2015年11月

2015年11月30日

時の政府に任せず、我々個人が戦後史の空白部分を訪ねる、という作業は近隣諸国との軋礫を除くのは重要な作業である。


「大前研一著:日本人が知らない日本の歴史について話をしよう、PRESIDENT、2015.1.12」はためになる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1、中国人の歴史認識は「ナチス=ヒトラー」「軍部独裁=A級戦犯」である。日本人は日中友好の裏で交わされたこのような合意を知らないし、そもそもA級戦犯に対する歴史認識も
中国人とは違う。だからなぜ中国が靖国間題であれほどエキサイトするのか理解できないし、「内政干渉だ」「英霊に罪はない」と反発すら覚える。
2.戦争終結70周年を迎える2015年、中国では「抗日戦争勝利記念日」に制定された9月3日に大々的な式典が予定されている。抗日戦争に勝利して、国土を取り戻し、中国人民を解放
したのは中国共産党である。共産党一党独裁を正当化するために中国ではこのように国民教育しているが、もちろん史実は違う。
3.最初の戦勝国会議であるカイロ会議に出席したのは国民党の蒋介石。抗日戦争の矢面に立ったのは主に国民党軍で、共産党軍は日本軍に追われて逃げ込んだ。共産党はこれを「長征」という美辞で語っている。長江の奥地から後方支援をしていたようなものである。戦後の国共内戦で共産党が勝利して国民党を台湾に追いやったのは1949年だから、終戦後4年以上も経過している。
4.国際連合の常任理事国になったのも蒋介石の中華民国、すなわち台湾であって、1946年から71年までの26年間である。中国が台湾に成り代わって常任理事国になったのはニクソンショックの後の1971年のことである。中国人民を日本軍から解放した、という共産党の一党支配の根拠もまた歴史の捏造、あるいは誇張、美化である。歴史の捏造は中国共産党の得意技で、
それがゆえに日中の歴史認識はあまりにかけ離れたものになっている。
5.韓国もまた反日教育によって、国民の日本に対する歴史認識が大きく歪んでいる。朝日新聞が捏造した部分はあったにせよ、従軍慰安婦が存在したのは事実である。しかし朴槿恵大統領の父親である朴正煕大統領も米軍慰安婦制度をつくっていたわけで、それに目をつぶって日本の従軍慰安婦問題だけを声高に責め立てるのはフェアではない。そもそも朴正煕大統領の時代に「前に進むために日本統治時代の問題はすべて清算しよう」ということで日韓は国交を回復し、日本からの資金援助と技術供与で韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を果たした。そういう歴史もきちんと直視すべきである。
6.竹島問題については、歴史を遡れば領有権の優位性は日本にある。しかし李承晩ラインは1952年に韓国が日本海・東シナ海に一方的に設定した軍事境界線にが引かれて以降、韓国が竹島を実効支配してきた。「実効支配した者勝ち」という世界共通ルールからすれば、竹島を放置していた日本の負けである。軍事的に取り返すしかないが、竹島を守ることに狂信的なまでに国民の意思統一ができている韓国に対して、日本はそこまでできていない。
7.こうして見ると、日本側の歴史認識を見直すだけで両国関係が劇的に向上する相手といえば、ロシアである。極東ロシアには600万人の人口しかいない。対して中国は隣接する東北三省だけで1億5000万人いる。この圧倒的な人口差にロシアは恐怖感を抱いていて、ウクライナ問題のような突発事故が片付いたら極東開発をやりたいのがプーチン大統領の胸の内である。
8.日本と平和条約を結んで、日本の資本や技術、企業を極東ロシアに呼び込むことは優先順位の高い課題である。しかしながら、アメリカが演出した歴史の歪曲とそれに基づく日本の間違
った歴史教育によって日本人は70年間洗脳されてきたために、胸襟を開いてロシアと将来を語ることできなくなっている。
9.日本人が歴史を見直して、アメリカのバイアスを取り除いた話し合いを求めれば、ロシアは喜んで応じると思われる。ロシアと平和条約を結ぶ利点は大きい。その結果、プーチン大統領のいう「引き分け」、つまり面積等分による北方領土の返還という成果も十二分に期待できる。エネルギー問題や使用済み燃料の保管などでロシアに依頼したい項目もたくさんあるし、ロシアも日本に頼みたいことが山のようにある。
10.外務省や時の政府に任せず、我々個人が戦後史の空白部分を訪ねる、という作業は近隣諸国との軋礫を抱える日本にとって現在および将来の大きな希望につながる重要な作業である。



yuji5327 at 06:01 
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2015年11月29日

