2017年04月11日

英仏は「ならずもの国家」だった。クリミア戦争やアロー号戦争でロシアや清国の政局に手一杯で、日本に手を出す余裕がなかったのは幸運だった。

「山内昌之、中村彰彦著:
黒船以降、政治家と官僚の条件、中央公論新社、2006年」は面白い。「第1章:徳川官僚の遺産」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.開国によって小笠原の重要性を再認識した幕府の命で、外国奉行の水野忠徳を筆頭に調査団が威臨丸で小笠原を訪れたときには、白人やハワイ先住民が父島と母島に50人くらいずつ住んでいた。もう30年くらい住み着いていて、世代交代もしている。「この島は日本領だから、ここのものを勝手に食べてぱならない」というと、「この島にいる牛や豚は、われわれが連れてきたものだ。われわれに食べる権利がある」といい返された。鎖国して開国したばかりの日本の国際的な位置を象徴する事件である。
2、ペリーは日本本土が開国しないとき、琉球とならんで小笠原に貯炭所を設けて応急の代替とする考えをもっていた。1853年にペリーは、琉球に着いてから、父島に行っている。喜望峰で羊や豚、上海で雌雄の牛を買っていったが、もう白人移民者が飼育していた。彼らから、波止場や貯炭庫に使う±地を購入している。よく日本はアメリカなどに小笠原の領有権を認めさせたものである。
3.小笠原については、アメリカとイギリスの問でも論争が起こった。イギリスの船もさかんに小笠原に立ち寄っていて、軍艦の基地まであった。だからイギリスが自国の領土だと主張した。ペリーはアメリカに帰った後、小笠原は日本人によって発見されたと報告し、それを根拠に日本領に落ち着いた。アメリカとしては、英国領とされるのはまずい。アメリカ領だと主張して、開国を迫っている日木に反米感情を起こされても困る。日本領と認めた上で、あらためて土地を日本から借りれぽいい、という論理だった。
4.19世紀の米英関係は良好とはいえなかった。一体化した戦略を追求していなかった。19世紀初めに起こった第二次米英戦争(1812~15)では、英国領カナダ植民地の軍隊がワシントンに攻め込み、ホワイトハウスを焼き払った。アメリカが外国軍に本土しかも首都を唯一攻撃された例として、カナダ人がひそかに誇りとしている。
5.日本の開国にあたって、交渉した相手国が、ペリーのアメリカや、プチャーチンのロシアだったというのは幸運だった。イギリスやフランスは、アジアで悪辣なことをやっているという認識を日本はもっていた。英国船フェイトン号が長崎に侵入したとき、さんざん乱暴なことをして、長崎奉行は自刃し、佐賀藩士ば処罰された。イギリスは凶暴な国と思われていた。フランスもイギリスと連合して、第二次アヘン戦争ともいうべきアロー号戦争を起こしているのだから、日本の外交当局者にとって、英仏は「ならずもの国家」だった。
6.「悪の枢軸」がクリミア戦争やアロー号戦争でロシアや清国の政局に手一杯で、日本に手を出す余裕がなかったのは幸運だった。中東のオスマン帝国、インドのムガル帝国、そして清朝といったアジアの大帝国ぱ、いずれも植民地化、あるいは半植民地化されている。日本が植民地にならずにすんだのは、幸運な突発的変動という意味で「カタストロフィー理論」の歴史や偶然である。日本の軍事、科学技術、文化の総合力が他の国々と違う脅威を欧米に与えたこともあった。
7.日本にとって幸運だった第1の要因は、アヘン戦争の教訓を学ぶことができたこと。清から茶を輸入していたイギリスは、膨大な銀の流出に悩んでいた。この入超状態を是正するため、イギリスはインドのアヘンを清国に輸出し、三角貿易で貿易不均衡の問題を解
決しようとした。この不道徳行為はさすがにイギリス国内でも評判が悪く、自由党のグラソドストンが議会で攻撃した。アヘン禁止を求めた清はイギリスと戦争して敗れ、その後に辛酸をなめたが、その詳しい情報は日本にも唐人やオランダ人など複数のルートで入ってきた。
8.第2の幸運ぱ、ペリーが来航した嘉永6年(1853年)に南京がちょうど太平天国軍に占領されたばかりだったということ。太平天国は後にハルトゥームでイスラーム武装勢力に殺害されるゴードン将軍の率いる軍隊など、外国の力を借りるかたちで鎮圧された。内戦が惨禍を国にもたらすかという教訓を隣国の事件から学ぶことで、幕府の対外政策は大きな影響を受けた。
9.第3の幸運は、イギリスとフランスが、アヘン戦争からアロー号戦争にかけて中国にかかりきりだったこと。中国は富も人口も日本よりはるかに多く、市場として魅力的だった。また、英仏両国は、1854年のロシアとオスマン帝国とのクリミア戦争に、オスマン側に立って参戦した。アジア大陸部の東端と西端に巨大なエネルギーを割いたために植民地政策や軍事戦略の矛先が、日本に向かわなかったということである。ロシアはクリミア戦争の当事国だら、それほど強い圧力を日本にかけられなかった。海軍力も弱体だった。




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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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