2015年11月29日
業績が好調だからといって、政府が求めるように「設備投資」「給与」にお金を使うのは、現実的な経営の観点からあり得ない。
11月27日付けの 大前研一さんの「 ニュースの視点 」(発行部数 178,104部)は「国内経済・アベノミクス・国内企業業績・内部留保課税の話題について」と題する記事である。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。
1.内閣府が16日発表した2015年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減になった。企業の設備投資は1.3%減と、2四半期連続の減少。輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いている。
2.安倍首相の演説では、「あれも伸びて、これも伸びて」と順調そうに聞こえるが、実質GDP成長率の推移を見れば、明らかに間違っている。安倍首相が就任してからのGDPの内訳を見ると、公共投資を一部伸ばしたり、直近では輸出が伸びたりしているが、もっとも重要な民間消費支出を伸ばせていない。
3.この厳しい事実があるにも関わらず、未だ黒田バズーカーに期待している。米ウォールストリート・ジャーナル紙は17日、安倍政権の経済政策について「アベノミクスが息切れしている」と題した社説を掲載した。アベノミクスの財政出動で「日本の借金は国内総生産(GDP)の250%に近づく一方、銀行の貸し出しが増えず、デフレが続いている」と指摘している。私が数年前から一貫して指摘している。
4.事実の数字を見れば日本経済は休止している。当初の予定では、2年後に物価上昇率と言っていたが、未だ達成できていない。もっと謙虚に、経済が伸びない原因を分析するべきである。経済学者もいい加減な姿勢で安倍首相にアドバイスするのではなく、きちんとした分析をして国民に説明しないと恥ずかしい。
5.原因の分析もせず、ただ同じ対策を繰り返すというのは理解できない。息切れするのも当然である。20世紀の古い経済学を振りかざして「もう1発、黒田バズーカー」などと言っている場合ではない。今の日本経済が停滞している理由は、低欲望社会だからである。
この社会構造で、GDPを伸ばしていくのは容易ではない。日本のように低欲望社会が進むと、20世紀の経済学を使っても、お金が経済に吸収されない。「低欲望社会」の原因を究明し、野心と欲望を国民が持つようにすることが、今最も求められている対策である。
6.政府は、いまだに「低欲望社会」に陥っている日本経済停滞の根本原因を理解しておらず、約320兆円もある企業内部留保の資金を「投資に回せ、給与に回せ」と主張しているが的外れである。
7.企業業績は好調である。日経新聞は、15年4〜9月期決算を終えた3月期企業1530社(金融など除く)の今期見通しを集計した。経常利益率は6.6%と、金融危機前の07年3月期の6.5%を上回り、経常利益の合計額も今通期で34兆887億円と、過去最高だった前期から6.9%増える見通しである。
8.業績が好調だからといって、政府が求めるように「設備投資」「給与」にお金を使うのは、現実的な経営の観点からあり得ない。海外での設備投資なら需要があるが、日本国内には「実際にやりたい設備投資」はない。
9.政府は全くもって経営・経済を理解できていない。政府は、法人税減税を理由に「設備投資」「給与の引き上げ」を経団連に要求しているようだが、「法人税を引き下げて残るの内部留保と配当」ということすら分かっていない証拠であ。
10.企業の内部留保に課税する動きもあると言われているが、さすがに麻生財務相も菅官房長官も否定的な見解を示している。麻生財務相は「二重課税になり得るのはいわずもがなの話だ。内部留保課税の話を検討させているという事実はない」と述べた。菅官房長官も内部留保課税について「そこまでしなければ経済界のマインドが変わらないのか、政策的な議論を深めることが先決だ」と、慎重な姿勢を示した。
