証拠開示義務が終わると、その証拠書類に基づいて、関係者全員の証人尋問を行う。この証人尋問は誰にでもでき、証人尋問の請求がきたら拒否できない。拒否すればなにか隠しているということで、事実上、拒否したほうが負ける。もしも証人尋問で偽証をすれば、刑務所行きの重罪である。日本では、証人尋問はあるにはあるが、拒否できる。証人尋問で偽証しても罪を問われることは皆無に近い。
4.日本の裁判では月に1回程度、法廷があり、原告と被告の弁護士が裁判所に行かなければならないが、法廷は15分間くらいで終わる。法廷である。ることと言えば、原告、被告が毎月提出する膨大な準備書面を確認するのがすべてである。5分やせいぜい15分で終わる。つまり、日本の訴訟は、原告、被告が提出した膨大な準備書面を法廷外で裁判長が読んで、判断、判決を下す、口答ではなく書面での戦いである。
5.裁判官と被告、原告の弁護士の三者間での口答での議論などない。被告、原告が提出した膨大な準備書面を、裁判長がまったく読まずに判決を出しても、チェックのしようがない。米国での裁判では、証拠開示義務、証人尋問のあと、法廷がある。5分から15分で終わる日本のものとは大きく違い、1回の法廷が3日〜1週間も続く。このような法廷が1〜2カ月に1回はあり、そこでは裁判長、被告、原告の3者間で激論が交わされる。
6.裁判長が訴訟内容や論点を詳しく知っていなければ議論にならない。重要な裁判は、これらの激論を陪審員に聞かせ、陪審員に判決を委ねる。
7.裁判でいったいなにを目指すかは、日米では大きな違いがある。米国では「正義か悪か」を基準にして判決を下し、日本では原告の利益と被告の利益のバランスが重視される。原告が訴訟を起こす主な原因は、なにか気に食わない紛争があり、怒り心頭に発したためで、裁判所に期待しているのは「正義か悪か」の判決を期待している。
8.日本の裁判ではこの「正義か悪か」は二の次で、真実もわからないので「正義か悪」の判断もできない。日本の裁判で最も重要なことは「利益衡量」である。中村氏の裁判を例にするなら、被告の日亜化学は従業員が約3千人、原告は中村氏1人である。被告を勝訴させたほうが、従業員3千人が利益の恩恵を受ける。このため被告を勝たせようとするのが「利益衡量」である。
9.米国では裁判に関する映画も多く作られる。裁判所が「正義か悪か」の判決を下し、人々が裁判所の判決に感動するからである。日本では裁判に関する映画は皆無に近い。その理由は、判決が「利益衡量」に基づくもので「正義か悪か」はどうでもよく、人々に感動を与えることができず映画化できない。
10.日本では、個人が組織を訴えて高額、訴訟を起こすのは、ほとんど不可能である。請求金額が増えれば増えるほど、裁判費用が上がる。この仕組みはまったく不可解で、同じ訴訟内容でも請求金額が増えれば裁判所に支払う金額も増えていくのは理解できない。中村氏が今回、日亜へ請求した2百億円では、裁判所へ支払う裁判費用としての収入印紙は約4千万円で、敗訴すれば、戻ってこない。勝てばいいけれど、裁判に負ければ大損になる。
最近の新聞記者たちが、恵まれたエリートサラリーマンの視点からばかり社会を捉え、社会的弱者の存在を軽んじる構造改革路線に寛容なのはこのためである。
「佐野眞一編著:メディアの権力性、岩波書店、2005年」の「斎藤貴男著:権力そのものと化す大手新聞」は参考になる。著者はバーミンガム大学修士(国際学MA)を卒業して、週刊文春記者を経て現在フリーである。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本という国全体の枠組みや国民生活のあり方を大幅に変える方向性を、政権与党が容易に打ち出すことができたのは『読売新聞』のお陰である。自民党の主張とほとんど同じ論陣を張ってきた同紙は、憲法改正試案を大々的に報道している。
2.市場経済にすべてを委ねる結果、一握りの恵まれた階層が富を独占していく新自由主義は、社会的コストという名のババを掴ませるために、家族の絆を取り戻したいという素朴な庶民感情を逆手に取り、市民は権力に都合よく動員されていく。
