2014年07月29日

除染だけで復興計画を作ることには問題がある。補償と除染のどちらにより重心をかけるべきか、再考の余地がある。断然補償中心にすべきである。

原発事故と放射線のリスク学
中西準子
日本評論社
2014-03-14

「中西準子著:原発事故と放射線のリスク学、日本評論社、2014年」の「第3章:福島の「帰還か移住か」を考える・経済学の視点から、対談:飯田泰之vs 中西準子」が面白い。
先ず、「「除染」しか選択肢はないのか」という小題の部分の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.東京電力福島第一原発周辺の11市町村の避難区域が再編された。帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域のいずれかに全域が該当するのが6町村、何割かが該当するのが5市町村となっている。居住制限区域と避難指示解除準備区域については除染が進められているが、中間貯蔵施設の建設予定地も決まらず、予定通りには進んでいない。果たしてこの地域の除染は本当に可能なのかという大問題はあるが、それ以前に仮に除染が可能だとして、それでこの地域で人が元通りに生活することができるのかという疑問がある。除染費用に見合う便益があるのか、つまり復興ができるのかということも問題だが、ほとんど議論されていない。
2.「完全に除染が可能ならば、そこに住んでいた人たちは帰還するのが前提」という考えも個人差がある。この地域では高齢者の比率が非常に高いが、現役世代の人たちにはすでに近県や首都圏などで仕事を見つけている人もいる。除染に重点を置いて財産損失への補償を小さくすると、この人たちには生活していけない土地や家に戻らざるをえないということになる。これはとても厳しい話で、若い世代ほど切り捨てられている。そして人が住まないものにお金をかけるという意昧で財政上の効率も悪い。
3.移住への補償という選択肢もあるべきである。政府や自治体は「ふるさと帰還事業」などと打ち出しているので、著者の意見はほとんど敵視され、大問題になってしまった。現実的には、それほど多くの方が帰還するわけではない。おそらく半分以下になる。そのように地域としての結び付が緩く薄くなっているところに莫大な予算を投じて除染をして、インフラ再整備もやろうとしている。
4.もし人口が半減するのなら、半減を前提にした都市計画を作るといった議論が出てこないといけないのに、全くない。移住する人々には土地家屋など物損面の補償だけではなく、移転費用も出すべきである。残らない人にとっては、その土地が除染されてもまったく得るものはない。住み続ける人だけに特化し、移住を希望している人に手薄くなるのは不公平性である。
5.移住することよりも、同じ所に住み続けることのほうが尊いというのは疑問である。移ることも立派な選択である。帰還については年齢の区分も重要で、おそらく若い人ほど戻らない。次に住む世代がいなくなるかもしれない地域に数兆円をかけようとしている。土地を相続する人たちには、資産としてはほぼ無価値のものが手渡されることになる。
6.除染だけで復興計画を作ることには問題がある。補償と除染のどちらにより重心をかけるべきか、再考の余地がある。断然補償中心にすべきである。




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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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