2013年06月26日
インドのIT関連の職業は最近できたばかりで、カースト制度を超えた意欲の高い若者が集まってくるので、IT産業が盛んになった。
池上彰と考える、仏教って何ですか? [単行本(ソフトカバー)]
「池上彰著:池上彰と考える 仏教って何ですか? 、 飛鳥新社、2012年」が面白い。 第1章:仏教って何ですか?」の「三大宗教のひとつ、仏教はどこでどのように生まれた?」「古代インドの人々は、ブッダにどんな救いを求めた?」の小節の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.仏教では、この世は四苦八苦に満ちているのだから、2度とこの世に生まれてこない状態が理想だと明言している。まるで人生をすべて否定し、冷たい姿勢にも思えるが、こうしたブッダの教えが魅力的だったからこそ、仏教は多くの人々に受け入れられ、広まっていった。その背景には、伝統的なインド社会の成り立ちが深く関わっている。
2.古代インドのバラモン教、その流れをくむヒンドゥー教には、カースト制度という厳しい身分制度がある。生まれた家によって身分が決まり、非常に細かく分けられたカーストによって、就く仕事も、結婚相手の身分も決まっている。現在のインドではカースト制度は法的に禁止されているが、実際には厳然と残っている。いい意味でとらえれば、人口の多いインドの人々は、カースト制度によって仕事を分け合い、ワークシェアリングを実現しているが、生まれた家によって一生が決まってしまうような人生を、誰もが好ましいと思っているわけではない。
3.インドは近年、IT大国として急成長している。ITの世界では色々なカーストの人々が働いている。IT関連の職業は最近できたばかりで、カーストが指定されていないからである。カースト制度を超えた人生を夢みて、意欲の高い若者が集まってくるので、IT産業が盛んになった。
4.ブッダの活躍した古代インドの時代には、カースト制度は今よりずっと強固なものだった。特に身分の低い多くの人々にとっては、生まれながらにして辛い人生が待っており、そこに甘んじる以外の選択肢はなかった。カースト制度をべースに成り立っているバラモン教が信じられていた時代、そこから抜け出す術はなかった。
5.そこに登場したのがブッダである。カースト制度というルールに閉じ込められた人々にとって、ブッダの教えはしつくりきた。その苦しみから自由になれる道があるのだとブッダは説いた。
6.ブッダ自身はクシャトリヤという王族・武人のカーストに生まれたが、教えを説くにあたって、相手の身分や職業を問わなかった。ブッダの信者の中には、大国マガダ国の王もおり、寺院を寄進してくれるほどの大スポンサーだったが、とくに優遇されていたという記録はない。身分が高いからといって、ブッダは説法の順番を繰り上げたりすることもなく、請われるままに、誰にでも教えを説いた。
7.弟子の中には、人を殺した罪人もいたし、遊女もいた。カースト制度で身分が低かった職業のひとつである鍛冶職人もいた。生まれながらにして苦しみを抱える者、生きていく中で苦しみを抱えてしまった者、すべての人々がブッダの教えに救いを見出し、ブッダがそれに応えることで、仏教という宗教は大きくなっていった。