3.イラクで3人の日本人高遠菜穂子さん(ボランティア活動家)、郡山総一郎さん(フリーカメラマン)、今井紀明さん(フリーライター)が武装グループに拉致された際、産経新聞は人質やその家族たちを徹底的に叩いた。人質たちの安否が第一に気遣われて当然の時点で、敢えて見殺しを示唆した産経の姿勢は、日本政府にとって最高の援軍になった。
4.イラクの人質に限らず、あらゆる人間の行動に自己責任が伴う。高遠さんや安田さんたち5人の公にされた遺族のメッセージは、国家や世間に謝ることから始める。現代のこの国で村八分にされず生きていくための処世訓をいつの間にか日本国民に身につけてしまった。
5.「厳冬の山に夏の軽装で出かけた」に等しい日本人の国際的無知と非常識に対する反省と戒めが必要である。そうでなければ若者の死は尊い教訓として生きてこないだろう。ジャーナリズムまでが、公人でもない彼らやその家族に向かって「殺されて当然」のごとき野次の集中砲火を浴びせている。人間一人ひとりの志の高低が生死のいずれに値するのかなどという格付けを、そもそも第三者が下すことはできない。
6.産経新聞の価値基準は、権力が国益だとした戦争の邪魔者はぶっ叩いて見せしめにする。協力する者、邪魔にならぬうちにいなくなった者は、戦時下におけるあるべき国民像として称揚する。太平洋戦争中の新聞と何も変わらない。
7.朝日新聞のブレも大きい。それなりの権力批判を完全には忘れ去ってはいないらしいものの、時折、読売、産経のような原稿が散見されて不気味である。アメリカ軍が9・11事件の報復だとしてアフガニスタンへの空爆に踏み切った際の社説の見出しの「限定ならやむを得ない」は、朝日の変節を示す。
8.アフガニスタンやイラクの、何の落ち度もない一般市民の生命よりも、権力者の苦渋とやらに思いを馳せたがるコラムを一面に載せる新聞が、いくら日頃は戦争の悪徳を説いていたところで、信用できない。
9.新聞社も企業には違いない。顧客に支持されたいと願う姿勢も結構だが、今の新聞記者は情報産業のサラリーマンであって、ジャーナリストではない。啓蒙だの市民の知る権利の代表などという形容も不遜に過ぎる。せめて己だけでも権力のチェック機能たらんとする志、時には功名心になりもする、あくまでも個人の思いで、初めて新聞ジャーナリズムが成立する。最近の新聞記者たちの多くが、恵まれたエリートサラリーマンの視点からばかり、世界や社会を捉えている。彼らが、社会的弱者の存在をあからさまに軽んじる昨今の構造改革路線に寛容なのはこのためである。各紙とも一流大学を優秀な成績で卒業したエリートばかりを採用してきた筈めが、この重大な歴史の曲がり角で噴出している。
1.日本という国全体の枠組みや国民生活のあり方を大幅に変える方向性を、政権与党が容易に打ち出すことができたのは『読売新聞』のお陰である。自民党の主張とほとんど同じ論陣を張ってきた同紙は、憲法改正試案を大々的に報道している。
2.市場経済にすべてを委ねる結果、一握りの恵まれた階層が富を独占していく新自由主義は、社会的コストという名のババを掴ませるために、家族の絆を取り戻したいという素朴な庶民感情を逆手に取り、市民は権力に都合よく動員されていく。
3.イラクで3人の日本人高遠菜穂子さん(ボランティア活動家)、郡山総一郎さん(フリーカメラマン)、今井紀明さん(フリーライター)が武装グループに拉致された際、産経新聞は人質やその家族たちを徹底的に叩いた。人質たちの安否が第一に気遣われて当然の時点で、敢えて見殺しを示唆した産経の姿勢は、日本政府にとって最高の援軍になった。
4.イラクの人質に限らず、あらゆる人間の行動に自己責任が伴う。高遠さんや安田さんたち5人の公にされた遺族のメッセージは、国家や世間に謝ることから始める。現代のこの国で村八分にされず生きていくための処世訓をいつの間にか日本国民に身につけてしまった。
5.「厳冬の山に夏の軽装で出かけた」に等しい日本人の国際的無知と非常識に対する反省と戒めが必要である。そうでなければ若者の死は尊い教訓として生きてこないだろう。ジャーナリズムまでが、公人でもない彼らやその家族に向かって「殺されて当然」のごとき野次の集中砲火を浴びせている。人間一人ひとりの志の高低が生死のいずれに値するのかなどという格付けを、そもそも第三者が下すことはできない。
