2017年09月
トランプ氏が掲げる減税政策は、小さな政府を目指す共和党の方向性と一致する。すべてが好転すれば、投資機会の不足と過剰貯蓄による長期停滞論から抜け出すきっかけになる。
「ポール・シェアード(S&Pグローバルチーフエコノミスト):トランプ大統領の登場が長期停滞論を抜け出すきっかけに、
エコノミスト、2017.1.10」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米大銃領選から約1カ月半。6月の英国の欧州連合〔EU)の離脱に続き、世界経済の不確実性を一層高めることになった。前国務長官であるヒラリー・クリントン氏なら、従来の政治と大きく変わらないことが予想できた。しかし、政治家としての経験もなく、公職に就いたこともないトランプ氏が,どんな大統領になり、どんな政策運営を行うかは、ほぼ予測不可能だ。
2.予想に反してトランプ氏が勝利した理由は、背景には、「今、ワシントンにいる政治家に任せても、何も変わらない」という米国民の既存政治家に対する失望がある。米国の中間層は、現状を変える見込みのないクリントン氏を支持しなかった。大きな不確実性はあるが、突破口となるような大胆な政策を打ち出し、米国を変える可能性のあるトランプ氏を選んだ。
3.クリントン氏が副大統領候補にティム・ケイン上院議貝を選び、予備選を最後まで激しく争ったバーニー・サンダース上院議員を排除したことも、賢い判断ではなかった。大手銀行の解体や大学の無料化など、トランプ氏のように極端な政策を掲げていたサンダース氏を取り込む方が得策だった。サンダース氏をクリントン氏は恐れた。
4.トランプ氏の副大統領候補選びは的確だった。トランプ氏は、共和党の中でも伝統的な主流派であるマイク・ペンス・インディアナ州知事を副大統領候補とするなど.クリントン氏とは.正反対の姿勢を見せた。あえて自分とは対極の人物をナンバー2に置くことで、人事については実務的な人物を抜てきするという安心感を米国民に与え、支持を得た。副大統領候補選びでは,トランプ氏はクリントン氏よりも一枚上手だった。
5.米議会は上下両院とも共和党が多数を占め、2014年の中間選挙から続いた政府と議会の「ねじれ現象」が解消されるのは、トランプ氏にとって大きい。トランプ氏の打ち出す政策が通りやすくなり、その気になれば選挙中に語った大胆な政策展開も可能となる。また、2年後の中間選挙を見据えて、上下両院ともトランプ氏の政策に協力的な姿勢を示す可能性もある。トランプ氏が世論の強い支持を維持し、2年問で実績を残せれば、共和党はこれを追い風に多くの議席を確保できる。民主党も無理.に抵抗するよりは、トランプ氏の勢いに乗って手を組んだ方が有利だという打算が働いてもおかしくない。
6.トランプ氏が掲げる政策の一つである減税政策は、小さな政府を目指す共和党の方向性と一致する。すべてが好転すれば、ローレンス・サマーズ元米財務長官が提唱した投資機会の不足と過剰貯蓄(需要不足)による「長期停滞論」から抜け出すきっかけになる。
7.リーマン・ショック以降、金融政策に過度に依存しすぎたことへの反省が語られる機会が増えた。金融政策だけでなく財政.政策も組み合わせたポリシーミックスのリバランス(再均衡〕が必.要という機運が急速に高まっている。サマーズ氏が唱える長期停滞論の突破口は、政府主導による大規模な財政出動やインフラ投資の促進である。
8.金融と財政が一体となるよう経済政策運営の枠組み自体を再構築すぺきという機運も高まっている。マクロ経済として考えた時、状況に応じて、金融政策と財政政策.両方の広い視点で、どの政策が最も効果的かを議論すべきである。財政政策は政治家、金融政策は米連邦準備制度理事会〔FRB)に任せて、テクノクラート〔高級官僚)や経済学者が担うという分離された仕組みはおかしい。
9.優秀なビジネスマンであり、直観に優れているトランプ氏なら、すぐに現在の分離された非合理的な経済政策の枠紐みを問題視するだろう。例えば、政府の経済政策に強い影響力を持つ国家経済会議(NEC)にイエレンFRB議長を呼ぶのもトランプ氏ならおかしくない。従来の枠糾みにこだわらない柔軟で、新しい試みを行う可能性は高い。
10.自由貿易を推進すれば、大きな利益を得る人と不利益を被る人が出る。そこで経済学者やエコノミストなどの経済の専門家たちは、不利益を被った人たちに対して利益を得た人たちが拠出し、何らかの保証〔利益の再配分)をすれば、ネットでは全体に利益が発生するという理論で自由貿易を推奨している。
11.こう主.張した専門家たちは、再配分の問題を政治家任せにして、本来着手すべき民主党もこの問題を放置した。米中西部のラストベルト(さび付いた工業地帯)は自由貿易によって大きな打撃を受けたままである。もっと早く財政支援などの措置を取るべきだった。現実主義者でラストベルトの代弁者として支持されたトランプ氏は、マイナスの影響が出た場合には臨機応変に対応すると思われる。.
