2014年11月24日

日本人の無神論的伝統は、千年、千五百年の歴史がある。それは自然の中に神も宿っていれぽ仏も宿っているという考え方ともつながる。


「司馬遼太郎、山折哲雄著:日本人とは何かということ、日本放送出版協会、1997年」は面白い。「第一部:宗教と日本人、自然のなかの神と仏」の「日本人は無神論か」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.最近、宗教の意味とか役割について、50年、100年の単位ぐらいで、分析し、批評しようという傾向が強い。宗教というのは、千年、2千年単位で考えないと、宗教の深さ、恐ろしはわからない。
2.日本の宗教は、神学論争に明け暮れて、自己主張や些末な儀礼主義に陥ってきたので、無神論的な傾向を強めてきた。大震災での災害の現場でも、いじめの現場でも、宗教的な言葉はなかなか相手の心に届かない。だからといって、宗教の力が全く失われてしまったと即断してはいけない。
3.大震災のときに、親鸞聖人とか阿弥陀様とかを持ち出さずにやっている。大震災で大活躍をしたのは、ボランティアであり、精神科医であると言われている。お坊さんたちも、宗教家たちも、ひとりのボランティアとして、被災者の方がたに寄り添おうとしていた。日本全体の世論が、そのように見ていた。人情のあらわれ方が、どうも日本の世俗化した社会の風潮と絡まり合って、無神論の傾向と結びついた。
4.大震災という場面では宗教はあまり役に立たないという漠然とした感覚、宗教無関心の底流があった。神も仏もあるものか、という意味の無神論である。イスラムの世界、あるいはモーゼが出てきたころの古代ユダヤ教の世界、荒れ野で動物を飼っている遊牧の民たちの世界で成立した宗教というのは、人間を飼い馴らすシステムである。人間というのは飼い馴らされないと羊や、山羊や、牛や馬のように飼い馴らしのシステムとしての宗教である。
5.仏教そのものは無神論である、という意味での高度な無神論がある。この高度さというのは、なかなかついていけない。飼い馴らしのシステムとして、イスラム教、それ以前からあるユダヤ教、次いでキリスト教というのが成立してき。飼い馴らしのシステムとては、日本では仏教が6世紀半ば、奈良朝以前に入っていた。仏教は飼い馴らしのシステムというよりは、荘厳なものとして入ってきた。
6.欽明天皇(509〜571)が、初めて隣国の百済から金色の仏様が届いたときに、異国の神はきらきらしていると言ったが、これはいかにも芸術的な捉え方である。お薬みたいな効き目があるのではないかと思った。薬のような効き目と芸術的感覚とで仏教を受け容れた。飼い馴らしのシステムとして仏教を受容したことはない。
7.日本の宗教は中近東やヨーロッパとは生まれや育ち、素性が違う。明治以後には、カトリックよりもプロテスタントのほうが明治の知識人を捉えている。内村鑑三、あるいは同志社を興した新島裏でも、もとの武士が忠誠心のやり場に困って、イエス様や神の下僕になることによって、キリスト教を受容した。
8.日本人の無神論的伝統は、千年、千五百年の歴史がある。それは自然の中に神も宿っていれぽ仏も宿っているという考え方ともつながる。親鸞の浄土真宗のような考え方は、超越者としての阿弥陀如来ということを強調し、一神教的な系統の宗教だった。しかし、その絶対性というのは、ユダヤ教やキリスト教の場合のように強力ではない。
9.親鸞が言う阿弥陀如来というのは基本的には「空」である。宇宙は空である。宇宙は「ゼロ」であるという。この「空」の考え方は、絶対ではなくて相対の総和である。「阿弥陀経」も、光に満ちて輝きわたることを礼讃しているお経である。
10.旧約聖書に出てくる、ヤハウェは、一面で、悪魔ではないかと思うぐらいに、モーゼに対して理不尽なことも言う。その理不尽なことを言われても、モーゼは従う。古代ユダヤ教やキリスト教的世界では、そういう「絶対」なものという思考のが、西洋の思想の芯になっていく。
11.ギリシャ哲学にも「絶対」という観念があった。「絶対」というのは、架空のものだから、架空の一点に置くと、文章も書きやすいし、小説も書きやすいし、大統領演説もしやすい。仏教という相対的世界、その総和は「空」であるという世界に住んでいると、なかなかスピーチもできない。小説も、なかなかうまく書けない。




yuji5327 at 06:30 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
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