6.産経新聞の価値基準は、権力が国益だとした戦争の邪魔者はぶっ叩いて見せしめにする。協力する者、邪魔にならぬうちにいなくなった者は、戦時下におけるあるべき国民像として称揚する。太平洋戦争中の新聞と何も変わらない。
7.朝日新聞のブレも大きい。それなりの権力批判を完全には忘れ去ってはいないらしいものの、時折、読売、産経のような原稿が散見されて不気味である。アメリカ軍が9・11事件の報復だとしてアフガニスタンへの空爆に踏み切った際の社説の見出しの「限定ならやむを得ない」は、朝日の変節を示す。
8.アフガニスタンやイラクの、何の落ち度もない一般市民の生命よりも、権力者の苦渋とやらに思いを馳せたがるコラムを一面に載せる新聞が、いくら日頃は戦争の悪徳を説いていたところで、信用できない。
9.新聞社も企業には違いない。顧客に支持されたいと願う姿勢も結構だが、今の新聞記者は情報産業のサラリーマンであって、ジャーナリストではない。啓蒙だの市民の知る権利の代表などという形容も不遜に過ぎる。せめて己だけでも権力のチェック機能たらんとする志、時には功名心になりもする、あくまでも個人の思いで、初めて新聞ジャーナリズムが成立する。最近の新聞記者たちの多くが、恵まれたエリートサラリーマンの視点からばかり、世界や社会を捉えている。彼らが、社会的弱者の存在をあからさまに軽んじる昨今の構造改革路線に寛容なのはこのためである。各紙とも一流大学を優秀な成績で卒業したエリートばかりを採用してきた筈めが、この重大な歴史の曲がり角で噴出している。
アローラ氏は「無限の信頼」と言っているが、こういうタイプの人は、取締役をやめたらさっさと持ち株を売ってしまう。彼が株を売る動きを見せていないか監視するほうが重要である。
8月28日付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 178,813部)は「グーグル、テスラモーターズ、アマゾン、バークシャー・ハザウェイ、ソフトバンクの話題について」と題する記事である。新事業に関わる人間関係の難しさがうかがえて参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米検索大手グーグルは10日、経営組織の大幅な再編を発表した。持ち株会社「アルファベット」を新たに設立し、主力のネット検索・広告事業とドライバーレス(無人運転)カーなどのベンチャー事業を分離して新会社の傘下に収めるた。
2.ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)が新会社のCEOとなり、グループ内で最大事業部門となるグーグルのCEOには上級副社長のサンダー・ピチャイ氏が就任する。実態としては持株会社を作って、現在それぞれの事業を担当している人のポジションが上がる形だが、本質的にはあまり大きな変更ではない。それぞれの責任は明確化する。グーグルがネット検索以外の事業について、どこまで気合が入るのか、注目してみたい。
3.東洋経済オンラインは、「1台売って4000ドル赤字を出すテスラの苦悩」と題する記事を掲載した。テスラは、第2四半期決算で赤字幅が拡大。営業経費と研究開発費が増大した一方で、売上が低価格モデルにシフトし、海外の売上高がドル高の影響を受けて減少したことが響いたとし、「いずれかの時点でテスラが資金調達を行う可能性は非常に高い」とする証券アナリストの分析を紹介している。
4.イーロン・マスクにとっても正念場を迎えつつある。600万円の車を売って50万円の損失が出るという状況をイメージすると、確かにそのような自体はあり得る。テスラは充電インフラを全米に広げようと作っているが、こちらの資金もかなりかかっている。充電インフラが十分に整備されていないために、次世代モデルが売れず、仕方なく安いモデルを販売するという悪循環である。
5.もっと早い時点で資金調達をしておくべきだった。テスラは本体価格の45%を買取保証なども打ち出しており、見えない負債額も大きい。さすがのイーロン・マスクでも資金調達が難しい。電気自動車では唯一の成功事例と言われてきたが、まだその橋は渡りきっていない。
