2011年10月27日

霞ヶ関官僚の世界は裸の王様の世界でもある 3

宮本政於著:お役所の精神分析:講談社、1997年」の「第1章:官僚たちの困った精神構造」の「集団の調和」が一番大事にされる」の小節は、薬害エイズ問題を例に、ニューヨークタイムズ紙記者が著者に投げかけた疑問に答えるかたちで著者が述べた日本の官僚行政の問題点について纏めたものである。福島原発事故における資源エネルギー庁長、原子力安全・保安員と東京電力の関係と類似しており参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.厚生省における医系技官とキャリアの事務官との争いは激しい。キャリアのグループは医系をたたけば自分たちのポストが増えるだろうと考えて、エイズ問題では当時の菅大臣の指示に従った。ところが医系のグループをたたいたまではよかったが、火の粉は事務系にまで飛んできた。
2.郡司元課長、安部教授をたたけばたたくほど、「どうして厚生省は危険を知っていて非加熱製剤に対して輸入禁止措置をとらなかったのか」、「非加熱製剤によるエイズウイルスの感染の危険性が認識されて、その結果、加熱製剤が認可されても、なぜミドリ十字は非加熱製剤の出荷を1988年までやめなかったのか」という疑問は深まった。そして薬務局長の影響が語られるようになった。薬務局長はキャリアの事務官で、過去の彼の上司はミドリ十字の元社長である。そして彼の元上司というのはやはり厚生省の薬務局長を務めた人物だった。
3.天下り、年功序列が重視される官僚だから、元薬務局長が、当時の薬務局長に影響力を行使してもおかしくない。官僚たちが、非加熱製剤の輸入禁止という措置をとらないことが大きな問題であった。
4.お役所の世界は裸の王様の世界でもある。今回の薬害エイズ問題で、マスコミや国民が、これだけ騒ぐとは考えていなかった。1983年当時に大騒動になることがわかっていれば、ミドリ十字は早々と非加熱製剤を廃棄処分にしていたはずである。経済的なロスより今回の事件によるロスのほうがはるかに大きいことを官僚たちは、だれも思っていなかった。危機意識に欠けた官僚感覚で、しかも派閥争いしか考えなければ、外の世界に目が行き届かなくなる。信じられない近視眼的な人たちの集団である。
5.ニューヨークとシカゴのマフィアの派閥争いは有名だが、官僚も同様に次元が低い。医系技官をたたくことが自分たちの首を絞めることに気づいた事務系キャリアは、これ以上火の粉が飛ばないように火消しに走った。厚生省は医療に関しては一種の統制経済を敷いていて、医療関連企業を完全に手中におさめている。
6.エイズ問題のように、明らか人命軽視の対応が見えてしまい、その責任が当時の厚生省の上層部にまで及べば、非難の声が今より大きくなることは間違いない。そうなれば規制緩和の矢面に立たされ、厚生省が敷いている統制経済は崩れさる。権限は減少し、しかも民営化の声も出る。組織体としての機能が大幅に変化することになる。厚生省自体が崩壊しかねない。派閥争いの次元を越えてしまう。このような事態だけは極力避けたいので事務系と医系技宮との合意ができ上がった。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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