12.トランプ大統領の下、財政拡張政策がうまく回り出せば、欧州にもその影響が波及していく。金融政策だけで景気を回復させるのは難しく、財政政策とのポリシーミックスが必要である。ドイツや、ベルギー・ブリュッセルが推進する緊縮財政への不満は.想像以上に高まっている。
13.EU各国・地域の国内総生産(GDP}は、リーマン・ショック前と比べて、米国は11%増であるのに対し、ユーロ圏では1%増にとどまる。同じ欧州でも英国は8%増で、ユーロ圏ではドイツが7%増と突出している。一方、イタリアは8%減とドイツとの格差は広がるばかりである。ドイツはユーロ安の恩恵を受け、独り勝ちだが、イタリアやスペインなど南欧諸国の不満が鬱積している。
14.12月4日の憲法改正に伴う国民投票が否決され、辞任したイタリアのレンツィ首相は、10月の訪米時の講演で「緊縮財政は国家を破壊する」と、公然とEUの政策を批判した。4.トランプ氏の経済政策が軌道に乗り、目標の4%成長を達成すれば、反EUの機運はさらに高まる。南欧諸国だけでなく、ドイツ国内にも反EUの火種はくすぶっており、秋に選挙を控えたメルケル首相も、緊縮財政からの転換を迫られる可能性は否定できない。
エコノミスト、2017.1.10」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.米大銃領選から約1カ月半。6月の英国の欧州連合〔EU)の離脱に続き、世界経済の不確実性を一層高めることになった。前国務長官であるヒラリー・クリントン氏なら、従来の政治と大きく変わらないことが予想できた。しかし、政治家としての経験もなく、公職に就いたこともないトランプ氏が,どんな大統領になり、どんな政策運営を行うかは、ほぼ予測不可能だ。
2.予想に反してトランプ氏が勝利した理由は、背景には、「今、ワシントンにいる政治家に任せても、何も変わらない」という米国民の既存政治家に対する失望がある。米国の中間層は、現状を変える見込みのないクリントン氏を支持しなかった。大きな不確実性はあるが、突破口となるような大胆な政策を打ち出し、米国を変える可能性のあるトランプ氏を選んだ。
3.クリントン氏が副大統領候補にティム・ケイン上院議貝を選び、予備選を最後まで激しく争ったバーニー・サンダース上院議員を排除したことも、賢い判断ではなかった。大手銀行の解体や大学の無料化など、トランプ氏のように極端な政策を掲げていたサンダース氏を取り込む方が得策だった。サンダース氏をクリントン氏は恐れた。
4.トランプ氏の副大統領候補選びは的確だった。トランプ氏は、共和党の中でも伝統的な主流派であるマイク・ペンス・インディアナ州知事を副大統領候補とするなど.クリントン氏とは.正反対の姿勢を見せた。あえて自分とは対極の人物をナンバー2に置くことで、人事については実務的な人物を抜てきするという安心感を米国民に与え、支持を得た。副大統領候補選びでは,トランプ氏はクリントン氏よりも一枚上手だった。
5.米議会は上下両院とも共和党が多数を占め、2014年の中間選挙から続いた政府と議会の「ねじれ現象」が解消されるのは、トランプ氏にとって大きい。トランプ氏の打ち出す政策が通りやすくなり、その気になれば選挙中に語った大胆な政策展開も可能となる。また、2年後の中間選挙を見据えて、上下両院ともトランプ氏の政策に協力的な姿勢を示す可能性もある。トランプ氏が世論の強い支持を維持し、2年問で実績を残せれば、共和党はこれを追い風に多くの議席を確保できる。民主党も無理.に抵抗するよりは、トランプ氏の勢いに乗って手を組んだ方が有利だという打算が働いてもおかしくない。
6.トランプ氏が掲げる政策の一つである減税政策は、小さな政府を目指す共和党の方向性と一致する。すべてが好転すれば、ローレンス・サマーズ元米財務長官が提唱した投資機会の不足と過剰貯蓄(需要不足)による「長期停滞論」から抜け出すきっかけになる。
7.リーマン・ショック以降、金融政策に過度に依存しすぎたことへの反省が語られる機会が増えた。金融政策だけでなく財政.政策も組み合わせたポリシーミックスのリバランス(再均衡〕が必.要という機運が急速に高まっている。サマーズ氏が唱える長期停滞論の突破口は、政府主導による大規模な財政出動やインフラ投資の促進である。
8.金融と財政が一体となるよう経済政策運営の枠組み自体を再構築すぺきという機運も高まっている。マクロ経済として考えた時、状況に応じて、金融政策と財政政策.両方の広い視点で、どの政策が最も効果的かを議論すべきである。財政政策は政治家、金融政策は米連邦準備制度理事会〔FRB)に任せて、テクノクラート〔高級官僚)や経済学者が担うという分離された仕組みはおかしい。
9.優秀なビジネスマンであり、直観に優れているトランプ氏なら、すぐに現在の分離された非合理的な経済政策の枠紐みを問題視するだろう。例えば、政府の経済政策に強い影響力を持つ国家経済会議(NEC)にイエレンFRB議長を呼ぶのもトランプ氏ならおかしくない。従来の枠糾みにこだわらない柔軟で、新しい試みを行う可能性は高い。
10.自由貿易を推進すれば、大きな利益を得る人と不利益を被る人が出る。そこで経済学者やエコノミストなどの経済の専門家たちは、不利益を被った人たちに対して利益を得た人たちが拠出し、何らかの保証〔利益の再配分)をすれば、ネットでは全体に利益が発生するという理論で自由貿易を推奨している。
11.こう主.張した専門家たちは、再配分の問題を政治家任せにして、本来着手すべき民主党もこの問題を放置した。米中西部のラストベルト(さび付いた工業地帯)は自由貿易によって大きな打撃を受けたままである。もっと早く財政支援などの措置を取るべきだった。現実主義者でラストベルトの代弁者として支持されたトランプ氏は、マイナスの影響が出た場合には臨機応変に対応すると思われる。.
