2017年06月15日

ジリ貧になっている他の家電メーカーを尻目に、いったん「負けた」と思われたシャープが最後には勝ち組になっているかもしれない。

「大前研一著:ビジネス新大陸の歩き方、家電企業ジリ貧の中で鴻海(ホンハイ)シャープに活路あり、週刊ポスト、2016年7月22-29日」は参考になる。概要を自分なりに纏めると以下のようになる。印象に残った部分の概要を自分なりに補足して纏めると以下のようになる。
1.凋落した日本の家電メーカーが生き残っていく方法は、中国の巨大な製造企業を買収して垂直統合するか、中国各地に広く販売網を持っている会社を買収して競争相手よりも速いスピードで成長させたり、中国のeコマース企業と提携して中国の消費者に日本からダイレクトに商品を販売できるようにするしかない。すでにそうなった会社は、シャープである。
2.台湾の鴻海精密工業に買収された同社は、中国に100万人の従業員がいる世界一のEMS(電子機器受託製造サービス)企業と垂直統合したようなものである。かつて家電量販店のラオックスが中国の蘇寧雲商集団(旧・蘇寧電器)に買収されて蘇ったのと同様に、鴻海傘下に入ったシャープにも新たな再生の可能性が開けている。
3.鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は、雇用は維持する、経営陣は残すと約束しておきながら、すぐに人員削減を発表し、経営陣も刷新した。13人いた取締役のうち12人が退任して新社長には鴻海ナンバー2の戴正呉副総裁が就任し、新たな取締役は鴻海6人、シャープ3人となった。これは経営トップとして当然のことをやっただけである。
4.管理職の給料も、鴻海方式の役割給を導入した結果、月給が30万円下がる人が出たが、これも仕方のない。日本企業が競争力を維持するためには、国内の給与水準を、国境を越えた「同一労働同一賃金」に近づけていくしかない。そうしなかったから、日本の家電メーカーは海外で価格競争に敗れて衰退した。
5.シャープの今後は、郭会長が「シャープのプランドをどのように活用するか」で決まる。アメリカの液晶テレビのシェアは、日本では無名のビジオ(台湾系企業)が韓国のサムスンとトップ争いをしているが、その製品を作っているのは鴻海で、資本も入れている。もし郭会長が、ブランドをピジオからシャープに変えてシャープの工場で製造するようにすれば、シャープはいきなりアメリカで1位になる。シャープ製品をビジオやサムスンと同じくらいの値段で売ってもシェアは一気に伸びる。
6.郭会長がシャープの技術陣に画期的な新製品を開発しろと撒を飛ばして資金も投入し、イギリスのダイソンのサイクロン掃除機:羽根のない扇風機や空気清浄機能付きファンのように値段が取れる付加価値の高い商品を生み出す可能性は小さくない。シャープは有機ELなどの液晶・パネル技術のみならず、空気を浄化する「プラズマクラスター」、健康志向の調理家電ブランド「ヘルシオ」、停電時も蓄電池と太陽光発電システムを組み合わせて冷蔵だけなら約10日間以上(冷凍使用の場合は約4日間以上)冷やせる冷蔵庫といった独自技術を開発する力を持っている。
7.最近のシャープには意外なヒット商品もある。世界初の蚊取り機能付き空気清浄機「蚊取空清」がある。薬剤を使わず、蚊の習性を利用してUV(紫外線)ライトでおびき寄せて吸引し、粘着シートで捕らえるという仕組みで、開発期間は6年。東南アジアで大ヒットしたのを受けて、国内でもこの春から発売を開始している。実勢価格が4万円超と高額なのに、空気清浄機売れ筋ランキングで上位をキープしている。あるいは、ワイヤレス電力・データ転送技術を活用した「ワイヤレス・シャープ」構想などに取り組むのも面白い。
8.シャープの役員人事で.技術重視を象徴するのが、郭会長が崇拝している日本人技術者、中川威雄・ファインテック会長の取締役に就任である。この中川氏が鏡面研磨の小林研業など優れた技術を持っている日本企業を見つけてきて鴻海に紹介し、初期の頃のiPhoneやiPodの筐体背面の美.しい光沢に活用してきた。
9.郭会長が進めるこうした改革がシャープ再生のカギになる。一方で、シャープの人材が他社へ流出していることが懸念材料である。とりわけ日本電産には、2014年に元社長の片山幹雄氏が副会長に就任して以来、元副社長の大西徹夫氏、元常務執行役負の広部俊彦氏、元執行役員の毛利雅之氏らが相次ぎ入社した。日本電産の永守重信会長兼社長は、シャープの部長級の採用が100人以上に達したことを明らかにし、希望があれば300人ぐらいは採用したいう。もし鴻海の郭会長が人材流出に本気で対処しようとし、日本電産を丸ごと買収することもあると。売上高約16兆円の鴻海にとって、約1兆1800億円の日本電産を呑み込むことは、さほど難しくない
10.そうすれば、鴻海は製造からブランド、素材、部品機械、研究開発.まで一気通貫で揃った正真正銘の日本企業にできる。製造拠点の中国と研究開発拠点の日本を気楽な台湾からオペレーションするのだから、これほど理.想的な企業形態はない。
11.郭会長と永守会長兼社長は「昵懇の仲」と言われるので、鴻海と日本電産がシャープを挟んで手を組み、EV(電気自動車)の開発・製造に進出する可能性も取り沙汰されている。ジリ貧になっている他の家電メーカーを尻目に、いったん「負けた」と思われたシャープが最後には勝ち組になっているかもしれない。ラオックスと同じく「最初に外資に買われてよかった」という皮肉な結末は、十分あり得る。



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池上湖心プロフィール
○略歴
大東文化大卒、
在学中 上條信山(文化功労者)に師事
書象会理事、審査会員
公募展出展
〇謙慎展・常任理事
・春興賞受賞2回
・青山賞受賞
〇読売書法展理事
・読売奨励賞受賞
・読売新聞社賞受賞
〇日展入選有

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