2011年05月27日
東北復興計画は日本の農業復興が前提条件
「大前研一著:日本復興計画、文藝春秋社、2011年4月30日」は、3.11大震災の復興計画を取りまとめたもので、内容の豊富さ、パンチの強さには敬服させられる。「第3章:日本復興計画」の「あまりに危険な石棺計画」は説得力がある。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.大前氏が3月19日に提案した東北復興計画は、政府もほぼその方向で動きはじめている。まだ財源の問題は残っているが、住まいを高台に移して、海岸の平地は公共施設とか緑地にするということは、政府与党も共通である。
2.そのグランド・デザインは、阪神・淡路のときは、三全総(第3次全国総合開発計画)で日本を土建屋国家にしてしまった下河辺淳氏(当時、国上事務次官)が退官後に手がけた。しかし今回の東北再生には、あのような箱物的な発想でなく、ソフトな路線でデザインする必要がある。適任者が見つからなければ、フェイスブックなどで公募するのもよい。所謂、クラウド・ソーシングで、不特定多数の、特に若い人たちに業務を委託するのも一案である。。
3.今の東北は、日本の「最後の工業地帯」である。東京、大阪、名古屋の工業地帯が衰退して、次第に東北へと工業の拠点が移って行った。特に自動車、電気関係の基幹部品は東北で生産されている。そこで競争力を失うと、東南アジア、中国に行く。今やタイが自動車関連部品の一大拠点になっている。
4.東北で生き残っている企業はかなり競争力がある。彼らは重要な電子部品素材などを生産しており、アップル、インテル、サムスンなども東北地方から素材・部品を買っている。地震のあと東アジアがパニックになっているのは、それらの素材・部品の製造がピタッと止まったためである。漁港の復興とともに、東北地域の工業力の再生を念頭におくことが重要であり、住居の再生だけでは食べていけなくなる。
5.今回大きな被害を受けた地域は、名取川の流域で米作地帯を除けば、ほとんどが漁港とその周辺である。しかし、秋田や庄内などの米どころを抱えた東北の復興を考えると、農業の今後は大テーマである。
6.このままでは、日本の農業は復興しない。人間の食べ物を確保するには、世界の農業最適地で農場経営をする、それも日本人が出かけていって現地の農民と一緒にやり、最適地からの輸入にすべきである、と大前氏は以前から提案している。日本の農業は、平均年齢が65.8歳の農民によって成り立っている。その8割以上がもう農業を基本的な生業としていない。「利権農家」であり、農業利権があるために農民をやっているにすぎない。だから、若い人が少々参入しても起爆剤にはならない。
菅総理は、農地法を改正して若い人や株式会社にも農地の取得が出来るようにする、と言っているが、その程度では農業の再生は無理である。
7.食糧安保論者が言うような、日本の農業に日本人の胃袋を任せるべきだという考え方は成り立たないし、むしろ危険な考え方である。自給率の議論にはまやかしがある。仮に表面的には自給できているように見えても、実態は輸入に頼っている部分が多い。たとえば、牛の飼料はアメリカから来るし、コンバインとかトラクター、あるいは灌概の機械はすべて石油がないと動かない。
8.石油の輸入が止められたとき、65.8歳のお爺ちゃんがコンバインなしに田植えや稲刈りは出来ない。どうしても自給率を上げたいなら、世界の最適地に出かけていって資本を投下し、現地と長期契約を結んで日本に逆輸入する。その場合に輸入分に0.5を掛けた数値を自給率として算入すればいい。
9.世界の農業最適地というのは5、6カ所ある。そこに分散して投資すれば、全てをストップされるリスクも分散できる。それが真の食糧安保である。工業立国の日本にとって、油も鉄鉱石も石炭も、それらが輸入できなくなるリスクは同じなである。農業だけ自給率の殻に閉じこもる理由はない。
1.大前氏が3月19日に提案した東北復興計画は、政府もほぼその方向で動きはじめている。まだ財源の問題は残っているが、住まいを高台に移して、海岸の平地は公共施設とか緑地にするということは、政府与党も共通である。
2.そのグランド・デザインは、阪神・淡路のときは、三全総(第3次全国総合開発計画)で日本を土建屋国家にしてしまった下河辺淳氏(当時、国上事務次官)が退官後に手がけた。しかし今回の東北再生には、あのような箱物的な発想でなく、ソフトな路線でデザインする必要がある。適任者が見つからなければ、フェイスブックなどで公募するのもよい。所謂、クラウド・ソーシングで、不特定多数の、特に若い人たちに業務を委託するのも一案である。。
3.今の東北は、日本の「最後の工業地帯」である。東京、大阪、名古屋の工業地帯が衰退して、次第に東北へと工業の拠点が移って行った。特に自動車、電気関係の基幹部品は東北で生産されている。そこで競争力を失うと、東南アジア、中国に行く。今やタイが自動車関連部品の一大拠点になっている。
4.東北で生き残っている企業はかなり競争力がある。彼らは重要な電子部品素材などを生産しており、アップル、インテル、サムスンなども東北地方から素材・部品を買っている。地震のあと東アジアがパニックになっているのは、それらの素材・部品の製造がピタッと止まったためである。漁港の復興とともに、東北地域の工業力の再生を念頭におくことが重要であり、住居の再生だけでは食べていけなくなる。
5.今回大きな被害を受けた地域は、名取川の流域で米作地帯を除けば、ほとんどが漁港とその周辺である。しかし、秋田や庄内などの米どころを抱えた東北の復興を考えると、農業の今後は大テーマである。
6.このままでは、日本の農業は復興しない。人間の食べ物を確保するには、世界の農業最適地で農場経営をする、それも日本人が出かけていって現地の農民と一緒にやり、最適地からの輸入にすべきである、と大前氏は以前から提案している。日本の農業は、平均年齢が65.8歳の農民によって成り立っている。その8割以上がもう農業を基本的な生業としていない。「利権農家」であり、農業利権があるために農民をやっているにすぎない。だから、若い人が少々参入しても起爆剤にはならない。
菅総理は、農地法を改正して若い人や株式会社にも農地の取得が出来るようにする、と言っているが、その程度では農業の再生は無理である。
7.食糧安保論者が言うような、日本の農業に日本人の胃袋を任せるべきだという考え方は成り立たないし、むしろ危険な考え方である。自給率の議論にはまやかしがある。仮に表面的には自給できているように見えても、実態は輸入に頼っている部分が多い。たとえば、牛の飼料はアメリカから来るし、コンバインとかトラクター、あるいは灌概の機械はすべて石油がないと動かない。
8.石油の輸入が止められたとき、65.8歳のお爺ちゃんがコンバインなしに田植えや稲刈りは出来ない。どうしても自給率を上げたいなら、世界の最適地に出かけていって資本を投下し、現地と長期契約を結んで日本に逆輸入する。その場合に輸入分に0.5を掛けた数値を自給率として算入すればいい。
9.世界の農業最適地というのは5、6カ所ある。そこに分散して投資すれば、全てをストップされるリスクも分散できる。それが真の食糧安保である。工業立国の日本にとって、油も鉄鉱石も石炭も、それらが輸入できなくなるリスクは同じなである。農業だけ自給率の殻に閉じこもる理由はない。