12.トランプ大統領の下、財政拡張政策がうまく回り出せば、欧州にもその影響が波及していく。金融政策だけで景気を回復させるのは難しく、財政政策とのポリシーミックスが必要である。ドイツや、ベルギー・ブリュッセルが推進する緊縮財政への不満は.想像以上に高まっている。
13.EU各国・地域の国内総生産(GDP}は、リーマン・ショック前と比べて、米国は11%増であるのに対し、ユーロ圏では1%増にとどまる。同じ欧州でも英国は8%増で、ユーロ圏ではドイツが7%増と突出している。一方、イタリアは8%減とドイツとの格差は広がるばかりである。ドイツはユーロ安の恩恵を受け、独り勝ちだが、イタリアやスペインなど南欧諸国の不満が鬱積している。
14.12月4日の憲法改正に伴う国民投票が否決され、辞任したイタリアのレンツィ首相は、10月の訪米時の講演で「緊縮財政は国家を破壊する」と、公然とEUの政策を批判した。4.トランプ氏の経済政策が軌道に乗り、目標の4%成長を達成すれば、反EUの機運はさらに高まる。南欧諸国だけでなく、ドイツ国内にも反EUの火種はくすぶっており、秋に選挙を控えたメルケル首相も、緊縮財政からの転換を迫られる可能性は否定できない。
ヒトには2万5000種類のタンパク質があるが、機能がわかっていない。ヒトのタンパク質はいまだに新しいものが次々と発見されている。遺伝子がもつ情報を元にタンパク質が作られる。
「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第2章:細胞の中では何が起きているのですか?」の「代謝とは何ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.代謝というのは、細胞が増えたり活動をしたりするときに、細胞の中で起きるいろいろな化学反応や物質のやりとりを一括りにしたものである。たとえば、DNAを複製する化学反応も、細胞の外にあるブドウ糖を細胞内に取り込むことも代謝である。
2.代謝は、ほとんどの場合は、「タンパク質」がたらいている。タンパク質は物質の分類として食べるときのタンパク質と同じものである。食べたタンパク質がそのままはたらくのではなく、食べたタンパク質は一度細かく分解され、自分が生きていくために必要なタンパク質に再構築される。
3.細胞内で再構築されたタンパク質は、細胞が生きていくための機能、生命現象のすべてを司っている。タンパク質があるから生命は成り立っている。生命が何かをするときには、必ずタンパク質が関わっている。生命の中で緻密なしくみを運用しているのがタンパク質である。
4.タンパク質が具体的にしていることは、「生きている」という言葉のイメージは、まずは「呼吸をする」だが、「呼吸をする」ということは、空気中の酸素を吸って身体の隅々まで運んで、最後は二酸化炭素を吐くことである。詳しは、酸素を取り込んで、食べたものの中からエネルギーを取り出す。血液を通じて身体の隅々まで酸素を運ぶのは、赤血球という細胞の中にある「ヘモグロビン」という名前のタンパク質である。
5.ごはんを食べたとき、消化酵素が食べ物を細かく分解する。炭水化物を分解する消化酵素はアミラーゼなど、脂肪を分解する消化酵素はリパーゼなど、栄養素としてのタンパク質を分解する消化酵素はペプシンなど、分解するものそれぞれに対して消化酵素がある。。これらの消化酵素もすべてタンパク質である。
6.消化酵素は有名だが、それもタンパク質である。食べものの中にある炭水化物は、消化酵素によってブドウ糖という物質まで分解される。ブドウ糖は多くの細胞に取り込まれ、細胞内でさらに多数のタンパク質によって分解され、最終的に生命が生きていくために必要なエネルギーを作る。
7.「生きている」というと、心臓が動くというイメージがある。心臓の拍動は、筋肉が動くことによって起きるが、筋肉を細かく見ると、そこには動くタンパク質、エネルギーを使って形を変えるタンパク質がある。タンパク質分子一つひとつは10億分の1m単位という目に見えない小さな世界にあるが、それが多く集まれば心臓の拍動という、私たちが実感できるほどの大きな力を生み出す。
8. DNAの複製のときに関わるタンパク質の中心となっているのは、DNAポリメラーゼというDNA合成酵素である。タンパク質の機能を説明するとき、生命の中で何でもやっていると表現するのが一番いい。タンパク質を分解するのも消化酵素というタンパク質だし、自分に必要なエネルギーやDNAを合成するのもタンパク質である。場所が違えば、まったく別の種類のタンパク質がはたらいていて、生命の中では何千種類、何万種類というタンパク質がうまく調和を取りながらはたらいている。
9.ヒトには2万5000種類のタンパク質があるが、機能がわかっていない。ヒトのタンパク質はいまだに新しいものが次々と発見されている。遺伝子がもつ情報を元にタンパク質が作られる。遺伝情報の総体であるゲノムがわかれば、タンパク質が何種類あるのか推測できる。ゲノムに何種類の遺伝子があるかわかれば、そこからタンパク質の種類もわかる。10.人間の場合、ゲノムは2003年に全部解読されている。DNAの塩基配列が全部わかっていて、どこが遺伝子で、どこがタンパク質を作るところか、大体の予想はついていて、それが2万5000種類くらいである。
