2018年03月
官僚的なメンタリティでは、「防空システムを破壊して安全を確保した後に目標を攻撃する」と言うが、それでは失敗する。
「エドワード・ルトワック(米戦略国際問題研究所上級顧問)、池上彰著:米軍攻撃の鍵を握るのは日本だ、
文藝春秋、2017.12」は興味深い内容である。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本の基本方針は、専守防衛である。日本の戦闘機は、飛行機で攻めてきたら飛行機で対抗するという「対空攻撃能力」は持っているが、敵地まで飛んでいって地上を攻撃する「敵地攻撃能力」も備えるべきである。それを政府の手続きとして進める。そういうシグナルを送るだけで、中国側のリアクションが起こり、「日本にはやらせたくない」となる。
2.米国は「日本は本気だ。それなら同盟国の俺たちがやるよ」と動くようになる。韓国のように無責任な態度ではダメである。北朝鮮の軍事力を侮ってはいけない。彼らの軍事力は、他国の数倍効率がいい。経済規模は、名古屋市の規模以下でも、百万人の兵力も、潜水艦発射型ミサイルも、弾道ミサイルも、核兵器もある。ペンタゴンの年間文具代と同程度の資金でこれだけの装備を備えている、
3.彼らが唯一持っていないのが、最新型のレーダーである。対空ミサイルも、近代的な空軍もない。防空システムは無きに等しい。北朝鮮の上空には何もなく、「窓が開いている」状態だが、その「窓」も時間とともに徐々に閉じつつある。現段階であれば、日本の航空部隊が北朝鮮に飛んで行って、すべてのターゲットを3度も4度も攻撃できる。「対地攻撃能力」の準備の目的は、実際に自衛隊が攻撃に行くというより、外交的なものだから、政府の手続きとして粛々と進め、本気度は示す必要がある。
4.通常のやり方で軍需企業に依頼すれば、10年も15年もかかるが、本気になれば、主力戦闘機F15を対地攻撃機に変えるのに、3週間もかからないで安上がりにできる。最高水準のものは必要なく、現行装備に少し変更を加えればよい。
5.防空システムの脆弱性を自覚する北朝鮮は、核・ミサイル施設を地下の深いところにつくっている。米国は地中貫通型爆弾バンカーバスターも開発している。1990年のサダム・フセインのクウェート侵攻の際、イラクの地下バンカーはかなり深いということだったが、通常の500ポンドの爆弾で爆破できた。
6.北朝鮮の地下施設もそれほど強固なものとは思えない。北朝鮮のターゲットは、通常弾でも破壊可能である。「敵地攻撃能力の獲得」を日本の世論やメディアが簡単に許すよかどうかは、そんな不可能な決断を日本の政治家に求めてはいけない。一国の国力は、人口、経済規模、技術水準などに左右されるが、国としてのまとまりも、国力の重要な要素である。国論を2分するようなアドバイスを政治家が公に議論すれば、必ず国論が2分され、日本の分裂につながる。そうなれば、ワシントンも、北京も、「日本は何もできない」と判断し、日本は国益を失うだけである。
7.日本政府にできるのは、行政的な手続きを進めることである。部品の購入だけで、一つのシグナルとなる。国論を2分するのではなく、目立たないように、「本気だ」とワシントンと北京の専門家だけが分かるような形でメッセージを送る。小さな部品でいい。日本には二人乗りのF15DJが45機ある。後部座席にはモニターなどが付いているが、その分だけ機材を載せる余裕がある。これを改造するのは簡単です。1985年、キプロスでパレスチナ解放機構(PLO)によるイスラエル人に対するテロが起こり、それへの報復としてチュニジアのPLO本部を爆撃した際(木の脚作戦)、イスラエル空軍は、短期間のうちに対空用F15Aを対地用に改造し、作戦を成功させた。対空攻撃機を対地攻撃機に変えるのは簡単である。
8.イスラエルは、その4年前の1981年、イラクの核開発阻止のために、原子炉も破壊した。フセイン政権がフランスの原子炉を導入してプルトニウムを得ようとした。攻撃による放射能汚染を避けるために、燃料棒が運び込まれる直前に、イスラエル空軍機が他国のヨルダン上空を通過してイラクまで長距離飛行・爆撃をして、全機無事に戻った(バビロン作戦)。
9.当時はイラン・イラク戦争の開始直後で、イラク空軍もほぼ臨戦態勢で、対空砲もレーダーもあった。しかも精密誘導爆弾ではなく肉眼で通常ターゲットに命中させた。日本はすでに、もう一つの主力戦闘機F2に搭載できるIDAM(通常爆弾を精密誘導型に替えるキット)を持っているから、F15にもJDAMを装着できるように改造すればいい。JDAMを搭載した日本の戦闘機であれば、より容易に作戦は成功できる。
10.JDAMとは、対地精密誘導爆弾で、何キロも離れたところから発射しても、GPS誘導でターゲットに命中する仕組みになっている。改造が知られても、ボーイング社には、「ただ実験しているだけです」と言えばいい。イスラエルも、対地用への改造については「これはテクノロジー上の実験」と言っている。
11.実際の作戦には、戦時のメンタリティが必要で、官僚的なメンタリティでは、「防空システムを破壊して安全を確保した後に目標を攻撃する」となる。日本の防衛関係者もそう言うが、それでは失敗する。バビロン作戦の際、イスラエルは、イラクの戦闘機もミサイルも完全に無視して、奇襲をかけて、一直線で最短距離でターゲットに向かった。これこそリスクを取る戦時のメンタリティである。実際に戦わなくともいい。というメンタリティが必要でである。
文藝春秋、2017.12」は興味深い内容である。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本の基本方針は、専守防衛である。日本の戦闘機は、飛行機で攻めてきたら飛行機で対抗するという「対空攻撃能力」は持っているが、敵地まで飛んでいって地上を攻撃する「敵地攻撃能力」も備えるべきである。それを政府の手続きとして進める。そういうシグナルを送るだけで、中国側のリアクションが起こり、「日本にはやらせたくない」となる。