耕作放棄地

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秋田県内の耕作放棄地
10年の前回調査より3割増
9590ヘクタールと大幅に増加
高齢化による離農
農家の営農意欲の低下
農業就業人口も2割以上減少
経営耕地面積は12万3666ヘクタール
3.9%(4981ヘクタール)の減少


yuji5327 at 07:09 
池上湖心の書 

業績が好調だからといって、政府が求めるように「設備投資」「給与」にお金を使うのは、現実的な経営の観点からあり得ない。

11月27日付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点 」(発行部数 178,104部)は「国内経済・アベノミクス・国内企業業績・内部留保課税の話題について」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.内閣府が16日発表した2015年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減になった。企業の設備投資は1.3%減と、2四半期連続の減少。輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いている。
2.安倍首相の演説では、「あれも伸びて、これも伸びて」と順調そうに聞こえるが、実質GDP成長率の推移を見れば、明らかに間違っている。安倍首相が就任してからのGDPの内訳を見ると、公共投資を一部伸ばしたり、直近では輸出が伸びたりしているが、もっとも重要な民間消費支出を伸ばせていない。
3.この厳しい事実があるにも関わらず、未だ黒田バズーカーに期待している。米ウォールストリート・ジャーナル紙は17日、安倍政権の経済政策について「アベノミクスが息切れしている」と題した社説を掲載した。アベノミクスの財政出動で「日本の借金は国内総生産(GDP)の250%に近づく一方、銀行の貸し出しが増えず、デフレが続いている」と指摘している。私が数年前から一貫して指摘している。
4.事実の数字を見れば日本経済は休止している。当初の予定では、2年後に物価上昇率と言っていたが、未だ達成できていない。もっと謙虚に、経済が伸びない原因を分析するべきである。経済学者もいい加減な姿勢で安倍首相にアドバイスするのではなく、きちんとした分析をして国民に説明しないと恥ずかしい。
5.原因の分析もせず、ただ同じ対策を繰り返すというのは理解できない。息切れするのも当然である。20世紀の古い経済学を振りかざして「もう1発、黒田バズーカー」などと言っている場合ではない。今の日本経済が停滞している理由は、低欲望社会だからである。
この社会構造で、GDPを伸ばしていくのは容易ではない。日本のように低欲望社会が進むと、20世紀の経済学を使っても、お金が経済に吸収されない。「低欲望社会」の原因を究明し、野心と欲望を国民が持つようにすることが、今最も求められている対策である。
6.政府は、いまだに「低欲望社会」に陥っている日本経済停滞の根本原因を理解しておらず、約320兆円もある企業内部留保の資金を「投資に回せ、給与に回せ」と主張しているが的外れである。
7.企業業績は好調である。日経新聞は、15年4〜9月期決算を終えた3月期企業1530社(金融など除く)の今期見通しを集計した。経常利益率は6.6%と、金融危機前の07年3月期の6.5%を上回り、経常利益の合計額も今通期で34兆887億円と、過去最高だった前期から6.9%増える見通しである。
8.業績が好調だからといって、政府が求めるように「設備投資」「給与」にお金を使うのは、現実的な経営の観点からあり得ない。海外での設備投資なら需要があるが、日本国内には「実際にやりたい設備投資」はない。
9.政府は全くもって経営・経済を理解できていない。政府は、法人税減税を理由に「設備投資」「給与の引き上げ」を経団連に要求しているようだが、「法人税を引き下げて残るの内部留保と配当」ということすら分かっていない証拠であ。
10.企業の内部留保に課税する動きもあると言われているが、さすがに麻生財務相も菅官房長官も否定的な見解を示している。麻生財務相は「二重課税になり得るのはいわずもがなの話だ。内部留保課税の話を検討させているという事実はない」と述べた。菅官房長官も内部留保課税について「そこまでしなければ経済界のマインドが変わらないのか、政策的な議論を深めることが先決だ」と、慎重な姿勢を示した。
11.二人とも内部留保課税に否定的な考えを示す一方で、現在の企業姿勢には疑問符をつけ、企業が内部留保せずに「設備投資」「給与」にお金を回すようにすべきとの見解を示している。結局、麻生財務相も菅官房長官も、大切なことを理解できていない。政府が経営のことをわかりもしないで、思いつきレベルの提言をするのはやめてほしい。アドバイザーを求めるなら、政府は経済学者ではなく、実際に経営経験を積んだ人に依頼するべきである。



yuji5327 at 06:59 
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2015年11月28日