6.ギズモードは「アマゾン本社は壮絶なブラック企業?」と題する記事を掲載した。これはNYタイムズの記事を掲載したもので、元・現従業員100人以上の企業へインタビューした結果、アマゾンにはただひたすら会社のためにロボットのように働く人材のみが生き残っていくという事実が明らかになったと紹介している。
7.ジェフ・ベゾス氏自身はこの記事に反発しているが、彼の1点集中する性格を鑑みるとこうなる。こういうことが発表されると、その企業は今後改善されていく可能性が高いので期待しても良い。
8.現在、アマゾンはAWSというクラウドコンピューティングでも収益を上げてきている。現在の主力であるEコマース事業に比べて、こちらは事業の特性を考えても新しいカルチャーができつつある。Eコマース側は、まだジェフ・ベゾス氏のようなカリスマ的な存在が先導して行かなくてはいけない時期だから、現在の状況も仕方ない。可能ならば、Eコマース側はジェフ・ベゾス氏が担当し、AWS側は別の人間が担当していくべきである。
9.著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは10日、航空・エネルギー業界向け金属部品製造の米プレシジョン・キャストパーツをおよそ320億ドル(約4兆円)で買収すると発表した。これまでもすでに株を保有していたが、今回全ての株を保有することになった。これを受けて、格付会社はバークシャー・ハザウェイの格下げを検討するなどと発表しているが、現状、バークシャー・ハザウェイはコングロマリットとして米国最強かつ最大を誇る企業になっている。
10.今回の買収対象であるプレシジョン・キャストパーツは、基本的には金属部品を作っている会社だが、その中でも航空分野が7割を占めている。クライアントは、GE、エアバス、ロールスロイス等の大手で、合金技術・加工技術が優れた会社である。
11.収益の推移を見ると、年間1500〜1600億円になっていて、この数字を見ると確かに4兆円は高すぎると言う人もいる。巨大企業がひしめく業界なので航空宇宙防衛企業の売上高ランキングを見ると、三菱重工と同じくらいで小さい部類に入る。但し、部品会社としては大きい規模である。
12.バークシャー・ハザウェイの事業を見ると保険がメインだが、製造業の売上でも4〜5兆円の利益を出しており、さらには数年前に買収した鉄道分野での収益も高くなっている。当時、鉄道会社を買収した際には、「時代錯誤」だと批判を受けたが、この数字を見ると見事である。
13.ソフトバンクグループ傘下の米携帯大手スプリントの6月末時点の総契約件数は5766万件となり、4位のTモバイルUS(5890万件)に抜かれた。一方で、20日の東京市場でソフトバンクの株価は一時前日比4%高い、7772円まで上昇した。この背景には色々な動きがある。孫氏はスプリントの立て直し策がわかったということで、109億円分の0.58%の株を買い増しているが、これは孫氏特有の「トリック」である。本当に立て直し策がわかったのなら、黙って静かに実行すれば良いだけで、0.58%株を買い増しても意味はない。
14.先日、ニケシュ・アローラ副社長が約600億円で自社株を購入すると発表しましたが、これも怪しい動きである。同氏は「コミットメント示す」とのことだが、600億円の資金はどこから出てきたのか疑問である。アローラ氏がサインアップボーナスのような形でソフトバンクから650億円の報酬をもらい、そのうち600億円を使ったという説明のようだが、日本の税制では650億円のうち手元に残るのは半分以下で、資金の出処が不透明である。
15.アローラ氏は「無限の信頼」と言っているが、こういうタイプの人は、取締役をやめたらさっさと持ち株を売ってしまう。アローラ氏が株を売る動きを見せていないかを監視するほうが重要である。
1.米検索大手グーグルは10日、経営組織の大幅な再編を発表した。持ち株会社「アルファベット」を新たに設立し、主力のネット検索・広告事業とドライバーレス(無人運転)カーなどのベンチャー事業を分離して新会社の傘下に収めるた。
