2010年08月30日

世界の「常識」を日本人は知らないで、せっせと国家に貢いでいる。これが「嵐の前の静けさ」の原因 3

「大前研一編著:大前研一の新しい資本主義の論点:ニュー・ノーマルという秩序の登場、ダイヤモンド社、2010年8月」示唆に富む名著である。リーマンショック後のアメリカ、あるいは世界の資本主義社会について、アメリカの著名な学者達が投稿している論文をまとめたものである。本文に入る前に大前氏が書いている「まえがき」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2008年9月のリーマン・ショックをきっかけに巻き起こった世界金融危機以降、EU加盟国のほとんどが景気刺激を優先したために、財政が悪化した国が続出した。特にドバイ・ショックでソブリン・リスク(国家のリスク)が表面化した2009年11月以降、財政が危ういEUの国々は「PIIGES」と呼ばれている。当初はPIGS(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)だったが、アイルランドとイギリスが加わって6力国になってしまった。
2.ギリシャの支援だけでも相当に大変だったのだから、残りの5力国に財政危機が発展したら、支援は並大抵のことではない。すでにEU首脳国が具体的な対応策を始めているが、それだけでは十分ではない。
3.EUが早急に構築しなくてはいけないのは、危機対応の仕掛けである。ギリシャ危機で混乱してしまったのは、危機が起こった時の対応ルールがなかったためである。欧州中央銀行(ECB)とIMFで、財政危機が起きた国に対して迅速に資金援助を行うための仕掛けとルールておかなくてはならない。日米中からも迅速に流動性の注入ができるようにする国際的な枠組みが必要になる。これらはけっして平坦な道のりではなく、ヨーロッパの財政危機の混乱はまだまだ続く可能性がある。
4.しかし、EUには長年にわたるヨーロッパの人々の努力によって形づくられてきた歴史がある。2009年の12月に、EUは60年かけてリスボン条約を発効させ、世界最大の「国家」となった。最後には「国家の威信」をかけてその「帝国の防衛」を世界の協力を得ながら成し遂げると大前氏は見ている。
5.とはいえ、市場は冷酷であり、景気回復をがまん強く待たない。疑心暗鬼になったトレーダーたちが、「次はどこか?」と獲物を探し始める。ギリシャがドバイ・ショックの後に「ソブリン・リスク」を狙っていたヘッジ・ファンドなどによってターゲットになってしまったように、次の獲物にされることを防ぐためにも、財政に問題を抱える国は財政規律を回復しておかなくてはならない。
6.ソブリン・リスクで儲けようとする人々がいる限り、今回ギリシャで起こったことは、日本にとっても対岸の火事どころではない。延焼のおそれがある。日本でも起こるかもしれない問題ではなく、「いつ起こるか」の問題である。
7.ギリシャが破綻に突き進んだ道を冷静に見ると、日本の状況が酷似していることに気づく。ギリシャ危機の本質は、前政権の放漫な財政政策にある。日本でも選挙目当てのバラマキ政策しかできない民主党政権の下でこのまま方向転換を図らなければ、ギリシャ以上に立ち行かなくなる可能性は大きい。日本の国家債務の対GDP比は200パーセントを上回り、ギリシャの2倍以上になっているためである。
8.それでもまだ破綻しないのは、不良債権化しかねない国債を国民がせっせと買い続けているという理由の一点だけである。これが財政危機に対する担保であり、国民は国家に自分の財産を抵当として差し入れていることになる。イザという時のために蓄えている国民の金融資産は、国家がイザとなったら使ってしまう。少なくとも世界の金融市場はそう見ているので、日本国債に関しては「冷静」なのである。こんなことは国民も承諾しているだろう、という世界の「常識」を日本人は知らないで、せっせと国家に貢いでいる。この錯覚が日本という国の「嵐の前の静けさ」の原因である。
9.いま日本は重大な危機下にあり、それへの対処は政治だけに任せておけるものではない。ビジネスのプロフェッショナルが、顧客や公的機関などと連携しながら、問題を解決するために立ち上がるべき時である。そのためにも、金融危機によって世界の何がどう変わったのか、新しい現実を知る必要がある。
10.本書は、ハーバード・ビジネススクールの機関誌である『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載された論考のうち、世界金融危機のその後の新しい現実について書かれたものを集めたアものである。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌と大前氏は縁があり、経済のボーダレス化に伴う企業の国際化の問題、都市の発展を中心として広がっていく新しい地域国家の概念など、大前氏の論文を1988年から継続的に発表している。(それらの論文は翻訳されてダイヤモンド社から『大前研一戦略論』としてまとめられている)。



大前研一の新しい資本主義の論点
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
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