2.米国は「日本は本気だ。それなら同盟国の俺たちがやるよ」と動くようになる。韓国のように無責任な態度ではダメである。北朝鮮の軍事力を侮ってはいけない。彼らの軍事力は、他国の数倍効率がいい。経済規模は、名古屋市の規模以下でも、百万人の兵力も、潜水艦発射型ミサイルも、弾道ミサイルも、核兵器もある。ペンタゴンの年間文具代と同程度の資金でこれだけの装備を備えている、
3.彼らが唯一持っていないのが、最新型のレーダーである。対空ミサイルも、近代的な空軍もない。防空システムは無きに等しい。北朝鮮の上空には何もなく、「窓が開いている」状態だが、その「窓」も時間とともに徐々に閉じつつある。現段階であれば、日本の航空部隊が北朝鮮に飛んで行って、すべてのターゲットを3度も4度も攻撃できる。「対地攻撃能力」の準備の目的は、実際に自衛隊が攻撃に行くというより、外交的なものだから、政府の手続きとして粛々と進め、本気度は示す必要がある。
4.通常のやり方で軍需企業に依頼すれば、10年も15年もかかるが、本気になれば、主力戦闘機F15を対地攻撃機に変えるのに、3週間もかからないで安上がりにできる。最高水準のものは必要なく、現行装備に少し変更を加えればよい。
5.防空システムの脆弱性を自覚する北朝鮮は、核・ミサイル施設を地下の深いところにつくっている。米国は地中貫通型爆弾バンカーバスターも開発している。1990年のサダム・フセインのクウェート侵攻の際、イラクの地下バンカーはかなり深いということだったが、通常の500ポンドの爆弾で爆破できた。
6.北朝鮮の地下施設もそれほど強固なものとは思えない。北朝鮮のターゲットは、通常弾でも破壊可能である。「敵地攻撃能力の獲得」を日本の世論やメディアが簡単に許すよかどうかは、そんな不可能な決断を日本の政治家に求めてはいけない。一国の国力は、人口、経済規模、技術水準などに左右されるが、国としてのまとまりも、国力の重要な要素である。国論を2分するようなアドバイスを政治家が公に議論すれば、必ず国論が2分され、日本の分裂につながる。そうなれば、ワシントンも、北京も、「日本は何もできない」と判断し、日本は国益を失うだけである。
7.日本政府にできるのは、行政的な手続きを進めることである。部品の購入だけで、一つのシグナルとなる。国論を2分するのではなく、目立たないように、「本気だ」とワシントンと北京の専門家だけが分かるような形でメッセージを送る。小さな部品でいい。日本には二人乗りのF15DJが45機ある。後部座席にはモニターなどが付いているが、その分だけ機材を載せる余裕がある。これを改造するのは簡単です。1985年、キプロスでパレスチナ解放機構(PLO)によるイスラエル人に対するテロが起こり、それへの報復としてチュニジアのPLO本部を爆撃した際(木の脚作戦)、イスラエル空軍は、短期間のうちに対空用F15Aを対地用に改造し、作戦を成功させた。対空攻撃機を対地攻撃機に変えるのは簡単である。
8.イスラエルは、その4年前の1981年、イラクの核開発阻止のために、原子炉も破壊した。フセイン政権がフランスの原子炉を導入してプルトニウムを得ようとした。攻撃による放射能汚染を避けるために、燃料棒が運び込まれる直前に、イスラエル空軍機が他国のヨルダン上空を通過してイラクまで長距離飛行・爆撃をして、全機無事に戻った(バビロン作戦)。
9.当時はイラン・イラク戦争の開始直後で、イラク空軍もほぼ臨戦態勢で、対空砲もレーダーもあった。しかも精密誘導爆弾ではなく肉眼で通常ターゲットに命中させた。日本はすでに、もう一つの主力戦闘機F2に搭載できるIDAM(通常爆弾を精密誘導型に替えるキット)を持っているから、F15にもJDAMを装着できるように改造すればいい。JDAMを搭載した日本の戦闘機であれば、より容易に作戦は成功できる。
10.JDAMとは、対地精密誘導爆弾で、何キロも離れたところから発射しても、GPS誘導でターゲットに命中する仕組みになっている。改造が知られても、ボーイング社には、「ただ実験しているだけです」と言えばいい。イスラエルも、対地用への改造については「これはテクノロジー上の実験」と言っている。
11.実際の作戦には、戦時のメンタリティが必要で、官僚的なメンタリティでは、「防空システムを破壊して安全を確保した後に目標を攻撃する」となる。日本の防衛関係者もそう言うが、それでは失敗する。バビロン作戦の際、イスラエルは、イラクの戦闘機もミサイルも完全に無視して、奇襲をかけて、一直線で最短距離でターゲットに向かった。これこそリスクを取る戦時のメンタリティである。実際に戦わなくともいい。というメンタリティが必要でである。
世界から集めた人材によるイノベーションが深圳経済の成長を促進する。人材にカネを投じる発想が米国や中国に比べ弱い。日本の大学や企業の魅力は低下している。
「郭登極(深圳大掌機械電子掌院・院長補佐)著、研究力で躍進する中国の凄すぎる人材政策、
週刊東洋経済、2018.2.10」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は米カリフォルニア大学の教授だが、その研究拠点の一つを中国・深圳に置いている。深圳市は世界中からノーベル賞受賞者を誘致している。「ノーベル賞科学者ラボ」と題したこのプロジェクトでは1件当たり1億元(1元=約17円)程度の研究費を助成し、最先端の科学技術が導入された研究拠点を提供する。すでに10カ所以上のラボが発足しているが、今も日本人を含め多くの研究者にアプローチが続いている。
2.筆者が、働く場として深圳を選んだのは、ここが中国のイノベーションセンターだからである。深圳の経済規模は北京・上海に次ぎ、今や中国第3の都市である。中国の研究論文数の急速な増加、研究の質の向上には、高度人材の誘致策にも目を見張るものがある。
