2010年10月29日

日本の外交専門家の考えはギリシャ時代と比べて進歩していない 3

「フランシス・フクヤマ著、渡部昇一訳:歴史の終わり、1992年」の著者は日系3世でハーバード大学で政治学博士を取得している哲学者であることは当ブログでも既に何度か紹介している。20年前にアメリカでベストセラーになったと言われる理由が読んでいるうちに分かってくる。国際問題に関する記述で、印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.「われわれが信じる神もわれわれ人間も支配欲はある。われわれがそのような法をつくったわけでもない。だがこの法の存在を発見し、あらゆる時代にそれを残していきたいと願う」という趣旨のことが紀元前のギリシャ時代のツキディデス『戦史』にある、アテナイ人のメロス人への演説で述べられてる。
2.一定の方向性をもった歴史の存在は、国際関係に重要な結果をもたらす。もし普遍的で均質な国家ができ、その社会が個人レベルでも納得でき、個人間の支配と服従という関係が無くなるなら、それが世界の国々にまで広がり、各国間の支配と服従という関係も終わるならば、帝国主義は終わり、帝国主義による戦争の危険性はなくなるはずである。
3.20世紀にさまざまな事件が起こったため、もはや国家内部の革新的な変化はあり得ないという悲観的な見方も生まれた。それが諸国間のさまざまな関係についての悲観主義も育んできた。国際関係についての悲観主義は、内政に関する悲観主義よりも徹底するようになる。
4.経済学や社会学の理論の主流が過去1世紀にわたって歴史の変化という問題に取り組んできたのに対し、国際関係論の研究者たちはまるで歴史など存在しないかのような語る。あたかも戦争や帝国主義は人間的領域の普遍的な側面であって、その根本的な原因は今日もギリシャのツキディデスの時代となんら変わりがないかのように語っている。
5.彼らによれば、宗教や家族、経済組織、政治的な正統性の概念など、人間の社会的環境がいくら進化をしようと、国際関係はあくまで独自の存在であるとされる。「戦争は永劫不変」という者もいる。国際関係についてのこの悲観的な見解は、「現実主義」とか「現実的政策」、あるいは「武力外交」など数々の名のもとに定式化されてきた。
6.意識的にこの言葉を使うかどうかは別にして、「現実主義」は国際関係を理解するためのもっとも有力な言葉である。アメリカやヨーロッパはもとより大部分の世界で今日、ほぼすべての外交政策の専門家の考え方の基盤になっている。国際政治に対し民主主義の普及がどのような影響を及ぼすかを理解するためにも、われわれはこの多数派を占める現実主義者たちの解釈の弱点を分析して暴いていくことが真の平和を築くことに繋がる。


歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間
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yuji5327 at 06:49トラックバック(0) 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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