2010年04月27日

メディアの社会的影響力について 3

4月7日付けの「新たにす」の新聞案内人の歌田明弘氏が面白い記事を書いている。最近、日本の新聞が世論形成に加担していることが問題になっている。特に検察庁特捜部と記者クラブが連携して、大新聞やテレビメディアが世論操作をしていることが問題になっている。歌田氏はアメリカのジャーナリストが世論への影響力をどのように考えているか調査した。その結果意外な傾向が分かった。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.アメリカのジャーナリストも、自分達の記事の世論に与える影響が大きいほうがいいと考えていると思っていたら、そうではないらしい。アメリカのナイト財団はジャーナリズムの研究や新しい試みに資金を提供しているが、その関連の論文の中に興味深い調査レポートがある。
2.2002年に1149人のジャーナリストに聞き、世論への影響力をどう見ているかについて調査した。新聞・テレビ・ラジオ・通信社・雑誌と既存メディアのジャーナリストたちをランダムに選んで電話で尋ねたとのことで、ジャーナリスト魂の欧米と日本の違いなどいろいろと考えさられる。
3.すべてのメディアのジャーナリストが、世論に対する影響力が大きすぎると感じているのは興味深い。ジャーナリストたちは、自分たちの理想よりも実際の影響力が大きい、もっと影響力が小さいほうがいいと思っている。
4.インターネットが出てきて従来のメディアの影響力は低下している。そのことへの危機感はなく、この調査の結果ではまったく逆である。2002年以降、インターネットのパワーがさらに増したことによる変化の可能性はあるが、1982年から10年おきに調査し、2002年までの20年間の傾向はほとんど変わっていない。
5.第4の権力と言われるメディアの力の源泉は影響力だから、影響力が大きいほうがいいと感じているジャーナリストが多いと思っていたので、意外な結果である。多くのジャーナリストたちは中立的な情報発信者に徹し、客観性を重んじている。それで不相応な影響力を好ましく思っていないのではないかと推測される。政治家や官僚、業界団体が世論に影響をあたえるためにメディアを使おうとしているために、ジャーナリストたちは操られまいと感じているためという見方もある。
6.歌田氏は、特捜部の捜査当局がメディアを使って情報操作をしている問題を取り上げ。ジャーナリストたち自身が「情報操作されているかもしれない」と思っているのであれば、影響力の大きさにためらいを感じて当然である。
7.ひとりの人間が圧倒的なパワーを持つ世論を相手に、自分の信念で活動するのは、誰であっても荷が重く感じると思う。歌田氏は学校を出て10年ほどリトル・マガジンの編集をしていて、それから一人で原稿を書いてきた。関係した本や雑誌が売れればいいとは思ったが、影響力についてはとくに意識しなかった。それを考えるようになったのは、インターネットで原稿を公開するようになってからである。
8.多くのブログでは、アクセスデータが把握できるようになっているし、ネットではたちまち賛否がわかる。意見が分かれることなどについては、激しい反応があったりもする。極端なことを言って注目されたいと思う性格の人もいる。歌田氏は、激しい反応に巻きこまれるのは好まない。とはいえ、自分の考えを書くのが仕事ではあるので、好き嫌いにかかわらず必要な時には書く。
9.組織をバックにしたジャーナリストならば違った考えを持っているのではないかと思っていた。けれども、いくら組織をバックにしていても、最終的に書いた人間が発言に責任を持つことには変わりはない。となれば、書いた結果生じる影響の大きさに戸惑いを感じるほうが自然なのかもしれない。
10.類似の調査は米国以外でも行なわれている。残念ながら日本のデータはないが、イギリス、フランス、オーストラリア、ブラジル、チリ、韓国のジャーナリストたちも、米国のジャーナリスト同様、影響力が多すぎると思っている。掲載されているなかでは、ドイツは現実の影響力が理想とほぼ同じ、アルジェリアのジャーナリストはもう少しだけ影響力があったほうがいいと思い、メキシコのジャーナリストだけが影響力の増大をはっきりと望んでいるという結果である。
11.メディアごとの違いも明らかになっている。影響力がありすぎると思っているのは、テレビとラジオのジャーナリストである。日刊紙のジャーナリストはそう思っている度合いが小さい。日刊紙のジャーナリストに比べて、放送局のジャーナリストたちは、世論にあたえる影響力の質が低いと感じている。放送局のジャーナリストには申し訳ないが、これは、日本でもあてはまる。ワイドショーなどで執拗なまでにひとつの事件を扱い、世論に影響をあたえていることに、放送局のジャーナリストたち自身が忸怩たる思いでいると思う。
12.ケーブルテレビが浸透し、多チャンネル化が進んでいるアメリカは、日本よりもひとつのテレビ局がおよぼす影響力は小さい。だとすると、日本の放送局のジャーナリストたちのほうが、「影響力が大きすぎる」と感じている度合いが強いはずである。
13.「市民が何を優先度の高い問題ととらえているかを知るために、あなたの組織が世論調査をするのは重要だと思うか」などの世論調査自体への問いもある。世論調査はとても重要と答えたのは、日刊紙が46パーセント、テレビが44パーセントと高いが、ニュース雑誌は16パーセントにすぎない。実際に世論調査に力を入れているメディアかどうかによって違う。世論調査がニュースの価値を決める影響について、テレビ局のジャーナリストがもっとも大きな影響を認め、次が日刊紙で、ニュース雑誌がもっとも低いという具合である。日本の新聞やテレビはこのところ世論調査に力を入れているので、日本で調査すると、世論調査の重要度の評価はもっと高くなる。
(欧米の世論調査はメディア企業にも属さない完全中立な立場の専門の調査会社が会社の存続を賭けて極めて慎重に行われている。誘導尋問的な問いがあったら即失格である。表面では中立を装っている日本の新聞・テレビ業界の世論調査には疑問を感じている。メディア企業も所詮既得権確保集団である。赤旗も世論調査をやって発表してみてはどうか)


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
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