11.人間のゲノムを解読しようとした1990年代の予想からすると、すごく少ない。たとえば、バクテリアである大腸菌には、遺伝子が4000種類くらいある。人間のほうがずっと複雑なので、人間にはとてつもない数の遺伝子があると、1990年代までは思われていた。大腸菌が4000種類くらいなら、人間は10万種類くらいだろうという予想もあったが、実際は人間の遺伝子は2万5000種類くらいしかなかった。大腸菌の6倍しか違いがなかったのは衝撃的だった。
12.約2万5000種類の遺伝子から、少しずつバリエーションの変わったタンパク質が作られることも、最近わかってきた。バリエーションとは1種類の遺伝子から数種類のタンパク質を作り出すしくみがあるということである。「遺伝子の数の違い」と「生物の複雑さ」対応するほど単純ではない。人間とチンパンジーとで遺伝子の数はそれほど変わらない。
13.遺伝子数はほぼ同じで、ゲノム全体でも約98%は同じで、たった2%の違いだが、そこから作られるタンパク質の機能はだいぶ違ったものになる。人間のタンパク質約2万5000種類がいつも同じ場所ではたらいているのではなく、必要なときに必要な場所で、必要な分だけ作られている。
14.タンパク質は適材適所に配置されている。ヘモグロビンは赤血球で、消化酵素は消化器官で、というように、どのタンパク質をどこで作らせるのかは厳密にコントロールされている。タンパク質を作るのもタンパク質である。自分で自分を作るようなものである。
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第2章:細胞の中では何が起きているのですか?」の「代謝とは何ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.代謝というのは、細胞が増えたり活動をしたりするときに、細胞の中で起きるいろいろな化学反応や物質のやりとりを一括りにしたものである。たとえば、DNAを複製する化学反応も、細胞の外にあるブドウ糖を細胞内に取り込むことも代謝である。
2.代謝は、ほとんどの場合は、「タンパク質」がたらいている。タンパク質は物質の分類として食べるときのタンパク質と同じものである。食べたタンパク質がそのままはたらくのではなく、食べたタンパク質は一度細かく分解され、自分が生きていくために必要なタンパク質に再構築される。
3.細胞内で再構築されたタンパク質は、細胞が生きていくための機能、生命現象のすべてを司っている。タンパク質があるから生命は成り立っている。生命が何かをするときには、必ずタンパク質が関わっている。生命の中で緻密なしくみを運用しているのがタンパク質である。
4.タンパク質が具体的にしていることは、「生きている」という言葉のイメージは、まずは「呼吸をする」だが、「呼吸をする」ということは、空気中の酸素を吸って身体の隅々まで運んで、最後は二酸化炭素を吐くことである。詳しは、酸素を取り込んで、食べたものの中からエネルギーを取り出す。血液を通じて身体の隅々まで酸素を運ぶのは、赤血球という細胞の中にある「ヘモグロビン」という名前のタンパク質である。
5.ごはんを食べたとき、消化酵素が食べ物を細かく分解する。炭水化物を分解する消化酵素はアミラーゼなど、脂肪を分解する消化酵素はリパーゼなど、栄養素としてのタンパク質を分解する消化酵素はペプシンなど、分解するものそれぞれに対して消化酵素がある。。これらの消化酵素もすべてタンパク質である。
6.消化酵素は有名だが、それもタンパク質である。食べものの中にある炭水化物は、消化酵素によってブドウ糖という物質まで分解される。ブドウ糖は多くの細胞に取り込まれ、細胞内でさらに多数のタンパク質によって分解され、最終的に生命が生きていくために必要なエネルギーを作る。
7.「生きている」というと、心臓が動くというイメージがある。心臓の拍動は、筋肉が動くことによって起きるが、筋肉を細かく見ると、そこには動くタンパク質、エネルギーを使って形を変えるタンパク質がある。タンパク質分子一つひとつは10億分の1m単位という目に見えない小さな世界にあるが、それが多く集まれば心臓の拍動という、私たちが実感できるほどの大きな力を生み出す。
8. DNAの複製のときに関わるタンパク質の中心となっているのは、DNAポリメラーゼというDNA合成酵素である。タンパク質の機能を説明するとき、生命の中で何でもやっていると表現するのが一番いい。タンパク質を分解するのも消化酵素というタンパク質だし、自分に必要なエネルギーやDNAを合成するのもタンパク質である。場所が違えば、まったく別の種類のタンパク質がはたらいていて、生命の中では何千種類、何万種類というタンパク質がうまく調和を取りながらはたらいている。
9.ヒトには2万5000種類のタンパク質があるが、機能がわかっていない。ヒトのタンパク質はいまだに新しいものが次々と発見されている。遺伝子がもつ情報を元にタンパク質が作られる。遺伝情報の総体であるゲノムがわかれば、タンパク質が何種類あるのか推測できる。ゲノムに何種類の遺伝子があるかわかれば、そこからタンパク質の種類もわかる。10.人間の場合、ゲノムは2003年に全部解読されている。DNAの塩基配列が全部わかっていて、どこが遺伝子で、どこがタンパク質を作るところか、大体の予想はついていて、それが2万5000種類くらいである。
