2014年10月31日

定常型社会を提唱し、すでに人口も利子率も国民総生産も定常化しつつある日本こそ、世界に先駆けて成長なき社会の設計に転じるべきだ。

「山崎正和著:地球を読む、定常型社会、読売新聞。、2014年10月27日」は面白い。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.最近、「定常型社会」を提唱する本を、3冊読んだ。広井良典氏の『定常型社会 新しい「豊かさ」の構想』、岸田一隆氏の『3つの循環と文明論の科学』、水野和夫氏の『資本主義の終焉と歴史の危機』である。
2.定常型社会とは、人口と経済の成長が限界に達した社会のことであり、生産の膨張をこれ以上は求めようとしない社会である。定常型社会論は高齢化と人口定常化の観点を加え、一切の成長を断念しようと訴える。
3.3人の著者の問題意識は微妙に違うが、いずれも長い歴史の中に21世紀を位置づけ、現代が過去に例のない崖っぷちに立っていることを指摘する。最も目立つのは資源枯渇と環境破壊だが、人口も最後の爆発を迎えながらその後の高齢化と衰退の予兆を見せている。経済は商品の生産による利潤獲得の道をふさがれ、IT空間の金融に活路を模索しているが、これは富の増大をもたらすことなく、貧富の差の拡大の要因になるばかりである。
4.研究者広井氏は科学史を専門とするが、仮に資源の埋蔵量が現在の推計の倍あるとしても、2040年頃、人口が約95億に達した時点で破局を迎えるという。少なくとも21世紀後半、人口と資源消費は均衡のとれた定常点に向かうほかないと考える。
5.岸田氏は物理学者だが、人類の飛躍はこれまで3回あったという。第1は新生人類が10万年前に言語を持って世界に広がったとき、第2は1万年前に農業と定住を知った文明が始めたとき、第3は18世紀に産業革命を興したときである。近代300年が有史以来の1万年に匹敵するという。無理を重ねた近代社会は環境破壊を極め、自然の再生産や浄化の能力を完全に圧倒してしまった。人為が自然を侵食する「環境占有面積」という指標で見ると、06年の人類は地球10.4個分を消費し、日本人並みの生活なら2.4個分、アメリカ人並みの生活なら5.3個分消費した計算になるという。のである。
6.水野氏は経済を專攻する角度から問題を提起する。着目されるのは利子率、利潤率の低下であり、それを引き起こす原因となる交易条件の悪化である。交易条件とは、輸出する商品と輸入する原材料の価格比のことだが、先進国にとって、商品価格に対する材料費の高騰は不可逆の傾向を見せている。 環境問題は別として、資源問題だけをとりあげても資本主義を支える基本条件が自然の限界にある。史上最初の利子率の低下は17世紀のジェノバで起こったという。主要商品のワイン生産が頭打ちになったからだが、行く先を失った資本はスペインの欧州支配へと流れた。やがてこれも飽和に達すると、資本は英国に移って産業革命と東洋貿易に活路を開いたものの、数百年の曲折を経て結局は米国に集中した。新興国の実物経済の段階では利潤率は上がるが、資本が生産を離れて金融に移ると利潤は下がり、国家そのものも衰退に向かう。今日の米国もIT空間という新しい経済圏で成功しているかに見えるが、国民全体の富は一向に増大していない。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国)のような新興国がこれに代わることは、資源枯渇がその前途を阻んでいる。
7.3人は、独自に定常型社会を提唱することになる。水野氏は先鋭的で、すでに人口も利子率も国民総生産も定常化しつつある日本こそ、世界に先駆けて成長なき社会の設計に転じるべきだという。目標への移行過程をどうするか、という点で問題はある。
8.岸田氏が最も現実的であって、科学技術の進歩が変化の痛みを緩和しうると予測する。「つなぎのエネルギー」として原子力の使用を続け、そのために芽生えつつある核廃棄物処理の技術を発展させる。藻類や細菌を使って新資源を創出し、塩害に強い稲を生んで海上で育てる。並行して科学コミユニケーションを強化し、徐々に国民の理解と価値観の変化を誘おうという提案は共感できる。
9.そのためには科学進歩の予測を精密化する科学が必要であり、科学報道を担う人材の飛躍的な育成にも努める。広井氏は、医療、教育、娯楽、文化といった、いわゆる第3次、4次産業の領域に目をつけ、資源や環境を浪費しないこの分野の成長に期待する。物質の消費から「時間の消費」へ転換しようという提案だが、この分野の経済効率についてさらに精密な予測が欠かせない。
10.経済学の世界で定常型社会を説く人が少数派である。「ローマ・クラブ」がかつて『成長の限界』を発表したとき、その警告がどんな怪訝の目で見られた。今では人類は高齢化、自然災害の激増、資源価格の高騰、資本の実体経済からの遊離を目撃している。定常型社会の提唱は、博学で理性的な知者によって学際的に行われている。ジャーナリズムは提唱をまじめに受けとめ、論議を深めるべきである。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
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〇日展入選有

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