2016年01月27日
アメリカ海軍はアジア・太平洋よりも中南米に焦点を当てている。中南米の治安の維持や安定化のため、高速小型艦艇を使って実施しようとしている。
「日高義樹著:アメリカの大変化を知らない日本人、日米関係は新しい時代に入る、PHP研究所、2014年3月」の第「4章:先端技術と核の新しい対決が始まる」「通常兵器によるアメリカの戦略は崩壊した」「レーザーでミサイルや砲弾を撃ち落とす」「アメリカ軍は首都防衛に全力を挙げる」がは面白い。
1.これまでと違ってアメリカ空軍が、首都防衛の形でアメリカ本土での訓練に力を入れている。これまでアメリカ空軍は「エンデュアリング・フリーダム作戦」と呼ばれる訓練をはじめ、常時大がかりな訓練を中東で続けてきたが、ノーブル・イーグル作戦はアメリカ空軍がアメリカ本土に関心を集中させていることをよく示している。
2.アメリカ空軍が本土防衛に力を入れ始めたことは、「ビジラント・イーグル作戦」と呼ばれる訓練にもよく表れている。ビジラント・イーグル作戦は、アラスカに侵入する国籍不明機に対抗するためのもので、アメリカ空軍はロシア空軍と協力してアメリカの北の守りを強化している。
3.2013年8月、アメリカ空軍はロシア空軍やカナダ空軍と協力して、大がかりな訓練を展開した。その中心になったのは、北米コロラド州にある北米防衛軍とロシアのシベリアにある極東防空司令部であった。この訓練は、ロシア国内でハイジャックされ、アラスカに侵入しようとしている航空機に対抗するというもので、ロシアからはSU27フランカー、カナダからCF18ホーネットが発進し、ハイジャックされたと想定される航空機の近くを飛んで、強制着陸させた。
4.これまで世界の海を自在に航行してきたアメリカ海軍も、アメリカ本土回帰の動きを強めている。アメリカ海軍のグリナート総司令官は、このほどフロリダ州ドラールにあるアメリカ南方軍司令部を視察した。アメリカ海軍総司令官がこの南方軍司令部と呼ばれる、あまり世に知られていない海軍司令部を訪問したのは、アメリカ海軍の基本戦略が世界全体からアメリカ本土に防衛の重点を移したことを示している。グリナート総司令官は「今後フロリダのメイポートなどの海軍基地には、新しい上陸作戦用の空母をはじめ、高速輸送艦や船舶が配備されることになる」
と言った。
5.高速輸送艦や攻撃艇や上陸用舟艇は、アメリカ海軍がいま力を入れている戦闘に使われるもので、戦闘攻撃用の上陸用空母は最新鋭艦「アメリカ」をはじめ10隻が建造されることになっている。戦闘用の空母や高速輸送艦、高速攻撃艦やパトロールボートは、中南米の治安維持や犯罪取り締まりに当たる。今後中南米で、麻薬の取引や犯罪者の行動を監視する任務が急速に増える。
6.アメリカ海軍はアジア・太平洋よりも中南米に焦点を当てている。アメリカ海軍当局は、フロリダを中心に中南米の治安の維持や安定化のためにこれまで駆逐艦やヘリコプターによって行ってきた活動を、高速小型艦艇を使って実施しようとしている。アメリカ海軍といえば、世界を股にかけ、どこへでも出撃し、シーレーンを確保することによってアメリカの世界戦略を展開してきた。ところがいまや急速に国内志向に変わって、中南米を中心とした南方軍の増強に全力を挙げている。