2014年10月22日

投資できるだけの資金を持った理系の人間の少ない日本では、投資家の中心がいつまでも知的財産の中身の技術についてわけのわからない文系の人間のままである。

ごめん!
中村 修二
ダイヤモンド社
2005-07-15

「中村修二著:ごめん!青色LED開発者最後の独白、ダイヤモンド社、2005年」は参考になる。「第1章:今回の裁判結果がもたらす影響とは:金額の多寡よりも重要なこと」の「技術や特許を目利きできる米国の投資家」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.重要なことは、日本で理系の投資家が育たないことである。ベンチャー支援は、日本政府の打ち出している経済振興策の一つだが、今回の裁判の結果は米国型のベンチャーが育つ要因をつぶしてしまった。和解を勧告した東京高裁は、特許法の理念の一つを「産業を振興する」ことだと述べている。しかし、今回の裁判の結果は、まるで逆の効果をもたらし、むしろ産業を衰退させる。
2.米国型ベンチャーとは、ベンチャーが続々と起業し、それが経済を活性化させ、国力を増強させる要因になっている。ベンチャーの起業家の多くは、大学で遺伝子を研究していたり、コンピュータ・ソフトの開発者だったり、機械工学の技術者だったりする。理系の知識を持ち、画期的な技術や発明、特許などを元手にして投資家を集め、会社を興して株を公開し、会社が成功すれば莫大な利益を手に入れる。
3.彼らは自分たちが金持ちになってから、再び新しい事業に乗り出す。有望なベンチャーに投資するという行為も含まれる。もともとは理系の人間ですから、技術や特許の目利きをすることができる。将来性のある技術や画期的な特許を評価することができる。彼らは、有望な技術や特許を持っているベンチャーを積極的に支援する。米国でのベンチャー投資では、10に1つが成功すればいいと言われているが、目利きができる場合、もっと確率が高くな。
4.中村氏がUCSBに勤め始めたころ、まず同僚の教授たちの生活ぶりに驚かされた。パーティ好きで有名な米国人だから、就任直後は多くの同僚のお宅に招かれて、ビックリした。日本では考えられないような超豪邸に住んでいる。広い庭があり、プールがあり、何部屋もベッドルームがある。日本の大学教授の「清貧」ぶりと比べれば、それこそ雲泥の差である。
5.理由は、自分の研究をもとにして会社を立ち上げたり、学生にやらせた会社の顧問などをしている。米国の大学では、兼業は禁止はされていないが、社長になることはできない。学生を経営陣にすえ、自分が顧問になってその会社の株を公開し、莫大な金額を稼ぎ出している。米国での大学教授は、ベンチャー企業の経営者のようなものである。
6.画期的な技術を作ったり発明をすれば、会社の評価も上がる。そこで株式を公開すれば、大学教授も莫大な利益を手にすることができる。米国では、価値のある技術や特許を持っていれば、ベンチャー起業のための資金集めにそれほど大きな苦労はいらない。中村氏にも、個人投資家たちから直接、電話がかかってくる。
7.米国にはベンチャーに投資する個人投資家がたくさんいる。個人資産が1千億円とか、そういう大金持ちである。彼らの大部分は、自分たちもベンチャーを起業したりして大成功を収めている。資金があり余っているから、新しいベンチャーに自らも投資する。投資というのは、資本主義の基本的な経済活動だから、日本の銀行のように担保をとることもないし、起業家が失敗して夜逃げするようなこともない。
8.米国の個人投資家はよく勉強している。非常によく投資先について調べている。彼ら自身が起業家であり、また技術者や研究者だから、投資すべき技術や特許についての知識は大変なものである。投資会社や個人投資家は、投資先の会社が成功することに賭ける。もしも当たれば、投資金額の何百倍、何千倍になって返ってくる。米国の場合、数百億円、またはそれ以上の金持ちが、理系の人間のあいだにたくさん誕生している。たとえば、ヒユ〜レット・パッカード、マイクロソフト、アップル・コンピユータ、ヤフーの創業者たちは理系の技術者や研究者である。こうした理系の人間が起業家や投資家となり、新たな起業を促進する役割を担って産業を活性化させている。
9.理系の人間が金持ちになれる環境の米国では、先端技術を要して起業するベンチャーへの投資も活発になり、さらにそのベンチャーが成功すれば、新たな投資家となってベンチャーを支援する。こうした好循環が、米国経済の底力となっている。
10.日本の起業環境は、投資するのは、ほとんどが文系の人間で、理系出身の投資家がいる米国と比べたら、その割合は極端に低い。銀行の行員やベンチャーキャピタルの社員など、主に文系の人間が投資資金を握っている。彼らには科学的、技術的な知識もないし、これまで会社を興したこともない。もちろん、技術の価値もわからないし、有望なベンチャーを選ぶこともできない。実際に起業した経験もないから、失敗することも多い。だから、日本では無駄な投資が多く、ベンチャーがうまく育ちにくい。
11.日本の投資家やベンチャーキャピタルもバカではないから、内部に理系出身者を入れ、技術や特許の評価をしている。しかし、しょせん投資を決定するのは、彼らの上司だから同じことである。米国の場合、頭のいい人、自分の実力で成功した人が金持ちになるから、金の使い方をよく知っているし、より効果的な使い方ができる。だから、ベンチャーが育つ。
12.日本の場合、普通の人がたまたま成り金になってしまうことが多い。優秀な頭のいい人は、みんな大企業に入って「永遠のサラリーマン」になる。日本では頭のいい人が金持ちじゃないから、金の使い方も知らず、銀座あたりで豪遊して無駄に使ってしまう。「永遠のサラリーマン」のコースから落ちこぼれた人か、たまたま土地が売れた成り金か、あまり優秀じゃない人が金持ちになる国が日本である。
13.米国型のベンチャー起業環境がすべていいとは言わないが。理系の人間が決定権を持てる点で、日本よりも優れたシステムである。日本で理系の人間が技術や特許などを評価し、有望なベンチャーに投資できる環境を作るためには、理系の人間が金持ちになり、投資家になれるようにすることである。
14.東京高裁の和解勧告は、発明者である中村氏個人の権利を少なく見積もり、日亜化学という大企業を保護する内容になっていた。産業振興のためというのがその大きな理由である。日本の産業振興を否定するつもりはないが、企業を守ることだけが産業振興で、そのために発明者にガマンしろというのが、日本の産業を盛んにすることにならない。
15.仮に百歩譲って対価を支払ったせいで、ある企業がつぶれてしまっても、会社がつぶれるくらい莫大な金額を発明者がもらい、今度は、その発明者が新しい会社を起業し、つぶれた会社の社員を雇う。一つの会社がつぶれ、一つの会社が誕生する。別に会社が少なくなるわけでもなければ、社員が困るわけでもない。産業振興がはばまれるわけでもない。
16.今回の裁判の結果は、こうして理系の人間が金持ちになれる道筋を閉ざしてしまった。日本では理系の人間が金持ちになれない。金持ちという基準はあいまいだが、自ら起業でき、ほかのベンチャーに投資できるなら、少なくとも数十億円程度の資金が必要である。投資できるだけの資金を持った理系の人間の少ない日本では、投資家の中心がいつまでも知的財産の中身の技術についてわけのわからない文系の人間のままである。同時に、日本には米国のような個人投資家は皆無である。企業が大儲けしているのはいいのに、個人が同じことをしたら白い目で見られる。それが日本という国である。



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池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
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 青山賞、春興賞の受賞:2回
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