2016年06月28日

日本の財務省は官邸に「ヨーロッパもAIIBには乗ってこない」と報告していた。ヨーロッパ諸国は、オバマ政権を軽視している。


「池上彰・佐藤優対談:日本人よ、世界史で武装せよ、文藝春秋SPECIAL、2015、夏」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.中国が提案したAIIB(アジアインフラ投資銀行)にイギリスをはじめ欧州各国が参加を表明して、アメリカと日本だけ孤立した。アジア各国に960兆円もの投資需要があるのは間違いない。そこにきちんと融資するだけの仕組みを日本は作れなかった。その時点で敗北で、アジア開発銀行があっても、日本の財務省の天下り先としか考えてないから、新しい需要に対応するだけの改革もできなかった。
2.中国の狙いは明快で、金を出すのだから中国スタンダードに従えという。本来、出資国が集まって、経営陣を監督する理事会を作るのだが、それを北京に常駐させないで、中国のやりたい放題にやる。
3.イギリスをはじめとする欧州各国は、とにかく金が儲かればいいと話に乗った。ヨーロッパの国々はどうせ主役でもないし、一口乗っておこう、という挨拶に過ぎない。日本が入るとなれば出資金も積まなければならないし、仕組みが本格的に動き出すことになる。決定的に違うのは、イギリスをはじめ欧州諸国は、中国がどれほど大きくなっても、安全保障上の問題がない。また、彼らヨーロッパ勢からすると、アジア各国のインフラ投資について詳しい情報が取りたいという思惑もある。
4.貸し手になる中国側の事情もつかめる。これはAIIBの内側にいないと取れない情報であり、入っておく価値はある。アメリカや日本が、そうしたヨーロッパの動きを全然読めてなかった。日本の財務省は官邸に「ヨーロッパもAIIBには乗ってこない」と報告していた。ヨーロッパ諸国は、いま露骨にオバマ政権を軽視している。
5.アメリカはキューバとの国交正常化を大々的に打ち出して、パナマ市で首脳会談も行なったが、実質的な成果はほとんどない。国家間が正式な外交関係を断絶しても、利益代表国を指定し、そこを通じてやり取りを続ける。たとえば第二次大戦中、日本はスペインを、アメリカはスイスを利益代表国としていた。
6.アメリカはすでに1977年から、キューバのスイス大使館に付属する形で、利益代表部を開設している。そこには国務省やCIAの職員が勤務していて、何の支障もなく外交活動を行ってきた。気になるのは、日米関係である。日米首脳会談では安倍首相の米議会での演説ばかりが注目されたが、本当に重要だったのは、日米2プラス2(外務・防衛担当閣僚会議)で、ここで防衛協力のための指針(ガイドライン)が改定されたが、その内容は、事実上、日米安保条約の枠を越えるものだった。これは明らかに異常な事態である。
7.日米安保条約は、適用の範囲が前文と第六条によって「極東」に限定されている。今回のガイドラインでは、〈アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなる〉ことを目的とした。アジア太平洋を「越えた地域」だから、事実上、地域の縛りは取り払われた。ウクライナでも中東でもアフリカでも全部ありとなる。
8.この地域をめぐる問題は、1996年に発表された「日米安全保障共同宣言」から続いている。安保条約の前文では〈両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し〉と記し、第六条でも〈日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため〉となっているのに対し、この共同宣言では、日米の安全保障関係が〈アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した〉と記されている。「アメリカ軍はアジア太平洋の安全に責任を持つ」ということである。
9.安保条約のままのようだけど、「極東」を「アジア太平洋」に変えることで、あの時点で枠を越えていた。1998年の周辺事態法の審議で、それがまた問題となった。当時、外務省の北米局審議官だった田中均氏が地球の裏側まで自衛隊が行けるようにするんだと言っていたら、竹内行夫条約局長が出てきて、安保条約と整合しないと反対した。そこで高野紀元北米局長が国会で「周辺事態が生じたときに行うそのような活動はすべて極東ないし今おっしゃいました極東の周辺に当たるかどうかということでございますけれども、その点は、それを概念的に超えることはないということは申し上げられると思います」と答弁した。
10.これに激怒したのが、当時の首相、橋本龍太郎さんで、これまで「周辺事態は地理的概念ではない」と説明してきたのに、説明が食い違ってしまう。そして、「あくまで地域を想定したものではない。日本の平和と安全に対し、重要な影響を与えるかどうかという性質に着目した概念だ」と言ってごまかしたが、その結果、高野さんは外務省研修所長に配転された。
11.これまで周辺事態として曖昧にしておいたのを、今回のガイドラインははっきり枠を越えてしまった。外務官僚は悲願を遂げたが、やり過ぎで、本来、安保条約を改定しないといけない問題なのに、政治合意でそれを超える決定を行った。
12.集団的自衛権を認める閣議決定をして、事実上憲法を改正し、今回はガイドラインの改定で、安保条約に触れないまま、実質的に安保条約を変えてしまった。集団的自衛権についても、閣議決定や、公明党との了解とはかなり違う路線を走ってる。宇宙やサイバー空間に関する協力も入ってきて、どんどん拡大していくという方向で進んでいる。危険だと思うのは、安保条約の文言と明白に矛盾していても、それを何とも思わないという姿勢である。




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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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