政府は国内外の高度人材を誘致し、それにふさわしいインセンティブをつける「人材政策」を推進している。08年に始まった「千人計画」(海外で博士号を取得した人材を中国へ呼び戻す政策)をはじめ、さまざまな政策が施行されている。
3.深圳市政府の人材政策「孔雀計画」は、海外で学んだ人材を中国の東南部にある深圳へ集める計画である。1年以上の国外留学経験を持ち深川で就労している博士号取得者のうち、所定の条件を満たす者を「孔雀人材」に認定して、3種類の助成を行うプログラムである。
4.第1に、深圳の企業や研究機関で活動しているチーム(3人以上10人以下)に対する起業助成金がある。これまで102件が市に認定され、1件当たりの平均助成額は約2000万元に上る。第2に、「孔雀人材」個人への奨励金.である。国外の研究機関や企業で得た職位・発表論文・特許数などによりA、B、Cと3ランクに分類する。A、B、Cそれぞれの奨励金は、300万元、200万元、160万元で、すべて免税である。第3に「研究費スタートアップ」という制度で、深圳の大学や研究機関に在籍する「孔雀人材」に認定された研究者は、基礎研究の立ち上げ費用を3年間支給される。Cランクの人材に総額300万元、Bランクの人材に総額500万元の研究経費が支給される。
5.こうして集めた人材によるイノベーションが深圳経済の成長を促進することを期待している。科学技術で日本は依然として一定の優位性を持つが、人材にカネを投じる発想が米国や中国に比べ弱い。産学連携も遅れており、中国の研究者や学生からすると日本の大学や企業の魅力は低下している。世界中で熾烈化する「人材争奪戦」への備えを真剣に考えるべき時である。
週刊東洋経済、2018.2.10」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は米カリフォルニア大学の教授だが、その研究拠点の一つを中国・深圳に置いている。深圳市は世界中からノーベル賞受賞者を誘致している。「ノーベル賞科学者ラボ」と題したこのプロジェクトでは1件当たり1億元(1元=約17円)程度の研究費を助成し、最先端の科学技術が導入された研究拠点を提供する。すでに10カ所以上のラボが発足しているが、今も日本人を含め多くの研究者にアプローチが続いている。
2.筆者が、働く場として深圳を選んだのは、ここが中国のイノベーションセンターだからである。深圳の経済規模は北京・上海に次ぎ、今や中国第3の都市である。中国の研究論文数の急速な増加、研究の質の向上には、高度人材の誘致策にも目を見張るものがある。
政府は国内外の高度人材を誘致し、それにふさわしいインセンティブをつける「人材政策」を推進している。08年に始まった「千人計画」(海外で博士号を取得した人材を中国へ呼び戻す政策)をはじめ、さまざまな政策が施行されている。
3.深圳市政府の人材政策「孔雀計画」は、海外で学んだ人材を中国の東南部にある深圳へ集める計画である。1年以上の国外留学経験を持ち深川で就労している博士号取得者のうち、所定の条件を満たす者を「孔雀人材」に認定して、3種類の助成を行うプログラムである。
4.第1に、深圳の企業や研究機関で活動しているチーム(3人以上10人以下)に対する起業助成金がある。これまで102件が市に認定され、1件当たりの平均助成額は約2000万元に上る。第2に、「孔雀人材」個人への奨励金.である。国外の研究機関や企業で得た職位・発表論文・特許数などによりA、B、Cと3ランクに分類する。A、B、Cそれぞれの奨励金は、300万元、200万元、160万元で、すべて免税である。第3に「研究費スタートアップ」という制度で、深圳の大学や研究機関に在籍する「孔雀人材」に認定された研究者は、基礎研究の立ち上げ費用を3年間支給される。Cランクの人材に総額300万元、Bランクの人材に総額500万元の研究経費が支給される。
5.こうして集めた人材によるイノベーションが深圳経済の成長を促進することを期待している。科学技術で日本は依然として一定の優位性を持つが、人材にカネを投じる発想が米国や中国に比べ弱い。産学連携も遅れており、中国の研究者や学生からすると日本の大学や企業の魅力は低下している。世界中で熾烈化する「人材争奪戦」への備えを真剣に考えるべき時である。
イスラエルがハイテク、軍事技術の一大拠点であるのも、「若い国」でイノベーションが起こるからである。日本の最大の脅威は少子化である。長期的な取り組みが必要。
「エドワード・ルトワック(米戦略国際問題研究所上級顧問)、池上彰著:米軍攻撃の鍵を握るのは日本だ、
文藝春秋、2017.12」は興味深い内容である。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本に必要なのは、平時のメンタリティで「対地攻撃能力」に関して合意を図ることではなく、戦時のメンタリティでJDAMを追加購入することである。JDAMは、陸海空の3軍が共通して使えて汎用性が高いという利点がある。これを「研究のため」と称して購入すれば、本物のメッセージとなる。
2.国としての連帯感を失わずに進めなければならないが、民主主義の国、言論の自由のある国ではとても難しいが、正面から議論して国論を2分してはいけない。少額でもいいから契約書を交わして書類上の手続きを進めるだけでも、それが外交的なメッセージとなる。
3.北朝鮮も「日本にやられる前にやろう」と先制攻撃をしてくる能力はない。核弾頭さえなければ、スカッドミサイルは脅威ではない。精度の問題もあるが、大きなリスクではない。湾岸戦争時にイラクからイスラエルに40発程度のスカッドミサイルが撃ち込まれたが、犠牲になったのは、警報を無視してビーチを歩いていたカナダの旅行者と一匹の犬だけだった。ミサイルは、核弾頭がなければ無駄なものである。
