2012年02月27日

インフレは、年金に頼る退職者の最大の脅威である。その数はやがて確実に過半数を占める。アメリカの政治体制でも一大利害集団になり、強力な政治勢力となる。 3

「P.F.ドラッカー著、上田惇生訳:歴史の哲学、ダイヤモンド社、2003年」の名言集の第10章:政治の再建には日本の政治に当てはまる言葉が多く見られる。印象に残った部分の続きの概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.今日の65歳の平均余命と健康度は、1920年代の52−3歳に相当する。定年制によって65歳に退職した者も、早期退職制によって65前に退職した者も、退職後まもなく、欲しかったものは長期休暇にすぎなかったことを知る。
2.定年制の緩和は不可避である。人間的な見地から求められることである。65歳定年制は、パートタイムでも働きたいとの欲求を持つ健康な人たちに、怠惰にさせ、無用の存在たることを強制する。
3.今から20年後あるいは25年後には、組織のために働く者の半数は、フルタイムどころか、いかなる雇用関係もない人たちとなる。とくに高年者がそうなる。したがって、雇用関係にない人たちをいかにマネジメントするかが、重要な課題の一つとなる。
4.定年制見直しにかかわる最大の難問は、身体的あるいは知的な能力が低下して満足な仕事のできなくなった者を退職させるための基準の設定である。カリフォルニアの州法のように年齢による退職を禁止した場合には、年齢ではなく身体的、知的能力の低下を判断し、退職させるための客観的な基準が必要となる。誰がその基準を定めるか。誰がその実施にあたるか。
5.先進国は今、集団自殺しつつある。人口を維持しうるだけの赤ん坊を生んでいない。理由は簡単である。若い人たちが、増大する高年者入口を扶養しきれなくなったからである。重荷に耐えるには、高年者の対極にある子供を減らすしかない。
6.出生率の回復はありえなくはない。だが今日のところ、先進国でベビーブームが再現する兆しはない。しかも、一夜にして50年前のアメリカのべビーブーム時の3.0の水準に急上昇したとしても、それらの赤ん坊が教育を受け、生産力をもつ成人に育つには、25年を要する。
7.若年人口の急減は、ローマ帝国崩壊時以来というだけでも重大な意味をもつ。すでに先進国のすべてと中国、ブラジルが、人口維持に必要な出生率2.2を下回った。このことは、すべての先進国において、外国人労働者と移民の受け入れが、国論を二分する問題になることを意味する。
8.人口が減少する豊かな先進国のすぐ隣に、人口が増加する貧しい途上国がある。人の流れの圧力に抗することは、引力の法則に抗することに似ている。それでいながら大量移民、とくに文化や宗教の異なる国からの大量移民ほど、危険な問題はない。最も深刻なのが日本である。定年が早く、労働市場が硬直的であり、しかも大量移民を経験したことがない。
9.アメリカの従業員は、賃金に加えて、年金基金を通じて、企業の所有者から報酬を手にするので、資本の所有者および供給者、資本市場の支配者となりつつある。アメリカだけが、マルクス経済学にいう「価値の源泉たる労働者が生産活動の成果を手にする」という意味において、真の社会主義の最終段階に達した。
10.年金基金の資金は、いかなる資本の定義にも該当しない。用語だけの問題ではない。年金基金の資金は、実のところ繰延べ賃金である。退職した人たちに対し、賃金に相当するものを支払うために積み立てられているにすぎない。
11.先進国では、45歳以上の者の大部分にとって、年金基金の受給権こそ最大の資産である。19世紀の生命保険は、実のところ死亡保険だった。これに対し、年金基金は老齢保険である。年金基金は、ほとんどの人間が労働年齢をはるかに超えて長生きすることが当然となった社会では、不可欠の機関である。年金基金の収奪からの保護こそ、政策と法律を策定する者にとっての重大な課題である。
12.資本市場における意思決定権が、企業家すなわち未来に投資する者の手から、受託者としての資産管理者、すなわち過去に投資する者の手に移ったことにある。そこには、これから成長しようとする新しく小さな若い事業を餓死させる危険がある。
13.就業者の疑似貯蓄によって消費をまかなわれる退職者は、増加の一途をたどる。その結果、年金給付の総額が増加し、いわば逆貯蓄ともいうべき現象が進行する。この逆貯蓄を埋めるための資本形成の方法について、真剣に検討されたことはまだない。
14.大恐慌以来、失業は、現代社会に特有の最も危険な病とされてきた。高齢化社会では、失業に代わってインフレが、現代社会に特有の最も危険な病となる。
15.インフレは、年金に頼る退職者にとって最大の脅威である。50歳を過ぎた従業員にとっても、将来の年金の購買力が低下することは重大な脅威である。この2つの世代を合わせると、現在すでに成人人口のほぼ半分に達し、やがて確実に過半数を占める。彼らは、年金基金社会主義の発展の結果として、インフレに対し、かつてない重大な利害を有する。共通の利害を有するこの種の利害当事者は、アメリカの政治体制にあっては一大利害集団であって、強力な政治勢力となる。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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