2.ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)が新会社のCEOとなり、グループ内で最大事業部門となるグーグルのCEOには上級副社長のサンダー・ピチャイ氏が就任する。実態としては持株会社を作って、現在それぞれの事業を担当している人のポジションが上がる形だが、本質的にはあまり大きな変更ではない。それぞれの責任は明確化する。グーグルがネット検索以外の事業について、どこまで気合が入るのか、注目してみたい。
3.東洋経済オンラインは、「1台売って4000ドル赤字を出すテスラの苦悩」と題する記事を掲載した。テスラは、第2四半期決算で赤字幅が拡大。営業経費と研究開発費が増大した一方で、売上が低価格モデルにシフトし、海外の売上高がドル高の影響を受けて減少したことが響いたとし、「いずれかの時点でテスラが資金調達を行う可能性は非常に高い」とする証券アナリストの分析を紹介している。
4.イーロン・マスクにとっても正念場を迎えつつある。600万円の車を売って50万円の損失が出るという状況をイメージすると、確かにそのような自体はあり得る。テスラは充電インフラを全米に広げようと作っているが、こちらの資金もかなりかかっている。充電インフラが十分に整備されていないために、次世代モデルが売れず、仕方なく安いモデルを販売するという悪循環である。
5.もっと早い時点で資金調達をしておくべきだった。テスラは本体価格の45%を買取保証なども打ち出しており、見えない負債額も大きい。さすがのイーロン・マスクでも資金調達が難しい。電気自動車では唯一の成功事例と言われてきたが、まだその橋は渡りきっていない。
6.ギズモードは「アマゾン本社は壮絶なブラック企業?」と題する記事を掲載した。これはNYタイムズの記事を掲載したもので、元・現従業員100人以上の企業へインタビューした結果、アマゾンにはただひたすら会社のためにロボットのように働く人材のみが生き残っていくという事実が明らかになったと紹介している。
7.ジェフ・ベゾス氏自身はこの記事に反発しているが、彼の1点集中する性格を鑑みるとこうなる。こういうことが発表されると、その企業は今後改善されていく可能性が高いので期待しても良い。
8.現在、アマゾンはAWSというクラウドコンピューティングでも収益を上げてきている。現在の主力であるEコマース事業に比べて、こちらは事業の特性を考えても新しいカルチャーができつつある。Eコマース側は、まだジェフ・ベゾス氏のようなカリスマ的な存在が先導して行かなくてはいけない時期だから、現在の状況も仕方ない。可能ならば、Eコマース側はジェフ・ベゾス氏が担当し、AWS側は別の人間が担当していくべきである。
9.著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは10日、航空・エネルギー業界向け金属部品製造の米プレシジョン・キャストパーツをおよそ320億ドル(約4兆円)で買収すると発表した。これまでもすでに株を保有していたが、今回全ての株を保有することになった。これを受けて、格付会社はバークシャー・ハザウェイの格下げを検討するなどと発表しているが、現状、バークシャー・ハザウェイはコングロマリットとして米国最強かつ最大を誇る企業になっている。
10.今回の買収対象であるプレシジョン・キャストパーツは、基本的には金属部品を作っている会社だが、その中でも航空分野が7割を占めている。クライアントは、GE、エアバス、ロールスロイス等の大手で、合金技術・加工技術が優れた会社である。
11.収益の推移を見ると、年間1500〜1600億円になっていて、この数字を見ると確かに4兆円は高すぎると言う人もいる。巨大企業がひしめく業界なので航空宇宙防衛企業の売上高ランキングを見ると、三菱重工と同じくらいで小さい部類に入る。但し、部品会社としては大きい規模である。
12.バークシャー・ハザウェイの事業を見ると保険がメインだが、製造業の売上でも4〜5兆円の利益を出しており、さらには数年前に買収した鉄道分野での収益も高くなっている。当時、鉄道会社を買収した際には、「時代錯誤」だと批判を受けたが、この数字を見ると見事である。
