2009年10月22日

太陽電池の価格はワットあたり3.5$から2.0$に低下している 3

10月20日の株式会社技術調査会のWEBサイトに矢野経済の「2009年世界の太陽電池市場に関する調査」を公表している。(http://www.gicho.jp/cgi/gmaga/gmaga.cgi?20091015-18
概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.結晶Si太陽電池の2008年の生産量は5.6GWと推計される。この2年で市場は2.5倍程度にまで膨らんだが、2009年上期は太陽光発電システムの導入量が伸び悩んでいることから、これまでのような伸びは期待しにくい状況である。2008年秋以降、需要停滞に伴い高騰し続けていたポリシリコン価格が急落し、結晶Si太陽電池メーカー間の価格競争が激化している。2008年9月の時点まで3.5米ドル/W前後のセル価格は2009年春に2.0米ドル/Wになり、結晶Si太陽電池メーカの収益が悪化している。そのため、結晶Si太陽電池メーカでは変換効率の向上、低コスト化に向けた取り組みをこれまで以上に強化している。
2.セルの高効率化のために、バックコンタクト方式(表裏に配置されている電極を裏面のみに配置)の適用や表面テクスチャの改良、電極の細線化などの研究開発が行われている。中国、台湾メーカはN型基板を使用した「Nタイプ」に注力している。
3.薄膜Si太陽電池はポリシリコンの需給が伸びた2007年頃を境に、Si材料の使用量の少なくて済む薄膜への参入メーカーが増加し、生産量も2007年165MW、2008年357MWと順調に拡大した。2009年は500MW前後になる見込みである。
4.伸びが今一なのは、薄膜Si太陽電池と結晶Si太陽電池の価格差が縮小する傾向にあること、ターンキーシステム(装置メーカーが出力等を保証した薄膜Si太陽電池の製造ライン)の稼働が遅れていること、タンデム(多接合型)の量産も立ち遅れていることが要因として挙げられる。薄膜Si太陽電池が今後確実に市場に定着できるかが業界の関心事になっている。
5.Cdの安全性やTeの資源の限界を指摘する声はあるが、市場で価格リーダーの位置を確立した米国大手が太陽電池メーカーにとって一つのベンチマークとなりつつあるのも事実で、特に薄膜Si太陽電池メーカーにとっては変換効率の向上をはじめ、歩留りの改善や部材コストの削減などメーカーとしての力が問われている。
6.化合物系(CIS・CIGS)太陽電池に関しては、CIGS太陽電池の生産量は2007年20MW、2008年50MWと推移している。2009年はこれまで中心であった欧州需要は低調であるが、参入企業の増加などにより180MW程度に拡大する見通しである。CIGS太陽電池は研究レベルで20%近い変換効率を実現しており、変換効率の高さから結晶Si太陽電池と競争できる太陽電池として注目されている。国内大手が工場設立計画を明らかにするなど、増産に向けた動きも活発化しているが、結晶Si太陽電池などと競合していく上では安定かつコスト安な量産技術の確立が急がれる。
7.色素増感太陽電池は、塗布・印刷工程が中心のため製造コストが低い、室内など光量が少ない環境下でも安定して発電することができることから次世代太陽電池の1つとして注目されている。2009年3月にはスイスの研究グループが12%を超える変換効率を達成するなど、小面積セルで高効率が進んでいる。耐久性や大型化の点では未だ課題を残しているため、発電用としての実用化は2015年頃になると予測される。
8。全体的な将来展望としては、現在の市場環境は世界的な景気後退の一過性のものである。地球温暖化対策を目的とした自然エネルギーへの転換の一手段として、太陽光発電の導入が積極的に図られていく潮流はあり、市場は引き続き拡大していくと予測される。しかし、これまでシェアを拡大してきた大手が苦戦し、競合の追随を許すなど、2009年はメーカー間の競争が激化してきている。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
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