4.日本が対地攻撃用の部品を買い始めれば、必ず米国と中国の知るところとなる。北朝鮮が、仮に知って、スカッドミサイルを日本に撃つとしても、それによって多少の被害が出たとしても、翌日には米国の大反撃を喰らい、北朝鮮は存続不可能となる。ミサイルが日本に届いた時点で「北朝鮮の負け、日本の勝ち」なる。北の非核化が実現する。
5.最も重要なのは、核ミサイルを持った金正恩の言いなりになってよいのかということである。北の核ミサイルは、ロシアや中国のそれとは、全く意味が異なる。
6.10月に開催された5年に1度の中国共産党大会で、習近平は、後継者を指名しなかった。後継者を指名しないことによって習近平は、党を完全に掌握したことになるが、彼が掌握できるのも、中国社会のごく一部である。党大会では、毛沢東思想、郡小平理論、習近平思想などの思想が議論されたが、「そんな思想なんか死んだネズミよりも使えない」と市民は感じている。
7.中国の外交的無能さは今後も続く。「戦略以外はすべて劣るのに戦略だけは優れている」というロシアに対し、「戦略以外はすべて優れているのに戦略だけは劣る」のが中国である。中国は、伝統的に戦略や外交が下手である。まず対外認識が不足している。16年間、アフガニスタンで戦った米国も相手を理解できていなかったが、中国も北朝鮮を理解できない。米国が遠方のアフガニスタンを理解できないのは仕方ないとしても、中国は隣国すら理解できない。
8.中国は近年、自らの大国化を誇示してきたが、かえって、米国、日本、インド、ベトナム、インドネシア、フィリピン、オーストラリアといった国々による「対中包囲網」が形成された。今回、習近平は、党内の独裁体制を強化したが、閉鎖的なシステムほど、外からのシグナルが入ってこなくなる。中国の常務委員は、ロシアが立場をやや反中的に変えたことにも気づいていない。
9.日本には、「中国はそれほど心配するな」と言いたい。それよりも北朝鮮の方が問題である。中国に対峙するには、これまでの「戦後システム」で十分だが、北朝鮮に対しては、従来のメンタリティを変えなければいけない。
10.日本がいま、ターニングポイントに立っていることを認識すべきである。日本は戦略的に優れた国である。内戦の戦国時代を経て、幕藩体制ができたが、これは関所や参勤交代などの仕組みで戦争を防ぐトータルなシステムだった。着飾った貴族がベルサイユ宮殿に集うことで平和を維持しようとしたフランス王政より完壁なシステムである。江戸から明治へと日本は再びドラスティックな転換を遂げた。ヘアスタイルから服装、教育、軍隊、官僚制まですべてを変えて近代化に適応した。さらに太平洋戦争後の復興は終戦の翌日から始まり、短期間に復興を遂げて戦前よりも豊かになった。
11.強調したいのは、日本の適応力である。戦争から戦後復興に一気に変わる。「戦後システム」とは、米国の保護の下で、(当時の)防衛庁(軍事)より通産省(経済)が中心となり、外務省は実質的に「対米関係省」というものだった。それが戦後70年、うまく機能してきた。中国は、心理的にはともかく、軍事的、戦略的な脅威ではない。しかし、北の核ミサイルの脅威には、「戦後システム」だけでは十分でないことを認識すべきである。
12.戦略を根本から考えると、少子化対策こそ、今後、国としての勝利への道につながる。スウェーデン、フランス、イスラエルは、少子化対策の先進国、要するに「若い国」である。不妊治療や育児・教育制度を充実させ、高い出生率で、次世代の「税金を払う国民」と「国としての活力」を生み出している。
13.スウェーデンは、プーチンが軍事的に脅し始めると即座に反応し、ほぼ異論なしに徴兵制の再導入を決定した。スウェーデンが最後に戦ったのは1814年の大昔なのにである。これは「若い国」だから可能だった。フランスの不人気だったオランド前大統領も、テロリストが侵入したアフリカ・マリに軍事介入した。米国にも、NATOにも、EUにも、国連にもいっさい相談なしに、不人気なのに、この時だけは国民に支持された。これも「若い国」だからできた。
14.イスラエルがハイテク、軍事技術の一大拠点であるのも、「若い国」でイノベーションが起こるからである。日本の最大の脅威は少子化である。「ヤング・ジャパン」が必要である。「若い日本」をつくるのは長期的に取り組むべき課題だが、「北の核ミサイル」という眼前の脅威を除去するには、今が最後のチャンスで一刻の猶予も許されない。
文藝春秋、2017.12」は興味深い内容である。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本に必要なのは、平時のメンタリティで「対地攻撃能力」に関して合意を図ることではなく、戦時のメンタリティでJDAMを追加購入することである。JDAMは、陸海空の3軍が共通して使えて汎用性が高いという利点がある。これを「研究のため」と称して購入すれば、本物のメッセージとなる。
2.国としての連帯感を失わずに進めなければならないが、民主主義の国、言論の自由のある国ではとても難しいが、正面から議論して国論を2分してはいけない。少額でもいいから契約書を交わして書類上の手続きを進めるだけでも、それが外交的なメッセージとなる。
3.北朝鮮も「日本にやられる前にやろう」と先制攻撃をしてくる能力はない。核弾頭さえなければ、スカッドミサイルは脅威ではない。精度の問題もあるが、大きなリスクではない。湾岸戦争時にイラクからイスラエルに40発程度のスカッドミサイルが撃ち込まれたが、犠牲になったのは、警報を無視してビーチを歩いていたカナダの旅行者と一匹の犬だけだった。ミサイルは、核弾頭がなければ無駄なものである。
4.日本が対地攻撃用の部品を買い始めれば、必ず米国と中国の知るところとなる。北朝鮮が、仮に知って、スカッドミサイルを日本に撃つとしても、それによって多少の被害が出たとしても、翌日には米国の大反撃を喰らい、北朝鮮は存続不可能となる。ミサイルが日本に届いた時点で「北朝鮮の負け、日本の勝ち」なる。北の非核化が実現する。
