2010年02月24日

低体温人間の本への反響 3

 昨日の当ブログで「齋藤真嗣著:体温を上げると健康になる、サンマーク出版、2009年12月、第30刷発行」を紹介した。「低体温人間」に関する本は他にもあり、ネットでは一部に疑問視する記事もある。「医学統合研究会」というWEBサイトがあり、「低体温本を斬る!」という標題の記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.「冷えは万病のもと」などと言われるが、最近はこの低体温症について書かれた本が売れている。単なる一過性のブームに過ぎず、読むだけ時間の無駄と無視を決め込んでいたが、医学統合研究会に低体温についての記事の依頼が来たので、図書館で本を探して読んでみた。
2.現在、一番売れているのが齋藤真嗣医師の「体温を上げると健康になる」であり、図書館では予約待ちの状態である。それ以前の、石原結實医師の「体を温めると病気は必ず治る」を読んでみた。2003年の発行とあるので、一過性のブームにしては長く続いている。
3.石原結實氏の本にはいたる所に不可思議な記述が見られる。奥付を見ると2003年4月の初版から僅か5ケ月で、22刷となっているので、かなりのペースで売れているようである。しかし、その不可思議な記述のわりに、意外に批判的な意見がネット社会でも見当たらないのが不思議である。医学統合研究会が分析してみた結果が以下の通りである。
4.落語の「葛根湯医者」を引用している。患者が「風邪をひいた」とやってくると「それなら葛根湯だ」、「下痢をした」と訴えても「はい、葛根湯」、「湿疹ができて大変だ」と訴えると「やっぱり葛根湯」と、葛根湯しか処方しない江戸時代の医者のことである。それでいて、ほとんどの病気を葛根湯で治すというのだから葛根湯医者もバカにはできない。此の話の最後のオチは、付き添いで来た人にまで「まあ、いいから葛根湯をお飲みなさい」と、誰にでも葛根湯を飲ませるという藪医者の話であり、名医の話ではない。葛根湯は風邪以外にも汎用性の高い薬ではあるが、発汗剤の一種で、便秘を伴う風邪など用いてはいけない場合も沢山ある。葛根湯医者は藪医者とする普通の見方が正しい。
5.石原結實氏の本では、生姜の偉大さを強調したい為に、あえて葛根湯医者を名医としているが、本来の落語の意味とオチくらいは、読者の為に提示すべきである。
6.心臓と脾臓にだけはガンができないと書かれているが、心臓には横紋筋肉腫や血管肉腫などが存在するし、脾臓の癌も稀ながら存在する。「癌」と「がん」は厳密に言うと定義が違う。「癌」は上皮細胞に出来る悪性腫瘍であり、「がん」は血管や筋肉などから出来たものであり、これから行くと心臓は筋肉なので、定義上「癌」が出来ないということに過ぎない。”「心臓ガン」と「脾臓ガン」というのは聞いたことがない”、と堂々と書かれている石原医師のドクターとしての資質が疑われる。
7.運動不足が体を冷やすと書いておきながら、頭脳労働者の中に、ほとんど肉体運動をしないのにかなり長生きしている人が多いのは、脳細胞の活動による産熱量の促進が一因と考えられる、と意味不明な記述が随所に見られる。
8.ガンは陰性体質の病気だと書いておきながら、陽性体質の人は体が温かく、それゆえ体もよく動き、陽気で食欲も旺盛なので元気いっぱいの半生を過ごすが、一方、食べ過ぎてガン、脳梗塞、心筋梗塞などの欧米型の病気にかかって早死にする人も多い、などという記述も意味不明である。
9.脳梗塞も心筋梗塞も、冷えが原因の病気と石原医師は分類している。漢方医学では2000年以上も前から、食べると体を温める食物を「陽性食品」、逆に体を冷やす食物を「陰性食品」として、病気の治療や健康の増進に利用してきた、と記述されているが、そんな事実は全くない。食品について言うなら、「漢方」ではない。陽性食品や陰性食品などという分類は、明治期の石塚左玄やその系譜である桜沢如一などの分類である。一体2000年前のどの文献に出ているか示す必要がある。「万病一元、血液の汚れから生ず」などという記述は漢方にはない。
石原結實氏は、漢方医学をウリにしている節が文章の端々に見られるが、漢方を少しかじった程度の人でも判別できるようなレベルの低い記述が多い。
10.石原医師は盛んに生姜を勧めているが、人参も同様に温める作用があるとして人参ジュースも勧めている。漢方の陰陽論でも、赤い色をして硬い根菜類のニンジンは体を温めてくれる、と説明しているが、漢方で使う人参とスーパーで売ってる人参を同じ物ではない。
生薬の人参はウコギ科の植物であり、野菜の人参はセリ科ですので、全く別の植物である。
11.漢方医学では、この「気・血・水」の流れが悪くなると疾病が起こるとされている、と記述しているが、「気血水」を東洋医学の用語ではない。「気血水」の医学は、万病一毒論を唱えた吉益東洞(江戸時代中期)の息子の吉益南涯(華岡青洲の師)が、父親の学説を補強するために唱えた理論である。「漢方」という言葉自体が、日本の江戸時代中期に古方派が台頭する中で登場した日本独自の造語である。2000年前とは関係ない。
12.石原医師の生姜賛歌は異常なほどである。漢方の原点というべき書物『傷寒論』に、「生姜は体を温め、血流をよくし、すべての臓器の働きを活発化させる。体内の余分な体液、水の滞りをとり除き、気の滞りをとる…」と石原医師は記述している。しかし、そのような記述は傷寒論の何処にもない。完全に石原結實氏の創作と思われる。
13.生姜に限らないが、ある特定の食品を過剰摂取すると、問題が生じる可能性は大である。、生姜は漢方の方剤にも頻繁に用いられるものであり、食品というよりも生薬と考えて注意して摂取するべきである。曲直瀬玄朔の「薬性能毒」には、生姜は妊娠禁忌の薬であり、妊婦が食べると多指症の原因になると書かれている。
14.胸やけの改善には、胃酸を中和するアルカリ性食品をとること、と記述されているが、
アルカリ性食品は、燃やした灰がアルカリ性を示す食品であり、胃酸を中和するようなものではない。胃酸を中和するような食品だとすると危険な食物である。
15.便秘も下痢も冷えの病気にされているが、便秘は漢方で言えば、例外もあるが陽に属する病気であり、発汗剤などは勿論避けるべきである。
16.石原医師は、おもいっきりテレビにも何度も出演しているということであるが、あの番組が如何に出鱈目な情報を垂れ流しているかが判る。
17.齋藤真嗣医師の「体温を上げると健康になる」は、さっと目を通した限りでは、至ってまもとな内容と思う。
(こういう論争は活発に行って欲しい。匿名はよくない。匿名は島国日本人の特有の習性かもしれない。一般庶民に分かる用語でオープンにしてもらいたい。メディアも必ず反論を取りまとめて報道するようい努力しないと視聴率はどんどん下がっていくことを認識するべきである。)



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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