2015年04月30日
2010年に共産党公安部から軟禁された過去を持つ世界的な芸術家・艾未未(がいみみ)氏は独紙の取材に答え、「中国の夢なんて簡単なこと。国民が投票権を得ることだ」と回答した。
「日本人なら知っておきたい「反日中国」100のウソ、別冊宝島2193号、2014年」の「7割の中国人が拒否したスローガン、アメリカンドリームを超越する中国の夢」がは面白い。
概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.2013年の全人代で国家主席へ就任した習近平氏は、演説の中で「中国の夢」という言葉を9回も繰り返し、「国民の幸福の実現」を強調した。習主席は「中国の夢は人民の夢、人民によって実現されるもので、人民の福祉でならなければならない」「国民が平等に参加でき、平等に発展できる権利を保障する」と語りながら、「夢の実現には国民の団結が必要」と人民に訴えた。
2.共産党の機関紙「人民日報」は、「中国の夢とアメリカンドリームには共通点があり、またそれぞれに魅力がある」と題する社説を掲載した。「アメリカンドリームは個人が頑張れば自分の夢を実現できるが、多くが貧富の差に虚しさを感じている」としたうえで、「中国の夢は出発点が人民の幸せ。中国の夢は人民の夢。アメリカンドリームを超越している」と述べ、習主席の演説を補足した。
中央政府がここまで「人民の幸福」をアピールする背景には、拡大する格差社会や党幹部の汚職、領土問題に伴う周辺諸国との摩擦、環境問題、悪化する経済など、山積する諸問題に対し、国民の不満がピークに達している現状への強い危機感があるとも言われている。
3.英タイムズ紙は「習近平主席の声に世論調査では7割の中国人がNOの回答。対中感情は世界規模で悪化し、BBCの調査では世界の39%が嫌中意識」とするコラムを掲載した。
「中華の夢と言いながら、共産党幹部は資産を海外へ持ち出し、予弟を米国へ留学させる」として矛盾点を指摘した。
4.2010年に共産党公安部から軟禁された過去を持つ世界的な芸術家・艾未未(がいみみ)氏は独紙の取材に答え、「中国の夢なんて簡単なこと。国民が投票権を得ることだ」と回答した。米国に亡命中の人権活動家・魏京生氏も、「中国の夢とは言論の自由、投票の自由を保障すること。一部の特権階級だけが富む現状は異様」と中国の政治体制を痛烈に批判し、習主席のスローガンを言外に否定した。
5.中国国内でも冷めた声が多く、大手検索サイト「百度」の掲示板には「党幹部の夢の間違いか」「抽象的で意味不明」といった否定的な書き込みが多く、党幹部からは「情報化社会では党の宣伝も国民には簡単に刺さらない」(英タイムズ)との苦悩の声も聞かれる。