2015年12月28日

政治家と官僚の間を、賄賂が動いている。中国に蔓延する賄賂を一掃することは、習近平の喫緊の課題である。彼は長老たちと対立しても綱紀粛正に努めている。

「丹羽宇一郎著:グローバリゼーションと日本の将来、U7、vol.60,March 2015」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.日本もまた、水・食糧・エネルギーを自給自足できない以上、グローバリゼーションを推進し、世界の国々と交流し、貿易の恩恵を享受するしか道はない。グローバリゼーションの本当の意味は「平和と友好」であり、それらを最も維持しなければいけないのは、日本と中国のはずである。
2.世界とアジアと日中2カ国を、人口とGDPの規模で比較すると以下の通りである。世界186力国(70億人、74兆ドル)、アジア24力国(38億人、21兆ドル)、日中2カ国(15億人、GDP14兆ドル)だから、アジアは世界の人口の54%、GDPの28%を占める。アジアの人口の39%、GDPの67%を日中2カ国だけで占めており、さらにアジアでGDPが1兆ドルを超えるのは、中国、日本、インド、韓国だけである。この4力国でアジアのGDPの約82%を占めている
3.現在、日本の経済界は「中国と関係悪化したなら、他のアジアの国に行けばいい」と考えているが、GDPでアジア最大の中国を無視できない。モンゴル、ラオス、ミャンマーなどのGDPを見ると、個人経営の食物店を開業するなら別だが、巨大資本を持つ日本企業がこれら貧しい
国々で利益を上げるのは不可能である。日本のアジア外交は中国、インド、韓国抜きに考えられまない。特に中国は日本の将来を考える上で重要である。
4.習近平体制を支える第18期中央政治局委員(25名)を見ると、中国では1期5年なので、2017年まではこの陣容でいき、2017年に第二次習近平体制(〜2022年)に改選される予定である。誰が改選されるかは、年齢による。現在の年齢に5歳を足して、67歳以上になる人は全員、2017年に定年退職する。ほとんどの人が67歳を超える。特に「チャイナセブン」と呼ばれる常務中央委員は、習近平、李克強以外は全員退職だから、若手がその補充として登用される。最有力候補が、張春賢(新彊自治区書記)、孫政才(重慶市書記。元・吉林省書記)、胡春華(広東省書記。元・
内蒙古書記)、江洋(副総理。元・広東省書記)、李源潮(国家副主席。元・南京市書記、江蘇省書記)である。特に、若手の孫政才(49歳)と胡春華(49歳)は習近平の後継者としても大変有力である。ただし、現在の人事を決定したのは、江沢民と胡錦濤の2人だから、習近平は2017年の改選の時、初めて自分の腹心を中央政治局委員に招き入れられる。その有力候補は、現在、中国の各市や省で幹部に就任している若手の中にいる。彼らの何人かは著者の友人で、僅か1〜2年のうちに異例の昇進を遂げた。5年後、彼らの中から次のチャイナセブンが抜擢される。
5.著者は、最も頻繁に中国の地方を視察し、最も多くの各省トップと面会してきた。過去30年以上にわたって人脈を形成してきたからできた。一番心配しているのは、新彊白治区書記の張春賢である。大変優秀で、将来のチャイナセブンの一翼を担う実力を持つ人だが、ウイグル白治区で起きる民族問題の責任を負わされるのが心配である。
6.中国では、政府ではなく共産党が全てを決定する。特に重要項目は、10の党機関で決定される。2013年秋〜2014年春、習近平はこのうち7つの機関の長に就任し、他の機関でも腹心の者を配したり政敵を排除したりして、権力を完全掌握した。例えば、中央紀律検査委員会(中紀委)の書記には、習が深く信頼する現チャイナセブンの一人、王岐山が就任した。中紀委は党紀の整頓や党員の腐敗を監視する機関である。著者が北京市の経済顧問だった頃、王氏は北京市長だったので、王氏の実力も人柄もよく知っている。王氏は習の信頼に十分に応えるだろう。
7.中紀委と共同で政府の監察部門を指揮するのが、中央政法委員会である。この委員会は人民武装警察の指揮を執り、司法部長(法務大臣)や最高人民法院院長(最高裁長官)を束ねる公安・検察・司法機関で、その権力は絶大である。ただし、中国には司法権の独立がなく、裁判が中国共産党の指導下に行われている。人民法院(裁判所)は審議するが裁かず、裁く者(中国共産党の各地方の政法委員会書記)は審議しない。この裁きの総元締め(中央政法委員会書記)に就任したのが孟建柱である。孟の前任者は周永康だった。
8.周は胡錦濤体制を支えた中央政治局常務委員の一人で、中国の石油閥のトップだったが、汚職と不正蓄財(1兆5000億円)の容疑で身柄を拘束され、尋問を受けている。習近平が政敵の周永康を粛清したと理解されている。中国人民解放軍の実質的トップだった徐才厚も、2014年6月末、習近平により党籍を剥奪され、検察で訴追された。ただし同年10月の四中全会(第4回中国共産党中央委員会全体会議)で、彼等の処分は延期になった。
9.日本のメディアは、「徐才厚の親分である江沢民が習近平を牽制した」と分析したが、著者は否定した。習近平はこの年の北載河会議の後、後顧の憂いなく外遊に出かけた。少しでも国内の権力基盤に不安があるなら、外遊は見送ったはずである。2月のAPEC開催後も外遊した。習近平は完全に国内を掌握していると見るべきである。今更、江沢民に習近平と争う力はない。10.徐才厚も周永康も、江沢民派の重鎮として同派の資金の流れを把握していた。ただ、1.億2000万人を代表する日本の政治家でも、政治資金の流れは不透明である。中国は日本の10倍以上の国民を擁している。政治家と官僚の間を、日本とは比較にならない額の賄賂が動いている。中国に蔓延する賄賂を一掃することは、習近平の喫緊の課題である。彼は誰よりも徹底して、時に長老たちと対立しても綱紀粛正に努めている。そうしないと中国共産党に対する国民の信頼が失われ、一党独裁が不可能になるという危機感がある。習近平はそのために党の全権掌握を急いだ。


yuji5327 at 06:50 
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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