2017年05月23日
イラク軍は怯え、アメリカからもらった武器をすべて捨て、軍服を脱いで逃げ出し、結果的にアメリカがイラク軍に渡した最新鋭兵器はIS(イスラム国)に渡った。
「池上彰著:
知らないと恥をかく世界の大問題7、Gゼロ時代の新しい帝国主義、KADOKAWA、2016年5月10日」は参考になる。「プロローグ 新しい帝国主義時代の到来」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ブッシュは事前にイラクのことをよく研究しないまま攻撃した。独裁政権さえ倒せば、すぐに民主化が進むと、簡単に考えた。ブッシュは「バース党員をあらゆる役所から追い出せ」と指示した。イラクはバース党員にならなければ出世できない国だった。地方も国も公務員はすべてバース党員。警察官も医者も教員も、軍隊の将校もバース党員たちは誰も出勤せず、イラクの統治機構は崩壊した。兵隊たちは武器や弾薬を盗み姿を消し、イスラム国の種が蒔かれた。
2.イラクは内戦状態になり、国連は東チモールの独立に際して派遣された人物は、すぐに暗殺された。国連は、そんな危険なところに職員を派遣するわけにはいかない、とすぐに手を引き、混乱はますますひどくなった。イラクのフセイン大統領はイスラム原理主義者や、イスラム過激派を嫌っていた。少しでも怪しい人物は、捕えてすぐに処刑していた。フセイン政権が崩壊すると、これまでイラクで活動できなかった周辺の過激派組織が次々にイラクへやってきて、権力の空白が生まれ、イラクがテロリストの巣窟になっった。
3.かくして生まれたのが、現在のIS=自称「イスラム国」の前身組織「イラクのイス
ラム国(ISI)」で、このときはイラク限定の組織だった。指導者のアブー・ウマル・アル=バグダディは、現在の指導者アブバクル・バグダディとは別人で、2010年にアメリカ軍によって殺害されている。
4.この段階ではまだアルカイダ系で、アルカイダ(基地という意味)は2001年9月11日、アメリカ同時多発テロを起こした、オサマ・ビンラディン率いる反米テロ組織である。そこに、チュニジアで始まったアラブの春が、イラクの隣国シリアにも飛び火してきた。これに目をつけた「イラクのイスラム国」は、自分たちの勢力を大きくする絶好のチャンスと考えた。
5.もともと「イラクのイスラム国」はアルカイダの系列に入っていたから、シリアでも独自の活動をするため、「ヌスラ戦線」(ヌスラとは勝利の意)という組織をつくり、イラクの「シリア支部」のようなかたちで活動を始めた。しかし、「イラクのイスラム国」にしてみれば、イラクとシリアに別々に組織をつくっておく必要はない、ひとつにしようと考えた。ところが、アルカイダの本部からシリアはシリアで別に戦えという指示がきた。
6.これに現在の指導者であるアブバクル・バグダディが反発した。もともと、シリアとイラクの国境線はヨーロッパが勝手に引いた線だ。勝手に引いた線に従って別々に活動するということはイギリスとフランスのサイクス・ピコ協定(第1次世界大戦中に、イギリス・フランス・ロシアの間で結ばれた中東分割に関する秘密協定)を認めることになるので、バグダディはアルカイダと手を切り、独自の組織をつくった。ヌスラ戦線はそのままアルカイダ系にとどまり、「イラクのイスラム国」とは袂を分けた。イラクのイスラム国はヌスラ戦線も攻撃し、シリアは、三つ巴、四つ巴の泥沼の内戦となっった。
7.シリアに入った「イラクのイスラム国」は、アサド政権側を攻撃せず、反政権側を攻撃した。理由はアサド政権側は強い軍事力を持っていたからで、それほど強くなかった反政権側を攻撃して、まずは、反政権側が持っている武器や金を奪い取ろう、と考えた。
反アサド政権側には、同じスンニ派の国々である、サウジアラビアやカタールが多額の資金や武器を提供していたので、これに目をつけた。
8.「イラクのイスラム国」は名前も変えます。もうイラクだけじゃない。シリアでも活動することになるので、イラクとレバントのイスラム国「ISIL」(アイシル)と名乗った。レバントとは、シリアあたりをさす古い呼称です。しかし中東の人以外にはレバントはわかりづらいので、「イラクとシリアのイスラム国」と呼ぶ場合もある。この場合は「ISIS」(アイシス)と呼び、どちらも同じ意味である。
9.ISILがシリアで勢力を拡大している間、イラクは、アメリカがフセイン政権が崩壊した後、ゼロからイラクの国軍をつくる必要があった。しかし軍隊に入るのは「お金がもらえるから軍にでも人るか」という軍人で、引常に責任感の薄いイラク軍ができた。アメリカはイラクから撤退するとき、この弱いイラク軍に最新鋭の兵器を渡してきた。ここに、大量の資金や武器を得た「ISIL」が再び戻ってきた。
10.急ごしらえのイラク軍はこれに怯え、アメリカからもらった武器をすべて捨て、軍服を脱いで逃げ出した。結果的にアメリカがイラク軍に渡した最新鋭兵器も、やすやすと「lSIL」のものになった。戦車も装甲車も手に入れて、イラクに戻った「ISIL」はさらに名前を変えのが、いまの「IS」=自称「イスラム国」である。もう地域限定ではない。全世界で活動すると宣言し、自称「イスラム国」は武器を横取りし、イラクに戻り、イラクとシリアにまたがる強大な国をつくることに成功した。
