2011年06月22日

思考停止している霞ヶ関官僚が日本の復興を遅らせている 3

「稲葉清毅:霞ヶ関の正体、晶文社、国を亡ぼす行政の病理、2005年」の「第2章:能なき役人は法規をかざす法規・前例依存症」を既に数回紹介している。現在、東日本震災の復興は地方自治体の頑張りで何とか進んでいるが、国の対応は遅れている。その理由が本書の「行政の論理の再構築神話からの脱却」の小節を読むとよくわかる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.従来の地方公務員は、自らが主体となって政策を立案し、意思決定を行っていくという意識が乏しく、担当する事務事業をそつなく遂行していく、いわゆる能吏が目指されていたため、気概や覇気を欠いていた。もっと住民が地方行政に関心を寄せ、地域にとって必要な施策は住民と行政の協働によって立案して行くという習慣が形成されれば、地方公務員の資質はさらに向上し、埋もれていた才能も開花していく。
2.霞ヶ関の官僚が行ってきた行政は、現実を見ずに頭のなかで形成された理念だけで統一性や整合性を追い求めていた。本来、国民と共有される良識によって、試行錯誤的に運営されるべきものである。そういう観点に立てぽ、クニ・ムラ体制下における歪んだ理念や価値観に汚染されていない地方の公務員の方に大きな期待がもてる。
3.国の官僚も見捨てるわけにはいかないが、大幅削減は可能である。クニ・ムラという偏った世界に閉じ込められ、その掟としがらみにがんじがらめにされてきた。自らの初志に反し、国民全体ではなく一部既得権者のための奉仕者となることを強いられている現在の境遇に満足していない者も少なくない。彼らを地方に移籍させ、住民のニーズに即応した現実的な行政の実現を担当させれぽ、水を得た魚のように、その力を発揮させることは可能である。4.地方分権が、諸悪の根源であるクニ・ムラ体制を克服するための特効薬になり得る。クニ・ムラは彼らのエゴイズムに基づいたタテ割の構造を地方にまで持ち込み、住民との接点である行政をバラバラで非効率なものにしてきた。行政の総合調整は、これまでも行政改革の重要な課題となり続け、内閣機能の強化などが図られてきたが、内閣自体がクニ・ムラの総合出先化していたために成功していない。都道府県や政令市、中核市等に権限を移譲し、現場における総合調整を実現していく方が現実的である。
5.国の各省庁が立案する画一的、硬直的なサービスと手続面の冗長性もこれまでの弊害であった。安っぽい全国一律のメニューでは、多様化し、高度化した国民のニーズに対応できなかった。住民も負担と受益の関係が良く分からず、行政全体に対する関心を失い、自分のエゴが先に立ってしまった。
6.このような不自然な状況を改め、それぞれの地域の現状と将来のヴィジョンについて、自然や環境の視点を含めて再構築し、財政状況を踏まえながら、社会資本の整備や行政サービスのレベルを住民とともに再検討し、創意を発揮して地域間競争を行ってゆけば、より満足度と質の高い行政の実現が可能になる。その過程で、公務員が襟を正し、信頼を取り戻し、それでも不足する財源を増税の形で住民にお願いしていくのが、わが国の再建の途である。
7.地方分権とは、霞ヶ関の官僚や永田町の議員の権限を地方の公務員や議員に移すことではない。住民自治、すなわち「住民の住民による住民のための行政」を実現することである。
都道府県については、統合や道州制への転換が検討されつつあるが、自治の推進にとって両刃の剣になりかねない。都道府県や国の各省庁の出先機関の統合は、行政の専門性や総合調整力の向上と担当範囲の広域化をもたらし、国からの権限の移譲をより容易にする。反面、新しい組織の実権が国の官僚によって握られることに注意が必要である。
8.クニ・ムラは、省庁の壁を越えて独立の王国を形成している。この構造を温存したまま、都道府県の再編成を行うならぽ、彼等は、新しい組織、たとえば道州にタテ割り構造を持ち込み、クニ・ムラ王国の新たな植民地として支配しようとする。外交、防衛等、国の存続にとって不可欠な機能を除く国の各省庁、たとえぽ文部科学省、厚生労働省、国土交通省などを解体し、その機能と権限の大部分を道州に帰属させるならともかく、単に都道府県と国の出先機関の統合に止まるなら、自治は後退し、行政の病理は治癒するどころか、より悪化する。
9.情報化社会の進行はボーダーレス社会を形成するとともに、中間に介在する機能を不要にする。政令市、中核市レベルの能力をもった基礎的自治体と国との間に、道州などのような中間的機関が本当に必要であるかも、まず検討されるべきである。それぞれの自治体が、地域に固有の歴史、風土、自然、景観、産業、文化を再評価し、魅力的で住み良い地域の形成のために効率的な行政サービスを展開することを目指すべきである。
(今年も、上級公務員試験合格者数の大学ランキングというばかげたニュースが報道されている。中央官僚は相変わらず受験偏差値で思考停止した固定観念で大事な国の行政を動かそうとしている。メディアもそんな中央官僚の恣意的なリークなど無視すればよいのに、それに迎合している。こんな時代遅れが残る先進国は日本だけである)


霞ヶ関の正体―国を亡ぼす行政の病理
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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