対イスラム国

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ロイター
プーチン大統領
シリアに介入
孤立していた状態から脱却
解決に不可欠な国
アサド政権側優位
米国主導有志連合は劣勢
フランスは戦う能力を出し切れず
米国は能力あるがやる気に欠け
ロシアにはISに対して
武力行使の意思と能力
ロシアとフランスはイスラム国が資金源
石油精製施設を攻撃
(ロイターより)

yuji5327 at 07:07 
池上湖心の書 

鄭和は、武力に訴えることはなかった。周辺諸国と友好関係を築くことで大航海を成功させた。

「池上彰著:ビジネスマンに世界史の教養が必要なわけ、PRESIDENT、2015.1.12」はためになる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.中東では「イスラム国」が台頭し、周辺の国々が対応に追われている。アメリカと一緒に「イスラム国」を攻撃する国もあれば、同調しない国もあって、足並みの乱れが続いている。東南アジアの南シナ海では、中国の海洋進出が周辺の国々との摩擦を招いている。中国は、南シナ海を「自国の領海」だと主張している。こうした国際情勢を理解するのに役立つのが、世界史の知識である。
2.2014年になって急に表に登場したのが「イスラム国」である。イラク国内の極小過激派組織だったが、「アラブの春」によって隣国シリアで内戦が始まると、シリアに参戦した。そこで反政府軍を攻撃して武器や資金を獲得し、イラクに凱旋した。イラクの中央銀行の支店を襲撃して多額のドル資金を入手した。今や「世界で最も裕福なテロ組織」と呼ばれるようになった。
3.2014年は第一次世界大戦が始まって100年。第一次世界大戦の戦場にならなかった日本人にはピンとこないテーマだが、戦場になったヨーロッパの人たちには、今も身近な歴史である。第一次世界大戦で多大な被害を出してしまったのに、第二次世界大戦を防ぐことができなかったのかが欧米の政治家にとっての教訓となっている。
4.第一次世界大戦の戦後処理が問題だった。戦後処理の誤りは、中東問題の火種を生み出してしまったのである日本で伝えられるニュースでは、「イスラム国」は残忍な手口で敵を殺害し、国内でもイスラムの厳格な教えを強制していることが強調されている。こんなことをしていては、国民」たちは逃げ出してしまうが、そうはならないわけは、歴史から見える。
5.「イスラム国」は、シリアからイラクにかけて「国家」樹立を宣言し、「サイクス・ピコ体制を打破した」と叫んだ。サイクス・ピコは、第一次世界大戦中、オスマン帝国と戦争をしていたイギリス、フランス、ロシアは、戦後、オスマン帝国の領土を山分けしようと密約を結んだ「サイクス・ピコ協定」のことである。
6.密約を結んだ翌年、ロシアで社会主義革命が起き、革命政権が密約を暴露したことで、密約通りにはならなかった。この密約をベースにして、現在のイラクとクウェートはイギリス、シリアとレバノンはフランスの支配圏に入った。イラクとシリアの国境線は、かなりの部分が直線になっており、自然に形成された国境線ではない。
7.イラクやシリアの人たちにとって、海外の列強によって、自分たちの土地が勝手に分断されるという屈辱の歴史があった。この体制を初めて打ち破ってくれたのが、「イスラム国」だった。。「サイクス・ピコ体制の打破」というスローガンは、アラブの人たちの心を打った。これは、日本に住む私たちにとっては、なかなか理解できない。