5.最も重要なのは、核ミサイルを持った金正恩の言いなりになってよいのかということである。北の核ミサイルは、ロシアや中国のそれとは、全く意味が異なる。
6.10月に開催された5年に1度の中国共産党大会で、習近平は、後継者を指名しなかった。後継者を指名しないことによって習近平は、党を完全に掌握したことになるが、彼が掌握できるのも、中国社会のごく一部である。党大会では、毛沢東思想、郡小平理論、習近平思想などの思想が議論されたが、「そんな思想なんか死んだネズミよりも使えない」と市民は感じている。
7.中国の外交的無能さは今後も続く。「戦略以外はすべて劣るのに戦略だけは優れている」というロシアに対し、「戦略以外はすべて優れているのに戦略だけは劣る」のが中国である。中国は、伝統的に戦略や外交が下手である。まず対外認識が不足している。16年間、アフガニスタンで戦った米国も相手を理解できていなかったが、中国も北朝鮮を理解できない。米国が遠方のアフガニスタンを理解できないのは仕方ないとしても、中国は隣国すら理解できない。
8.中国は近年、自らの大国化を誇示してきたが、かえって、米国、日本、インド、ベトナム、インドネシア、フィリピン、オーストラリアといった国々による「対中包囲網」が形成された。今回、習近平は、党内の独裁体制を強化したが、閉鎖的なシステムほど、外からのシグナルが入ってこなくなる。中国の常務委員は、ロシアが立場をやや反中的に変えたことにも気づいていない。
9.日本には、「中国はそれほど心配するな」と言いたい。それよりも北朝鮮の方が問題である。中国に対峙するには、これまでの「戦後システム」で十分だが、北朝鮮に対しては、従来のメンタリティを変えなければいけない。
10.日本がいま、ターニングポイントに立っていることを認識すべきである。日本は戦略的に優れた国である。内戦の戦国時代を経て、幕藩体制ができたが、これは関所や参勤交代などの仕組みで戦争を防ぐトータルなシステムだった。着飾った貴族がベルサイユ宮殿に集うことで平和を維持しようとしたフランス王政より完壁なシステムである。江戸から明治へと日本は再びドラスティックな転換を遂げた。ヘアスタイルから服装、教育、軍隊、官僚制まですべてを変えて近代化に適応した。さらに太平洋戦争後の復興は終戦の翌日から始まり、短期間に復興を遂げて戦前よりも豊かになった。
11.強調したいのは、日本の適応力である。戦争から戦後復興に一気に変わる。「戦後システム」とは、米国の保護の下で、(当時の)防衛庁(軍事)より通産省(経済)が中心となり、外務省は実質的に「対米関係省」というものだった。それが戦後70年、うまく機能してきた。中国は、心理的にはともかく、軍事的、戦略的な脅威ではない。しかし、北の核ミサイルの脅威には、「戦後システム」だけでは十分でないことを認識すべきである。
12.戦略を根本から考えると、少子化対策こそ、今後、国としての勝利への道につながる。スウェーデン、フランス、イスラエルは、少子化対策の先進国、要するに「若い国」である。不妊治療や育児・教育制度を充実させ、高い出生率で、次世代の「税金を払う国民」と「国としての活力」を生み出している。
13.スウェーデンは、プーチンが軍事的に脅し始めると即座に反応し、ほぼ異論なしに徴兵制の再導入を決定した。スウェーデンが最後に戦ったのは1814年の大昔なのにである。これは「若い国」だから可能だった。フランスの不人気だったオランド前大統領も、テロリストが侵入したアフリカ・マリに軍事介入した。米国にも、NATOにも、EUにも、国連にもいっさい相談なしに、不人気なのに、この時だけは国民に支持された。これも「若い国」だからできた。
14.イスラエルがハイテク、軍事技術の一大拠点であるのも、「若い国」でイノベーションが起こるからである。日本の最大の脅威は少子化である。「ヤング・ジャパン」が必要である。「若い日本」をつくるのは長期的に取り組むべき課題だが、「北の核ミサイル」という眼前の脅威を除去するには、今が最後のチャンスで一刻の猶予も許されない。
日本車のピークは去年で終わり、今年からはどこが中国市場を取るために、EV車で優位に立てるかが勝負。日本勢は改善する提案が多く、未来志向がなく提案力が乏しい。
2018/1/26付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点」(発行部数 167,531部)「北米国際自動車ショー/米ゼネラル・エレクトリック/米アマゾン・ドットコム/米グーグル/中国市場/日本ペイントHD〜グーグルが認めたテンセントのレベルと価値」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.北米国際自動車ショーが米デトロイトで開幕した。米フォード・モーターは2022年までに電気自動車(EV)など電動車40モデルに最大で約1兆2200億円を投資する方針を表明している。
2.欧米勢を中心に全体的にEV車に対して、かなり前のめりの姿勢を示している。欧州勢・VWに対して、中国勢とGMが手を組んで対抗する構図である。日本車のような「精巧な作り」を目指すのではなく、今はいち早いEV車への対応が最重要と感じている。
3.日本車のピークは去年で終わり、今年からはどこが中国市場を取れるのか、すなわちEV車で優位に立てるのか、という点が勝負になってきた。今回の自動車ショーの発表内容を見ても、日本勢は今までのものに改善する提案が多く、未来志向が感じられない。提案力が乏しく、残念な結果である。
4.日経新聞は17日、「名門GE、解体も覚悟」と題する記事を掲載した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、保険事業で約7,000億円の特別費用を計上したと紹介している。前任者ジェフ・イメルト氏の負の遺産を洗い出す過程で明らかになったが、前任者を否定するジョン・フラナリー最高経営責任者(CEO)の求心力が高まれば、GE解体もそう遠くない時期に実現する。