11.人間のゲノムを解読しようとした1990年代の予想からすると、すごく少ない。たとえば、バクテリアである大腸菌には、遺伝子が4000種類くらいある。人間のほうがずっと複雑なので、人間にはとてつもない数の遺伝子があると、1990年代までは思われていた。大腸菌が4000種類くらいなら、人間は10万種類くらいだろうという予想もあったが、実際は人間の遺伝子は2万5000種類くらいしかなかった。大腸菌の6倍しか違いがなかったのは衝撃的だった。
12.約2万5000種類の遺伝子から、少しずつバリエーションの変わったタンパク質が作られることも、最近わかってきた。バリエーションとは1種類の遺伝子から数種類のタンパク質を作り出すしくみがあるということである。「遺伝子の数の違い」と「生物の複雑さ」対応するほど単純ではない。人間とチンパンジーとで遺伝子の数はそれほど変わらない。
13.遺伝子数はほぼ同じで、ゲノム全体でも約98%は同じで、たった2%の違いだが、そこから作られるタンパク質の機能はだいぶ違ったものになる。人間のタンパク質約2万5000種類がいつも同じ場所ではたらいているのではなく、必要なときに必要な場所で、必要な分だけ作られている。
14.タンパク質は適材適所に配置されている。ヘモグロビンは赤血球で、消化酵素は消化器官で、というように、どのタンパク質をどこで作らせるのかは厳密にコントロールされている。タンパク質を作るのもタンパク質である。自分で自分を作るようなものである。
アベノミクスは、安倍晋三首相はじめ政府首脳が高度経済成長の成功体験をひきずり、頑張れば成長できると信じ込んでおり、時代錯誤である
「水野和夫(法政大学教授)著:米国のトランプ現象は茶番劇、既成秩序が崩れる危機の時代、
エコノミスト、2017.1.10」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.歴史の危機で一つの秩序が終わり、次の秩序へと向かうには、人々の世代交代を待つ必要がある。旧秩序の時代に築いた遺産で生活する代がいなくならない限り、新しい時代の担い手は出てこない。日本はすでに新世代が登場する時期に差し掛かっている。90年代以降に生まれた世代は、物欲が薄く、物質心主義の世代とは価値観が異なる。彼らが時代を担うようになれば、政策も変わっていくだろう。
2.日本は世界に先駆けて穏便に新しい秩序を構築できる恵まれた立ち位置にある。経済学者ケインズは、ゼロ金利は「利子生活音の安楽死」をもたらし、革命を経ずに大きな社会改革が可能と指摘した。現代の日本とドイツがそうした状態にある。社会のすみずみに資本がいきわたりゼロ金利の状態であり、分配による社会改革が可能な状態にある。
3.資本が希少性を保っている間は、人々は資本の奪い合いをしなければならず、エスタブリッシユメントへの反抗や弾劾、そして革命を経なければ新秩序への移行は難しいが、日独は状況が異なる。
4.経済成長を追い求め続ける近代資本主義の延長線上でしか思考できないのは残念である。アベノミクスは、安倍晋三首相はじめ政府首脳が高度経済成長の成功体験をひきずり、頑張れば成長できると信じ込んでおり、時代錯誤であることに早く気づくべきである。政府よりも市場の方がより効率的な資本配分ができるという市場原理主義に根ざす新自由主義も茶番でしかない。
エコノミスト、2017.1.10」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.歴史の危機で一つの秩序が終わり、次の秩序へと向かうには、人々の世代交代を待つ必要がある。旧秩序の時代に築いた遺産で生活する代がいなくならない限り、新しい時代の担い手は出てこない。日本はすでに新世代が登場する時期に差し掛かっている。90年代以降に生まれた世代は、物欲が薄く、物質心主義の世代とは価値観が異なる。彼らが時代を担うようになれば、政策も変わっていくだろう。
2.日本は世界に先駆けて穏便に新しい秩序を構築できる恵まれた立ち位置にある。経済学者ケインズは、ゼロ金利は「利子生活音の安楽死」をもたらし、革命を経ずに大きな社会改革が可能と指摘した。現代の日本とドイツがそうした状態にある。社会のすみずみに資本がいきわたりゼロ金利の状態であり、分配による社会改革が可能な状態にある。
3.資本が希少性を保っている間は、人々は資本の奪い合いをしなければならず、エスタブリッシユメントへの反抗や弾劾、そして革命を経なければ新秩序への移行は難しいが、日独は状況が異なる。
4.経済成長を追い求め続ける近代資本主義の延長線上でしか思考できないのは残念である。アベノミクスは、安倍晋三首相はじめ政府首脳が高度経済成長の成功体験をひきずり、頑張れば成長できると信じ込んでおり、時代錯誤であることに早く気づくべきである。政府よりも市場の方がより効率的な資本配分ができるという市場原理主義に根ざす新自由主義も茶番でしかない。
