2009年07月25日
キリンとサントリーの統合は相乗効果(シナジー)が不安
7/24付けの大前研一さんのニュースの視点は『キリン・サントリー統合は市場にどのような影響をもたらすか?』という標題の記事である。食品・飲料業界の経営のあり方を勉強させてもらった。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.7月14日、食品最大手のキリンホールディングスは、2位のサントリーホールディングスと「経営統合へ向け交渉の初期段階にある」と発表した。両社は持ち株会社の統合案を軸に調整を進め、年末にも合意し、来春以降、経営統合に踏み切る予定である。
2.両社が統合すると、世界でも最大級の食品・飲料メーカーが誕生する。日本国内の注目度はかなり高いが、大前氏は幾つか懸念を抱いている。一つは「統合比率」をどのように決めるかという点である。今回のニュースが発表されてからキリンの株価が上昇している。これはサントリーが非上場会社のため、サントリーに対する魅 力・期待値も含めて、キリンの株価に反映されたと見られる。両社が統合するときには、その統合比率を計算することになる。
3.すでに株価が上昇したキリンにとっては、有利な条件になる。一方、サントリーは非上場のため市場価格がついていない。自ら評価・算定する必要がある。おそらくDCF法(Discounted Cash Flow法)などを用いて企業価値を算出する。不利な立場になる。サントリーの佐治社長は「対等の立場」を強調しているが、この点について両社がどのような妥協点を見出すのが解決すべき問題の1つだになる。
4.もう1つの懸念は両社のカルチャーの違いである。この数年間でキリンという会社は、いわゆる欧米型の合理的な会社に生まれ変わっている。業界でいち早くEVA(経済的付加価値)などによる緻密な収益管理を導入し、オーストラリアを始め海外で積極的に買収を重ね、どんどん世界へ進出するという動きを見せている。
一方のサントリーは、比較的「おっとり」している会社である。サントリーホール、サントリー美術館、サントリーミュージアム、サントリー音楽財団、サントリー文化財団を運営するなど、文化事業にもかなり力を入れている。こうした事業も、サントリーが非上場会社であれば誰からも文句を言われないが、両社が統合するとなると株主総会で指摘を受ける。
5.キリンとサントリーが統合しても事業のシナジー効果(相乗効果)は殆どない。
キリンとサントリーが統合すれば、確かに規模だけで見ると世界の食品メーカーの中で第5位に躍り出ることになる。しかし、どちらも国内市場に強いだけであり、世界のマーケットでの存在感が大きいとは言えない。世界の食品メーカーの売上高ランキングは以下の通りである。
1位:ネスレ、2位:ユニリーバ、3位:ペプシコ、4位:クラフト・フーズ
いずれも世界的な規模で活躍している会社である。
6.これらの会社と統合するのであれば、世界の食品マーケットに対しても影響力は大きい。キリンとサントリーが統合するだけでは、日本国内で圧倒的なナンバーワンになるだけでのことである。世界の食品マーケットには殆ど影響はない。統合の目的が理解できない。国内でも相乗効果が良く見えない。
7.ビール市場を見ても、キリンがサントリーと統合することでアサヒを圧倒できるとも思えない。サントリーはウイスキー市場に強みを持っているが、キリンも「シーバスリーガル」というブランドがあるので市場が縮小していく。
8.お茶などのドリンク市場ではシェアが拡大する可能性はあるが、双方のブランドが争っていることで良い相乗効果が生まれているからである。統合されれば逆効果になる可能性もある。流通コントロールという点に目を向けても、すでに両社は強力な流通網を作り上げているので、大きなシナジー効果を生むとは思えない。
9.非上場を貫いてきたサントリーが他の企業との統合に向けて動き出したということは、サントリーの佐治社長はかなりの危機感を持っていたと思われる。キリンを選んだのは、「やるからには世界と戦いたい」という意思表示と思える。世界のマーケットの中で活躍するために、キリンとサントリーが統合後した会社の姿をどのように描いていくのか注目していきたい。
1.7月14日、食品最大手のキリンホールディングスは、2位のサントリーホールディングスと「経営統合へ向け交渉の初期段階にある」と発表した。両社は持ち株会社の統合案を軸に調整を進め、年末にも合意し、来春以降、経営統合に踏み切る予定である。
2.両社が統合すると、世界でも最大級の食品・飲料メーカーが誕生する。日本国内の注目度はかなり高いが、大前氏は幾つか懸念を抱いている。一つは「統合比率」をどのように決めるかという点である。今回のニュースが発表されてからキリンの株価が上昇している。これはサントリーが非上場会社のため、サントリーに対する魅 力・期待値も含めて、キリンの株価に反映されたと見られる。両社が統合するときには、その統合比率を計算することになる。
3.すでに株価が上昇したキリンにとっては、有利な条件になる。一方、サントリーは非上場のため市場価格がついていない。自ら評価・算定する必要がある。おそらくDCF法(Discounted Cash Flow法)などを用いて企業価値を算出する。不利な立場になる。サントリーの佐治社長は「対等の立場」を強調しているが、この点について両社がどのような妥協点を見出すのが解決すべき問題の1つだになる。
4.もう1つの懸念は両社のカルチャーの違いである。この数年間でキリンという会社は、いわゆる欧米型の合理的な会社に生まれ変わっている。業界でいち早くEVA(経済的付加価値)などによる緻密な収益管理を導入し、オーストラリアを始め海外で積極的に買収を重ね、どんどん世界へ進出するという動きを見せている。
一方のサントリーは、比較的「おっとり」している会社である。サントリーホール、サントリー美術館、サントリーミュージアム、サントリー音楽財団、サントリー文化財団を運営するなど、文化事業にもかなり力を入れている。こうした事業も、サントリーが非上場会社であれば誰からも文句を言われないが、両社が統合するとなると株主総会で指摘を受ける。
5.キリンとサントリーが統合しても事業のシナジー効果(相乗効果)は殆どない。
キリンとサントリーが統合すれば、確かに規模だけで見ると世界の食品メーカーの中で第5位に躍り出ることになる。しかし、どちらも国内市場に強いだけであり、世界のマーケットでの存在感が大きいとは言えない。世界の食品メーカーの売上高ランキングは以下の通りである。
1位:ネスレ、2位:ユニリーバ、3位:ペプシコ、4位:クラフト・フーズ
いずれも世界的な規模で活躍している会社である。
6.これらの会社と統合するのであれば、世界の食品マーケットに対しても影響力は大きい。キリンとサントリーが統合するだけでは、日本国内で圧倒的なナンバーワンになるだけでのことである。世界の食品マーケットには殆ど影響はない。統合の目的が理解できない。国内でも相乗効果が良く見えない。
7.ビール市場を見ても、キリンがサントリーと統合することでアサヒを圧倒できるとも思えない。サントリーはウイスキー市場に強みを持っているが、キリンも「シーバスリーガル」というブランドがあるので市場が縮小していく。
8.お茶などのドリンク市場ではシェアが拡大する可能性はあるが、双方のブランドが争っていることで良い相乗効果が生まれているからである。統合されれば逆効果になる可能性もある。流通コントロールという点に目を向けても、すでに両社は強力な流通網を作り上げているので、大きなシナジー効果を生むとは思えない。
9.非上場を貫いてきたサントリーが他の企業との統合に向けて動き出したということは、サントリーの佐治社長はかなりの危機感を持っていたと思われる。キリンを選んだのは、「やるからには世界と戦いたい」という意思表示と思える。世界のマーケットの中で活躍するために、キリンとサントリーが統合後した会社の姿をどのように描いていくのか注目していきたい。