2011年04月09日

停電対策と節電とは別問題である 3

4月8日付けの大前研一さんのニュースの視点は『電力使用制限〜節電ではなくピーク抑制で経済への打撃を最小限に』と題する記事は全く同感である。それにしても、日本のメディアはわざわざというか本質をぼかしたような報道をするのだろうか? 節電と停電対策は全く別問題なのに混同した世論をつくってしまった。停電対策はあくまで東京電力の供給能力不足の問題でり、節電は省エネルギー対策の問題であることを一緒に議論するものだから景気対策や経済復興に逆行するような混乱した話になる。大前氏の視点の概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.今夏の計画停電を回避する策の一つとして、菅政権が電気事業法27条に基づく電力使用制限令を発動する方針を固めた。石油危機に見舞われた1974年時には量を抑えたが、今回は「ピーク」を抑えるため昼間の時間帯の消費電力カットを狙う方針である。
2.蓮舫・節電啓発担当相も、ようやく「節電」ではなく「ピーク抑制」という大前氏の主張を理解し、政府にも届き始めたことは非常に良い傾向である。とにかく「計画停電」だけは絶対に避けるという強い決意が必要である。
3.さらに具体的な、今後の重要な視点・施策について挙げて見ると、まず注目すべきは揚水発電である。東電の管内には意外と多くの揚水発電所がある。東電の供給能力の約10%に当たる442万kwhのが可能である。原子力発電や石炭火力発電は発電量を変動させるには不向きなため、ピーク時の発電量のバランスを取るのに火力発電で調整するが、揚水発電はこれをサポートすることができる。揚水発電は、夜間の余裕があるときに原子力発電所からの余剰電力でダムの下流からダムの上流に水を汲み上げておき、夏の暑い昼間などに水力発電することができる。日立製作所は揚水発電が得意である。世界最大の揚水発電所は群馬県にある神流川発電所である。
4.次に注目すべきは、50Hz、60Hz変換である。試算によると、1000万kwhくらいの送電を可能にするには2年ほどで約7000億円〜8000億円の工事費ですむ。中部電力の一部では50サイクルの発電が可能で、東電の管内まで直接送電できる。
5.第3には、次世代送電網として注目されている「高圧直流(HVDC)送電システム」である。日本はアセア・ブラウン・ボベリ(スイス)、シーメンス(ドイツ)、アルストム(フランス)などに遅れているが、日本の電力会社は外国からの購入を検討するべきである。今年の夏限定で既存原発の再開について地元住民の協力を得るべきである。
6.第4は、「警報システム」である。地震警報や津波警報と同じように、消費電力量が供給上限の5%以内に迫ってきたらテレビや携帯電話を通じて、国民に警報する仕組みである。国民一人ひとりに、あとどの程度余裕があるのかに関心を持ってもらう。もし「5%以内」になったら、冷暖房、テレビ、電灯、PCなどは止め、5階以下のエレベーターへの乗降を控えてもらう。重要なのは絶対に停電は避けることである。
7.これから日本は年間の消費電力量が最も多い8月を迎える。1年間を通してみると、産業部門と運輸部門で消費電力量の約70%を占めているが、この時期は家庭の消費量も増える。個人が冷房を使ってテレビを見るなど消費電力が膨らむためである。夏の甲子園の中止・延期を提案する。中止・延期にしなくとも「消費電力が上限の5%以内」になったらテレビ中継を中止する。
8.原子力産業は再構築が必要である。原子力発電は民間ではなく公営とする。そこから9電力会社に売電する。送電網は公営で全国ネットとし、9電力会社には配電を任せる。9電力会社への売電には外資や民間の参入を許可する。オーストラリアなどは喜んで自国のエネルギーを売りに来る。ロシアのサハリンでLNG発電して稚内に送電することも考えられる。 将来的には稚内から東北を経由して東電の管内まで配電可能である。日本では発電所をつくるのに住民対策だけで10年以上の時間を費やすので、非常に有効な手段である。
9.日本の原子力関連企業である東芝・日立・三菱の3社は、WH・GE・AREVAの傘下で仕事量の確保し、国策として原子力の技術者の温存を図る。そして、今回の事故の反省を活かして、既存の柏崎刈羽原子力発電所や福島第2原子力発電所などの再生に役立てる。
10.東電は、原子力は公営会社に売却・譲渡、高圧送電網も公営会社に売却・譲渡し、配電会社として新たに発足する。新たに誕生する「公営の原子力発電会社」は、9電力会社から原子力発電所を全て譲り受け、安全審査、住民対応、オペレーションは
全て「国の責任」で行う。同時に安全委員会、保安院などを統合して経済産業省とは独立した組織を作る。
11.経済産業省は原子力を推進していく組織である。現在の安全委員会、保安院などの構成メンバーでは中立的な立場で判断できるとは思えに。国の組織としてより中立的な組織を作ることが肝要である。
12.今回の事故による経済的ダメージは想定外に大きい。計画停電と節電を誤解し、交通機関が受けた打撃の後遺症も残っている。また大げさな自粛ムードもやめてもらいたい。不必要に日本経済の評判を落とし、打撃を与え続けている。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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