人間には2万5000種類くらいのタンパク質があり、それらを作るのもまたタンパク質である。ロボットがロボット自身の部品を作っているようである。。
「池上彰、岩崎博司、田口英樹著:
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第2章:細胞の中では何が起きているのですか?」の「タンパク質はどんな形をしているのか」「酵素、コエンザイム、ビタミンとは何ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.人間には2万5000種類くらいのタンパク質があり、それらを作るのもまたタンパク質である。ロボットがロボット自身の部品を作っているようなものである。タンパク質のことを「マシン」と表現し、ナノメートルサイズのマシンなので「ナノマシン」と呼ぶこともある。
2.生体内のナノマシンは、とても巧妙なしくみをもっている。たとえば、細胞の中で使われるエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)という分子として流通しているが、ATPを作るタンパク質「ATP合成酵素」は、回転しながらアデノシン二リン酸(ADP)とリン酸からATPを作っている。
3.このATP合成酵素はミトコンドリアにあり、ごはんとして食べたデンプンは次々に分解され、最終的にここにたどり着く。このATP合成酵素が回転することで、ATPというかたちでエネルギーが作られる。
4.このタンパク質が回転することでエネルギーが作られている。細胞の中でいろいろなものを運ぶタンパク質があるが、このタンパク質は足があって歩く。このタンパク質「キネシン」は、ATPを使って歩く。しかも、向きをもって歩く。普通の分子はランダムに動くが、キネシンは決まつた場所に向かって歩く。レールの上を歩くが、このレールもまた「微小管」というタンパク質である。
5.消化酵素などの酵素もタンパク質である。酵素というのは、化学反応を助けるタンパク質のことです。たとえば、消化を助けるタンパク質は消化酵素という。酵素は英語でエンザイム(enzymeという。サプリメントなどのコエンザイムQ10とは日本語で「補酵素」と訳されているもので、タンパク貨ではないが、酵素を助ける、潤滑油のようなものである。補酵素は、酵素がちゃんとはたらくために必要である。
6.ビタミンは、人間が自分の体内で作ることができない微量の栄養素の総称で、多くは、酵素のはたらきを助けるものなので、ほとんどのビタミンは補酵素としてはたらく。補酵素のうち、体内で作ることができず、食べ物で外から持ち込むものがビタミンである。ビタミンは最近、サプリメントとして単独で売られていて、大事な栄養素と思われているが、、実際には酵繁があってこその補酵素である。
7.タンパク質は、「アミノ酸」という分子がつながったもので、生体中のタンパク質は、20種類のアミノ酸からできている。食べたタンパク質は、最終的にアミノ酸に分解される。分解物であるアミノ酸は、生体内で新しく作られるタンパク質の材料になる。食べたタンパク質をそのまま使うのではなく、バラバラにしてから、自分にとって都合のいいものに作り替える。タンパク質はアミノ酸が一直線につながったものである。
8.タンパク質はすべて、20種類のアミノ酸からできている。20種類しかないのに、組み合わせることでいろいろな形ができて、何でもこなすのが、タンパク質の面白いところである。
池上彰が聞いてわかった生命のしくみ、東工大で生命科学を学ぶ、朝日新聞出版、2016年9月」は面白い。「第2章:細胞の中では何が起きているのですか?」の「タンパク質はどんな形をしているのか」「酵素、コエンザイム、ビタミンとは何ですか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.人間には2万5000種類くらいのタンパク質があり、それらを作るのもまたタンパク質である。ロボットがロボット自身の部品を作っているようなものである。タンパク質のことを「マシン」と表現し、ナノメートルサイズのマシンなので「ナノマシン」と呼ぶこともある。
2.生体内のナノマシンは、とても巧妙なしくみをもっている。たとえば、細胞の中で使われるエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)という分子として流通しているが、ATPを作るタンパク質「ATP合成酵素」は、回転しながらアデノシン二リン酸(ADP)とリン酸からATPを作っている。
3.このATP合成酵素はミトコンドリアにあり、ごはんとして食べたデンプンは次々に分解され、最終的にここにたどり着く。このATP合成酵素が回転することで、ATPというかたちでエネルギーが作られる。
4.このタンパク質が回転することでエネルギーが作られている。細胞の中でいろいろなものを運ぶタンパク質があるが、このタンパク質は足があって歩く。このタンパク質「キネシン」は、ATPを使って歩く。しかも、向きをもって歩く。普通の分子はランダムに動くが、キネシンは決まつた場所に向かって歩く。レールの上を歩くが、このレールもまた「微小管」というタンパク質である。
