2016年11月08日

原子力発電の介護政策をやめ、ターミナルケア政策を進めるべきである。従来の政策は、国民の公共利益に反しており、原子力発電の優遇措置は廃止すべきである。

「吉岡斉(九州大学教授)著:福島後の未来をつくる、原子力発電は介護から終息へ、地域産業転換に向けた交付金創設を、
エコノミスト、2015.10.20」は参考になる。著者は東京大学理学部卒業、11年から12年にかけて政府の東京電力福島原発における事故調査・検証委員会の委員を務めた。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.「ターミナルケア政策」とは、今まで進めてきた事業を、重.大な社会的損失を与えずに終息させる政策である。原子力発電など回復の望みのない事業に対して、損失を最小限に抑えながら終息せるための支援を行う。国際社会は絶えず変化しており、新しく台頭する事業もあれば、滅びゆく事業もある。事業廃止の際には、事業者に損失が発生する。事業廃止の原因が事業者の自己責任の場合は自業自得であるが、公共政策で損失が発生した場合は、その度合いに応じて政府も補償責任を負う。
2.日本の原子炉等規制法では、原子炉の法定運転年数は40年とされているので、それに満たない年数で政策的に廃止させる場合は、遺失利益についての早期廃止補償を、電力会杜が要求してくる可能性があり、政府と電力会社との協議する必要がある。おドイツでは2002年、当時のシュレーダー政権下で政府と業界の合意により原子力法に平均32年の運転制限が導入されたが、早期廃止補償は盛り込まれなかった。メルケル現政権は当初、原子炉の運転制限期間を延長しようとしたが、福島原発事故を受けて政策転換し、02年合意をさらに具体化させた脱原発ロードマップを決めたという経緯がある。
3.公共政策においても、ある事業が没落しそうなとき、放置すれば多大な社会的混乱がもたらされる場合、政府が事業廃止の影響を緩和する政策を講じることは公共利益にかなっている。滅びゆく事業を上手に管理し、事業者の損失が破局的になるのを防ぐ上で、政府のターミナルケア政策は有効である。
4.事例として、原油輸入自由化にともなう国内石炭産業の衰退に対処するため、産炭地域振興臨時措置法(1961年)による企業や地域社会への支援政策がある。これは出発時点には、優良炭鉱の維持拡大と不良炭鉱の廃止の双方を支援する政策だったが、時代が下るにつれてダーミナルケア政策の性格が強まった。
5.個々の民間会社の工場閉鎖による地域経済への影響について、政.府による緩和策は不要である。原子力発電所でも特別扱いする理由はない。しかし国家政策にもとづき全国で、いっせいに多くの原子力発電所が廃止される場合には、社会政策として、産炭法を参考に緩和策を検討する必要がある。
6.2011年3月11日に始まる福島原発事故は、発生から4年半が過ぎたのにいまだ収束していない。福島原発事故による損害額は、現時点ですでに11兆円、将来分も合わせれば数10兆円に上ることが確笑である。避難者数は今年8月現在で10万6700人に達する。福島原発事故によって原子力発電が、他の技術とは異次元の、時間的にも空間的にも並外れて巨大な災害をもたらすリスクを抱えていることが、改めて明らかになった。
7.この過酷事故災害の異次元なまでの巨大さこそが、原子力発電を廃止すべき基本的理由である。過酷事故を起こした原子炉は過去半世紀余りで5基に達する。世界の原子炉炉設計者は、過酷事故を100万炉年(1炉年とは原子炉1基を1年稼働すること)に1度に抑えることを目標値に設定している。しかし、15年春までの原発の運転実績は約1万6000炉年だから、約3000炉年に1度という驚くべき高率である。
8.原子力発電は社会経済にとって不可欠ではなく、他の発電手段〔火力発電、水力発電、再生可能エネルギー発電等〕で代替できる。さらに原子力発電はそうした競争相手と比較して優れていない。安定供給性については、ウラン資源輸入に関する阻害要因が、石油・天然ガスと比べて少ないものの、事故・災害・事件などが起きれば原発は多数の原子炉が一度にダウンし、運転再開までに長時間を要する。
9.環境保全性の観点から見た原子力発電の利点は、有害化学物質や温室効果ガスの排出量が、火力発電よりも格段に少ない。一方で原子力発電は、事故による核物質の環境への大量放出のリスクを抱え、また各種の危険な核物質を生み出す。まず核物質リスクを減らし、次いで温室効果ガス削減に全力を挙げるのが、物事の正しい順序である。
10.原子力発電が経済的に最も優位だという試算が、政府によって数年ごとに発表されてきたが信頼性はない。電力会社による詳細なデータ公開が必須である。政府は原子力発電の経済性が優れていると主張し、それを主要根拠として原子力発電のコストとリスクを政府が肩代わりする「原子力発電介護政策」(電源三法による立地支援、研究開発支援、損害賠償支援、福烏事故処理支援、核燃料サイクルコストの電気料金への転嫁などの政策)を推進してきた。
11.本当に原子力発電の経済性が優れているならば手厚い「介護政策」など不要のはずである。原子力発電の経済的コスト・リスクが実際には高いので、「介護政策」なしには、原子力発電に深入りできない。「原子力発電介護政策」の拡充を条件に協力を続けるという姿勢である。消極的な電力会社もあるかもしれないが、「原子力村」の掟に背くことが難しい。
12.政府が肩代わりすることは国民負担であ。福島原発事故は東京電力による人災の性格が濃厚であるが、損失を国民が負担するのは疑問である。11年3月から4月にかけて東京電力管内で「計画停電」が強行されたが、それ以降今日まで電力危機が生じたことはない。日本の電力消費のべースラインがリーマン・ショックを境に大きく落ち込んでいた。日本の発電電力量は、07年に1兆1950億kWhを記録したが、13年には1兆905億kwhと8.8%の減少となった。今後も人口減少などにより、自然減の傾向をたどる。省エネの推進と、再生可能エネルギーの拡大で、30年ごろまでに全ての原発を廃止しても、エネルギー需給の観点からは特段の困難が生ずるとは思えない。
13.原子力発電の介護政策をやめ、ターミナルケア政策を進めるべきである。原子力発電の維持拡人という従来の政策は、国民の公共利益に反していたことを政府は明確にするべきであり、それを受けて原子力発電の交付金・補助金等の優遇措置は廃止すべきである。
14.既得権の喪失に対する配慮は不要だが、原子炉の早期廃止など電力会社に損失をもたらす場合は、その補償に関する協議は必要となる。地域自治体の財政破綻や地域経済への深刻な打撃がもたらされる場合は、社会政策の検討が必要となる。ただし、過去の石炭産業崩壊に際して、重化学工業の誘致が試みられたが失敗した。過去の教訓に学ぶ必要がある。