知らないと恥をかく世界の大問題7、Gゼロ時代の新しい帝国主義、KADOKAWA、2016年5月10日」は参考になる。「プロローグ 新しい帝国主義時代の到来」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.ブッシュは事前にイラクのことをよく研究しないまま攻撃した。独裁政権さえ倒せば、すぐに民主化が進むと、簡単に考えた。ブッシュは「バース党員をあらゆる役所から追い出せ」と指示した。イラクはバース党員にならなければ出世できない国だった。地方も国も公務員はすべてバース党員。警察官も医者も教員も、軍隊の将校もバース党員たちは誰も出勤せず、イラクの統治機構は崩壊した。兵隊たちは武器や弾薬を盗み姿を消し、イスラム国の種が蒔かれた。
2.イラクは内戦状態になり、国連は東チモールの独立に際して派遣された人物は、すぐに暗殺された。国連は、そんな危険なところに職員を派遣するわけにはいかない、とすぐに手を引き、混乱はますますひどくなった。イラクのフセイン大統領はイスラム原理主義者や、イスラム過激派を嫌っていた。少しでも怪しい人物は、捕えてすぐに処刑していた。フセイン政権が崩壊すると、これまでイラクで活動できなかった周辺の過激派組織が次々にイラクへやってきて、権力の空白が生まれ、イラクがテロリストの巣窟になっった。
3.かくして生まれたのが、現在のIS=自称「イスラム国」の前身組織「イラクのイス
ラム国(ISI)」で、このときはイラク限定の組織だった。指導者のアブー・ウマル・アル=バグダディは、現在の指導者アブバクル・バグダディとは別人で、2010年にアメリカ軍によって殺害されている。
4.この段階ではまだアルカイダ系で、アルカイダ(基地という意味)は2001年9月11日、アメリカ同時多発テロを起こした、オサマ・ビンラディン率いる反米テロ組織である。そこに、チュニジアで始まったアラブの春が、イラクの隣国シリアにも飛び火してきた。これに目をつけた「イラクのイスラム国」は、自分たちの勢力を大きくする絶好のチャンスと考えた。
5.もともと「イラクのイスラム国」はアルカイダの系列に入っていたから、シリアでも独自の活動をするため、「ヌスラ戦線」(ヌスラとは勝利の意)という組織をつくり、イラクの「シリア支部」のようなかたちで活動を始めた。しかし、「イラクのイスラム国」にしてみれば、イラクとシリアに別々に組織をつくっておく必要はない、ひとつにしようと考えた。ところが、アルカイダの本部からシリアはシリアで別に戦えという指示がきた。
6.これに現在の指導者であるアブバクル・バグダディが反発した。もともと、シリアとイラクの国境線はヨーロッパが勝手に引いた線だ。勝手に引いた線に従って別々に活動するということはイギリスとフランスのサイクス・ピコ協定(第1次世界大戦中に、イギリス・フランス・ロシアの間で結ばれた中東分割に関する秘密協定)を認めることになるので、バグダディはアルカイダと手を切り、独自の組織をつくった。ヌスラ戦線はそのままアルカイダ系にとどまり、「イラクのイスラム国」とは袂を分けた。イラクのイスラム国はヌスラ戦線も攻撃し、シリアは、三つ巴、四つ巴の泥沼の内戦となっった。
7.シリアに入った「イラクのイスラム国」は、アサド政権側を攻撃せず、反政権側を攻撃した。理由はアサド政権側は強い軍事力を持っていたからで、それほど強くなかった反政権側を攻撃して、まずは、反政権側が持っている武器や金を奪い取ろう、と考えた。
反アサド政権側には、同じスンニ派の国々である、サウジアラビアやカタールが多額の資金や武器を提供していたので、これに目をつけた。
8.「イラクのイスラム国」は名前も変えます。もうイラクだけじゃない。シリアでも活動することになるので、イラクとレバントのイスラム国「ISIL」(アイシル)と名乗った。レバントとは、シリアあたりをさす古い呼称です。しかし中東の人以外にはレバントはわかりづらいので、「イラクとシリアのイスラム国」と呼ぶ場合もある。この場合は「ISIS」(アイシス)と呼び、どちらも同じ意味である。
9.ISILがシリアで勢力を拡大している間、イラクは、アメリカがフセイン政権が崩壊した後、ゼロからイラクの国軍をつくる必要があった。しかし軍隊に入るのは「お金がもらえるから軍にでも人るか」という軍人で、引常に責任感の薄いイラク軍ができた。アメリカはイラクから撤退するとき、この弱いイラク軍に最新鋭の兵器を渡してきた。ここに、大量の資金や武器を得た「ISIL」が再び戻ってきた。
10.急ごしらえのイラク軍はこれに怯え、アメリカからもらった武器をすべて捨て、軍服を脱いで逃げ出した。結果的にアメリカがイラク軍に渡した最新鋭兵器も、やすやすと「lSIL」のものになった。戦車も装甲車も手に入れて、イラクに戻った「ISIL」はさらに名前を変えのが、いまの「IS」=自称「イスラム国」である。もう地域限定ではない。全世界で活動すると宣言し、自称「イスラム国」は武器を横取りし、イラクに戻り、イラクとシリアにまたがる強大な国をつくることに成功した。