2011年04月20日

独立行政法人という日本を食い物にしている組織 3

「北沢栄著:官僚社会主義:日本を食い物にする自己増殖システム、朝日新聞社、2002年」の、「事務次官を上回る独立行政法人の役員報酬」の小節は、まさしく日本を食い物にする自己増殖システムの好例であるので紹介したい。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2001年4月にスタートした57機関にのぼる独立行政法人が「第2の特殊法人」と化している。官僚は、運用段階で制度を大幅に悪用している。一例が、全57法人の「役員報酬」の年収が所管省庁の事務次官(官僚のトップ)を上回っている。理事長をはじめ、役員たちはことごとく「特殊法人並み」の高水準に設定されている。しかも退職金の算出方法も、世間の批判を巧みに隠れて特殊法人と同一にしている。
2.独立行政法人の「自由裁量」をいいことに、法人側が勝手に役員の報酬・退職金水準を特殊法人と同じ基準で決め、これをチェックする各所管省庁の独立行政法人評価委員会も「問題ない」として事実上承認し、大臣が認可している。巧妙な官僚の手玉に乗せられている。
3.独立行政法人幹部の言い分は、「われわれが決めたものではない、役所の指導だ」である。報酬・退職金水準は実際には、やがて自分達が役員に天下る所管省庁が規定の作成の際に指導していたということである。
4.全57法人のうち、役員の年収が一番高い産業技術総合研究所(経済産業省所管)は、独立行政法人の中では最大規模である。国庫補助が年問約705億円、職員数3200人超で、役員数14人のマンモス法人である。理事長には古川弘之元東京大学総長(東大名誉教授・精密工学)をかつぎだし、月収165万円、ボーナスが年間662万円、年収額が2650万円になる。さらに東大退職時に退職金をもらっているのに、さらに1期2年勤めただけで1192万円の退職金をもらう。4年(2期)勤めれば、さらに加えて、40年近く勤めた大手製造業の部長と同等の退職金をもらうことになる。
5.さらに官僚の巧妙なとろは、元東大総長とか元宇宙飛行士の著名人をトップにすえて、官僚天下りの理事達はそれを隠れ蓑にしてトップに近い報酬を得ている。文科省所管の科学未来館長の毛利衛さんの過去の実績でみれば、これくらい報酬は妥当かもしれないが、天下り官僚の役人生活時代の実績が何か分からないが、トップの著名人に匹敵する報酬をちゃっかりとせしめている。
6.産業技術総合研究所では多額の税金が、研究用ばかりか理事長をはじめとする14人の役員報酬にも投じられている。この「運営交付金」予算を財務省は細かくチェックするわけでない。独立行政法人の役員報酬の特色の一つは、理事と監事の報酬額が理事長とあまり変わらないことである。
7.民の側からみると、国が面倒をみる国営型研究機関の役員14人に年間報酬総額2億587万円を支払い、一期2年分の退職金として計1億2352万円を負担する計算になる。
研究所側の言い分は、業績評価を厳格に行うことにより、各独法に与えられた任務の達成を図る仕組み、ということだが誰が業績評価をしているのかを考えれば無意味な言い訳である。市場で評価される製造業の部長クラスは納得できない。
8.産業技術総合研究所(産総研)は、技術立国を達成するうえで、大変重要な研究テーマについて、基盤的なものから、実用的なものまで、広範な分野において取り組んでいるという。「自らの存在意義に照らして適正水準の報酬」と言っている。(産総研が世界トップクラスと自慢しているロボットも今回の原発事故では使い物にならなくて、結局アメリカのロボットのお世話になっている。福島原発の汚染処理技術もフランスの技術にたよることになる。これまでやっていることは、民間企業の成果の上前をはねるようなことばかりである)
9.所管の経済産業省の独立行政法人評価委員会(委員14人、委員長:木村猛・元東工大総長)のチェック機能が働いているとは思えない。結局、独立行政法人は、役員の報酬基準、報酬金額、退職金の面で特殊法人並みかそれ以上にさえなっている。
10.全57法人中、年収2000万円以上の役員を抱える法人が11に上る。先の産総研のほか日本貿易保険、経済産業研究所、国立博物館、国立科学博物館、国立美術館、国立公文書館、通信総合研究所、航海訓練所、物質・材料研究機構、放射線医学総合研究所などである、国費を受け取りながら役員が高収人を約束されている法人の実態を、業績と関連させて2002年秋までにチェックする第三.者機関「政策評価・独立行政法入評価委員会」はどんな評価をするか。結果は、その総合評価は、最上位AAに次ぐA。理由として「明確な経営方針のもとに独立行政法人化のメリットを生かして研究所運営の改革を積極的に推進している点」を特に評価した。笑い話にもならない身内に甘い評価である。
11.国立公文書館の館長は、月給が110万円だから任期の4年を勤めれば1900万円の退職金を得る。静かで波風のほとんど立たない職場の長として、どんな専門知識を日夜研鑽しているかは不明だが、年収2000万円超、退職金も2000万円近くもらえるのだから、破格の待遇である。


官僚社会主義―日本を食い物にする自己増殖システム (朝日選書)
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yuji5327 at 06:41トラックバック(0) 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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