2010年08月26日

「日本の国債は後世代に負担を転嫁する」は間違いだが、もっと大きな問題がある。 3

「野口悠紀雄著:日本を破滅から救うための経済学、再活性化に向けていますぐなすべきこと、ダイヤモンド社、2010年7月」の「第3章:破滅への道を突き進む日本の財政」の「2.国債発行はなぜ問題なのか」は分かりやすい。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.「国債は後世代に負担を転嫁する」は間違いである。多くの人は、「将来世代が返済の義務を負うからだ」と唱えている。財政赤字解消のためいつかは増税が必要となるので、「将来世代にツケが回るから問題だ」という考えである。しかし、これまでの日本に関するかぎり、この考えは間違いである。内国債(日本国内)であるかぎり、将来増税が行なわれても負担の転嫁は生じないのである。その理由は2.以下で示される。
2.国債発行は家計の借金にたとえられる。たしかに、家計が外部から借金をした場合には、その時点で月収を超える支出が行なえる。そして、返済時には月収のすべてを使うことができなくなる。もし借金が子どもの代まで残れば、子どもは収入のすべてを支出できなくなる。その意味で、負担が将来世代に転嫁される。
3.国債もそれと同じ意味で負担を将来に転嫁すると、多くの人は考えている。しかし、内国債の場合には、国の外から借り入れるのではなく、国の中での借入である。したがって、国全体で見れば、債務と債権が相殺し合って、帳消しになる。日本全体として借金を負っているわけではない。また、国債償還時に増税が行なわれても、国債所有者が償還金を得るし、利払いも国債所有者の所得になっている。だから、償還や利払い時に資源が日本から国外に流出するわけではなく、国全体として使える資源が減ることにはならない。結局、国債の負担は、将来に転嫁されない。
4.内国債は、家計にたとえるなら、銀行や高利貸しから借りるのではなく、家計内部の貸し借り、たとえば夫が妻から借りるようなものである。この場合には、家計として使える資源総量に変.化は生じない。また、このような借金がいくら増えたところで、子が利払いや返済に苦労することにはならない。発行や償還、あるいは利払いが国全体として使える資源量に影響を与えないという意味において、内国債は家計が外部から借金することとは本質的に異なる。したがって、国の借金を家計の借金にたとえて、「だから大変だ」というのは、聞違いである。以上で述べたことは、すでに1950年代に、経済学者の共通認識となっていた。経済学者のアバ・ラーナーは、「国債は、われわれ自身に対する負債である」と表現したが、これが問題の本質を表している。
5.だが、「家計内の貸し借りだから(内国債だから)、問題ない」とは言えない。いま、夫の借金(国債)は酒代(無駄な財政支出)のためであり、店を経営する妻(民間部門)が、店の改装費(工場などへの投資)を犠牲にして貸しているのである。その場合には、夫の無駄遣いのために店が改装できず、店の将来の収入は減る(国の将来の生産力は落ちる)だろう。このように、家計内の貸し借り(内国債)であっても、重大な問題を引き起こす。(この家庭の夫の役割は、会社勤めをしたり、店の経営のアドバイスをすることで官僚のように威張っていれえばよい)
6.これがこれまで大きな問題と感じられなかったのは、店の収入が順調に伸びていた(経済成長があった)からである。このため、夫の借金に応じる資金(貯蓄残高)が増え続けていたしかし、日本は、この条件はいま大きく変わっている。店の収入が激減し(経済危機で企業の売上げや利益が激減し)、他方で夫の酒量が増えた(天下り法人という憩いの場が多数できたり、選挙目当ての無駄な財政支出が急増した)からである。
7.ところが、表面上はまだ問題が生じたようには見えない(国債の消化は順調に進んでいる)。その理由は、妻が店を改修する意欲を失ってしまった(民間の投資支出が激減した)ためである。この状態が続けば、店はさびれて、客足は遠のくだろう(実際、この数年、日本の固定資本形成は固定資本減耗を下回っている。更新が進まないので将来の設備は老朽化し、生産力が低ドする)。
8.夫の借金が目立って増えたのは、家計に問題が生じたことの兆候である。「店の収人が減り、夫の酒量が増えたことが問題だ」と警告しているのである。この兆候に対して必要なのは、まずなによりも、店の収入を増やすことである。そして、夫の無駄遣いをやめさせることだ。(夫は一家の主人というプライドを棄てて、エリート官僚公務員などの資格を棄てて、お金の足しにならない役に立たないような仕事を止めて、まじめに民間の労働者として会社勤めをすることである)。
9.酒をやめられず店の収人も増えなければ、銀行から借りるしかない。しかし、酒を飲むために借りようとしても、銀行は貸してくれない。国の場合も同じだ。国債発行の急増は、日本の経済と財政が深刻な問題を抱えていることを示す兆候なのである。必要なのは、それに対処することだ。



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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