13.ソフトバンクグループ傘下の米携帯大手スプリントの6月末時点の総契約件数は5766万件となり、4位のTモバイルUS(5890万件)に抜かれた。一方で、20日の東京市場でソフトバンクの株価は一時前日比4%高い、7772円まで上昇した。この背景には色々な動きがある。孫氏はスプリントの立て直し策がわかったということで、109億円分の0.58%の株を買い増しているが、これは孫氏特有の「トリック」である。本当に立て直し策がわかったのなら、黙って静かに実行すれば良いだけで、0.58%株を買い増しても意味はない。
14.先日、ニケシュ・アローラ副社長が約600億円で自社株を購入すると発表しましたが、これも怪しい動きである。同氏は「コミットメント示す」とのことだが、600億円の資金はどこから出てきたのか疑問である。アローラ氏がサインアップボーナスのような形でソフトバンクから650億円の報酬をもらい、そのうち600億円を使ったという説明のようだが、日本の税制では650億円のうち手元に残るのは半分以下で、資金の出処が不透明である。
15.アローラ氏は「無限の信頼」と言っているが、こういうタイプの人は、取締役をやめたらさっさと持ち株を売ってしまう。アローラ氏が株を売る動きを見せていないかを監視するほうが重要である。
アフガニスタンはもともと人工的に作られた国で、多民族国家である。パシュトゥーン人やタジク人、ハザラ人、ウズベク人、トルクメン人など20以上の民族がいる。
「立山良司著:最新版宗教世界地図、新潮社、2002年」の「イスラム世界を正しく
理解するための「知識」」の「あまりにあっけなかったタリバンの崩壊」は参考になる。印象に残った部分の続きを自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.タリバンの崩壊は、あっけなかった。同時多発テロ事件の発生を受けて米軍などによる軍事攻撃が始まったのが2001年10月7日。それからわずか1ヵ月後の11月中旬には首都カブールが陥落し、2カ月後の12月初めには組織としてのタリバンは完全に崩壊してしまった。
2.内戦が続くアフガニスタンにタリバンが突然登場したのは1994年夏だった。すい星のようにあらわれて、アフガニスタン南部から北部へと次々に支配地域を拡大していくタリバンに、中東ウォッチャーも最初は皆、「タリバンて何だ」「どんな勢力だ」と戸惑いを隠せなかった。それほど無名だったタリバンだが、その勢いはいっこうに衰えず、わずか2年後の1996年9月にはカブールを制圧し新政権を樹立してしまった。
3.アフガニスタンには「辺境」というイメージがある。しかし、ユーラシア大陸を東西や南北
に走る主要なルートが交差するこの地域は、古来より地政学的に大変重要な場所だった。アレキサンダー大王もヒンドゥークシュ山脈を越えてインドに入ったし、ロシアの南下を恐れた英国は19世紀に2回もこの地に遠征軍を送りこんだ。その一方で、アフガニスタンはこれまでも幾度となく、外部勢力の侵入を拒んできた歴史を持っている。ヒンドゥークシュという名称自体、アフガニスタンに遠征してきたインド兵たち(ヒンドゥー)がこの山岳地帯で次々に命を落とした「虐殺(クシュ)の場」という意味である。
4.1979年12月、ソ連は突如アフガニスタンに軍事侵攻し、その後の10年間、イスラムゲリラ(ムジャヒディーン)と激しい戦闘を展開した。何故、ソ連はアフガニスタンに侵攻したのか。その真相は今でもはっきりしていない。ソ連はおそらく、イラン革命やアフガニスタンでのイスラム勢力の台頭といった「イスラム原理主義」の潮流が、ソ連南部のイスラム地帯に飛び火することを恐れたのだろう。
5.しかし、米国や西側は当時、まったく違った見方をしていた。「将来の石油不足を見越したソ連が、革命でイランが不安定になったことを契機にいよいよペルシャ湾に手を伸ばしてきた」と警鐘を鳴らし、米中央情報局(CIA)はムジャヒデイーンに資金や武器、訓練を提供した。
6.タリバンは1996に最高指導者ムハンマド・オマルに「アミール・アル・ムーミニン」の称号を与えた。「信徒たちの軍司令官」を意味するこの称号は第2代正統カリフ、ウマル一世が名乗ったものだ。以降、この称号は「ムハンマド(マホメット)の後継者」を意味し、イスラム世界全体の指導者である「カリフ」と同じ入物を指すようになった。もちろんムハンマド・オマルを「現代のカリフ」とは誰も考えていない。こうした点にもタリバンのイスラム理解の特異さが出ている。
