2010年11月30日

日本の失われた15年が再び始まっている 3

「野口悠紀雄著:世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか、ダイヤモンド社、2010年」の「第8章日本が進むべき道は何か:新興国シフトは日本の自殺行為」の「海外立地による国内空洞化は不可避」の視点は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.廉価品が中心である新興国向けの最終消費財の生産は、低賃金国で行なわざるを得ない。生産拠点の海外展開は不可避である。こうした方向は、企業の存続には資するかもしれないが、国内における過剰な生産能力は無駄になる。
2.国内生産の「空洞化」現象は、以前から問題視されたが、2002年以降の景気回復によって国内生産が増加したため、あまり議論されなくなった。しかし、仮に日本の製造業が新興国需要対応に向かって本格的に動き出せば、著しいスピードで進展し、国内雇用に深刻な影響を与える。日本が抱える問題は、「これからの活路はアジアへの輸出だ」という方向付けでは解決できない。それを回避するために日本の産業構造を改革することが急務である。
3.需要を拡大することによって過剰生産能力を活かそうとする政策は、15年間続けられて失敗した。これ以上継続することはできない。それにもかかわらず、いま日本は再び同じ過ちを、しかも拡大したかたちで繰り返そうとしている。そうした方向に進もうとする日本は、「再び失われる15年」の入り口に立っていると言える。
4.以上で述べたことの基本は、「中国など新興国の所得水準は低い」という事実である。重要なのはGDPに代表される「経済規模」ではなく、一人当たりGDPに代表される「豊かさ」なのである。これが国際分業を考える基本である。ただし、「現状ではそうだ」ということであり、「今後もずっと同じ状況が続く」ということではない。
5.中国の経済成長率はきわめて高いので、日本と中国の所得格差は、今後急速に縮まってゆく。そうなったときには、「中国では廉価品しか売れない」ということはなくなる。ただ
し、そのときには、中国のメーカーも、日本のメーカーと同程度に、あるいはそれ以上に成長している。そうした状況下で日本企業が競争に勝ち抜けるとは限らない。
6.技術も大きく変化しているから、日本の技術的優位性が継続しているとは限らない。たとえば、自動車の場合、ハイブリッド車で日本が技術的に優位にあることは間違いないが、電気自動車の時代になったときに、日本の技術が世界最先端であるかどうかは疑問である。
1980年代に日本製品がアメリカの製造業を窮地に追い込んだとき、目本の経済規模はアメリカの半分だった。しかし、30年後の中国は、経済規模で日本の10倍になっている。その中国が技術面でも優位に立てば、日本全体が押し潰されてしまう。
(これからの15年を失われた時間にしないために今何をするべきか?既得権に守られた産業構造を大胆に改革する以外にない。日本の社会が実力よりも資格とか肩書きが幅をきかしており、それを獲得するための過当競争で無駄なエネルギーを費やしていることも障害になっている。これは、成功している欧米先進国と異なる点である。既得権を保護するための多くの規制撤廃以外に、国民一人ひとりの意識改革が必要である。高給官僚のように、ポストを得るのが目的で、そのポストでどんな仕事をするかがおろそかになっていることが典型的な例である)

世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか
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yuji5327 at 06:49トラックバック(0) 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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