2010年09月30日

領土問題の本質とその解決のための戦略とは? 3

「フランシス・フクヤマ著、渡部昇一訳:歴史の終わり(下)、1992年」の著者は日系3世でハーバード大学ソ連外交で政治学博士を取得している哲学者であることは当ブログでも既に紹介した。20年前にアメリカでベストセラーになったと言われる理由が読んでいるうちに分かってくる。北方四島の帰属問題で最近のロシアの動きが気になるがその歴史的な背景について述べているところが参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ロシアは、帝政下でもボルシェビキの支配下でも同じ程度に領土を拡張してきた。政権の形態は変わっても領土拡張という点ではなんら変わらない。将来のロシアの政府にしても、マルクスーレーニン主義の衣はすっかり脱ぎ捨てたにせよ、その拡張主義は相変わらず残されている。拡張主義はロシア民族の権力を求める意志のあらわれである。
2.日本は今は、1930年代の軍部独裁国家ではなくリベラルな民主主義国かもしれないが、それでも銃弾ではなく円によってアジアを相変わらず支配しているところが日本の日本たるゆえんでもある。もしも権力を求める衝動がどの国でも本質的に同じものだとするなら、戦争が起こるかどうかを左右する真の要因は、ある特定の国の侵略的な行動ではなく、その国の体制の内部に潜む力関係のバランスが原因となっている。もしも均衡がとれていれば侵略は割に合わないものとなるが、逆に均衡がとれなくなると隣国の弱みにつけ入ろうという誘惑に駆られるはずである。
3.現実主義者によれば、純粋な形での権力の配分が、戦争か平和かを決める最大の要因になる。二つの国家が他のすべての国家に優越している場合、権力は二極に配分され得る。ペロポネソス戦争時代のアテネとスパルタにも、数世紀のちのローマとカルタゴにも、あるいは冷戦時代のアメリカとソ連にもそれはあてはまる。その二極体制にとって代わるのが多極体制、つまり十八世紀から十九世紀にかけてのヨーロッパのように、権力が数多くの国家に配分されている体制である。
4.現実主義者のあいだで、より長期的な国際的安定をもたらすのは二極体制か多極体制かという点が長いあいだ議論されてきた。そして彼らの多くは、二極体制のほうがより安定的な体制にちがいないとの結論を下している。その理由は、近代の民族国家が完全かつ柔軟な同盟体制を築き上げられなかったという歴史的な要因と関係してい。
5.第二次世界大戦後の権力の二極配分は、ヨーロッパが1945年以降半世紀にわたって前例のない平和を保ってきた理由の一つとされている。国際政治における唯一最強の思想である現実主義は、民族国家をビリヤードの球のように取り扱う。その中身が半透明な殻に覆われているので行動がまったく予測できないという理由である。国際政治学ではこのような国家の中身についての知識はいらない。必要とされるのは、相互作用を支配している物理学の法則を理解することだけである。クッションにぶつかったビリヤードの球はどんな角度ではずむのか、あるいは一つの球が二個の球にぶつかった瞬間にエネルギーがどう配分されるのか、という点がわかればよい。
6.国際政治は複雑かつ歴史的に発展している人間社会の相互作用とは関係ない。戦争は価値の衝突とは無縁なものである。ビリヤード式研究法では、戦争か平和かの見通しについて判断を下すには、国際体制が二極構造になっているか多極構造になっているかについての知識が貧弱でもあればそれで事足りる。現実主義は国際政治の診断書であり、国家が対外政策を遂行していくための処方箋でもある。
7.善良な人間ならおそらく全員が、マキャベリが言うように「多くの善良でない人間」の振る舞いによって強制されなければ、現実主義の教義に従って活動することを望まない。現実主義は、政策ガイドとなる幾つかの規則に行き着く。第1の規則は、国際的な不安定という問題は最終的には潜在敵国に対する力の均衡の維持を通じて解決される。戦争は国家間の紛争に関する最終的解決手段であるため、諸国家は自国を守るために十分な力をもたなければならない。諸国家は国際協定に頼ってばかりもいられないし、なんら強制力や制裁力をもたない国連のような国際組織に頼ることもできない。
8.ラインホルト・ニーバーは、日本の満州侵略に制裁を加えられなかった国際連盟を例に挙げ、「国際的な共同体は一つの協調の精神を樹立したが、手に負えない国家を罰するほど大きなものではない」とした。国際政治の真の通貨は軍事力だ。たしかに天然資源や工業生産力など他の力も重要だが、それらは主に自衛のための軍事能力を育成する手段として重要なのである。
9.現実主義の第二の規則は、ある国を味方につけるか敵に回すかを判断する際には相手の体制内部の体質やイデオロギーよりもむしろその国力を基準にすべきだ、ということである。たとえばヒトラーを打ち破るための米ソの提携や、イラクに対するブッシュ政権のシリアとの協力など、世界政治のなかにこうした事例は無数にある。ナポレオンの敗北後、オーストリアの外務大臣メッテルニヒ公の率いる反フランス連合は、ヨーロッパの平和に対する将来の脅威への対抗勢力としてフランスが必要だ、という理由から、同国の分割あるいは領土割譲を求めなかった。そして事実、のちにヨーロッパの現状を覆そうしたのはフランスではなく、ロシアであり、ドイツであった。
10.イデオロギーや報復の観念にとらわれないこのような冷静な勢力均衡政策は、キッシンジャーの最初の著書の主題であり、いまなお現実主義を実践するうえでの手本になっている。これと関連のある第三の規則として、外国の脅威を推し量る場合に、政治家は相手国の意図よりもその軍事的な能力のほうをもっと念入りに検討すべきだ、という点が挙げられる。現実主義の観点からすれば、意図(侵略?)というのはある意味で、いつでも出てくるものである。



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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
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