2016年01月12日

種子ビジネスは、モンサントとデュポンの米系2社とシンジェンタ(スイス系)に絞られ、売上高の約1割をGM作物などの研究開発に充て、市場拡大に備えている。

「米国食糧覇塵の強欲、種子ビジネスで世界の農場を支配、選択、2015.3」はためになる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.2015年1月末の北京。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、遺伝子組み換え(GM)作物の世界の作付面積が過去最高を更新した、と発表した。習近平副主席(当時)は、2012年2月に訪米し、首都ワシントンでオバマ大統領と会談した後、ヴィルサック農務長官とともに穀倉地帯アイオワ州で開かれた「米中農業シンポジウム」に出席した。
2.ここで習副主席は「民は食を以て天となすという。農業を発展させ、農家を豊かにすることが最重要だ。中国には主食用穀物と食用油は十分にあり、食糧安保に対する懸念はないが、それでも米国産の大豆や飼料が必要だ」と述べた。つまり、主食となる小麦やコメの自給は堅持するが、経済成長に伴う肉や酪農製品への需要に対応するため、大豆など家畜同け飼料を米国から調達すると「公約」した。実際に、中国は米国産の大豆を大量輸入し、習が国家主席に就任した後の2013年、中国政府はコメや小麦など主食用穀物の「絶対的自給体制の堅持」を打ち出した。具体策として、穀物の政府買い入れ価格を引き上げ、農機具や化学肥料などの生産財の費用を補助して国内生産を強化し、コンバインの導入など機械化と経営規模の拡大を進めている。安い労働力で人海戦術によって群がるように収穫する中国農村のイメージは、急速に過去のものになりつつある。
3.米中両政府は、閣僚級、次官級など重層的な戦略的農業革新対話の枠組みを確立し、農業分野の技術交流を重ねてきた。昨年12月16日からシカゴで開かれた閣僚級の米中合同商業貿易委員会も、その延長線上にある。日本ではほとんど報道されなかったが、GMトウモロコシの輸入解禁など農作物や医薬品に関する中国市場の開放で幅広い合意があったとされている。米側は公式には「多くの分野で重要な合意があった」(フロマン米通商代表)としか説明していないが、実際に中国政府はその後、スイス・シンジェンタのトウモロコシ、米デュポンの大豆など3社のGM種子の輸入を承認した。米国と中国は、それぞれ自国の国内生産を強化して供給力を高めるとともに、中国は米国産飼料用穀物を輸入し、米国は中国にGM種子を含む増産技術を供与するという関係が見て取れる。重要なことは、2つの覇権国家が食糧安保の面で共同歩調を取り互恵関係を築いていることだ。
4.古今東西、覇権国家は食糧供給の責任を負う。食糧不足は国際秩序を混乱させる最大の要因だからである。第二次世界大戦後、米国は有り余る穀物を使って「世界の警察官」としての役割を果たした。1970年代には、凶作が続いて食糧不足に陥ったソ連に穀物を支援するほどだった。
5、冷戦の相手国でさえ、追い詰めるよりも米国に依存させ、国際秩序を安定させた方が有利だと打算した。しかし欧州など米国以外の各国で農業生産が回復するにつれて、穀物は過剰となり米国や欧州は財政負担に耐えられなくなった。93年に多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)が決着して欧米は輸出補助金を撤廃、穀物余剰時代に終止符を打つ。同じ時期に遺伝子組み換え技術が実用化されたのは偶然の一致ではない。覇権国家の米国は、食糧供給責任を果たす手段として、巨額の財政負担を伴う穀物の現物供給に見切りを付け、より洗練された「種子」を通じた間接的な制御に転換したと見るべきだろう。遺伝子組み換えは単なる種子産業の技術では無く、国策と結び付いた覇権戦略の一つなのである。しかも種子ビジネスのビッグプレーヤーは、既にモンサントとデュポンの米系2社とシンジェンタ(スイス系)に絞り込まれてきた。これら3社はいずれも、売上高の約1割をGM作物などの研究開発に充て、東南アジア、インド、南米などでの市場拡大に備えている。
6.GM種子は、知的財産の固まりであり、巨額の研究開発費や高い利益率は知的財産権が確実に保護されることが前提となる。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で知的財産分野が難航しているのは、この文脈で理解する必要がある。
7.ISAAAが北京で記者発表を行ったのは、GM作物の門戸を中国が本格的に開き、2つの覇権国家がこの分野で共同歩調にあることを強調するためのデモンストレーションだったと言える。
8.ISAAAは、九〇年に設立された「非営利慈善団体」だが、実態は官民の資金援助や情報提供を受けた遺伝子組み換え技術の普及支援組織である。創設者のクライブ・ジェームズ農学博士は、「緑の革命」でノーベル平和賞を受けたノーマン・ボーローグ博士の右腕として活動し、メキシコの国際トウモロコシ・小麦改良センター(CIMMYT)の事務局次長を務めるなど、GM作物の「宣教師」ともいうべき存在である。
9.ジェームズ博士は現在でもISAAAの名誉会長であり、北京での記者会見にも臨み、習近平など要人とも接触した模様である。ISAAAによると、世界の作付面積は、14年に前年から6百万ヘクタール以上増加し、1億8千百50万ヘクタールと過去最高を更新した。GM作物の栽培国は、新たにハングラデシュが加わり計28力国となった。ただし、GM作物にはさまざまな種類があり、すべてが食用というわけではない。遣伝子の一部を切り取り別の生物の遺伝子に組み入れる技術を応用して品種改良した作物は、GMO(遺伝子操作有機体)などと呼ばれ、96年に米国で初めて商業栽培が始まった。


yuji5327 at 06:39 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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