2011年04月30日

既得権者の支持を受ける当局が能力のある政治家や経済人のスキャンダルを仕掛ける理由 3

「カレル・ヴァン・ウオルフレン著、井上実訳:誰が小沢一郎を殺すのか?−画策者なき陰謀、角川書店、2011年」には、自分がかねてから疑問に思っていたいたことが外国のジャーナリスト、大学教授の著書によって明らかにされた。安堵と同時に日本の大新聞やテレビの無責任な報道を残念に思う。「リクルート事件、そしてライブドア事件」という小節の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる
1.日本の非公式な金融経済システムは、当然、政治にかかわっている。そしてビジネス界と政治との係わりでスキャンダルに発展しかねない問題となるのが「金」である。政治と金の切り離しがたい関係を、あるアメリカの政治家は、金こそ「政治の母乳である」と表現していたほどだ。通常、きわめて組織的に巨額の金が動くとき、体制側はそれを日本のシステムを脅かしかねない突出した行為であると見なし、スキャンダル作りに着手する。
2.田中角栄や江副浩正氏のケースはそれに当てはまる。他の人々も彼らがやったと同じことをし、今もなおそうした行為を続けているが、他の人々は咎められないにもかかわらず、彼らが罪を問われたのは、ふたりの手腕が、同じシステム内のだれよりもすぐれていたからでり、法律への抵触の問題ではない。彼らが体制内でのやり方に通じ、やがて権力を握れば、従来のシステム内部のバランスが崩れかねないので、既得権の支持を受ける当局者はスキャンダルを仕掛ける。
3.江副氏のリクルート事件は有名なスキャンダルである。新しい分野にビジネスを興し、華々しい成功をおさめたことが、同氏が脅威と見なされた理由であった。実は、彼が成功させたビジネスは保護されるべきものであった。日本で新しい分野を開拓するには、良いコネなしには困難だ。もしコネがあれば援助を期待できるのみならず、許認可の権限を有する当局の恣意的な行動から守ってもらえるからだ。こうした新しいビジネスを保護するため、従来の日本では関係グループや保護団体などからなる非公式のネットワークが構築される。もちろん有力政治家もそこに名を連ねる。協力関係を結ぶと同時に、過剰となった資金や特権を分かち合う。
4.旧体制の維持者たちが江副氏を恐れた理由のもう一つは、日本の都市部に暮らす中産階級のための労働市場を創出したためである。それは以前には日本になかったものである。日本のサラリーマンは転職しないので、サラリーマンの世界にそのような市場は必要なかった。長いキャリアをつちかった後で、勤務先を変えることは、日本社会では奨励されない。勤務先の会社と密着し、他社に転職しないようなサラリーマンこそ、日本の経済・政治システムを維持する重要な存在とみなされる。
5.日本企業は政治活動を嫌がる。転職を繰り返すようなサラリーマンは政治にも積極的になるかもしれない。旧体制の維持者たちはそれに一貫して反対してきた。そのような人物は彼らに好都合な体制を脅かす可能性があるからである。自民党は、大企業や農民や小売店主を代表してはいたが、都市部の中産階級はそこに含まれてはいなかった。民主党はそうした人々の代弁者になろうと動き出しているが、このことも体制維持にこだわる人々が問題視するもうひとつの理由であった。
6.江副氏が地獄の苦しみを味わったのは、彼が天才であり、本人は意識してなくても日本の体制を脅かしたためある。検察はメディアに情報をリークしながら世間のさらし者にするといった、苛酷なやり方で彼を追いつめていき、最終的に司法も彼を有罪とした。13年におよぶ法廷での闘いについて、自ら記した江副氏の『リクルート事件・江副浩正の真実』(2009年、中央公論新社)の英語版のタイトルは、「Where is the Justice?(正義はどこにある?)」(2010年、講談社インターナショナル)であった。日本のスキャンダルに関して言えば、正義など当然なかった。
7.堀江貴文氏をめぐるスキャンダルも世間の注目を集めた。堀江氏というビジネスの天才が、みずからの成功を誇り、厚かましくも見えたによって、スキャンダルの仕掛け人たちは彼を危険視した。彼は金融業界の保守的なビジネスマンたちを震憾させた。検察は堀江氏の証券取引の些細なミスを見つけ、彼が不正を働いたかのように見せかけるシナリオを用意した。それに基づき、特捜部がチームを組みシナリオに都合の良い事実だけ取り揃えた。堀江氏に対する取り調べは、真実をはっきりさせるためではなく、あらかじめ組み立てたシナリオに合致する証拠となる主張を引き出すために行われた。
8.昔は犯罪の疑いがあれば、容疑者の逮捕と捜査は警察の手に委ねられた。検察がさらなる事実関係の調査や、容疑者を起訴するかどうかの判断にかかわるのは、その後のことであった。現在でも、通常のケースに関しては、このようなやり方は続けられている。だが超法規的な政治目的のために意図されたスキャンダルは別あつかいとなり、そうしたケースは特捜部が手がけ、世間で注目されるような、ホワイトカラーによる犯罪も担当した。特捜部は逮捕から裁判にいたる全プロセスを指揮する。ひとたび彼らの手にかかったが最後、形勢を逆転させることはできない。検察は、不正を働いたとされる人物の事務所から「証拠」の入った段ボール箱を抱えて出てくるところをカメラで撮影するように、ジャーナリストたちに通告し、テレビ局は現場で待ち構える。一度着手したら、面目を保つためには最後まであきらめない。メディアもワイドショーのネタにして視聴率を上げた。
9.他国の検察との大きな違いは、日本の検察のやり方が超法規的であることである。日本の政治・経済システムの重要な特徴が、彼らの超法規性にあるというのは誇張ではない。日本の検察は法律の枠組みを超えた領域で動いている。「不文律」あるいは「暗黙の掟」などと称される規則は、庶民を守るものではなく、庶民んにとって有益なものでもない。それは少数の既得権者を利するものである。慣習や人脈を基盤とする日本の非公式なシステムは、法律に明文化された公式の民主主義体制からは大きくかけ離れている。両者の間には、灰色の曖昧な領域が広がっており、日本の官僚たちは、自らの目的に合わせて法律を利用する。スキャンダルの犠牲者たちは、この灰色の領域に引きずり込まれ、民主国家の法律の恩恵にあずかることはない。
10.彼らを投獄し、その人格を破壊することさえできる極めて恣意的な当局の決定を押し付けられた人たちは、法律によって保護されることはない。スキャンダルを仕掛ける高級官僚は、必ずしも意図的に行動しているわけではなく、自らの行動を深く考えることもなく、彼らはただ不文律に忠実にしたがっているにすぎない。しかし結果的に、彼らはみな画策者なき陰謀に加担している。たとえ世間に批判され、あるいは正義感から、自分たちの振る舞いに疑問を感じても、国家への貢献こそを至上任務とする独特の価値観に阻まれて、そのような考えもかき消されてしまう。日本の国の高級官僚には他国の比べて人間として大切なものが欠落しているようだ。


誰が小沢一郎を殺すのか?画策者なき陰謀
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
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