7.アフガニスタンはもともと人工的に作られた国で、多民族国家である。パシュトゥーン人やタジク人、ハザラ人、ウズベク人、トルクメン人など20以上の民族がいる。宗教的にもイスラム教スンニー派が80%と多数だが、シーア派も20%と無視できない。こうした民族や宗派、イスラム解釈の違いが複雑に絡み合い、ムジャヒディーンも20から30グループに細分化されていた。それでもソ連軍という「共通の敵」が存在していた時は一定の連繋があったが、89年にソ連軍が撤退すると、ムジャヒディーン各派入り乱れて凄惨な内戦を繰り広げた。この間、首都カブールはソ連侵攻時代以上に破壊され、アフガニスタン各地を支配したのは殺戮や暴行を繰り返す軍事組織だった。
8.そんな無秩序状態のアフガニスタンに突然登場したのがタリバンである。タリバンはパシュトゥー語であるイスラム宗教学校の学生を意味している。実際、タリバンの中核は80年代にパキスタンに次々に作られたデオバンディ派の宗教学校の学生たちだった。タリバンの最高指導者ムハンマド・オマル自身、カラチにあるデオバンディ派の宗教学校である。ラム神学を学んだといわれている。
9.デオバンディ派は19世紀のインドに生まれたイスラム改革運動の一つで、古典的なイスラ
ム思想と伝統社会とのつながりを強調するとともに、反英闘争を展開した。それだけに西欧の帝国主義や世俗主義に強く抵抗してきた。タリバンの激しい反欧米姿勢や保守的なイスラム解釈は、こうしたデオバンディ派の流れを汲んでいる。ただ、女性へのブルカ(頭からすっぽり被るベール)の強要や婦女教育の禁止、テレビや音楽の禁止といった極端な戒律重視は、タリバンのあまりにも教条主義的なイスラム理解と、パシュトゥーンの伝統的な習慣との融合といわれている。
10.2001年3月に強行されたバーミヤンの石仏破壊も、タリバンの極端なイスラム解釈によっている。実際、同じように「イスラム原理主義国家」と呼ばれているイランやサウジアラビアでもテレビや音楽は禁止されていないし、女性に対する教育も盛んに行われている。
メディアの役割は、興味本位ではなく、物事の正しい本質をわかりやすく伝えることである。日本の司法制度の問題点も含め、メディアが正しく報道しないのは残念である。
「中村修二著:ごめん!青色LED開発者最後の独白、ダイヤモンド社、2005年」は参考になる。「第1章:今回の裁判結果がもたらす影響とは:金額の多寡よりも重要なこと」の「技術や特許を目利きできる米国の投資家」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.一人の若い日本人の弁護士が中村氏の裁判に関する講演にコメントをした。「日米の司法制度の違いは、日本の裁判では『嘘』の言い合いになる。日本では相手側弁護士が『嘘』だらけを主張するから、裁判に勝つために、こちら側も『嘘』を主張しなければならなくなる。
2.裁判所もこうした『嘘』を黙認している。日本では『偽証罪』は有名無実である。このような『虚偽』だらけの日本の司法制度に絶望して、米国に渡り、現在米国で弁護士をしてる。日本の司法制度が『嘘』に甘いため、「正義感」にあふれた、こうしたやる気のある若い弁護士も日本を去っている。逆に言えば、日本で働いている多くの弁護士に「正義感」は無いということになる。
3.日本の司法制度の、さらに大きな問題は、法廷で採用される意見書や陳述書に対する疑いである。日本の司法の場合、意見書や陳述書の内容は偽証罪に問われないし、証人尋問や証拠開示義務という制度もないので意見書や陳述書の内容は、書きたい放題になっている。大企業や権力者は金をばらまいて、いくらでも専門家による意見書や鑑定書を出せる。個人が原告になった場合は陳述書や意見書の数には制限がある。
4.裁判について振り返ってみると、日本のメディアはずっとお金のことばかり報道していた。まるで中村氏がお金の亡者であるかのような報道もあった。人間の評価はお金では決まらないけれど、仕事が評価される基準は給料であり報酬である。お金のことばかりを報道してきたメディアは、中村氏の本当の主張を正しく伝えていない。