8.「イスラム国」は、歴史に学んでいる。オスマン帝国が長期にわたって広大な領土を維持できわけを学んだ様子が窺える。オスマン帝国は、トルコ人のオスマン朝による支配だったが、トルコ人だけによる帝国ではない。帝国の縁辺部では、さまざまな民族の自治を容認した。イスラムの帝国だったが、同じ神を信仰するユダヤ人とキリスト教徒については、人頭税を払えば信仰を認め、改宗を迫らなかった。こうした緩やかな統治が、長続きの秘訣だった。
9.「イスラム国」は、「国内」において、この手法を採用している。「イスラム国」は新しい通貨の発行を決めたが、通貨の単位はディナールで、まさにオスマン帝国時代の通貨名である。「イスラム国」は、住民のための新しい市場の建設などインフラ投資にも力を入れるようになった。「国家」としての形を整えつつある。歴史を学ぶと、この組織の野望が見えてくる。
10.イスラエルとパレスチナの紛争の解決の見通しが立たない。ここでも第一次世界大戦の戦後処理の失敗が影を落としている。大戦中、イギリスは、オスマン帝国領内でアラブ人の反乱を策謀し、戦後はアラブ人の独立国家を認めると約束した。その一方で、戦費を獲得するため、金融業に携わるユダヤ人には、ユダヤの「ナショナル・ホーム」建設を支援すると約束した。
11.中国が南シナ海で石油の採掘などを始めて周辺国家と摩擦を引き起こしているわけのキーワードは「鄭和」である。大航海時代というと、16世紀のコロンブスなどを思い出すが、それより前の15世紀の明の時代の皇帝は、鄭和という人物で、大航海を命じた。鄭和は大船団を率いて、南シナ海を通って、インド洋から東アフリカ、アラビア半島まで計7回の航海を実現させ、南シナ海を開発し、行政管轄権を確立したと主張する。
12.南シナ海の領有権について、中国は「鄭和の時代から南シナ海は自国の領海だ」と主張しているから、鄭和のことを知らないと、返答に窮する。明の時代、中国は「朝貢外交」を展開していた。周辺諸国が明に貢物を送ると、皇帝は、その国を属国として承認した。この外交により、南シナ海周辺諸国も明の「属国」だったという理屈である。
13.鄭和は、武力に訴えることはなかった。訪問した国で内紛が起きていると、これを仲裁したりして、友好関係を築いていった。中国が、「鄭和の時代から中国のもの」と主張するなら、「鄭和は、周辺諸国と友好関係を築くことによって大航海を成功させた」と指摘すればいい。歴史を知り、歴史を活用する者が勝利を収める。
14.過去には、世界各国で大小さまざまなバブルが生まれ、はじけた。オランダの「チューリップ・バブル」、アメリカの「株式バブル」「ITバブル」。日本の1980年代後半のバブル。日本のバブルは、はじけた後の処理に手間取っているうちに、日本経済はデフレに突入した。
15.バブルは、約30年ごとに発生する。いったんバブルで手痛い被害を受けた人たちは、次のバブルに踊ることはないが、その人たちが経済の表舞台から退出した後、バブルを知らない世代が、再び同じような失敗を繰り返す。アベノミクスによって、株高が続いている。一本調子の株高は、バブルの香りがする。先人の失敗を繰り返さないように、歴史を学び、それを教訓とすることである。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とは、初代ドイツ帝国宰相オットー・フォン・ビスマルクの言葉である。



