2015年12月31日

EUは対ロシア制裁強化を検討中だが、少数の当局者に対する渡航制限や資金凍結くらいである。欧州はさまざまな難題を抱えているが、各国の足並みはそろっていない。


「ポール・エイムズ著:欧州の足並みを乱す4力国、Newsweek,2015-0310」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.強さと結束を示すこと、それが今の欧州に不可欠である。テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)は、シリアとイラクから地中海の南岸に沿って勢力を拡大し、南欧も荒らしてみせると息巻いている。
2.先月「ローマ征服」を宣言したリビアの海岸から、イタリアのシチリア島までは距離にして800km程度である。東欧ではロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナ危機に乗じてその領土分割を狙っている。せっかくフランスとドイツ両政府が停戦合意をまとめたのに、親ロシア派勢力がウクライナ東部の要衝デバルツェボを制圧した。次はアゾフ海に面した港湾都市マリウポリが危ない。
3.EUは対ロシア制裁強化を検討中だが、最近の制裁はごく少数の当局者に対する渡航制限や資金凍結くらいで終わっている。なかなか首尾一貫した対応ができそうにない。欧州はさまざまな難題を抱えているというのに、各国の足並みは必ずしもそろっていない。
4.EUの結束が弱まっている背景には、加盟国が国内に抱える諸問題がある。特に脱EUの傾向が強い4力国を分析すると以下の通りである。
・ギリシャ:ユーロ圏諸国との合意が成立し、金融支援が4カ月延長された。それでもユーロ圏から離脱する危険性はまだある。ドイツをはじめとするユーロ圏諸国は、ギリシャに融資を行う条件として、財政の規律と改革を要請している。だがそれは急進左派のツィプラス政権が掲げた公約と相反する。そんな緊縮策こそがギリシャ経済を痛めつけてきたというのが彼の主張である。ギリシャが離脱すれば、その他の不安定なユーロ国、ポルトガルやスペイン、アイルランドが後に続く心配も絶えない。ギリシャだけが離脱したとしても、債務3200億ユーロが不履行となり、各国で金融制度が崩壊するかもしれない。地政学的な懸念もある。ツイプラス政権はあからさまにロシア政府にすり寄って、EUに見放されたときに備えているようだ。ギリシャはユーロ圏とEUから離脱したら、NATO(北大西洋条約機構)からも抜けるのか。NATOは域内南東部の戦略的要衝を失うことになる。
・ハンガリー
ハンガリーの現政権もロシアと友好関係にある。先月プーチンは首都ブダペストを訪れて大歓迎された。EU加盟28力国はロシアからの燃料輸入への依存を減らそうとしているが、長期に安価で供給するとのプーチンからのおいしい話をオルバン・ビクトル首相は断れるわけもない。「ロシアからの経済協力なしに欧州経済の競争力が保てるなどと考えるならそれは幻想だ」と、オルバンは述べた。オルバン政権は国内の司法、報道、市民社会に対する激しい締め付けで、EU内から批判を受けている。オルバンは昨年、「新しい非リベラル国家」を築くという目標を語り、その模範としてプーチンの名を挙げた。プーチンは、ロシア寄りのEU加盟国であるギリシャやキプロスとの首脳会談も近々実現しようとしている。
・イギリス
欧州におけるイギリスの役割は、5月に予定されている総選挙の重大な争点になっている。選挙戦序盤を有利に進めているのは、EU脱退を訴えるイギリス独立党(UKIP)だ(ナイジェル・ファラージュ党首はプーチンを崇拝している)。最近の世論調査によると、UKIPの支持率は約15%で第3位。10年に行われた前回総選挙での得票率の約5倍に当たる。UKIPが与党に躍り出ることはまずないだろうが、選挙戦に及ぼす影響は大きい。支持者離れを恐れたデービッド・キャメロン首相は、与党が勝利したらEU離脱の是非を問う国民投票を行う方針を表明している。EU本部からは、欧州におけるイギリスの影響力低下を嘆く声が聞こえる。イギリスは軍事力も備えた大国でありながら、外交でもはや十分な役割を果たしていないとの不満だ。キャメロンはウクライナ危機に対し、一歩引いた立場を取り続けている。代わりにEU内で率先して動いているのは、ドイツとフランスの首脳である。NATOでもイギリスの影は薄く、アメリカとの盟友関係も揺らいでいる。13年には米主導のシリア空爆作戦への参加を、英議会が否決した。イギリスは今でこそ、ISISの拠点に対する空爆に手を貸しているが、その貢献度は「非常に控えめ」だと英下院国防特別委員会は指摘している。
・フランス
ギリシャ救済にばかり目を奪われがちだが、ユーロ圏全体で景気は停滞しており、デフレスパイラルから抜け出せない不安が広がっている。欧州中央銀行(ECB)は1月に量的緩和策を発表したが、各国政府が競争力強化につながる改革を行わない限り問題解決は難しいとの見方が優勢だ。鍵を握るのはフランスとイタリア。イタリア経済は過去3年で4・7%縮小、フランスは横ばいだ。両政府とも改革を進めようとしているが、特にフランスでは抵抗が激しい。フランソワ・オランド大統領は、商店の日曜営業や長距離バスの規制改革案を打ち出したが、与党内の反対勢力に邪魔された。結局、採決を経ずに採択する「強制措置」を発動。しかし支持率アップにはつながらず、オランドの支持率は24%に下落した。人気のないオランドとは対照的に飛ぶ鳥を落とす勢いなのが、極右政党の「国民戦線」だ。ロシアから資金援助を受ける親プーチンのこの政党が、国民の不満を背景に支持を集めている。EU諸国の結束は揺らぎ、各国はロシア産エネルギー依存からの脱却や、貿易に悪影響が出るような経済制裁といった政策に国民の支持を取り付けることが難しくなっている。それもすべては、EUの景気低迷のせいである。


yuji5327 at 06:39 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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