2010年10月30日

論理性がない日本の政策はドイツ、英国と比べて実効性がない 3

10月29日付けの大前研一さんの『ニュースの視点』は、『財政再建と将来の経済活力〜論理が通じる英国、目の前の感情論に左右される日本の違い』と題する記事である。日本の財政再建の議論がどうも焦点が定まらず、関心のあるテーマである。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.10月21日に独政府が発表した経済予測によると、2010年の実質成長率は年3.4%、11年も年1.8%と潜在成長率を上回る勢いの景気回復が続く見通しが明らかになった。ドイツ経済の強さが注目されている。欧州ではギリシャを発端として、アイルランドなど周辺諸国にも経済危機が広がった。そのような中、ドイツがアンカーのポジションを取って踏ん張っている。
2.欧州経済全体を見たときに一時のような壊滅的な状況にはなっていない。ドイツ経済の強さは、高い技術力とそれを武器とした輸出が順調な点にある。ドイツが日本の約2倍の輸出額を誇っている。現在も続いているユーロ安は「欧州全体には危機」であるが、逆に「ドイツにはチャンス」をもたらしている。
3.「経済が強い国は、危機が逆にチャンスになる」という現象が見られるが、今のドイツ経済はその代表的な事例である。ただドイツの輸出先は新興国が多く、その点について将来的な不安を指摘する声もある。
4.2010年10月4日−10日号のBloombergBusinessweek誌に「BEST MERGER EVER」という記事が掲載されている。「企業合併の一番良かった事例は何か?」に対する答えとして、それは「東西ドイツの合併」を例に解説していまする。20年前の「東西ドイツの合併」が見事な合併の事例としてとBusinessweek誌という経済誌が特集している点が面白い。
5.特集の中で、この20年間の奇跡的な合併劇について様々な指標が示されている。総じて、多額の資金を投下したけれど、それを上回り十分に利益が出た合併であり、それゆえ今ドイツは世界第4位の経済大国になり、欧州で最も好調な経済を維持していると賞賛している。
6.面白い指標は、トルコやイタリアから流入してくる労働者が増えており、これらの国との関係が強化されていて、結果として経済的に大きくプラスに働いているという点である。 また、旧西ドイツ側には非常に広い地域で雇用機会が生まれているというのもドイツ経済の好調さを物語っている特徴的な指標である。政治的に見ればドイツの合併が成功だったのかどうか、疑問に感じる点もある。しかし経済的にはドイツの合併が大成功だったというのは間違いない。
7.オズボーン英財務相は過去最大規模となる歳出削減計画の詳細を発表した。公務員50万人を削減するほか、「持続可能で最大限の」歳入を確保するため銀行への課税を導入する方針などが盛り込まれた。「消費税の引き上げ」「公務員50万人削減」など、英国キャメロン政権の財政建て直しにかける意気込みには相当なものである。
8.一方、日本はこの期に及んで未だに「無駄予算」を増やす議論をしている。民主党には「本気で」財政赤字を削減しようという意志が感じられない。日本は、対GDP比債務残高で世界ワースト1位である。それにも関わらず、未だに肥満体質が抜けきらない政府にも呆れるばかりだが、それを批判する声が上がらないことも驚きである。財政赤字を20兆円削減しスリムな体質改善を図る英国と肥満体質のままの日本の違いは5年後、10年後になってどのような形で現れてくるのか注目していきたい。
9.これだけ大規模な削減計画が出ても、英国民は反対しないのか? というと、当然のことながら不安を感じているし、反対の態度も示している。ただし、英国というのは非常に「論理が通る」という側面が強い国である。BBCの放送などを見ていると、日本などに比べてバランスの良い報道内容になっている。削減計画の結果として「失う側の悲しみを伝える」報道もあるが、それだけをクローズアップしていない。全体としては「政府不信」までの報道にはなっていない。「全ての責任は前政権にある」「労働党政権が悪かった」というコンセプトがあり、早めに手を打ったのが功を奏している側面もある
10、フランスでは削減計画の一環として、現行の60歳定年制を廃止し、年金の支給開始年齢を62歳に引き上げることなどを柱とする制度改革法案を発表した途端、大規模なデモとストライキが起こり、大変な事態になっている。英国の場合、現段階ではフランスのような事態には至らず、「論理で収まりつつある」という状況である。これから本当に50万人の公務員が削減されたときに、何が起こるかは分からない。英国がどのような局面を迎えていくのか注目していきたい。



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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