5.消化酵素などの酵素もタンパク質である。酵素というのは、化学反応を助けるタンパク質のことです。たとえば、消化を助けるタンパク質は消化酵素という。酵素は英語でエンザイム(enzymeという。サプリメントなどのコエンザイムQ10とは日本語で「補酵素」と訳されているもので、タンパク貨ではないが、酵素を助ける、潤滑油のようなものである。補酵素は、酵素がちゃんとはたらくために必要である。
6.ビタミンは、人間が自分の体内で作ることができない微量の栄養素の総称で、多くは、酵素のはたらきを助けるものなので、ほとんどのビタミンは補酵素としてはたらく。補酵素のうち、体内で作ることができず、食べ物で外から持ち込むものがビタミンである。ビタミンは最近、サプリメントとして単独で売られていて、大事な栄養素と思われているが、、実際には酵繁があってこその補酵素である。
7.タンパク質は、「アミノ酸」という分子がつながったもので、生体中のタンパク質は、20種類のアミノ酸からできている。食べたタンパク質は、最終的にアミノ酸に分解される。分解物であるアミノ酸は、生体内で新しく作られるタンパク質の材料になる。食べたタンパク質をそのまま使うのではなく、バラバラにしてから、自分にとって都合のいいものに作り替える。タンパク質はアミノ酸が一直線につながったものである。
8.タンパク質はすべて、20種類のアミノ酸からできている。20種類しかないのに、組み合わせることでいろいろな形ができて、何でもこなすのが、タンパク質の面白いところである。
理想的なEVは、プラグインハイブリッド車になる。これからのEVは都市部ではバッテリー充電が不足郊外ではガソリンという形になる。
2017/9/22付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 168,211部)は「中国自動車市場/三菱自動車/欧州自動車市場/ソーラーカー〜急速なEV化は日本の自動車産業の裾野を破壊する」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.中国政府がガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止の検討を始めた。フランスと英国が2040年までに禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入った。EVを中心とする新エネルギー車に自動車産業の軸足を移し、環境問題などに対応する考えである。
2.中国の自動車産業は今でも2500万台規模だが、これが実現すれば中国の電気自動車は世界最大規模になる。カリフォルニア州と中国は、EVのみを許可するとも言われている。中国はフランスと同じようにプラグインハイブリッド車も認めると思われる。
3.EV化の波は、この1ヶ月で急速にトレンドが形成されました。日本も対応を誤ると、大変な事態になる。EV化対策に成功し、上手にシフト出来た場合にも、日本には課題がある。日本が世界に誇る部品産業が大打撃を受ける。EV化は数十年かけてやるくらいで考えないと、日本にとっては自動車産業の裾野のが大きく壊されるリスクがある。
4.三菱自動車は中国での販売店舗を2017年度に16年度比4割増の300店に増やす方針を明らかにした。環境規制強化でガソリン車の販売が禁止されることをにらみ、プラグインハイブリッド車など新エネルギー車の投入に備えるものである。販売が好調なロシアとインドネシアでは増産を検討する。
5.昨年、日産自動車が三菱自動車の約3割の株式を保有し、アライアンスを組んだ。なぜ100%保有しないのか理由がわからない。三菱自動車は経営陣がしっかりしていれば、
日産・ルノーにとっても大きな役割を果たしてくれる存在になる。三菱自動車の強みは、日産・ルノーが弱い地域で強いこと、そして電気自動車に強いことである。
6.三菱自動車の地域別販売台数を見ると、ロシア、北米、日本、中国となっていて、日本以外での販売台数が多くなっている。その他の地域での販売台数も多く、中東、アフリカ、中南米などにおいても、20万台も販売している。パジェロ、ランサーなどが田舎の悪路で人気を得ている。
7.将来の電気自動車を見据える意味もあり、現時点でも地域補完の効果は大きく、日産・ルノーにとっては非常にありがたい存在である。
8.日経新聞は「欧州勢のEVシフト鮮明」と題する記事を掲載した。ドイツで12日、フランクフルト国際自動車ショーが開幕し、独フォルクスワーゲンは約300ある全車種に電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)のモデルをそろえることを明らかにした。またダイムラーやBMWもEVの品揃えを拡充する方針で、これまでの自動車と同様、いかに使いやすく魅力的なEVを低価格で提供できるかの勝負になってきた。
9.各社の電動化戦略を見ると、VW、ダイムラー、BMW、ルノー、ジャガー・ランド・ローバーなどは明確に方針を示した。一方で、トヨタは全方位体制で、ホンダも若干腰が引けている。トヨタは本格的に取り組み始めれば、すぐにでも優位性を発揮できると思う。理想的なEVのあり方は、プラグインハイブリッド車になるからである。これまでのハイブリッド車では、馬力を必要とする時に動力源を切り替えていたが、これからのEVは都市部ではバッテリーで動くようにして、バッテリー充電が不足する可能性が高い郊外ではガソリンで動くという形になる。