yuji5327 at 06:45 
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2015年11月27日

マイナンバーカード

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社会保障、税、災害対策
効率的に情報を管理
複数の機関が保有する個人情報
同一人情報であることの確認
国民の利便性の向上
課税証明書書類が削減
行政の効率化
情報の照合、転記
時間・労力が大幅に削減
公平・公正な社会の実現
税や社会保障の負担
不当に免れること
不正受給の防止



yuji5327 at 06:39 
池上湖心の書 

重力波や暗黒物質が観測されても生活にはほとんど影響しない。しかし、宇宙の根源にも迫る基礎研究は先進国に課せられた使命でもあり、基礎研究を続けられる環境を守る必要がある。

「日本の科学アラカルト、宇宙誕生の謎に迫る重力はを観測する取り組み、選択、2015.1」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2014年には、物理の分野でも「ノーベル賞級の発見」と報道されながら、その後疑義がついている研究がある。3月に米ハーバード大学などのチームが「重力波」の発見に成功したと発表し、日本でも新聞各紙がこれを報じた。アインシュタインの一般相対性理論により存在が予測される物理現象だが、世界中の研究者が挑戦しながらこれまで観測されたことはなかった。
2.その後複数の研究者らから観測結果に疑義が訴えられ、こちらはまだ結論が出ていない。この研究では、「捏造」が疑われているわけではない。日本人がノーベル賞を受けた「ipS細胞」や「青色発光ダイオード(」ED)」のような技術は一般人にも理解しやすく、発見や開発に向けたドラマも想像しやすい。
3.2013年に物理学賞を受賞した「ヒッグス粒子の観測」は日本も大いに研究に関与したと報道されたが難解である。「あらかじめ存在がわかっているものを観測するだけ」で研究成果として評価される。実際にはiPS細胞や青色LEDと同様に、結果を出すまでには努力はもちろん
運も必要となる。こうした物理現象には前述した重力波や暗黒物質などがあり、日本でも研究者たちのチャレンジが続いている。
4.一般相対性理論によれば、質量を持つあらゆる物体はその重力で周辺の時空を歪ませる。その物体が運動をすると歪みが光速で周辺に伝わるとされ、これが重力波と呼ばれる。質量を持つ人間が歩いただけでも重力波は生まれているが、これを観測することは不可能である。人間の質量が小さいため周囲の時空の歪みも過小で、生じる重力波は微々たるものである。実際に観測できるレベルの重力波が生じるためには宇宙空間に存在する中性子星が合体したり、超新星爆発などの特殊の現象が起きる必要がある。
5.中性子星と超新星はどちらも太陽のような恒星の一生の最終期の形態である。太陽の質量は地球の約三十万倍ある。恒星は地球や火星などの天体と異なり、ガス状態の分子が集まっている。
すべてのガス分子には恒星の中心に向かう重力が働いているが、一方で核融合反応による外に向かう圧力も受けている。これが釣り合い、地球の109倍という直径を保っている。
6.エネルギー源を失い燃え尽きようとするとき、外部への圧力が弱まり徐々に恒星は中心部に向かってしぼむ。最終的に一気に潰れるように凝縮して爆発するがこれが超新星であり、中心部にブラックホールや中性子星が残されることもある。
7.中性子星は、直径わずか20キロメートルほどのものだが、重量は太陽と同じ程度で、極
端に高い密度である。これだけ小さい部分に質量が凝縮されると周囲の空間の歪みは大きくなり、運動によって生じる重力波も大きくなる。
8.観測へのハードルはまだ高い。まず重力波はあらゆる物質をすり抜けてしまう。たとえば電波は壁や人体を通り抜けるが、アンテナを使えば受信することが可能だ。重力波は電波の10の40乗倍という透過性を持っており、とらえるのは容易ではない。しかも空間の歪みといっても実際には極端に小さい。たとえは「地球と太陽の問の距離が水素原子1個分縮む程度」というもの。地球と太陽は約1億5千万キロ離れている。地球を3千7百周以上する距離である。一方、水素原子の直径は1センチの1億分の1(1オングストロム)しかない。重力波による歪みがいかに小さいかがわかる。
9.この歪みを観測するための手段はいくつかあるが、日本や世界の研究チームが採用しているのは「干渉計型検出器」と呼ばれるものである。30以上の大学や機関が合同で研究するための新たな実験施設が2014年に岐阜県に完成し、今後本格的な観測実験が行われる。
10.1本のレーザー光を直角に交わる2方向にわけて発射する。両方の先には鏡が置いてあり反射して戻ってくる。仮に重力波によって空間が歪めば、伸びた方向を通った光は縮んだ方を通った光よりも戻ってくるまでに時間がかかる。これにより空間が伸縮したかどうかがわかる。
仕組みは単純なようだが、障壁は多い。前述した通り、歪みは極に小さいため光の経路はできる
だけ長くとる必要がある。だからといって屋外では大気に観測を邪魔されてしまう。また地上には人間が感じない微振動があるため、これも機器に悪影響を与える。
11.岐阜県飛騨市神岡町に完成した実験施設「KAGRA」は地下200メートルの場所に3キロメートルのトンネルが直角に2本掘られている。観測時にはこのトンネル内の空気を抜いて真空に近い状態にする。片道3キロであれば往復でも6キロにしかならないが、これで微細な歪みを観測できるのか。
12.そこは光を往復させることで距離を稼ぐ。2度往復させれば経路は12キロになり、これを繰り返すことで70キロの経路を確保することができる。あとは重力波を待つばかりだが、これは神頼みに近い。
13.中性子星の衝突や超新星爆発といった観測可能な重力波発生を伴う天体現象が起きるのを待つしかない。さらにその現象が地球で観測されてから準備しても、重力波も光速で移動しているために間に合わない。ひたすら自らの実験施設の観測可能レベルに合う重力波が到達するまでデータをとり続ける。
14.KAGRAが設置された神岡町には2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士がニュートリノ観測に使用した「スーパーカミオカンデ」がある。これ以外にも振動の少ない神岡鉱山では、暗黒物質の観測を目指す複数の実験も行われている。同じ岐阜の山中で、2つ目3つ目のノーベル物理学賞が生まれる可能性があるというのは、不思議である。
15.最近の日本人ノーベル賞堂賞者の偉業はどれもわかりやすいうえに、日本人のみならず人類の生活に直接的に役に立つことが誰の目にも明らかである。翻って重力波や暗黒物質が観測されても生活にはほとんど影響しない。しかし、宇宙の根源にも迫るこうした基礎研究は先進国に課せられた使命でもあり、文化レベルが試されているといえる。研究者がカネ勘定ではない基礎研究を続けられる環境を守っていく必要がある。