5.GEはこれまでにも何回かにわたって解体されてきた。今回フラナリー氏は、7000億円もの引当金を必要とする金融事業をやっている場合ではないと主張し、前任者であるイメルト氏を批判しているが、実際にはイメルト氏がやってきたことも、それほど大きな違いはない。
6.イメルト氏も、2000年当時、売上高の50%を占めていた金融事業を売却し縮小させた。2016年には売上高の構成比を電力システム(22%)、航空機エンジン(21%)、医療機器(15%)、金融(9%)にまで変更させている。
7.フラナリー氏としては「自分の色」を出したいという意向があって、今回のような発表をしている。今後、フラナリー氏がGEを解体するとして、照明・エネルギーコネクション関連は、スマートシティ・スマートハウスの需要も高くなるので切り離すことはできるが、電力システムや航空機エンジンは難しい。
8.金融事業の切り離しだけでは、大きな顔はできない。解体されても価値が高いというのがGEという会社の特徴なので、今回の件を受けてGEの行く末を心配する必要はない。9.米アマゾン・ドットコムは新設予定の第2本社について、候補地をニューヨーク、シカゴなど北米の20の都市と地域に絞り込んだ。今後さらに提案内容を精査し、2018年中に最終的な地域を決める。
10.アマゾンは、本社新設に5500億円の投資をして、5万人の雇用を計画している。5万人のうち7割がエンジニアになる見込みとのことだが、これだけの規模に対応できる都市はそれほど多くはない。
11.候補地が20箇所と発表されているが、現実的にはボストンではないかと見ている。カナダの候補地として唯一トロントが挙げられているが、バンクーバーのほうが良い。最終的にはトランプ政権が長続きすればボストン、そうでなければカナダのトロントに行く可能性もある。
12.平均給与10万ドルを超える人が5万人だから、受け入れる都市にとってはかなり大きなインパクトである。どの都市も自分のところへ来て欲しいと思っている。米国が広いと言っても、この規模の受け入れができる都市はそれほど多くない。
13.米グーグルは同社が提供するクラウドAIサービスをユーザー企業が容易にカスタマイズできるサービスを開始する。専門家がいない企業でも、自社のニーズに適したAIシステムを作ることが可能で、まずは画像検索に絞った機能を提供する。
14.グーグルだけでなく、IBMなど他の企業も同じようなことを発表をしている。専門家がいなくても利用できるという点を推しているが、詳しい人がいたほうが効率的にAIを利用し事業化できる。逆に、素人だけではサービスを「利用」できるかも知れまないが、きちんと「活用」して事業として成功させられるかは疑問である。
15.グーグルは、将来の協業も視野に入れ、中国ネットサービス大手のテンセントと
長期にわたる特許の共有で合意した。グーグルは2010年に中国市場から撤退したが、最近に新たに研究拠点を設けており、テンセントとの合意をきっかけに中国市場へ再参入を目指す可能性が出てきた。
16.グーグルがテンセントのレベルを高く評価した結果である。テンセントにしてみれば、グーグルが持つ特許を共有できるのは、相当大きなメリットで、グーグルからすれば、テンセントはそれだけのものを提供してでも組むに値するレベルの企業だと判断した。AIやIoTの技術、4億人のWeChatPay会員などが評価された。
17.日本ペイントホールディングスの筆頭株主であるシンガポール塗料大手、ウットラムグループは19日、日本ペイントHDに送り込む取締役を増員し、取締役会の過半を握る株主提案を出した。日本ペイントHDは反発するとみられ、3月の定時株主総会に向けて委任状の争奪戦に発展する可能性がある。委任状争奪戦になっても、ウットラムグループが株式の38.99%を保有しているので、金融機関などに働きかければ、50%に達するのはそれほど難しくない。
18.ウットラムグループを率いるゴー・ハップジン氏は日本ペイントの取締役でもある。今はシンガポールにいるが、東京大学出身で、日本ペイントが今アジアで強さを発揮し、シェアを伸ばすことができているのも、現在の日本ペイントの実績は彼の功績が非常に大きい。ゴー・ハップジン氏は非常にオーソドックスな経営をする人物で、今の日本ペイントの他の取締役だけでは、銀行対策など取締役会を取りまとめることは難しい。
1.北米国際自動車ショーが米デトロイトで開幕した。米フォード・モーターは2022年までに電気自動車(EV)など電動車40モデルに最大で約1兆2200億円を投資する方針を表明している。
2.欧米勢を中心に全体的にEV車に対して、かなり前のめりの姿勢を示している。欧州勢・VWに対して、中国勢とGMが手を組んで対抗する構図である。日本車のような「精巧な作り」を目指すのではなく、今はいち早いEV車への対応が最重要と感じている。
3.日本車のピークは去年で終わり、今年からはどこが中国市場を取れるのか、すなわちEV車で優位に立てるのか、という点が勝負になってきた。今回の自動車ショーの発表内容を見ても、日本勢は今までのものに改善する提案が多く、未来志向が感じられない。提案力が乏しく、残念な結果である。
4.日経新聞は17日、「名門GE、解体も覚悟」と題する記事を掲載した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、保険事業で約7,000億円の特別費用を計上したと紹介している。前任者ジェフ・イメルト氏の負の遺産を洗い出す過程で明らかになったが、前任者を否定するジョン・フラナリー最高経営責任者(CEO)の求心力が高まれば、GE解体もそう遠くない時期に実現する。