10.この形式のプラグインハイブリッド車が主流になれば、現在のEVよりも圧倒的に安定感が増す。ハイブリッド車に関して、トヨタには多くの経験とノウハウがあるから、優位性を確保することは難しくない。
11.EVのダークホースはソーラーカーである。日経新聞は12日、充電なしでEV走れるソーラーカーの新星続々、と題する記事を掲載した。オランダアイントホーフェン工科大学の卒業生が立ち上げたライトイヤー社が自社で開発したソーラーカーの予約を開始したと紹介した。また中国の漢能(ハネジー)控股集団も昨年、太陽光発電だけで走る試作車を公開した。
12.ソーラーカーは屋根にパネルを入れることで、走行中に太陽光発電により充電し、プラグインを必要としない仕組みである。もちろん、天候による影響も大きく受けるが、EVのあり方としては、ダークホース的な存在で見逃せない。
1.中国政府がガソリン車やディーゼル車の製造・販売禁止の検討を始めた。フランスと英国が2040年までに禁止を表明したことに追随し、導入時期の検討に入った。EVを中心とする新エネルギー車に自動車産業の軸足を移し、環境問題などに対応する考えである。
2.中国の自動車産業は今でも2500万台規模だが、これが実現すれば中国の電気自動車は世界最大規模になる。カリフォルニア州と中国は、EVのみを許可するとも言われている。中国はフランスと同じようにプラグインハイブリッド車も認めると思われる。
3.EV化の波は、この1ヶ月で急速にトレンドが形成されました。日本も対応を誤ると、大変な事態になる。EV化対策に成功し、上手にシフト出来た場合にも、日本には課題がある。日本が世界に誇る部品産業が大打撃を受ける。EV化は数十年かけてやるくらいで考えないと、日本にとっては自動車産業の裾野のが大きく壊されるリスクがある。
4.三菱自動車は中国での販売店舗を2017年度に16年度比4割増の300店に増やす方針を明らかにした。環境規制強化でガソリン車の販売が禁止されることをにらみ、プラグインハイブリッド車など新エネルギー車の投入に備えるものである。販売が好調なロシアとインドネシアでは増産を検討する。
5.昨年、日産自動車が三菱自動車の約3割の株式を保有し、アライアンスを組んだ。なぜ100%保有しないのか理由がわからない。三菱自動車は経営陣がしっかりしていれば、
日産・ルノーにとっても大きな役割を果たしてくれる存在になる。三菱自動車の強みは、日産・ルノーが弱い地域で強いこと、そして電気自動車に強いことである。
6.三菱自動車の地域別販売台数を見ると、ロシア、北米、日本、中国となっていて、日本以外での販売台数が多くなっている。その他の地域での販売台数も多く、中東、アフリカ、中南米などにおいても、20万台も販売している。パジェロ、ランサーなどが田舎の悪路で人気を得ている。
7.将来の電気自動車を見据える意味もあり、現時点でも地域補完の効果は大きく、日産・ルノーにとっては非常にありがたい存在である。
8.日経新聞は「欧州勢のEVシフト鮮明」と題する記事を掲載した。ドイツで12日、フランクフルト国際自動車ショーが開幕し、独フォルクスワーゲンは約300ある全車種に電気自動車(EV)かハイブリッド車(HV)のモデルをそろえることを明らかにした。またダイムラーやBMWもEVの品揃えを拡充する方針で、これまでの自動車と同様、いかに使いやすく魅力的なEVを低価格で提供できるかの勝負になってきた。
9.各社の電動化戦略を見ると、VW、ダイムラー、BMW、ルノー、ジャガー・ランド・ローバーなどは明確に方針を示した。一方で、トヨタは全方位体制で、ホンダも若干腰が引けている。トヨタは本格的に取り組み始めれば、すぐにでも優位性を発揮できると思う。理想的なEVのあり方は、プラグインハイブリッド車になるからである。これまでのハイブリッド車では、馬力を必要とする時に動力源を切り替えていたが、これからのEVは都市部ではバッテリーで動くようにして、バッテリー充電が不足する可能性が高い郊外ではガソリンで動くという形になる。
10.この形式のプラグインハイブリッド車が主流になれば、現在のEVよりも圧倒的に安定感が増す。ハイブリッド車に関して、トヨタには多くの経験とノウハウがあるから、優位性を確保することは難しくない。
11.EVのダークホースはソーラーカーである。日経新聞は12日、充電なしでEV走れるソーラーカーの新星続々、と題する記事を掲載した。オランダアイントホーフェン工科大学の卒業生が立ち上げたライトイヤー社が自社で開発したソーラーカーの予約を開始したと紹介した。また中国の漢能(ハネジー)控股集団も昨年、太陽光発電だけで走る試作車を公開した。
12.ソーラーカーは屋根にパネルを入れることで、走行中に太陽光発電により充電し、プラグインを必要としない仕組みである。もちろん、天候による影響も大きく受けるが、EVのあり方としては、ダークホース的な存在で見逃せない。