5.メディアの役割は、興味本位ではなく、物事の正しい本質をわかりやすく読者や視聴者へ伝えることである。日本の司法制度の問題点も含め、メディアがこうしたことを正しく報道しないのは残念である。
6.日本は資源のない国で、新しい技術を開発し、画期的な発明を続けなければ、これから先やっていけない。技術開発も発明もそれをするのは技術者や研究者である。科学技術の分野に優秀な人材を集め、育てることができなければ、才能ある人間は科学技術以外の分野に進み、次第にいなくなり、結果的に日本という国が衰退する。
7.この流れを食い止めるために、優秀な科学者や研究者に対し、成果に見合った報酬を支払うことで、才能ある若い人材を科学技術の分野に引きつけていくべきである。野球やサッカーで活躍するプロスポーツ選手たち、画家や音楽家といった売れっ子の芸術家たちは、その才能によって巨額な報酬を得ているが、技術者や研究者は、これまで不当に低い評価しか得てこなかった。
8.米国の学生たちは、小さいころから評価されれば報酬が得られることを学んで育つ。小学校あたりから、どうやってお金を稼ぐか、社会の仕組みなども含めて教わっている。お金のことをなおざりにせず、身近で現実的な価値基準として、しっかり教育している。米国の学生は、中学高校あたりから発明したら特許を取るという基本的なことを教えられている。技術者や研究者にとって重要な仕事は、論文を書くことなどではない。常に特許のこと、つまりビジネスについて考えていなければならない。
9.日本の教育制度は、こうした一番大切なことを子どもたちに教えていない。発明や特許について学校で教えない理由は、日本人の中にお金儲けは悪いことだという意識があるからである。日本でも小学生くらいから発明や特許のことを教え始めるべきである。。まず、こうした考え方から変えていかなければ、いつまでたっても日本の理系の学生は意識の低いままでいる。
10.高度成長期までの日本の製造分野は、欧米が作った技術を改良し、安くて品質のいい製品を大量に作って世界中に売ってきた。自動車にしても家電にしても、もともとの技術を発明したのは欧米の技術者や研究者である。その技術をこっそり導入し、よってたかって徹底的に分析し、もっといい技術に改良し、あたかも自分たちが独自に開発した技術かのようにして製品を作ってきた。
11.日本の経済力が増し、国際社会での地位が上がると、こうしたやり方が通用しなくなってきた。技術的にも欧米に学ぶことも少なくなり、正真正銘の独白技術を研究開発できるようにもなった。次の段階は、従来のモノ作りと並行して設計やデザインなどを組み合わせてやっていく方法である。
12.韓国や台湾、中国など、後発の国々が、日本が高度成長期以前に取り入れていたのと同じやり方で伸びてきた。同じ方法ではコスト面などで太刀打ちできないので、新たに設計やデザインを作り上げなければならなくなった。韓国や中国などは、まだ日本より少しだけ設計やデザインのレベルが低い。しかし、この分野でもいずれ激しい競争が起きる。
13.米国の場合は、ずっと設計やデザインが主で、今では実際のモノ作りはあまりやっていない。自分たちが設計やデザインしたものをもとに、日本やアジア諸国に作らせ、その使用料で儲けている。
14.米国は、教育やシステム、サービスなど、ソフト面で圧倒的な強い。IT関連だけでなく、医療やバイオテクノロジー、航空宇宙など、あらゆる分野でまんべんなく強い。日本がこれから世界のライバルを相手に戦っていくためには、やはり設計やデザインなどのソフトウエアのレベルを高めていかなければならない。また特定の分野だけでなく、バランスのいい産業振興が求められている。
15.日本は、半導体や有機ELなどの一部の分野のlT分野で強いが、他の分野のレベルも高めていく必要がある。質のいい教育で優秀な人材を育て、基礎研究を固め、画期的な技術や発明などを実現させ、良質のサービスを提供し、こうしたソフトウエアを世界中に売っていく。韓国や中国が追いついてこないうちに差を広げておかなければ、日本はそのうち中国に飲み込まれてしまう。
16.今の日本の環境などを考えると、ソフトだけで生きていくのは非常に難しい。最先端の製造分野を充実させ、モノ作りとしては中国などではできないような試作品のような商品を開発することを考えるべきである。