2012年03月24日

シャープも「何で飯を食っていくか?」というビジネスモデルの構造が変わらない限り、今後の発展は難しい。 3

3月23日付の大前研一さんのニュースの視点は『企業の成長とビジネスモデル〜構造のシフトを考える』と題する記事である。経済記事に関してもさすがに読みが深い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.半導体材料大手のSUMCOは8日、450億円の第三者割当増資を実施すると発表した。 円高や半導体市況の低迷から、2012年1月期決算の純損益は843億円の赤字になった。工場閉鎖や1300人の人員削減を打ち出し、2013年1月期の純損益は30億円の黒字を目指す考えである。
2.エルピーダが倒産した際に、大前氏は「限界供給者の悲哀」という言葉を使って説明したが、今回のSUMCOも全く同じ状況に陥ったと言える。限界供給者は、景気の良いときは黒字、景気が悪くなると赤字、というように業界の景気動向に経営が左右されてしまう存在である。SUMCOと業界トップの信越化学の業績推移を見ると、売上高・営業損益など ほぼ同じカーブで推移しているのが分かる。信越化学が上がればSUMCOも上がり、信越化学が下がればSUMCOも下がる。ただし下がった時には、SUMCOだけが赤字に転落する。
3.今までと同じようにシリコンウェーハを作っていても、信越化学と同じビジネスモデルの構造になってしまい、「同じ構造で規模が小さいだけ」という存在から抜けだせない。つまり一生、限界供給者の悲哀を味わうことになる。信越化学とは「異なるビジネスモデルの構造」を確立することが必須である。
4.同じような立場にあったマイクロン・テクノロジーはフラッシュメモリ分野に乗り出し、活路を見出そうとした。産業再生をいくらやってみても、この「ビジネスモデルの構造」が 変わらない限り、改善は見込めない。
5.株式市場はこの辺りのことをよく分かっているので、信越化学とSUMCOの株価推移を見ても、ほぼ同じようなカーブで推移している。業績でも株価でも常に信越化学の後塵を拝する形で同じように推移するのみ、というまさに限界供給者の悲哀の典型例である。
6.ビジネスモデルの構造を再確認するという意味では、先日社長交代があったシャープについても同じようなことが言える。15日の東京株式市場で、シャープ株が前日比28円安の503円と急落した。14日は社長交代に関する会見があると伝わると、経営改革への期待などで22円高となっていたが、この上げが帳消しになった格好である。シャープの場合、社長が交代しても町田会長が残るのかどうかが重要である。今回は町田会長も退任し相談役に退くということで、前回の社長交代とは違った形になった。
7.ニュースでは株価が4%上がったものの5%下がったといった面を強調しているが、もう少し長期的に見ると、全体的には下がっている傾向にほとんど影響は出ていない。結局のところ、シャープにしても「何で飯を食っていくつもりなのか?」というビジネスモデルの構造が変わらない限り、今後の発展は難しい。
8.ACCESSが12日発表した2012年1月期連結決算は最終損益が43億円の赤字でした。 携帯電話の需要がスマートフォンにシフトするなか、主力の従来型携帯電話向けのソフト事業が低迷している。欧州など海外子会社の清算に伴う損失もあり、特別損失は45億円に膨らんだ。任天堂、ソニーのプレイステーションがスマホシフトで割を食ったのと同様、これは完全にスマホショックの影響である。
9.少し違う見方だが、ヤフーの井上社長の退任も同じ理由である。スマホ対応に遅れたヤフーとして、この分野は若い人に任せようということで退任された。従来、携帯電話の開発には莫大なコストがかかっていた。1つの携帯電話の開発に50億円〜100億円という時代もあった。そんな中、数社で共同開発しようという動きを見せていた矢先、スマホが登場して、あっという間にアンドロイドとiPhoneに市場がシフトしてしまった。ACCESSのように携帯電話で利益を上げていた会社にとっては、まさに交通事故にあったような痛手である。 ビジネスモデルの構造・利益構造ががらりと変わってしまったのですから、ある意味では、致し方がない。
10.その意味で、面白い動きを見せたのが全日空である。全日本空輸の伊東社長は日本経済新聞の取材に応じ、今年本格稼働する格安航空会社(LCC)の売上高規模について5年後に「1500億〜2000億円を目指す」と述べた。「やらなければ、パイを奪われるだけ」だから、LCCに乗り出すというのが伊東社長の言い分だが、非常に面白い人である。ただし、この新しいビジネスモデルの中で「ANAの利益構造で」勝てるのか、という点が大きな課題である。
11.AirAsiaとANAではユニットコスト(1座席を1キロメートル運ぶコスト)が4倍違う。LCCの競合企業を見ると、一部を除いて、途上国の航空会社である。ANAのような会社がLCCに乗り出すとするなら、日本の航空会社という発想を捨て去る覚悟が必要である。アイルランドのライアンエアーは利益を出しているから、ANAが利益を出せる構造もあるはずである。ANAが「カンタス航空を上回る利益を上げているジェットスター航空」のようになれるのかどうか。売上を目指すのは構わないが、利益が伴う構造を作り出せなければトラブルが増えるばかりである。ANAの今後に期待したい。


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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
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