2017年05月16日

ポピュリズムと国民の意見を切り捨てるのは、民主主義の否定である。民主主義は、効率の悪い制度だが、政治の暴走を防ぐ重要な役割を果たしてきた。

「野ロ悠紀雄(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧間)著:消費税増税の再延期は国民を愚民視する決定、
週刊ダイヤモンド、2016/06/18」は参考になる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.安倍晋三首相は、消費税の増税先送りを決定した。理由は、新たな経済危機に対処するためという。それは取って付けたような理由で、現在の経済情勢がリーマンショックのような危機をもたらすとの認識は誤っている。選挙目当ての人気取りである。国民に負担増を求める政策は選挙で不利になるから、参議院選挙を前にして消費税増税を延期して支持率を上げようとする。
2.新聞の論説等は、将来の社会保障政策の財源が確保されないことを問題としている。税と社会保障の一体改革や、財政再建計画との関係を問うている。現在の日本での問題は将来の所得機会が保障されていないことで、新施策を打ち上げても、財源手当てがなければ、信頼されない。
3.政治家の立場からは、これらは現実を無視した建前論と見なされる。現実の政治は高尚な空理空論で動くのではなく、目先の利益によって動く。人々は合理的には行動しておらず、目先のことしか考えていない。増税を延期すれば、人々は負担が減ったと考え、その決定を歓迎する。
4.安倍首相が延期の意向を固めたとの報道が流れると、株式市場はこの決定を好感して、日経平均株価は1万7000円台に回復した。現政権からすれば、これが一般国民の反応ということになる。しかし、株式市場は短期的な条件には強く反応するが、長期的な条件の変化は無視する。
5.一般の人々の判断と株式市場の判断は、食い違うことが多い。消費税増税や社会保障のような長期的な政策に関しては、特にそうである。問題は、人々が株式市場と同じように考えているかどうかである。
6.人々が完全に合理的に行動するとしたら、消費税増税の先送りをどのように捉えるか?
この問題は、古くから経済学者によって議論され、18世紀のイギリスの経済学者デイビッド・リカードは、、いま減税をし、それを財政赤字の拡大によって賄ったとすれば、将来必ず増税によって処理される。
7.現在の減税とは、税負担の延期でしかない。人々は消費の決定に当たって、今年の所得のみを考慮しているのではなく、将来の所得も考慮に入れている。人々は、将来の増税に備えて、いま消費を減らして貯蓄を増やす。減税は消費を拡大させる効果を持たないことを、リカードの「等価定理」と呼ぶ。今回の消費税増税の延期は2019年10月までと期間が限られているので、この効果が働く。将来の増税時点が明言されなくても、同じことになる。
8.リカードの等価定理は、非現実的な机上の空論だと考えられてきた。その理由は、将来の増税までの期間が、人間の生涯を越えるかもしれないので、人々は現在の減税だけを評価する。
9.生涯の有限性問題は、アメリカの経済学者ロバート・バローが1970年代に解決した。バローによれば、人々は異なる世代と遺産によってつながっている。増税の負担が将来の世代にかかるとすれば、人々は将来世代をおもって遺産を増加させる。このために現在の消費を抑制する。これは、それほど突飛な議論ではない。
10.リカードやバローは理論経済学者であるから、彼らの理論はさぞや難解なものと思うもしれないが、その内容は極めて明決で直観的である。難しい数式のモデルなどを使わなくても、誰でも直感的に理解できる。
11.人々が合理的に行動しているとすれば、いまの日本で必要なのは、将来の見取り図を明確にし、財源を確保し、新しい均衡に向けて経済社会制度を整備することである。消費税増税によって社会保障の財源を確保することは重要である。人々は、将来をみ.完全に捉え、完全に合理的に行動しているわけではなく、不完全な情報に基づいて、大まかな判断しかしていない。目先の利益しか眼中にない人も少なくない。
12.仮に人々が目先のことを重視するとしても、説明すれば、政策の長期的な意味を理解する能力を、ほとんどの日本国民が持っている。そのような説明を行うことこそ、政治家の責務である。
13.問題は、国民を愚民と見なすか、合理的と見なすかの判断である。現実の政治はポピュリズムに傾かざるを得ないと言うが、それは政治家が人々の考えを低く評価しているだけのことである。ポピュリズムだとして国民の意見を切り捨ててしまうのでは、民主主義の否定につながる。民主主義は、効率の悪い制度ではあるが、社会の暴走を防ぐために重要な役割を果たしてきた。
14.参議院選挙において、人々の理解に訴えるという戦略が可能であるはずである。それを行うべきは、まず民進党である。民主党政権時に消費税増税を決めたのだから、当然のことだが、民進党は自らその戦略を放棄し、消費税の増税延期を提案した。民進党も自民党と全く同じ立場から、国民の判断能力が低いと決めてかかり、この問題を選挙の争点から外してしまった。国民を愚民と見なす政党しか存在しない日本は、悲劇的な状況にあると。


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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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