2010年03月29日

金属中の電子でなくても絶縁体中のスピン(磁気)で電気信号を伝えることができる 3

3月11日付の科学技術振興機構(JST)のプレス発表で「絶縁体に電気信号を流すことに成功--省エネデバイスに新展開」という標題の記事が報道されており目を引いた。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.JSTの目的・基礎研究事業の一環として、東北大学金属材料研究所の齊藤英治教授らは、電子の自転を用いることで絶縁体に電気信号を流す方法を発見した。通常、絶縁体には電気が流れないが、齊藤教授らの研究では電気信号をスピンに変換して磁性ガーネット結晶と呼ばれる絶縁体へ注入し、絶縁体中を「スピンの波」として伝送し、再び電気に変換することによって、絶縁体中も電気信号を伝送できることを発見した。この電気信号伝送は、省エネルギー技術にも応用できる。
2.通常の金属や半導体を流れる電流は、ジュール熱と呼ばれるエネルギー損失を伴う。これを回避するためには、摂氏マイナス百度以下の低温で起きる超伝導現象を用いるしかなかった。今回発見された絶縁体中での電気伝導ではジュール熱の発生がなく、室温でも動作することから、新しい省エネルギー情報伝送手法としても注目される。
3.この成果は、齊藤教授がこれまでに培ってきた固体中の相対論効果(スピンホール効果、逆スピンホール効果)の開拓など、スピンをエレクトロニクスに結び付けるための要素技術の研究が実を結んだものである。
4.この研究は、慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程2年の梶原瑛祐氏、東北大学金属材料研究所の前川禎通教授と高梨弘毅教授、FDK社との共同で行われた。研究成果は、2010年3月11日発行の英国科学雑誌「Nature」に掲載される。
5.この研究領域は、CMOSに代表される既存のシリコンデバイスを超える革新的な次世代デバイスを創成することを目標として、環境やエネルギー消費に配慮しつつ高速・大容量かつ高度な情報処理・情報蓄積・情報伝達を可能とする新しい材料の開拓およびプロセスの開発を図る挑戦的な研究を対象とするものである。
6.電流を流さない絶縁体は多く知られている。これまで、絶縁体は電流も電気信号も流さないと信じられていたので、電気伝送用としてはエレクトロニクスでは全く利用されてこなかった。今回、電子が持つ「電荷」と「スピン」の2つの性質のうち、これまでのエレクトロニクスで注目されてきた電荷ではなく、もう1つの性質であるスピンを使うことで絶縁体にも電気信号を流す(スピン流)ことができ、しかも絶縁体の中をジュール熱の発生なしに信号を流せることを発見した。
7.今回の研究では、絶縁体である磁性ガーネット薄膜の高品質表面に2つの白金(Pt)電極薄膜を付けて精密な電気測定を行い、一方の白金電極に流した電流が絶縁体を介して離れたもう一方の白金電極に電圧を発生させることを発見した。この電気信号伝送は、磁場を加えることで容易にスイッチオン・オフすることを見いだした。
8.上記の現象は、白金電極中の電流が「スピンホール効果」と呼ばれる固体中の相対論効果によって電子スピン(電子の自転)の流れを生み出し、これが磁性ガーネット中をスピンの波として伝わり、このスピンの波がもう一方の白金電極中でスピンホール効果により電圧に変換されたものと考えられる。磁性ガーネットなどの磁性を持った絶縁体は、電流は通さないがスピンの波は通す物質であることがポイントである。
9.現在のIT社会を支えているコンピュータや通信技術に利用されている素子は、いずれも金属や半導体を用いているため、ジュール熱によって多大なエネルギー損失を生じている。このエネルギーロスは素子の小型化・高性能化に対する大きな問題であり、素子開発は発熱との戦いと言ってもよい。
10.本研究で初めて発見された絶縁体を使った電気信号伝送方法は、従来の素子が抱えていた発熱によるエネルギー損失の問題を根本的に解決できるものである。当然、省エネルギーへの貢献が期待できる。


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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
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