5.GEはこれまでにも何回かにわたって解体されてきた。今回フラナリー氏は、7000億円もの引当金を必要とする金融事業をやっている場合ではないと主張し、前任者であるイメルト氏を批判しているが、実際にはイメルト氏がやってきたことも、それほど大きな違いはない。
6.イメルト氏も、2000年当時、売上高の50%を占めていた金融事業を売却し縮小させた。2016年には売上高の構成比を電力システム(22%)、航空機エンジン(21%)、医療機器(15%)、金融(9%)にまで変更させている。
7.フラナリー氏としては「自分の色」を出したいという意向があって、今回のような発表をしている。今後、フラナリー氏がGEを解体するとして、照明・エネルギーコネクション関連は、スマートシティ・スマートハウスの需要も高くなるので切り離すことはできるが、電力システムや航空機エンジンは難しい。
8.金融事業の切り離しだけでは、大きな顔はできない。解体されても価値が高いというのがGEという会社の特徴なので、今回の件を受けてGEの行く末を心配する必要はない。9.米アマゾン・ドットコムは新設予定の第2本社について、候補地をニューヨーク、シカゴなど北米の20の都市と地域に絞り込んだ。今後さらに提案内容を精査し、2018年中に最終的な地域を決める。
10.アマゾンは、本社新設に5500億円の投資をして、5万人の雇用を計画している。5万人のうち7割がエンジニアになる見込みとのことだが、これだけの規模に対応できる都市はそれほど多くはない。
11.候補地が20箇所と発表されているが、現実的にはボストンではないかと見ている。カナダの候補地として唯一トロントが挙げられているが、バンクーバーのほうが良い。最終的にはトランプ政権が長続きすればボストン、そうでなければカナダのトロントに行く可能性もある。
12.平均給与10万ドルを超える人が5万人だから、受け入れる都市にとってはかなり大きなインパクトである。どの都市も自分のところへ来て欲しいと思っている。米国が広いと言っても、この規模の受け入れができる都市はそれほど多くない。
13.米グーグルは同社が提供するクラウドAIサービスをユーザー企業が容易にカスタマイズできるサービスを開始する。専門家がいない企業でも、自社のニーズに適したAIシステムを作ることが可能で、まずは画像検索に絞った機能を提供する。
14.グーグルだけでなく、IBMなど他の企業も同じようなことを発表をしている。専門家がいなくても利用できるという点を推しているが、詳しい人がいたほうが効率的にAIを利用し事業化できる。逆に、素人だけではサービスを「利用」できるかも知れまないが、きちんと「活用」して事業として成功させられるかは疑問である。
15.グーグルは、将来の協業も視野に入れ、中国ネットサービス大手のテンセントと
長期にわたる特許の共有で合意した。グーグルは2010年に中国市場から撤退したが、最近に新たに研究拠点を設けており、テンセントとの合意をきっかけに中国市場へ再参入を目指す可能性が出てきた。
16.グーグルがテンセントのレベルを高く評価した結果である。テンセントにしてみれば、グーグルが持つ特許を共有できるのは、相当大きなメリットで、グーグルからすれば、テンセントはそれだけのものを提供してでも組むに値するレベルの企業だと判断した。AIやIoTの技術、4億人のWeChatPay会員などが評価された。
17.日本ペイントホールディングスの筆頭株主であるシンガポール塗料大手、ウットラムグループは19日、日本ペイントHDに送り込む取締役を増員し、取締役会の過半を握る株主提案を出した。日本ペイントHDは反発するとみられ、3月の定時株主総会に向けて委任状の争奪戦に発展する可能性がある。委任状争奪戦になっても、ウットラムグループが株式の38.99%を保有しているので、金融機関などに働きかければ、50%に達するのはそれほど難しくない。
18.ウットラムグループを率いるゴー・ハップジン氏は日本ペイントの取締役でもある。今はシンガポールにいるが、東京大学出身で、日本ペイントが今アジアで強さを発揮し、シェアを伸ばすことができているのも、現在の日本ペイントの実績は彼の功績が非常に大きい。ゴー・ハップジン氏は非常にオーソドックスな経営をする人物で、今の日本ペイントの他の取締役だけでは、銀行対策など取締役会を取りまとめることは難しい。
高齢者にふだん接している人でも見誤ることはある。車いすでたくさん紙袋を抱えて自分の部屋に帰る。御用聞きには大学生チームが好評である。若い人が向いている。
「古市盛久(御用聞き代表取締役)、池上恭介(フルカウント代表取締役)、山本遼(R65代表取締役)著:高齢者の悩み.私どもが承ります、
文藝春秋、2017.12」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.シニア向けのビジネスの起業家として古市氏が38歳、池上氏が37歳、山本氏は27歳で客様から見たら子か孫かといった世代で起業した。フルカウントの「出張デパート」は、高齢者施設の食堂などを借りて、衣類や日用品、お菓子などを販売する。施設には、ちょっと買い物したいと思っても一人では出かけられないお年寄りがいる。女性が多いのに、気軽にショッピングが楽しめない状況を打開したいと考えた。モノ売りのつもりで始めが、実は"コト売り"だった。例えば、気に入った洋服があれば、自分の部屋に持ち帰って試着することができる。お客さんはまず若々しくて派手な服を手に取るが、「ああ、でも似合わへん」と笑って、少し地味な服を選び直す。そういう一連の流れが、実は買い物の楽しみである。
2.施設のほうで立て替え払いもできるが、現金での買い物をすすめている。施設に入ると、自販機で小銭を使うぐらいで、お金に触る機会がほとんどない。急にできなくなるのは寂しい。夢中になって、杖をついてきた方が、お金を払ってその場に杖を忘れて帰っちゃうこともある。