yuji5327 at 06:26 
新技術 | 共通テーマ

2015年11月26日

戦争をしらずに齢重ねたる幸福者よ姿勢を決めよ

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碇博視句
長谷川櫂解説
昭和23年生まれの詠者
戦後生まれ
幸福に年を重ねた
自分自身への句
(読売新聞2015.11.23より)

yuji5327 at 06:42 
池上湖心の書 

イスラーム銀行の1つの課題は、現制度下では、融資の交渉に時間を要する点などが、課題となっている。


「後藤明、山内昌之著:イスラームとは何か、新書館、2003年」はイスラーム社会の概要を理解する上で参考になる。「利息の考え方」の小節の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.イスラーム法は利息を禁止している。利子の受け取りはイスラームに反する。イスラーム教徒の問にイスラーム法に忠実な銀行、つまり利子のない銀行を設立する動きがあるのは自然である。1940年代からイスラーム銀行に関する様々な著作が出版されている。また小規模なイスラーム銀行が、この頃からマレーシアやパキスタンで設立されている。
2.1970年代にイスラーム銀行を求める流れが強まった。2つの要因が、この動きの背景にあった。ます第1に、イスラーム復興運動の広がりである。第2に、1970年代に起こった2回の石油危機である。石油輸出国は莫大な収入があり、チャンスであった。石油輸出国の多くはサウジアラビアなどのイスラーム諸国であった。自らの手で、しかもイスラーム法に則ってこの莫大な資金を運用しなければならない。
3.設立された銀行で注目されるのは、イスラーム諸国によって1975年に設立されたイスラーム開発銀行である。民間によるイスラーム銀行としては、1975年に設立されたドバイ・イスラミック銀行が注目される。以降イスラーム銀行は増え続け、200を越えるイスラーム銀行が2千億ドルを越える資金を運用している。
4.イスラーム銀行の活動範囲は、イスラーム諸国のみならす、オーストラリア、ケイマン諸島、キプロス、フランス、ガンビア、ドイツ、ギニア、イタリア、ルクセンブルグ、象牙海岸、スリランカ、オランダ、フィリピン、トリニタード・トバゴ、イギリス、アメリカ、スイスなどである。
5.銀行とは通常は利子を払って預金を集め、それよりも高い利子を取ってその預金を貸し付ける。両者の利子の差額が、利益となる。しかしイスラーム銀行の基本は、利子の禁止である。イスラーム銀行は利子を取って資金を貸し付けるのではなく、投資に参加し、その投資が利益を生んだ場合にその分配を受ける。また預金者も投資活動に間接的ながら参加したのであるから、銀行から正当な報酬を受ける。銀行は企業からの利益の分与と預金者に支払う利益の分与の差額を利益とする。
6.利子は何の活動も危険も伴わないのに対し、利益の分与は投資という経済活動であり危険を伴う。投資が失敗した場合は銀行も預金者も損失を分担する。イスラーム銀行は融資に当たって利子ではなく「サービス料」を徴収する場合もある。イスラーム銀行の特徴は利子の廃止のみにあるのではない。イスラームで禁止されている酒造業、ギャンブル、ポルノなどは禁止されている。
7.イスラーム銀行の課題も明らかになってきている。その1つは融資の期間の問題である。預金者への報酬が投資の利益分与であるため、イスラーム銀行は預金者への支払いの前に投資から利益をあげなければならない。となると長期の投資には積極的になりにくい。利益が確定されるまでは預金者に何の支払いもできない。
8.もう1つ課題は、イスラーム銀行は非イスラーム銀行以上に案件ごとにまた分野ごとに詳細な専門的な知識を求められる。また利益の分与の割合についての交渉は、大変な労力と時間を要する。さらに、短期の緊急融資の要請への機動的な対応である。イスラーム銀行の制度下では、融資の交渉に時間を要する点などが、課題となっている。



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2015年11月25日

東アジア会議

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クアラルンプール
東アジア首脳会議(EAS)
中国による南シナ海
人工島造成
航行の自由
人工島の平和利用
中国に批判的な声
南シナ海問題に触れなかった
ロシアのメドベージェフ首相
ラオスやカンボジア



yuji5327 at 06:48 
池上湖心の書 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

書道教室(自宅)
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日



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