2017年06月08日

グローバルな時代の国際人は世界のことを理解すると同時に、自分の国のことも知らないと、自国のことを世界にアビールできない。

「池上彰著:
知らないと恥をかく世界の大問題7.KADOKAWA、2016年」は参考になる。「エピローグ 近代文明の逆走を止められるか」の印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.第1次世界大戦とは、世界史では、「1914年、オーストリアの皇太子(帝位継承者)がセルビアの青年に暗殺されたのがきっかけ」と習うが、大戦争に発展した背景はきちんと教えない。オーストリアとセルビアは20世紀の初めまでは経済的にも密接な関係にあったが、1908年、セルビアが求めていたボスニア・ヘルツェゴビナという地域をオーストリアが自分の領土に併合した。これにセルビアが反発し、以降、急速に関係が悪化していった。
2.セルビアは、ボスニア・ヘルツェゴビナというセルビア人が多く住む領土を取り返したい。セルビアはスラブ系の民族で、同じスラブ系のロシアは、セルビアに味方した。当時、ロシアはフランスと露仏同盟を結んでいたのでフランスも乗り出した。
3.一方、自分たちの帝位継承者の夫妻が殺害され、オーストリアも怒りが爆発し、同盟国だったドイツに助けを求め、参加国が膨らんでいった。イギリスも参戦し、ロシア側についた。このころ、ドイツは軍艦を大量に建造するようになり、この動きに、海軍国家のイギリスが反発発した。「イギリス、フランス、ロシア」などと、「ドイツ、オーストリア」などとの30カ国を蒔きこんだのが第1次世界大戦である。
4.当時のヨーロッパは、植民地争奪競争の最中だった。18世紀半ば、イギリスで産業革命が起こり、これが世界を大きく変えた。ヨーロッパの国々は工場制機械工業の導入により、大きく発展し、つくったものが自分の国だけでは売りきれなくなり、原料と市場を求めて、海外に植民地を広げていった。
5.植民地争いで最強の国はイギリスだった。一方、神聖ローマ帝国の名のもとで実質的に分裂していたドイツ諸邦は、19世紀にやっと統一した。新しくやってきた強国は、すでに列強の勢力が及んでいるところにも自分の勢力を押し広げようとした。ドイツは、新しい技術をイギリスから輸入して発展した。当時、ドイツとイギリスはお互いに最上の顧客だったのに、戦争になってしまった。経済的に依存しあっていれば戦争にはならない、よく言われるが、いくら経済でいい関係を築いていても戦争になりうる例である。
6.日本も第1次世界大戦の戦勝国である。日本は日英同盟を結んでいたので、イギリス側についた。日本も1等国になりたかったので、日本は中国進出を狙っていった。中国の青島はドイツが持っていたため、列強が戦っている間、青島を攻略した。日本は、最小限のコストで最大限の利益を上げたいわれた。
7.さらに中国に対し、1915年、ドイツの利権継承など「対華21箇条の要求」を突き付け、その大部分を承認させた。中国では反日意識が高まり、これがその後の日中戦争や太平洋戦争へとつながっていった。日中戦争、そして太平洋戦争の起源はここにある。アメリカは、ヨーロッパには干渉しないというのが基本方針だった。干渉しないから、アメリ力大陸にも干渉するな、という立場だった。
8.第1次世界大戦では新兵器も多く登場したが、ドイツ軍だけが潜水艦「Uボート」を持っていて、この潜水艦で最大の敵・イギリスに出人りする船を片っ端から攻撃した。アメリカは通商国家で、アメリカの船を沈められ「これ以上我慢できない」と、参戦。中立だったアメリカが連合国側につくことで、戦況は一気に連合国側有利に動いた。1918年、連合国軍の勝利により、第1次世界大戦は終わりました。
9.2015年、ローマ法王・フランシスコは、パリの同時多発テロ、自称「イスラム国」の台頭、アメリカにおける人種間対立、依然として継続するロシアとウクライナの問題などを見て、すでに第3次世界大戦が始まっている、という趣旨の発言を行い、世界中のメディアを驚かせた。
10.フランシスコ法王は、2016年2月、ロシア正教会のキリル総主教との歴史的な会談を果たした。1000年ぶりの和解、と話題になった。キリスト教は4世紀、キリスト教を国教としていたローマ帝国の東西分裂にともない、次第に異なった考えを持つようになり、徐々に対立していった。
11.1054年、教義の違いなどからお互いを破門するかたちでローマを中心とするカトリック教会と、コンスタンティノープル(現在のトルコ・イスタンブール)を中心とする東方正教会に分離した。カトリックの総本山はバチカンで、ローマ法王が最高指導者である。東方正教会は法王に相当する地位を設けておらず、信仰を同じくする教会組織を国や地域ごとに設立している。ギリシャならギリシャ正教会、ウクライナならウクライナ正教会、マケドニアならマケドニア正教会、とし、ぞれの教会は対等だとしている。中でもロシア正教会は東方正教会の信者の3分の2を擁するともいわれる最大勢力である。
12.歴史的な会談が実現した裏には、自称「イスラム国」など、イスラム過激派から結束してキリスト教徒を守ろう、と連帯を強める必要性もあったが、ウクライナ問題も背景にある。全方位外交を加速させるローマ法王の呼びかけに東方正教側が応じたのは、ウクライナ問題やシリアでの空爆などに対する、欧米からのロシアへの批判を緩和する狙いがあるとの見方もある。
13.ローマ法王は、アメリカ大統領選挙で共和党の指名獲得したドナルド・トランプについて、メキシコ国境における壁の建設を求めるなら、キリスト教徒ではない、と批判した。トランプは、いったんはローマ法王を批判したが、その後、批判を取り消した。さすがにトランプも敵に回したくない相手だったらしい。
14.かってのソ連は宗教を否定する国だった。カール・マルクスが「宗教はアヘンだ」と言ったからである。資本主義において宗教は麻薬のような役割を果たす。現世は辛くても、一生懸命に働けば来世は天国へ行けると信じて、どんなに辛くても我慢する。これでは社会主義革命は起こらないとして、宗教を排した。ソ連は「"宗教は敵だ」とロシア正教を弾圧した。一応、信仰の自由は認めるが、宗教を信じない自由もまた認めるとして、ロシア正教会の活動が狭められた。教会の十字架を取り外したり、教会の中を集会場のような施設にした。
15.ソ連が崩壊し、ロシアになったとたん、ロシア正教会が再び強い力を持つようになった。宗教を否定していたソ連の大統領の名前がミハイル・ゴルバチョフのミハイルとは、キリスト教の天使の名前で、ゴルバチョフは幼児洗礼を受けていたことをソ連崩壊後に認めている。
16.グローバルな時代の国際人は世界のことを理解すると同時に、自分の国のことも知らないと、自国のことを世界にアビールできない。因果関係の蓄積が歴史で、因果関係を調べるのはおもしろい。ニュースを理解するということは、ニュースが起き理由という問題意識が必要である。



yuji5327 at 06:45 
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工学博士、技術士(応用理学)、
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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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