3.株式会社御用聞きは、高齢者のご自宅にうかがい、家事などをお手伝う。東京の高島平団地でスタートし、いまは埼玉、千葉、神奈川の8エリアでサービスをしている。代表的なサービスの一つは「100円家事代行」といって、料金は5分ごとに百円である。メニューには電球や電池の交換、びんのブタ開け、郵便物回収や宛名書き、日常的なお掃除などがある。家具や粗大ゴミの移動、草むしりなどで、こちらは5分で3百円。トイレやお風呂の掃除、それから年末の大掃除のお手伝いもメニューにある。「片付けられないお部屋のお手伝い」にも力を入れている。
4.山本氏のR65は不動産業で、お客様は65歳以上に限定している。日本の不動産会社は、高齢社会なのに65歳以上のお客さんを相手にしない。高齢者に貸したがらない大家が多いのは、単身者は孤独死などのリスクがあるから警戒される。時間をかけて探せば、理解のある大家さんもいる。
5.シニアはお金を持ってるが、需要はあるのにサービスが届いてない。65歳以上のお客さんだけでも十分にやっていける。現在は関西方面で約1千カ所。関東エリアでは約150カ所で、訪問は年に2回か3回のところが中心である。毎月のところや、毎週お菓子だけの販売でうかがうところもあるり。
6.高齢者にふだん接している人でも見誤ることはある。車いすでたくさん紙袋を抱えて自分の部屋に帰るのがステータスである。御用聞きには大学生チームというのがあって、現在47人が登録しており、利用者には好評である。在宅での生活支援には若い人が向いている。シニアの方たちをスタッフに入れたことがあったが、同世代だからいいかと思ったら逆だった。家事を頼みづらいとか、散らかった部屋を見られるのが恥ずかしいとか、余計な気をつかう。学生さんたちは有償のボランティアで、1時間あたりにすれば各地域の最低賃金より多くなる。
7.大手企業がこのビジネスに参入してきたら、それは経済合理性が成り立ったということ。大手企業は、まだ出来上がっていない市場にはリスクが高いから手を出しづらい。超高齢社会だというなら、それをどう楽しいものに変えていくかを考えないといけない。「高齢者を救え」とか声高に言い出すと一気に難しくなる。楽をして金儲けするのではなく、どれだけ社会にインパクトを残せるか。そういう起業家が若い人たちのなかに増えていけば、ネガティブと言われてきた高齢社会も変わる。
文藝春秋、2017.12」は面白い。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.シニア向けのビジネスの起業家として古市氏が38歳、池上氏が37歳、山本氏は27歳で客様から見たら子か孫かといった世代で起業した。フルカウントの「出張デパート」は、高齢者施設の食堂などを借りて、衣類や日用品、お菓子などを販売する。施設には、ちょっと買い物したいと思っても一人では出かけられないお年寄りがいる。女性が多いのに、気軽にショッピングが楽しめない状況を打開したいと考えた。モノ売りのつもりで始めが、実は"コト売り"だった。例えば、気に入った洋服があれば、自分の部屋に持ち帰って試着することができる。お客さんはまず若々しくて派手な服を手に取るが、「ああ、でも似合わへん」と笑って、少し地味な服を選び直す。そういう一連の流れが、実は買い物の楽しみである。
2.施設のほうで立て替え払いもできるが、現金での買い物をすすめている。施設に入ると、自販機で小銭を使うぐらいで、お金に触る機会がほとんどない。急にできなくなるのは寂しい。夢中になって、杖をついてきた方が、お金を払ってその場に杖を忘れて帰っちゃうこともある。
3.株式会社御用聞きは、高齢者のご自宅にうかがい、家事などをお手伝う。東京の高島平団地でスタートし、いまは埼玉、千葉、神奈川の8エリアでサービスをしている。代表的なサービスの一つは「100円家事代行」といって、料金は5分ごとに百円である。メニューには電球や電池の交換、びんのブタ開け、郵便物回収や宛名書き、日常的なお掃除などがある。家具や粗大ゴミの移動、草むしりなどで、こちらは5分で3百円。トイレやお風呂の掃除、それから年末の大掃除のお手伝いもメニューにある。「片付けられないお部屋のお手伝い」にも力を入れている。
4.山本氏のR65は不動産業で、お客様は65歳以上に限定している。日本の不動産会社は、高齢社会なのに65歳以上のお客さんを相手にしない。高齢者に貸したがらない大家が多いのは、単身者は孤独死などのリスクがあるから警戒される。時間をかけて探せば、理解のある大家さんもいる。
5.シニアはお金を持ってるが、需要はあるのにサービスが届いてない。65歳以上のお客さんだけでも十分にやっていける。現在は関西方面で約1千カ所。関東エリアでは約150カ所で、訪問は年に2回か3回のところが中心である。毎月のところや、毎週お菓子だけの販売でうかがうところもあるり。
6.高齢者にふだん接している人でも見誤ることはある。車いすでたくさん紙袋を抱えて自分の部屋に帰るのがステータスである。御用聞きには大学生チームというのがあって、現在47人が登録しており、利用者には好評である。在宅での生活支援には若い人が向いている。シニアの方たちをスタッフに入れたことがあったが、同世代だからいいかと思ったら逆だった。家事を頼みづらいとか、散らかった部屋を見られるのが恥ずかしいとか、余計な気をつかう。学生さんたちは有償のボランティアで、1時間あたりにすれば各地域の最低賃金より多くなる。
7.大手企業がこのビジネスに参入してきたら、それは経済合理性が成り立ったということ。大手企業は、まだ出来上がっていない市場にはリスクが高いから手を出しづらい。超高齢社会だというなら、それをどう楽しいものに変えていくかを考えないといけない。「高齢者を救え」とか声高に言い出すと一気に難しくなる。楽をして金儲けするのではなく、どれだけ社会にインパクトを残せるか。そういう起業家が若い人たちのなかに増えていけば、ネガティブと言われてきた高齢社会も変わる。