11.二人とも内部留保課税に否定的な考えを示す一方で、現在の企業姿勢には疑問符をつけ、企業が内部留保せずに「設備投資」「給与」にお金を回すようにすべきとの見解を示している。結局、麻生財務相も菅官房長官も、大切なことを理解できていない。政府が経営のことをわかりもしないで、思いつきレベルの提言をするのはやめてほしい。アドバイザーを求めるなら、政府は経済学者ではなく、実際に経営経験を積んだ人に依頼するべきである。
1.内閣府が16日発表した2015年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減になった。企業の設備投資は1.3%減と、2四半期連続の減少。輸出や個人消費も力強さを欠き、景気の足踏みが長引いている。
2.安倍首相の演説では、「あれも伸びて、これも伸びて」と順調そうに聞こえるが、実質GDP成長率の推移を見れば、明らかに間違っている。安倍首相が就任してからのGDPの内訳を見ると、公共投資を一部伸ばしたり、直近では輸出が伸びたりしているが、もっとも重要な民間消費支出を伸ばせていない。
3.この厳しい事実があるにも関わらず、未だ黒田バズーカーに期待している。米ウォールストリート・ジャーナル紙は17日、安倍政権の経済政策について「アベノミクスが息切れしている」と題した社説を掲載した。アベノミクスの財政出動で「日本の借金は国内総生産(GDP)の250%に近づく一方、銀行の貸し出しが増えず、デフレが続いている」と指摘している。私が数年前から一貫して指摘している。
4.事実の数字を見れば日本経済は休止している。当初の予定では、2年後に物価上昇率と言っていたが、未だ達成できていない。もっと謙虚に、経済が伸びない原因を分析するべきである。経済学者もいい加減な姿勢で安倍首相にアドバイスするのではなく、きちんとした分析をして国民に説明しないと恥ずかしい。
5.原因の分析もせず、ただ同じ対策を繰り返すというのは理解できない。息切れするのも当然である。20世紀の古い経済学を振りかざして「もう1発、黒田バズーカー」などと言っている場合ではない。今の日本経済が停滞している理由は、低欲望社会だからである。
この社会構造で、GDPを伸ばしていくのは容易ではない。日本のように低欲望社会が進むと、20世紀の経済学を使っても、お金が経済に吸収されない。「低欲望社会」の原因を究明し、野心と欲望を国民が持つようにすることが、今最も求められている対策である。
6.政府は、いまだに「低欲望社会」に陥っている日本経済停滞の根本原因を理解しておらず、約320兆円もある企業内部留保の資金を「投資に回せ、給与に回せ」と主張しているが的外れである。
7.企業業績は好調である。日経新聞は、15年4〜9月期決算を終えた3月期企業1530社(金融など除く)の今期見通しを集計した。経常利益率は6.6%と、金融危機前の07年3月期の6.5%を上回り、経常利益の合計額も今通期で34兆887億円と、過去最高だった前期から6.9%増える見通しである。
8.業績が好調だからといって、政府が求めるように「設備投資」「給与」にお金を使うのは、現実的な経営の観点からあり得ない。海外での設備投資なら需要があるが、日本国内には「実際にやりたい設備投資」はない。
9.政府は全くもって経営・経済を理解できていない。政府は、法人税減税を理由に「設備投資」「給与の引き上げ」を経団連に要求しているようだが、「法人税を引き下げて残るの内部留保と配当」ということすら分かっていない証拠であ。
10.企業の内部留保に課税する動きもあると言われているが、さすがに麻生財務相も菅官房長官も否定的な見解を示している。麻生財務相は「二重課税になり得るのはいわずもがなの話だ。内部留保課税の話を検討させているという事実はない」と述べた。菅官房長官も内部留保課税について「そこまでしなければ経済界のマインドが変わらないのか、政策的な議論を深めることが先決だ」と、慎重な姿勢を示した。
11.二人とも内部留保課税に否定的な考えを示す一方で、現在の企業姿勢には疑問符をつけ、企業が内部留保せずに「設備投資」「給与」にお金を回すようにすべきとの見解を示している。結局、麻生財務相も菅官房長官も、大切なことを理解できていない。政府が経営のことをわかりもしないで、思いつきレベルの提言をするのはやめてほしい。アドバイザーを求めるなら、政府は経済学者ではなく、実際に経営経験を積んだ人に依頼するべきである。