yuji5327 at 06:27 
エネルギー問題 
池上技術士事務所の紹介
261-0012
千葉市美浜区
磯辺6丁目1-8-204

池上技術士事務所(代表:池上雄二)の事業内容
以下のテーマの技術コンサルタント
1.公害問題、生活環境、地球環境
2.省エネ・新エネ機器導入
のテーマについて、
・技術コンサルタント
・調査報告書の作成
・アンケート調査・分析
・技術翻訳、特許調査
を承ります。
有償、無償を問わず
お気軽に下記にメールをください。
ke8y-ikgm@asahi-net.or.jp

工学博士、技術士(応用理学)、
公害防止主任管理者、
騒音防止管理者の資格で
お役に立ちたいと思います。

池上湖心 プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山に師事
書象会に所属、書象会理事
審査会々員
○作品展の開催
・主宰している「さざ波会」
 作品展を毎年8月開催
(於:稲毛ギャラリー)
・土曜会(グループ展)
 作品展を毎年10月開催
(於:銀座大黒屋)
○公募展の受賞、入選
・日展入選
・読売書法展(現在理事)
 読売奨励賞
 読売新聞社賞
・謙慎展(現在理事)
 春興賞の受賞:2回
○書道教室
・学生:月曜日
・一般:火曜日、水曜日





地域別アクセス

ジオターゲティング

ジオターゲティング
livedoor プロフィール
アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード